この記事では、映画『愛を乞うひと』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『愛を乞うひと』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『愛を乞うひと』の作品情報

上映時間:135分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:平山秀幸
キャスト:原田美枝子、野波麻帆、小日向文世、熊谷真実 etc
映画『愛を乞うひと』の登場人物(キャスト)
- 山岡照恵(5歳:小井沼愛 / 10歳:牛島ゆうき / 15歳:浅川ちひろ / 現在:原田美枝子)
- シングルマザー。かつて母から凄惨な虐待を受け、心の傷は今なお癒えていない。15の時、母の元を去る。そして現在、娘と共に、亡き実父の遺骨を探す旅に出る。
- 山岡深草(野波麻帆)
- 照恵の娘。母の遺骨探しに精力的に付き合う。さばさばしていて喧嘩っ早いが、照恵の一番の理解者。照恵のために、豊子の居場所をこっそり調べる。
- 陳豊子(原田美枝子)
- 照恵の母。幼い頃から、照恵にのみ容赦なく暴力を振るう。恋人が変わるたび、子供を連れて家を転々とする。現在は田舎の美容院で、新たな男と共にひっそりと暮らしている。
- 陳文雄(中井貴一)
- 照恵の実父。聖人のように優しい気性で、強姦された豊子を助ける。豊子の暴力から守るため、照恵を連れて家を出るが、病気のために他界してしまう。
- 和知武則(4歳:うじきつよし、前田弘 / 7歳:塚田光 / 11歳:五十畑迅人)
- 照恵と血の繋がらない弟。殴られる姉を見て育ち、生活環境のせいか万引きを繰り返す。照恵とは、詐欺罪で逮捕されたことをきっかけに、数十年ぶりに再会を果たす。
- 和知三郎(國村隼)
- 照恵の最後の義父。穏やかな性格で、照恵たちにも親切だったが、豊子には頭が上がらない。照恵への虐待にもやがて慣れ、見過ごすようになる。
- 王東谷(小日向文世)
- 文雄の台湾の友人。文雄と日本にやってきて、同じ屋根の下で生活していた。彼の見舞いにもよく足を運んだ。現在は台湾で暮らす。
- 中島武人(モロ師岡)
- 武則の実父で、豊子の元恋人。照恵と生活を共にした期間は短く、すぐに豊子と別れる。武則についても、豊子が引き取る。
映画『愛を乞うひと』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『愛を乞うひと』のあらすじ【起】
ひどい豪雨の中、少女が父に手を引かれ、傘も差さずに歩いている。少女はしきりに振り返る。後を追う母の姿を見るためだ。母は取り乱した様子で、「どこへでも行っちまえ」「死んじまえ」と罵詈雑言を叫び、こちらに向かって小石を投げつける。父は振り向かず、少女に優しく話しかける。少女は、ずっと母を見ている。
それは照恵の古い記憶だ。彼女は台湾人の父・陳文雄を「アッパー」と呼び、慕っていた。その日から程なくして亡くなったアッパーの遺骨を、現在探し回っている。照恵には深草という娘がいた。母子家庭で、親娘の仲は良好だ。深草はもう中学生で、照恵より背が高い。
警察から連絡が入る。照恵の弟・武則が詐欺罪で逮捕されたらしい。十五の時に家を出た照恵は、彼と十数年来の再会を果たす。武則の実父である中島や、義父の和知の遺骨を見つけたことを報告する照恵。
他方、照恵に弟がいることなど聞いていなかった深草は不満げだ。また、近ごろ照恵の帰りが遅いため、隠し事があるのではと疑い始める。
昭和三十年。施設にいた照恵は、唐突な母・豊子の訪問によって、不自由ない暮らしに終止符を打つ。家には、新しい父と弟がいた。中島と、まだ幼い武則である。照恵は引き取られたものの、豊子の育児への関心は皆無だった。小さな子供二人を夜遅くまで締め出し、情事に耽ることもしばしばである。
映画『愛を乞うひと』のあらすじ【承】
照恵が十歳になると、豊子は二人の子を連れて、新しい恋人・和知の家へ転がり込む。そして豊子は、照恵に対し暴力を振るうようになっていた。始めは照恵をかばっていた和知も、やがて慣れ始め、激しい折檻を止めようともしない。近隣に住む周囲の大人たちも、見て見ぬ振りをするのであった。照恵の心の拠り所は、アッパーの形見である手鏡だけだ。
