映画『ジェーン・エア(2011)』の概要:原作は1847年に出版されたシャーロット・ブロンテの同名恋愛小説。不遇な環境で育った家庭教師と過去の呪縛から逃れられない領主が、障害を乗り越えて真実の愛に生きる姿を描く。主人公のジェーン・エアを演じたミワ・ワシコウスカのミステリアスな存在感が印象的。
映画『ジェーン・エア』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:ラブストーリー
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
キャスト:ミア・ワシコウスカ、マイケル・ファスベンダー、ジェイミー・ベル、ジュディ・デンチ etc
映画『ジェーン・エア』の登場人物(キャスト)
- ジェーン・エア(ミワ・ワシコウスカ)
- 幼い頃に両親を亡くして孤児となり、母方の兄夫婦に引き取られた。しかし伯父も亡くなり、伯母に寄宿制の学院へ入れられてしまう。学院で教師をした後、ロチェスター家の家庭教師として住み込みで働き始める。教養があって絵も上手い。意思の強い女性。
- エドワード・フェアファックス・ロチェスター(マイケル・ファスベンダー)
- ロチェスター家の主人。人里離れた場所に古くて大きな屋敷を所有しているが、あまりそこにはいない。大きな秘密を抱えており、気難しい一面がある。自分に媚びないジェーンを気に入る。
- フェアファックス夫人(ジュディ・デンチ)
- ロチェスター家の家政婦頭。常にエドワードの機嫌を損ねないよう気を使っている。保守的だが、悪い人ではない。
- リチャード・メイソン(ハリー・ロイド)
- イギリスの植民地ジャマイカで暮らす資産家。エドワードの秘密と関係している。
映画『ジェーン・エア』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ジェーン・エア』のあらすじ【起】
※ あらすじは時系列に沿って書いています。
1800年代のイギリス。幼い頃に両親と死別し、孤児として母方の兄夫婦に引き取られたジェーン・エアは、プライドの高い子供だった。伯父の死後は、伯母と従兄弟のジョンにいじめられていたが、絶対に媚びるようなことはしない。反抗的なジェーンを嫌う伯母は、彼女を寄宿制のローウッド学院へ入れてしまう。
ここでもジェーンは規則に縛られ、不条理な体罰に耐える日々を送る。ジェーンの唯一の救いは、ヘレンという心優しい親友ができたことだった。しかしヘレンは悪い病気にかかって夭折してしまう。ジェーンはヘレンから“神を信じて人を赦す心”を学ぶ。
成長したジェーンは、しばらく学院で教師をした後、家庭教師の仕事を見つけて学院を出る。ジェーンを雇ったのは、田舎に広大な土地を所有するロチェスター家の主人だった。
ジェーンを迎えてくれたのは、この屋敷の家政婦頭フェアファックス夫人で、主人のエドワードは不在だった。エドワードはフランスで育った姪のアデールを引き取ることになり、フランス語のできるジェーンが家庭教師兼通訳として雇われたのだった。
アデールは素直な少女で、ジェーンによく懐く。アデールは、この屋敷には夜になると女の人の亡霊が出るのだと教えてくれる。
人里離れた屋敷での日々は平和だったが、若いジェーンには少々退屈だった。フェアファックス夫人は、そんなジェーンに町へ郵便物を出しに行くというお使いを頼む。
山を越える途中、ジェーンは落馬した男性に肩を貸す。その男性こそが主人のエドワードだった。ジェーンはエドワードに挨拶し、いくつかの不愉快な質問を受ける。自分に媚びようとしないジェーンに、エドワードは興味を示す。
映画『ジェーン・エア』のあらすじ【承】
エドワードは思ったよりも気さくで知的な人物で、ジェーンも彼に興味を抱く。エドワードはジェーンと親しくなりたいようだったが、ジェーンは半信半疑だった。
ある晩、女性の笑い声を聞いたような気がして、ジェーンは廊下へ出てみる。屋敷内を見回っていたジェーンは、エドワードの寝室が火事になっているのを発見し、2人で火を消す。エドワードはジェーンに感謝し、そばにいて欲しがる。しかしなぜかボヤ騒ぎのことは使用人達にも隠していた。
