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映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』の概要:ナチス政権下で名を馳せた大女優が、終戦後に転落してゆく様を描く。収容所の記憶から逃れるためにモルヒネに依存する老夫婦などが登場し、醜い戦争の爪痕がくっきりと伺える。1982年に西ドイツで製作され、金熊賞を受賞。

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映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』の作品情報

ベロニカ・フォスのあこがれ

製作年:1982年
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、戦争
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
キャスト:ローゼル・ツュヒ、ヒルマール・ターテ、コーネリア・フロベス、アーミン・ミューラー=スタール etc

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』の登場人物(キャスト)

ベロニカ・フォス(ローゼル・ツュヒ)
ナチス政権下で人気を博した女優。終戦から十年が過ぎ、すっかり活躍の場が絶たれる。カッツという女医にモルヒネ漬けにされ、最後は命を落とす。
ロベルト(ヒルマール・ターテ)
スポーツ記者。ベロニカに興味を持ち、彼女の背景にあるモルヒネや女医の陰謀に気づく。だがベロニカのことを救えず、妻も失ってしまう。
カッツ(アンネマリー・デューリンガー)
ベロニカの住む神経科の女医。患者をモルヒネ中毒にさせ、金を巻き上げている。ベロニカの自殺を促し、裕福な生活を続ける。
ヘンリエッタ(コーネリア・フロベス)
ロベルトの妻。ベロニカと夫の浮気を止められず、じっと見守る。ロベルトに協力するも、カッツらの手によって殺される。

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のあらすじ【起】

かつて、ナチスの影響を濃く受ける映画会社・ウーファのお抱えの女優として、人気を博していたベロニカ・フォス。しかし戦争が終わると、世間は彼女を求めなくなった。終戦からすでに十年が経過していた。

雨の中、ずぶ濡れで立っていた女を、ロベルトは通りがかりに助ける。人目をひどく気にし、不審な発言を繰り返す彼女は、あの大女優ベロニカであった。日を改めて、ロベルトはベロニカに呼び出される。彼はスポーツ記者だが、饒舌で落ち着かない様子のベロニカに強く興味を持つ。彼女は逸る気持ちを隠さずに、ロベルトに金を請求する。途中の店で見かけたブローチを買いたくて我慢できないというのだ。

ロベルトは記者仲間と、女優ベロニカについて話していた。彼女は世間から見捨てられただけでなく、夫とも別れているようだ。彼女から直接聞いた事実と異なるため、ロベルトは驚きを隠せない。早速、ベロニカの住所を突きとめる。

親切な老人夫婦に教えられ、ロベルトはカッツという女医の経営する神経科にやってくる。カッツは、ベロニカはただの患者であると話すが、ロベルトが彼女に金を貸したと聞き、わずかに動揺する。納得のいかない様子で彼が帰ったあと、カッツが奥の病室のドアを開けると、そこにはベッドに横たわるベロニカがいた。カッツはベロニカを起こすと、親友である自分に迷惑をかけないよう強く言い聞かせる。

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映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のあらすじ【承】

ロベルトの妻・ヘンリエッテは、ベロニカからの手紙と、そこに同封されていた金を見て、夫と彼女の関係が終了したことを知る。仲睦まじい夫婦に戻った二人は、その日ほろ酔いで帰宅する。だがアパートではベロニカが待ち構えていた。

ロベルトは、ベロニカが夫と暮らすという家に連れられる。しかし、家具には布がかけられ、冷蔵庫は空っぽのうえ、電気すら止まっている。二人は情事に及んで眠りにつくが、この家で夫と過ごした過去の夢にうなされるベロニカ。焦ったロベルトが花瓶を割ったことで、ベロニカは気狂いになり、カッツの元へ行きたいと騒ぎ出す。

ベロニカに病院の前で追い払われ、ロベルトは車の中で朝を迎える。その間に帰宅したカッツと他の医者たちは、睡眠薬を大量に摂取したベロニカを発見し、慌てて看病する。カッツは執拗なロベルトに、ベロニカの様子を見せ、神経障害の彼女を匿っているのだと説明する。だが、食卓には素性の知れぬ黒人男性が同席するなど、違和感を拭うことができないロベルト。

ロベルトが車に戻ると、そこにはヘンリエッテの姿があった。夫婦はカッツ神経科の真相を暴くため、調査を始める。

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』のあらすじ【転】

ベロニカの新しい花瓶を取りに行くヘンリエッテ。指定された家にいたのは、ロベルトをカッツの病院に案内した老夫婦だった。夫の方は、収容所で腕に刻まれた番号をヘンリエッテに見せると、薬から逃れられない人生を送っていると告白する。

ちっぽけな役だが、大事な撮影を控えたベロニカは薬を欲しがる。だがカッツは、ロベルトと手を切らなければ与えないと脅しをかける。そこへあの老夫婦が、薬を求めてやってくる。しかし、彼らはもう金を工面できそうになく、カッツは冷たく突き放す。

ベロニカの撮影は失敗に終わった。薬の切れた彼女は集中を保てず、ついに地面に突っ伏してのたうち回ってしまう。その現場で、彼女の元夫と出会ったロベルトは、彼とバーに寄る。元夫は、ベロニカが女医にモルヒネ中毒にされ、金を絞られていると打ち明ける。憤慨したロベルトは泥酔状態で病院に乗り込むが、ベロニカがカッツをかばったため、何もできず仕舞いだ。

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』の結末・ラスト(ネタバレ)

老夫婦は心中を図り、寄り添って息を引き取っていた。ロベルトは、彼らの遺産がカッツに流れることを見抜く。保健所に助けを求めるが、そこの職員もまた、カッツと通じていた。彼の動きはカッツの知るところとなる。

ヘンリエッテは患者としてカッツ神経科に乗り込むと、モルヒネと書かれた処方箋を手に入れる。だが彼らの計画に気づいたカッツによって、車に轢き殺されてしまう。彼女の鞄に入った処方箋も、すり替えられる。

警察とともに病院に乗り込むロベルトだが、真実は隠蔽されてしまった後だ。ベロニカはカッツをかばうも、ロベルトへの思いを消すことができず涙を流す。

カッツたちは、ついにベロニカを「片付ける」ことに決める。彼女の女優としての引退を計画し、ショーを開かせ華やかな終幕を演出する。それから帰宅すると、彼女を部屋に閉じ込め、多量の睡眠薬だけ残した。彼女たちの企みに気づいたベロニカだが、すんなりと睡眠薬を飲む。

新聞の一面に、ベロニカの死が載った。ロベルトは、カッツたちが優雅に食事をするのを見かけるが、自分の本来の仕事を全うすべく、スポーツ記事のインタビューへと向かう。

映画『ベロニカ・フォスのあこがれ』の感想・評価・レビュー

戦争を描かず戦争を語り、しかも滅法ショッキングだ。ベロニカの女優としての気品は、均衡が取れておらず、そこはかとなく奇妙で、うっすらと悍ましい。その美しい顔が悲痛で歪むたびに、私はぞっとした。目を逸らしそうになった。彼女は生きてこそいたが、負の遺産である。

安いメロドラマのようなBGMはうるさかったが、引退ショーのシーンで披露されたベロニカの歌声はあまりにも甘美であった。ジャズに好まれる、あの低く艶やかな歌声に、底知れぬ色気と味わいを感じる。優美な一面を持ち合わせた時代だったのだろう。(MIHOシネマ編集部)

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