一度だけ、豊子は照恵を褒めたことがある。照恵が髪を梳いてやると、「上手だね」と言ったのだ。照恵はそれだけで、目を輝かせた。最初で最後の、母からの賞賛である。
最近のこそこそした照恵の態度に、深草は不快感を露わにする。きつい深草の物言いに、かっとなった照恵は、思わず深草の頬を叩く。途端に、何を思ったのか微笑みを浮かべる。母の不可解な行動に、深草は憤慨して家を飛び出す。
翌日、照恵は学校まで深草を迎えにいく。謝ろうとする照恵を、明るく制する深草。仲睦まじく自転車に二人乗りして、母娘は帰路につく。
豊子からの止まない暴力の嵐に、ついに照恵は口を切る。施設から引き取ったのは、私がかわいいからでしょ。だが母の答えはあまりにも残酷なものだった。強姦されて、しょうがなく産んだんだ。おまえなんか産みたくなかった。
映画『愛を乞うひと』のあらすじ【転】
母娘は、アッパーの故郷を巡ることに決め、台湾にやってくる。日本語が堪能なタクシー運転手の手引きで、早速アッパーの親戚の家をつきとめる。アッパーの兄であり、照恵の叔父に出迎えられ、彼の息子を案内人として手がかりを探すことになる。
十五歳の照恵は、手に職をつけた。一人暮らしを夢見ていたのだが、給与は母の懐に消えていくうえ、相変わらず暴力は絶えない。武則は、無力な自分に歯がゆさを感じ、また愛想笑いが板についた姉に苛立ちを覚えていた。万引きを繰り返す武則を、照恵は一切怒らず、いつか二人で暮らそうと優しく語りかける。
ある日、照恵が帰宅すると、我が家の家具を積んだトラックが停まっている。再び引っ越しが始まるようだ。豊子は訳を話さず、代わりに照恵の給与を催促する。ついに、照恵は糸が切れたように母に飛びかかると、金を奪い返した。泣き叫びながら逃げる照恵を、鬼の形相で追いかける豊子。すると、武則が豊子を押さえつけ、照恵に加勢する。照恵は一目散に走った。そして、二度と帰らなかった。
アッパーの遺骨探しは行き詰まっていた。親戚たちには探す意思すら感じられず、深草は違和感を膨らませていた。あるとき、叔父の息子は真実を打ち明ける。叔父は土地の問題で照恵たちから責められぬよう、アッパーの遺骨が台湾にないことを隠していたというのだ。
その夜、母娘が泊まるホテルを息子が訪問する。叔父の手土産を持参し、アッパーの友人・王の住所を調べたようだ。照恵はなおも怒りを見せるが、深草はそれら謝罪の品を受け取る。
映画『愛を乞うひと』の結末・ラスト(ネタバレ)
陳文雄は、王と小さな部屋を間借りして暮らしていた。ある日、道端でレイプされていた豊子を、文雄は家に連れて帰る。警戒して暴言を吐く豊子だが、文雄はたいそう親切に労った。やがて豊子は、文雄を心から頼るようになる。そして、二人は自然と恋仲になってゆく。
王夫妻は、幼かった照恵をはっきりと覚えており、はるばる訪ねてきた母娘を温かく迎えた。王夫人は、豊子が子供を産むことに異常に怯えていたため、幼少期に何かあったのではないかと話す。
日本に戻った照恵は、新たな手がかりを手に入れる。ついにアッパーの遺骨を見つけ、供養した。一方、豊子の現在の居場所を、深草が探し当てる。照恵は、母に会いにいくことを決める。
どしゃ降りの雨の中、泣き叫ぶ母は怯えていた。あなたなしでは生きられない、怖いよ、そう何度も繰り返していた。自分の元から、娘を連れて去ってゆく男に向かって。
豊子の働く美容室へやってきた照恵。深草は待合室で、心配そうに様子を見ている。豊子は照恵の前髪に触れ、額の傷跡に気づいたとき、その客が娘だと悟った。照恵は、昔母に髪を梳くのを褒められ、美容師になりたかったのだと話す。豊子は手を止めず、それを黙って聞くだけだ。結局、豊子は何も言わず、照恵は一礼して店を出た。豊子は店の前に出ると、深草と並んで去ってゆく照恵の後ろ姿を、じっと見つめる。
あんな母でも、愛されたかったのだと話す照恵。バスの中で号泣する母に、深草は肩を貸し、優しく寄り添う。
そして母娘は、アッパーの故郷のサトウキビ畑に来ている。アッパーが何度も聞かせてくれた地に、彼の遺骨を埋めるため、自らの手で墓を作るために。
映画『愛を乞うひと』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
