日本の洋画界で昭和を代表する元祖イケメン俳優と言えば、アラン・ドロン。本国よりも何故日本で彼の作品は20年以上も支持され続けていたのか。プロフィールと共にオススメ映画を紹介。
アラン・ドロンが出演するおすすめ映画5選
アラン・ドロンは 1935年パリ郊外のソーで生まれるが4歳の頃に両親は離婚。
父母共々、再婚相手との間に新たに子供が出来た為、思春期のドロンは寄宿舎に入れられる事となる。
しかし両親、特に女性に対する不信感は根強く残り、自分の居場所を探すかの様に17歳で外人部隊に志願。
除隊後は、各地を放浪した末にパリに戻り、カンヌ映画祭にふらりと立ち寄った所、D.O.セルズニックのスクリーンテストに合格。
英語所得を条件に7年契約という当時のハリウッドが新人につける条件としては、素晴らしい条件を貰いながら、一蹴したドロン。
それが幸いしてか、ドロンはイヴ・アレグレの『女が事件にからむ時』の端役でデビューした後、ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』で一躍世界中の脚光を浴びた。
俳優活動の初期は、ジャン=ギャバン、リノ・ヴァンチュラなど大物俳優と組んだ『若者のすべて』、『シシリアン』、『暗黒街のふたり』など形だけは脇に周りつつも印象を残す役が多かったが、中期~後期にかけては『サムライ』『ル・ジタン』などフィルムノワールものが多くなっている。
キャリア絶頂の’60年代後期、ドロンは、スタントマン兼ボディーガードと言われていたマルコヴィッチ殺害の容疑をかけられた。
裁判所に出廷しながら、事件そのままを写し取ったといわれる映画『太陽が知っている』の撮影に挑む。
今でもこの事件はドロンが真犯人ではないかと言われているが真相は闇のままだ。
売れない頃はロミー・シュナイダーと同棲し、結婚寸前まで行ったものの、『黒いチューリップ』のスタッフとして加わっていた、ナタリー・パルテルミーと電撃結婚。ロミーとの婚約破棄は、彼の長年の女性不信の証とも言える。
その後、ナタリーが女優として活躍したいという意見の相違から、2人は離婚。
女優ミレーユ・ダルクと長年愛人関係でい続けたが、その間にドイツ人モデル・ニコとの関係もあった。
日本では絶大な人気を誇り、『ダーバン』などのCMにも長年出演したドロンだが、本国での人気はそれほどでもない。
同年代であれば、ジャン=ポール=ベルモンドや、ジャン=クロード=ブリアリの方に軍牌はあがる。
’96年に公開された『ハーフ・ア・チャンス』で一度引退を表明したものの、復帰。
現在は細々と活躍している。
黒いチューリップ
注目ポイント&見所
革命前のフランスで、亡命しようとする貴族たちから金銭を盗み出す義賊『黒いチューリップ』の正体は、ヒマを持て余していたイケメン貴族のジュリアンだった。
ジュリアンを疑う憲兵隊長の手により、顔に傷を付けられ、ジュリアンは『黒いチューリップ』として暗躍出来なくなる。
彼は田舎から自分とは瓜二つながら自分とは正反対のギヨームを呼び寄せ、剣さばきから教える事にする…。
当時28歳のドロンが2人1役に挑んだ、痛快活劇。
『太陽がいっぱい』のアンリ・ドカエを撮影監督に、職人監督のクリスチャン・ジャックを向かえ、軽いタッチで最後まで見せてくれる。
剣の達人でありながらヒマつぶしに義賊をして、同属の金を盗む女たらしの兄と、革命に燃えているのに剣の扱い1つ知らず毎日本を読んでいる弟というキャラクターを、CGが発達してなかった時代に吹き替えもなく、立ち振る舞い、声色で演じ分けているドロンの演技力に注目したい。
徐々に弟が兄のいい部分を取り入れて強くなっていく過程もドロンが演じ分けているのだが、その点もだるくなく、サクっと見せてくれるのがいい。
詳細 黒いチューリップ
スコルピオ
注目ポイント&見所
時は冷戦下、’60年代後半の米国CIA。
殺し屋ローリエ(アラン・ドロン)は、CIAのフィルチョック(J.Dキャノン)から、昇格と引き換えに、ベテラン諜報員クロス(バート・ランカスター)殺害を命じられる。
クロスがKGBのザーコフ(ポール・スコフィールド)から情報を得る見返りに、CIAの情報を売り渡しているという二重スパイ容疑がかかっていたからだ。
クロスとザーコフの隠れ家がウィーンにあると知っていたローリエは、すぐさまクロスを追いかけるが、ローリエはクロスを捕まえる事が出来なかった。
CIA長官マクラウド(ジョン・コリコス)は、ローリエに、30年の実刑を受けるか、クロスを殺すかどちらか選べと迫る…。
チャールズ・ブロンソン、ジャン=マイケル・ヴィンセントの『メカニック』を手がけた、監督マイケル・ウィナーによる現場主義のアクションものは躍動感およびスピード感にあふれているのが見所。
CGを使わず、スタジオを嫌い、オールロケで通す監督なだけに、背景にウソくささがなくて良い。