翌朝、目を覚ましたジェーンは、エドワードがリーズで暮らすイングラム嬢のところへ旅立ったことを知る。フェアファックス夫人は、2人は結婚するのではないかと話す。エドワードを愛し始めていたジェーンはショックを受ける。
数週間後、エドワードはイングラム嬢とその家族を連れて帰ってくる。ジェーンは憂鬱だった。その日、リチャード・メイソンという男性も屋敷を訪ねてくる。
夜中、屋敷内に女性の叫び声が響き、みんなは不安がって部屋から出てくる。エドワードは、“使用人がうなされただけだ”と説明し、ジェーンだけを部屋に呼ぶ。
部屋には、首にひどい怪我を負ったリチャードが倒れていた。エドワードはジェーンに彼の応急処置を頼み、医者を呼びに行く。リチャードは危険な状態だったがなんとか一命を取り留め、極秘で屋敷から運び出される。ジェーンは、何があったのか知りたがるが、エドワードは話してくれない。ただ“私は人生を間違えた”と落ち込んでいた。ジェーンは、エドワードのためなら何でもしてあげたいと思う。
ある日、ジェーンに伯母が会いたがっているという手紙が届く。従兄弟のジョンが財産を浪費して自殺し、伯母は心労から脳卒中で倒れたらしい。エドワードは、必ず帰るよう念を押し、ジェーンを行かせてやる。
伯母は、ジェーンに彼女の叔父からの手紙を隠していたことを謝罪する。資産家の叔父は、3年前に“ジェーンを養女にして全財産を譲りたいので居場所を教えて欲しい”と伯母に手紙を書いていた。しかし伯母は、“ジェーンは学校で病死した”と伝えていた。ジェーンは叔父に“連絡を取って会えますように”と手紙を書く。
映画『ジェーン・エア』のあらすじ【転】
エドワードの屋敷へ戻ったジェーンは、彼が結婚の準備を進めているらしいことを知る。ジェーンは仕事を辞める決意をし、それをエドワードに伝える。エドワードは彼女を追いかけ、彼女にプロポーズする。フェアファックス夫人は、エドワードがイングラム嬢と結婚するものだと思い込んでいたが、彼が愛していたのはジェーンだった。
ジェーンはプロポーズを受け入れ、幸せな時間を過ごす。最初は身分の違いを理由に反対していたフェアファックス夫人も、すぐに賛成してくれる。そしていよいよ、ジェーンは結婚式の日を迎える。
ところが、教会で誓いの言葉を交わす直前、リチャードが飛び込んで来て、この結婚が無効であることを訴える。エドワードは、15年前にリチャードの妹のバーサと結婚しており、死んだとされていたバーサが実は生きていた。
バーサとの結婚は、エドワードの父親が金目当てに決めた政略結婚だった。2人は4年間一緒に暮らしたが、愛のない結婚生活にバーサが発狂し、凶暴な狂人となってしまう。エドワードは、彼女を精神病院に入れるのはかわいそうだと考え、屋敷の隠し部屋に住まわせていた。あのボヤ騒ぎもリチャードを傷つけたのも、全てバーサの仕業だった。
エドワードとジェーンは死ぬほど愛し合っていたが、ジェーンは悩み苦しんだ末、密かに屋敷を出る。ジェーンは身も心もボロボロの状態で荒れ地をさまよい、死にかけているところを宣教師のセント・ジョンに救われる。
セント・ジョンも2人の妹も、ジェーンのことを親身になって看病してくれる。セント・ジョンは詳しい事情を根掘り葉掘り聞くようなことはせず、“かくまって欲しい”というジェーンを家に置いてくれる。健康を取り戻したジェーンは、セント・ジョンの紹介で教職の仕事に就き、わずかな報酬と粗末な家を与えてもらう。
映画『ジェーン・エア』の結末・ラスト(ネタバレ)
1年が過ぎた頃。夜遅くにジェーンの家のドアを誰かがノックする。ジェーンはエドワードではないかと密かに期待していたが、訪ねて来たのはセント・ジョンだった。セント・ジョンは新聞の人探しの欄にジェーンの名前を見つけ、それを知らせに来てくれた。ジェーンを探していたのは叔父の弁護士で、叔父が亡くなったので、ジェーンに遺産の2万ポンドが入ることになる。
