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映画『愛を乞うひと』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『愛を乞うひと』の概要:母からひどい虐待を受け、「生まなければよかった」と言われた照恵。下品な言葉しか知らず、男には虐げられ、娘を執拗に痛めつける豊子。愛に飢えた女たちの半生を、時代背景とともに切実に訴える。原作は下田治美の長編小説。

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映画『愛を乞うひと』の作品情報

愛を乞うひと

製作年:1998年
上映時間:135分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:平山秀幸
キャスト:原田美枝子、野波麻帆、小日向文世、熊谷真実 etc

映画『愛を乞うひと』の登場人物(キャスト)

山岡照恵(5歳:小井沼愛 / 10歳:牛島ゆうき / 15歳:浅川ちひろ / 現在:原田美枝子)
シングルマザー。かつて母から凄惨な虐待を受け、心の傷は今なお癒えていない。15の時、母の元を去る。そして現在、娘と共に、亡き実父の遺骨を探す旅に出る。
山岡深草(野波麻帆)
照恵の娘。母の遺骨探しに精力的に付き合う。さばさばしていて喧嘩っ早いが、照恵の一番の理解者。照恵のために、豊子の居場所をこっそり調べる。
陳豊子(原田美枝子)
照恵の母。幼い頃から、照恵にのみ容赦なく暴力を振るう。恋人が変わるたび、子供を連れて家を転々とする。現在は田舎の美容院で、新たな男と共にひっそりと暮らしている。
陳文雄(中井貴一)
照恵の実父。聖人のように優しい気性で、強姦された豊子を助ける。豊子の暴力から守るため、照恵を連れて家を出るが、病気のために他界してしまう。
和知武則(4歳:うじきつよし、前田弘 / 7歳:塚田光 / 11歳:五十畑迅人)
照恵と血の繋がらない弟。殴られる姉を見て育ち、生活環境のせいか万引きを繰り返す。照恵とは、詐欺罪で逮捕されたことをきっかけに、数十年ぶりに再会を果たす。
和知三郎(國村隼)
照恵の最後の義父。穏やかな性格で、照恵たちにも親切だったが、豊子には頭が上がらない。照恵への虐待にもやがて慣れ、見過ごすようになる。
王東谷(小日向文世)
文雄の台湾の友人。文雄と日本にやってきて、同じ屋根の下で生活していた。彼の見舞いにもよく足を運んだ。現在は台湾で暮らす。
中島武人(モロ師岡)
武則の実父で、豊子の元恋人。照恵と生活を共にした期間は短く、すぐに豊子と別れる。武則についても、豊子が引き取る。

映画『愛を乞うひと』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『愛を乞うひと』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『愛を乞うひと』のあらすじ【起】

ひどい豪雨の中、少女が父に手を引かれ、傘も差さずに歩いている。少女はしきりに振り返る。後を追う母の姿を見るためだ。母は取り乱した様子で、「どこへでも行っちまえ」「死んじまえ」と罵詈雑言を叫び、こちらに向かって小石を投げつける。父は振り向かず、少女に優しく話しかける。少女は、ずっと母を見ている。

それは照恵の古い記憶だ。彼女は台湾人の父・陳文雄を「アッパー」と呼び、慕っていた。その日から程なくして亡くなったアッパーの遺骨を、現在探し回っている。照恵には深草という娘がいた。母子家庭で、親娘の仲は良好だ。深草はもう中学生で、照恵より背が高い。

警察から連絡が入る。照恵の弟・武則が詐欺罪で逮捕されたらしい。十五の時に家を出た照恵は、彼と十数年来の再会を果たす。武則の実父である中島や、義父の和知の遺骨を見つけたことを報告する照恵。

他方、照恵に弟がいることなど聞いていなかった深草は不満げだ。また、近ごろ照恵の帰りが遅いため、隠し事があるのではと疑い始める。

昭和三十年。施設にいた照恵は、唐突な母・豊子の訪問によって、不自由ない暮らしに終止符を打つ。家には、新しい父と弟がいた。中島と、まだ幼い武則である。照恵は引き取られたものの、豊子の育児への関心は皆無だった。小さな子供二人を夜遅くまで締め出し、情事に耽ることもしばしばである。

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映画『愛を乞うひと』のあらすじ【承】

照恵が十歳になると、豊子は二人の子を連れて、新しい恋人・和知の家へ転がり込む。そして豊子は、照恵に対し暴力を振るうようになっていた。始めは照恵をかばっていた和知も、やがて慣れ始め、激しい折檻を止めようともしない。近隣に住む周囲の大人たちも、見て見ぬ振りをするのであった。照恵の心の拠り所は、アッパーの形見である手鏡だけだ。

一度だけ、豊子は照恵を褒めたことがある。照恵が髪を梳いてやると、「上手だね」と言ったのだ。照恵はそれだけで、目を輝かせた。最初で最後の、母からの賞賛である。

最近のこそこそした照恵の態度に、深草は不快感を露わにする。きつい深草の物言いに、かっとなった照恵は、思わず深草の頬を叩く。途端に、何を思ったのか微笑みを浮かべる。母の不可解な行動に、深草は憤慨して家を飛び出す。

