ピアース・ブロスナンといえば『五代目007』であり『探偵レミントン・スティール』。銀幕の世界ではプレイボーイに見える彼の人生は実に波乱万丈。そんな彼の人生とおすすめ映画の紹介。
ピアース・ブロスナンが出演するおすすめ映画5選
ブロスナンは、’53年アイルランド生まれ。10代で渡英。16歳からアイルランドのワークショップで演技活動を始めるが、小遣い稼ぎの為にサーカスの火吹き芸をした事から、19まで3年間サーカスで火吹き芸をする事に。
その後も、ヒット作に恵まれず、ブロスナンが俳優として脚光を浴びたのは、’82年、29歳の時。
米NBCの『探偵レミントン・スティール』の主役だった。
折しも『レミントン・スティール』の撮影を終えた後、ブロスナンにボンド役のオファーの話が舞い込む。
ブロスナンの妻で元ボンドガールのカサンドラ・ハリスがプロダクションに推薦した事がきっかけだったが、007の製作権を握るイオン・プロとNBCと揉めた結果『レミントン・スティール』は続行となってしまい、その間にカサンドラが亡くなる。
’94年にブロスナンは、改めて007役を掴み、歴代ボンド役でもコネリー以来と呼ばれる人気となった。
しかし彼自身はそのキャリアとは裏腹に私生活には恵まれていない。
先程も言及した、最初の妻・カサンドラの連れ子シャルロットは恋愛問題の末ガンを患い41歳の若さ亡くなる。
義理の息子クリストファー、彼女との間に生まれた息子のショーンとの間も全く巧く行っていない。
’01年にキーリー・シェイと再婚したものの、結婚式の時にブロスナンが腕にしていたのは、カサンドラから貰った腕時計というのも意味深である。
また映画制作会社『アイリッシュドリーム』を立ち上げた時は、仕事上のパートナー、ボー・セント・クレアに作品選びを手伝って貰う事も多かった。
そんなセント・クレアも’15年末にカサンドラと同じ、ガンで死亡。
ブロスナンが、リーアム・ニーソンと同じ様に、ただのアクション俳優にならないかどうかが不安視されている。
007 ゴールデンアイ
注目ポイント&見所
言わずと知れたブロスナンの代表作。
『007をよみがえらせた一作』としても知られ、冒頭から観るものを惹きつける躍動感溢れるカメラワークが印象的な作品。
映画が上映された時代が時代で、冷戦時代が集結する寸前の英国諜報部という設定なので、007のかつての同僚がテロ組織のボスとなり復讐するという設定になるのは面白い。
テロ組織のボスであり、かつての同僚役にショーン・ビーンというのもまたはまり役である。
007といえば最新鋭のガジェットと洒落たスーツ、ドライマティーニという定石も踏まえつつ、セクシーでダンディという新しい風も吹き込むブロスナンの007像は申し分ない。
かと思えば、要塞の壁をも突き破り、暴走する戦車をテーラーメードのスーツを着ながら涼しい顔で操縦するというブロスナンも見所の1つだ。
勧善懲悪かつ、見所も要所要所にあり、ラスト5分が経過しても飽きさせない。
詳細 007 ゴールデンアイ
トーマス・クラウン・アフェアー
注目ポイント&見所
巨大な投資会社を運営するトーマス・クラウンは、人生のスリルを感じる為に裏の顔として美術品泥棒を続けている。
今日も今日で、美術館にかかる絵を盗み、まんまと成功させたが、そんな彼を真犯人だと見抜いた保険調査員キャサリンに強く惹かれる様になる。
トーマス・クラウンは、あの手この手で彼女を騙し通そうとするのだが、真実に近づこうとするキャサリンのプロ意識の前にトーマスは、反対に彼女に本気になってしまう・・・。
ボンド役を引き受けた時に、イメージが固定してしまう事を怖れて007に出演する合間にも他の映画に出演できるようにブロスナンがイオン・プロダクションに交渉した映画の1つ。
その中でも興行が大きく成功した映画が、この作品で、スティーブ・マックウィーンの『華麗なる賭け』のリメイクでありながら趣きが異なる甘い仕上がりの話となっている所が見所。
映画の冒頭部分が、トーマス・クラウンとお抱えの精神鑑定医のセッションになっているが、鑑定医の役がオリジナルのキャサリン役のフェイ・ダナウェイという所が心憎い。