諜報員たちが接戦と駆け引きを繰り広げる中、意外な人物がCIA、KGBと繋がる真犯人である事は、見所である。
また誰が生き残ったとしても所属する組織にいずれ消されるという末路も見所だ。
詳細 スコルピオ
ボルサリーノ
注目ポイント&見所
30年代のマルセイユで知り合ったマフィアの下っ端のシフレディ(アラン・ドロン)とカペラ(ジャン=ポール=ベルモンド)は、意気投合する。
シフレディは自分を密告しムショにいれた『踊り屋』に舞い戻り、カペラと仕切りだすが、結果は散々。
しかし『踊り屋』の上にいる弁護士・リナルディ(ミシェル・ブーケ)がくれた仕事を任された途端大当たりする。
シフレディはこれを機に、マフィアの世界を極めようとするがカペラは、その日ぐらしがいいというのだが…。
当代のフランス人気俳優ドロンとベルモントが共演した事で話題を呼んだ映画。
ボルサリーノ帽を被ったオシャレなファッションと、主役の2人が社会的地位を得るにつれて洋服のしつらえや、扱いが変わる所も見所。
劇中でドロンとベルモントが演じる下っ端マフィアの生き様は、2人の俳優人生を見るようでもある。
この映画、ドロンとベルモントの名前どちらが先に来るかで揉めた事でも知られていて、その後2人は、『ハーフ・ア・チャンス』まで共演していない所も面白い。
詳細 ボルサリーノ
太陽がいっぱい
注目ポイント&見所
米国の資産家に頼まれ息子のフィリップ(モーリス・ロネ)を連れ戻す様に頼まれた貧しい青年リプリー(アラン・ドロン)。
リプリーは金さえあれば、恋人マルジュ(マリー・ラフォーレ)も瀟洒な別荘も、食事も手に入るフィリップの生活を妬ましく思っていた。
フィリップに事あるごとにバカにされ続けたリプリーは灼熱の夏の海に浮ぶヨットでフィリップを殺害。彼を海に沈め、フィリップになりすまし、生活を続けようとするのだが…。
『お嬢さんおてやわらかに』でデビューしたドロンは、ジェラール・フィリップらと並ぶ甘いマスクの正統派美形として売りだされた。
この作品で一気に知名度が広がった理由は、著名な映画評論家淀川氏の批評による所も大きいが、ドロンが、ただの美形俳優というだけでなく、後の人生を彷彿とさせる様な黒い野心溢れる俳優である事が現れている一作だからである。
リプリーは、素性を晒すまいと、サインを偽造し、手をかえ品をかえ、フィリップになりすまし、フィリップの全てを手に入れようとする。
しかしラスト、フィリップの執念ともいえる『あるもの』がヨットについていた為に、リプリーの完全犯罪は覆される。
ニーノ・ロータの名曲とドロンの名演が光り、ロネとの共演も、この映画を境に何度も実現している事からこの映画はやはり名作である。
詳細 太陽がいっぱい
ハーフ・ア・チャンス
注目ポイント&見所
高級車窃盗の罪で8年の刑を受け、シャバに戻ってきたアリス(ヴァネッサ・パラディ)に残されたのは服役中に死亡した母・ジュリエットの遺書だった。
母親は、若い頃、2人の男性に恋をした。そのどちらかがアリスの父親だというのだ。
1人目はレオ(ジャン=ポール=ベルモンド)。中古高級車販売業を営む彼は元外人部隊出身。ジュリエットの母にフラれた事までしか覚えていなかった。
もう1人はジュリアン(アラン・ドロン)。レストランのオーナーとは表の顔。裏の顔は大手銀行を狙う泥棒だ。ジュリアンはジュリエットを覚えたはいたものの、娘の存在すら知らなかった。
しかし窃盗癖が治らないアリスは、一人で出かけたディスコでヤクザものから逃げる時にGSにとめてあった給油中のプジョーを拝借してジュリアンの元に逃げてくる。
プジョーのトランクの中には、ロシアン・マフィアの金が隠されていた事から事態は思わぬ方向へ行く事となる…。
当時ベルモンドとドロンが共演するだけで往年の映画マニアは驚いた。
てっきり喧嘩別れした、やりづらい俳優と思われていた2人だったが、ドロン、ベルモント共々、ようやく相性のいい作品に出逢えたというだけあり、年齢を感じさせないハツラツぶりを見せている所がポイント。
ある日突然娘候補として現れたヴァネッサ・パラディに振り回され、最後までどちらが父親か判らないというエンディングも面白い。
詳細 ハーフ・ア・チャンス
まとめ
ドロンの映画ランキングというと、往年の名作ばかりを挙げる人は多いだろう。
私自身、ドロンは好きな俳優の一人なので、主観でピックアップすると、往年の名作ばかりをベスト5に入れるだろうと思う。
しかしそれでは、初めてドロンの作品に触れる人にとって、『入門編の作品』や『違った魅力をもつ作品』に触れる機会がなくなってしまうのではないか。
そう思い、今回はこの様な作品を選んでみた。
ドロン入門編として、おすすめ映画ととらえていただけると、ありがたいと思う。
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