翌日、照恵は学校まで深草を迎えにいく。謝ろうとする照恵を、明るく制する深草。仲睦まじく自転車に二人乗りして、母娘は帰路につく。

豊子からの止まない暴力の嵐に、ついに照恵は口を切る。施設から引き取ったのは、私がかわいいからでしょ。だが母の答えはあまりにも残酷なものだった。強姦されて、しょうがなく産んだんだ。おまえなんか産みたくなかった。

映画『愛を乞うひと』のあらすじ【転】

母娘は、アッパーの故郷を巡ることに決め、台湾にやってくる。日本語が堪能なタクシー運転手の手引きで、早速アッパーの親戚の家をつきとめる。アッパーの兄であり、照恵の叔父に出迎えられ、彼の息子を案内人として手がかりを探すことになる。

十五歳の照恵は、手に職をつけた。一人暮らしを夢見ていたのだが、給与は母の懐に消えていくうえ、相変わらず暴力は絶えない。武則は、無力な自分に歯がゆさを感じ、また愛想笑いが板についた姉に苛立ちを覚えていた。万引きを繰り返す武則を、照恵は一切怒らず、いつか二人で暮らそうと優しく語りかける。

ある日、照恵が帰宅すると、我が家の家具を積んだトラックが停まっている。再び引っ越しが始まるようだ。豊子は訳を話さず、代わりに照恵の給与を催促する。ついに、照恵は糸が切れたように母に飛びかかると、金を奪い返した。泣き叫びながら逃げる照恵を、鬼の形相で追いかける豊子。すると、武則が豊子を押さえつけ、照恵に加勢する。照恵は一目散に走った。そして、二度と帰らなかった。

アッパーの遺骨探しは行き詰まっていた。親戚たちには探す意思すら感じられず、深草は違和感を膨らませていた。あるとき、叔父の息子は真実を打ち明ける。叔父は土地の問題で照恵たちから責められぬよう、アッパーの遺骨が台湾にないことを隠していたというのだ。

その夜、母娘が泊まるホテルを息子が訪問する。叔父の手土産を持参し、アッパーの友人・王の住所を調べたようだ。照恵はなおも怒りを見せるが、深草はそれら謝罪の品を受け取る。

映画『愛を乞うひと』の結末・ラスト(ネタバレ)

陳文雄は、王と小さな部屋を間借りして暮らしていた。ある日、道端でレイプされていた豊子を、文雄は家に連れて帰る。警戒して暴言を吐く豊子だが、文雄はたいそう親切に労った。やがて豊子は、文雄を心から頼るようになる。そして、二人は自然と恋仲になってゆく。

王夫妻は、幼かった照恵をはっきりと覚えており、はるばる訪ねてきた母娘を温かく迎えた。王夫人は、豊子が子供を産むことに異常に怯えていたため、幼少期に何かあったのではないかと話す。

日本に戻った照恵は、新たな手がかりを手に入れる。ついにアッパーの遺骨を見つけ、供養した。一方、豊子の現在の居場所を、深草が探し当てる。照恵は、母に会いにいくことを決める。

どしゃ降りの雨の中、泣き叫ぶ母は怯えていた。あなたなしでは生きられない、怖いよ、そう何度も繰り返していた。自分の元から、娘を連れて去ってゆく男に向かって。

豊子の働く美容室へやってきた照恵。深草は待合室で、心配そうに様子を見ている。豊子は照恵の前髪に触れ、額の傷跡に気づいたとき、その客が娘だと悟った。照恵は、昔母に髪を梳くのを褒められ、美容師になりたかったのだと話す。豊子は手を止めず、それを黙って聞くだけだ。結局、豊子は何も言わず、照恵は一礼して店を出た。豊子は店の前に出ると、深草と並んで去ってゆく照恵の後ろ姿を、じっと見つめる。

あんな母でも、愛されたかったのだと話す照恵。バスの中で号泣する母に、深草は肩を貸し、優しく寄り添う。

そして母娘は、アッパーの故郷のサトウキビ畑に来ている。アッパーが何度も聞かせてくれた地に、彼の遺骨を埋めるため、自らの手で墓を作るために。

映画『愛を乞うひと』の感想・評価・レビュー

原田美枝子に、醜い表情がたいそう似合う。これは褒め言葉である。清廉でしとやかな女優ほど、疲れた顔や荒んだ姿が美しいのだ。彼女が幼い娘を、鬼の形相で殴る蹴る。ひどく痛ましい。思わずにはいられない。愛を知らない悲しき人生を。繰り返されるであろう渇きの連鎖を。だが、照恵は断ち切った。「愛を乞うひと」から、「与えるひと」になった。

舞台は日本と台湾、時代は昭和と平成を行き来し、非常に濃い二時間である。平山監督は男性であるが、男は表面的に、女はより生々しく描かれている。(MIHOシネマ編集部)


娘を愛すことが出来なかった母親と、母親からの愛を受けられなかった娘の話。児童虐待をテーマにしているため、もう一度観たいとは思えないほど壮絶なストーリーです。母親と、娘の一人二役を演じた原田美枝子。彼女の演技があったから、この作品ができたのだと思うほど素晴らしい演技です。同じ人間が演じているとは思えないほど、全く違う性格の母と娘。表情や仕草一つ一つが細かく、母の怖さはトラウマになるレベルでした。
観ておいて損は無い作品です。(女性 30代)

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