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映画『アメリカン・ヒストリーX』あらすじとネタバレ感想

映画『アメリカン・ヒストリーX』の概要:父を黒人に殺された青年が、ネオナチのリーダーとなり出所してくるまでの3年の間に何があったのか…。兄に憧れ白人至上主義となった弟は兄の奇跡を追う事で、謎を紐解こうとする。

映画『アメリカン・ヒストリーX』 作品情報

アメリカン・ヒストリーX

  • 製作年:1998年
  • 上映時間:120分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
  • 監督:トニー・ケイ
  • キャスト:エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング、ビヴァリー・ダンジェロ、フェアルーザ・バーク etc

映画『アメリカン・ヒストリーX』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『アメリカン・ヒストリーX』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『アメリカン・ヒストリーX』のあらすじを紹介します。

ダニー(エドワード・ファーロング)は、兄のデレク(エドワード・ノートン)が3年の刑期を終え出所するその日、校長(エイブリー・ブルックス)から呼び出される。
兄の影響で白人至上主義のスキンヘッド集団に所属していたダニーは、国語の論文に、ヒトラーの『ある闘争』を選んだ事が原因だった。

校長はダニーに、1日1回の面談を命じ、初日の今日は、兄デレクについて論文を書いてくるように課題を出す。
校長は、兄弟2人とも校内での成績はトップを争う程の優等生だったにも関わらず、何故ヘイトクライムに偏執したのかを知りたかったのだ。

その根源は、彼らの亡き消防士の父親にあった。
LAコンセプト地区の消防副隊長をしていた彼らの父親は、家族だけでなく地域の誇りだった。誰に対しても平等だったが、デレクが思春期になった頃に、政府がマイノリティに対する優遇政策を取り始めた事に対して愚痴をこぼすようになった。
そんな矢先、事件は起きる。

父親が黒人ドラックディーラーのアジトで起きた火災の鎮火中に、黒人に銃殺されたのだ。デレクの心の中に芽生え始めていたマイノリティへの不信感はこの時、憎悪へと変わった。
そんな彼の心の哀しみにつけこんだのが、亡き父親と同年代の、白人至上主義のリーダー・キャメロン(ステイシー・キーチ)だった。

キャメロンはスキンヘッド集団にデレクをリクルートし、デレクは組織の中でめきめきと頭角を現していく。
限界まで鍛えた体、カリスマ性のあるオーラ、彼の前にひれ伏すマイノリティと取り巻きたち。いつの間にかそれは弟ダニーの憧れの存在となっていった。

しかし3年後、出所してきたデレクの髪は伸び、別人の穏やかな顔になっていた。彼の身に一体なにがあったのだろうか…。

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映画『アメリカン・ヒストリーX』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『アメリカン・ヒストリーX』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

刑務所に入って、地獄を見る事になったデレク

孤立すると刑務所では標的にされる事から、デレクは同類であるスキンヘッド集団に紛れ込むが、そこで彼は刑務所に入るスキンヘッド集団にはモラルも人間性もない事を思い知らされる。
キャメロンを筆頭とするスキンヘッドは、純粋なネオナチとして白人至上主義を貫いていたのに対し、刑務所の中のスキンヘッドは、白人至上主義とは表の顔。本性は自分たちの利益に繋がるものであればマイノリティの極悪人とでも繋がる合理主義者だった。

デレクを激昂させたのは、彼らがヒスパニック系のドラックディーラーと組み、刑務所内でビジネスをしていた事。黒人ドラックディーラーに父を殺され白人至上主義になったデレクにとって刑務所にいる彼らはシャバに出れば制裁を加えたい程の人間だった。
何もする事も出来ず洗濯物に八つ当たりをする日々なデレクを、優しく見守っていたのが、黒人リーダーのラモント(ガイ・トリー)だった。

スキンヘッド集団に愛想を尽かし、刑務所内で距離を置き始めたデレクにラモントが警告する。刑務所内では世間的に正しい事でもとおらない、お前が逆に『制裁』を加えられる事もあるのだと。
その言葉通りデレクはスキンヘッド集団に制裁を加えられ、校長が面会に来た時には、既に身も心もボロボロになっていた。

兄の更正、弟の悲劇

デレクは、その日からラモントの庇護の下で、刑務所の中で暴力を受ける事もなく刑期を過ごし、出所する。しかしシャバの人間はそんな事は全く知らない。
出所祝いをしようといったキャメロンに組織を抜けるというと、裏切り者扱いを受けるデレク。弟のダニーも、そんな兄貴なんか大嫌いだと罵声を浴びせてしまう。

しかしダニーは、刑務所で兄の身の上に起こった一部始終を聞き考え直す。兄が何故白人至上主義になったのか。その根源を見出す為の試練が刑務所にあったのではないかと。
翌日デレクはダニーを学校に送っていく。校長はデレクに、お前の責任をもってして白人至上主義者を何とかしてほしいと頼む。それは彼の命と引き換えにしても、という意味だった。

デレクはうなずき学校を後にするが、その直後、ダニーは以前いざこざを起した黒人の少年に銃殺されてしまう。

お騒がせ監督と、ノートンのプロ意識

この役の為に20ポンドも体重を増量した主演のエドワード・ノートン。
肉体を誇示する事で弱さや哀しみを見せないキャラクターを作り上げたかったというノートンの意気込みは、他の肉体派俳優が驚きを隠せなかったそうだ。

それ以上に、この映画製作が難航した理由の1つが監督である。
監督のトニー・ケイは、顔写真すらメディアに出てこない、TVCM界の天才クリエイター。
今回の撮影時のフィルムは200時間に及び、編集でスタジオ側と対立した。

その結果本人が編集したフィルムは劇場で使われる事はなく、ノートンが再編集した2時間のものが劇場バージョンとして使用されている。
普通、フィルムの編集にかかる時間は半年弱なのだが、この映画にかかった編集時間は実に14時間。どれだけ揉めたかが判る。


知識が無いとあまり踏み込んでは行けない話題だと思っている人種差別。私は争いごとに加わらず穏便に事を済ませてしまいたいタイプなので、父親を殺した黒人に対して怒りや復讐の気持ちを持ち、行動を起こしたのはものすごいパワーが必要だっただろうと感じました。彼らを突き動かすものは父親を殺した者への怒りや復讐心だったと思いますが、その考えが丸くなり、穏やかな姿で出てきたデレクは人間としてとても頼もしく見えました。
エドワード・ノートンの身体もすごいですが、ストーリーも満点でもっと早くこの作品に出会いたかったなと感じました。(女性 30代)


全編通してジリジリと焼け付くような焦燥感と、無残なラストシーンはあまりに衝撃的だが、人種差別について昨今色々とある今、もう一度観直すべき作品だと思う。
エドワード・ファーロングの美少年ぶりも、エドワード・ノートンの迫真の演技も非常に見ごたえがあるが、作品自体は暗く重々しい。白人至上主義に傾倒していく若き兄弟の悲劇を通じて、人種差別という問題の愚かさと虚しさ、そして根深さを痛感することができる。(女性 30代)

映画『アメリカン・ヒストリーX』 まとめ

この映画は、題材こそネオナチやヘイトクライムなど過激なものだが、その根底に書かれているのは誤解の解き方と兄弟愛である。

意固地な偏見が、どのようにして育っていくのか、憎しみを売る人々たち、利用する人たちは、どの様にして作られていくのかが描かれているのが興味深い。
人はもとから差別主義者ではなく、環境や周囲の人々によってそうなるといういい例なのである。

勧善懲悪ではなく、グレーゾーンの感情を描いた映画としては秀作だと思う。

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