映画のラストがオリジナルと全く異なる所もこの映画の見所であり、お薦めする客層の違いが判る所でもある。
主にこちらは、甘いラブストーリーがすきな女性用で、オリジナルは硬派な男性用という事だろう。
スパイ・レジェンド
注目ポイント&見所
かつて『ノヴェンバー・マン』というコードネームを持っていた凄腕CIAスパイ・デヴェロー(ブロスナン)は、スイスで隠遁生活を送っていたものの、昔の恋人で元同僚のナターリア(メディハ・ムスリオヴィック)が命の危険に晒されていると聞きモスクワに向かう。
しかし時既に遅し、彼の目の前でナターリアはデヴェローが教育したメイソン(ルーク・ブレイシー)によって殺されてしまう。
ナターリアはロシア大統領選挙戦汚職について調べていたジャーナリストで、その汚職の一端にCIAが関わっていた事にデヴェローはうちのめされそうになるのだが・・・
ブロスナンが映画制作パートナー、セント・クレアと組んだ最後の作品になり、彼女の遺作とも言える。
一見硬派なアクションながら、一度は愛した女性のロマンスとその恋の行く末が物語の根底にきちんと描かれている所がポイント。
詳細 スパイ・レジェンド
ゴーストライター
注目ポイント&見所
元英国首相ラング(ブロスナン)によって、自叙伝執筆をまかされた主人公(ユアン・マクレガー)は、いつもの仕事だと思い引き受ける。
前のゴーストライターはラングの補佐官・マカラだったが、彼は消された上、ラングの証言とマカラの残したメモが一致しないのが主人公は気になった。
ラングには戦犯容疑がかかっている上、その事もあり元外相がハーグ国際刑事裁判所にラングの調査を依頼しているという中、自叙伝の発行すら危ぶまれた。
ラングが出した執筆の条件は、完成1ヶ月以内、ラングが滞在する場所でインタビューしながら書く、原稿の持ち出しは厳禁というもの。
だが書き進めるうちに不可解な事柄が出てくるので、主人公は疑問に思うようになる。
監督自身ラング役にはブロスナンは第一候補だったという。
またこの映画はブレア元首相がモデルだったのではないかというぐらい意味深なニュアンスが込められているシーンもいくつかある所が大いなる見所だ。
ラストは、誰がラングの自叙伝、そして関わる人物の鍵を握るかが判る。
そこが面白い。
詳細 ゴーストライター
サバイバー(2015)
注目ポイント&見所
9.11の同時多発テロで友人を亡くしたエリート外交官ケイトは、英国の大使館で、ビザ発行に携わっていた。
ケイトはある日、医者と名乗るガス専門家・バランの素性を疑い調べるが、上から圧力がかかってしまう。
上司のお陰で調査を続行する事が出来たものの、その直後、大使館の前にあるレストランは爆破テロに遭う。
ケイトは爆破が起きる前にレストランに居た不審な男ナッシュ(ブロスナン)を目撃し、彼にハメられた為に、国家から爆破テロと間違われ国家とテロリスト両方から命を絵狙われる。
ミラ・ジョボビッチ演じるケイトが、ニューイヤーズ・イブも差し迫ったロンドンで、仲間の裏切りに遭う所から、前半は息詰まる展開で見せてくれる。
後半は、ブロスナン演じる屈指のテロリストが、ケイトが逃げる先々を追いかける展開となっているが、今ひとつナッシュの恐ろしさが伝わらないのが残念でならない。
話に、暗黙のうちに絡んでくるという大手銃器メーカーと、これらによって戦争の駒として動かされているテロリストの関係、それを水際で止めようとする外交官の凌ぎを削る戦いという事に焦点を置けば、もっとスリリングな展開が描けたのではと思う。
詳細 サバイバー(2015)
まとめ
ブロスナン=007だけでないという事がお判り頂けただろうか。
近年は映画の出演本数も少なくなったブロスナンだが、ファンが期待する作品は『スパイレジェンド』の様な、過去に心の傷を持つ往年の凄腕スパイや、『トーマス・クラウン・アフェア』の様なダイナミックな富豪だと思う。
これからも映画の一線で、期待される作品作りをこなしていって欲しい。
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