原田美枝子に、醜い表情がたいそう似合う。これは褒め言葉である。清廉でしとやかな女優ほど、疲れた顔や荒んだ姿が美しいのだ。彼女が幼い娘を、鬼の形相で殴る蹴る。ひどく痛ましい。思わずにはいられない。愛を知らない悲しき人生を。繰り返されるであろう渇きの連鎖を。だが、照恵は断ち切った。「愛を乞うひと」から、「与えるひと」になった。
舞台は日本と台湾、時代は昭和と平成を行き来し、非常に濃い二時間である。平山監督は男性であるが、男は表面的に、女はより生々しく描かれている。(MIHOシネマ編集部)
娘を愛すことが出来なかった母親と、母親からの愛を受けられなかった娘の話。児童虐待をテーマにしているため、もう一度観たいとは思えないほど壮絶なストーリーです。母親と、娘の一人二役を演じた原田美枝子。彼女の演技があったから、この作品ができたのだと思うほど素晴らしい演技です。同じ人間が演じているとは思えないほど、全く違う性格の母と娘。表情や仕草一つ一つが細かく、母の怖さはトラウマになるレベルでした。
観ておいて損は無い作品です。(女性 30代)
母親からの虐待という重いテーマを真正面から描いており、観ていて何度も胸が締め付けられた。幼少期の過酷な体験が大人になっても消えない傷として残り続ける様子がリアルで、感情移入せずにはいられない。ラストで母と向き合う場面は簡単に許しへと向かわない分、むしろ現実的で印象に残った。愛を求め続ける人間の弱さと強さを同時に描いた作品だった。(30代 男性)
観ていてとにかくつらい作品だったが、その分深く心に残る。母親からの暴力と無関心がどれほど子どもに影響を与えるのかを突きつけられる。主人公が大人になっても母を求めてしまう姿には複雑な感情を抱いた。最後に対峙する場面は救いとも絶望とも取れる余韻があり、簡単に答えが出ないところがこの作品の魅力だと感じた。(20代 女性)
過去と現在を行き来する構成が効果的で、少しずつ真実が明らかになっていく展開に引き込まれた。母親の異常性と、それでも愛を求めてしまう娘の心理が丁寧に描かれている。ラストでの再会は決して感動的ではなく、むしろ痛々しい現実が突きつけられる。親子関係の難しさをこれほどまでに描いた作品は珍しい。(40代 男性)
ここまで重いテーマを扱いながらも、最後まで目が離せなかった。母親の冷酷さに怒りを覚えつつも、その背景を考えると単純に悪と断じきれない複雑さがある。主人公が愛を求め続ける姿は切なく、観ていて苦しくなるが、その感情こそがこの作品の核心だと思う。観終わった後、しばらく気持ちが沈んだ。(30代 女性)
虐待という題材をここまでリアルに描いた作品は少ないと感じた。幼少期の記憶がフラッシュバックのように挿入されることで、主人公の苦しみがより鮮明に伝わってくる。ラストの母との対話は決して美しいものではないが、それが逆に真実味を帯びている。人間の感情の複雑さを考えさせられる作品だった。(50代 男性)
最初から最後まで重苦しい空気が続くが、それでも目を背けてはいけないテーマだと感じた。母親の愛を求める気持ちと、その愛が決して得られない現実のギャップが痛々しい。ラストでのやり取りは救いのようにも見えるが、完全には癒されない余韻が残る。観るのに覚悟が必要だが、価値のある作品。(20代 女性)
この作品は、単なる虐待の物語ではなく、人間の根源的な「愛されたい」という欲求を描いている。主人公がどれだけ傷ついても母を求めてしまう姿は理解しがたくもあり、同時に共感もしてしまう。最後の対面シーンは静かだが非常に強烈で、言葉の一つ一つが重く響いた。深く考えさせられる映画だった。(30代 男性)
観ていて何度も目を背けたくなるシーンがあったが、それでも最後まで観る価値があった。母親の存在がこれほどまでに子どもの人生を左右するのかと実感させられる。主人公が自分の過去と向き合う過程は苦しいが、その分リアリティがある。ラストは決して明るくないが、どこか希望も感じられた。(40代 女性)
映画『愛を乞うひと』を見た人におすすめの映画5選
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
子どもたちだけで生きる、静かな絶望の記録。
どんな話?
母親に置き去りにされた兄妹たちが、周囲に知られることなく東京の一室で生活を続けていく物語。大人の無責任さの中で、子どもたちは必死に日常を保とうとするが、次第に生活は崩れていく。淡々と描かれる現実が胸に迫る。
ここがおすすめ!
過剰な演出を排したリアルな描写が、子どもたちの孤独と不安をより鮮明に伝える。観る側に感情を委ねる作りが印象的で、静かながらも強い衝撃を残す。親子関係や社会の無関心について深く考えさせられる作品。
万引き家族
この映画を一言で表すと?
血のつながりを超えた、歪で温かい家族の形。
どんな話?
貧しいながらも寄り添いながら暮らす疑似家族が、ある少女を引き取ったことから物語が動き出す。犯罪と日常が隣り合わせの生活の中で、それぞれが抱える過去や秘密が次第に明らかになっていく。
ここがおすすめ!
家族とは何かを問い直すテーマが深く、登場人物それぞれの背景が丁寧に描かれている。優しさと残酷さが同時に存在する人間関係がリアルで、観る者に強い余韻を残す。心にじんわりと響く作品。
八日目の蝉
この映画を一言で表すと?
奪われた母性が紡ぐ、切ない逃避行。
どんな話?
不倫関係の末に他人の子どもを誘拐した女性が、その子と逃亡生活を送る物語。疑似的な母子関係の中で育まれる愛情と、やがて訪れる別れの現実が交錯し、複雑な感情を呼び起こす。
ここがおすすめ!
母性と罪という相反するテーマを繊細に描き、観る者に強い感情を抱かせる。登場人物の選択に正解がないからこそ、深く考えさせられる。ラストの余韻も印象的で、長く心に残る作品。
ミリオンダラー・ベイビー
この映画を一言で表すと?
愛と選択が交錯する、静かな衝撃。
どんな話?
ボクシングに人生を懸ける女性と、彼女を指導するトレーナーの関係を描いた物語。成功を目指す中で訪れる事故が、二人に重い選択を迫ることになる。絆と苦悩が丁寧に描かれる。
ここがおすすめ!
単なるスポーツ映画にとどまらず、人間の尊厳や愛の形を深く掘り下げている。静かな演出と抑えた感情表現が、逆に強いインパクトを生む。観終わった後に考えさせられるテーマが多い作品。
母なる証明
この映画を一言で表すと?
息子を守るため、母が踏み越える境界線。
どんな話?
知的障害を持つ息子が殺人事件の容疑者となり、母親が無実を証明しようと奔走する物語。調査を進める中で新たな事実が明らかになり、母の愛が試されていく。
ここがおすすめ!
母親の強い愛情と、その裏に潜む狂気が見事に描かれている。サスペンスとしての緊張感と、人間ドラマとしての深みが融合しており、最後まで目が離せない。衝撃的な結末も大きな見どころ。



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