ジェーンはそのお金を4等分し、自分とセント・ジョンとその姉妹の4人で公平に分ける。そしてセント・ジョンに妹として受け入れてもらい、4人で暮らし始める。天涯孤独となったジェーンは、家族を求めていた。
ところが、宣教師としてインドへ行くことが決まったセント・ジョンは、“自分の妻として一緒に来て欲しい”とジェーンに迫る。しかしジェーンが愛しているのは今もエドワードだけで、妻になることは無理だと断る。セント・ジョンに責められたジェーンは、エドワードの声を聞いたような気がして、居ても立ってもいられず、エドワードの屋敷へ向かう。
そこでジェーンが見たものは、無残に焼け落ちた屋敷の跡だった。ジェーンはそこで、フェアファックス夫人と再会する。夫人は何があったのかを話してくれる。
ある晩、みんなが寝静まった隙にバーサが火をつけ、屋敷は大火事となる。エドワードは使用人たちを避難させ、塔の上に立つバーサも助けようとする。しかしバーサはそこから飛び降り、命を落とす。バーサの存在はフェアフェックス夫人も全く知らなかったようで、ジェーンに“なぜ相談してくれなかったの”と優しく問いかける。ジェーンは、エドワードの居場所を聞く。
火事で盲目となったエドワードは、庭でぼんやり座り込んでいた。ジェーンは彼に近づき、そっと手を握る。エドワードは手の感触でジェーンだと気付き、驚きのあまり言葉を失う。2人は熱いキスを交わし、しっかりと抱き合う。ジェーンはエドワードの胸に抱かれ、幸せそうに涙を流す。
映画『ジェーン・エア』の感想・評価・レビュー
ミワ・ワシコウスカを始めて見たのがこの作品だった。存在感のある人で、演技が上手い人だなと感じた。主人公のジェーン・エアの人生があまりにも波乱万丈で、何度か見ているのが辛くなった。だが、ラストで彼女が幸せになったことで、温かい気持ちで見終わることができた。どんな状況でも決して折れずに立ち上がる、ジェーンは純粋にカッコ良い女性だなと思った。エドワードは優しい面もあると思うが、結婚していたことを隠していたところを見ても、ちょっと自分勝手な人だなと思った。(女性 30代)
困難な状況を乗り越えて、自分の力で幸せを掴み取る強い女性を描いた今作。1996年の作品も鑑賞したことがありますが、そちらと比べると今作のジェーンは子供っぽい部分を持ち合わせているというか、ただ強く意思の強い女性と言うだけでなく子供のような可愛らしさや柔らかさを持っていたような気がします。
過去のトラウマに縛られること無く、自分が選んだ愛した相手と一緒に生きていけることの幸せを感じる作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
ロチェスターの周囲は謎だらけである。
金持ちの美人だが教養はなく花嫁候補にならないブランチ(イモーチェン・ブーツ)の様な女性が常に屋敷に出入りしている。
その一方で、ロチェスターとジェーンが、いよいよ結婚という段になり、西インド諸島から戻ってきたという弁護士のメイソン(ハリー・ロイド)は、ロチェスターは既婚なのにどういう事だとわめき屋敷から追い出されているのだ。
ロチェスターの女性関係を知っているのは、家政婦のフェアファックスだけなのだろう。
彼女はロチェスターとの結婚の意を固めるジェーンに、最後通告として、やめた方がいいという。
映画の冒頭は、ジェーンが屋敷から逃げ出して、くたびれてどこかの家の前にたどり着いた所を、かつて彼女を苛めていた従兄弟のジョン(ジェレミー・ベル)に救われるシーンから始まっている。
ジェーンは、ロチェスターには精神を病んでいる妻バーサ(ヴァレンチナ・チェルヴィ)が居た事を知ってしまう。
金目当てに若い頃に政略結婚させられたロチェスターはバーサを省みる事がなかった為にバーサは精神を病んでしまったのだ。
夜な夜な屋敷に女が現れるのも、ロチェスターの寝室でありえない不審火があったのも全てはバーサが原因だった。
今は宣教師になったというジョンが、ジェーンを救ったのは昔と代わらぬ合理的な理由があったからだった。
ジェーンの運命はジョンを選んでもロチェスターを選んでも、苦難を伴うだろう。
しかし自分を苦しめ続けたジョンを選ぶよりも、過去の怨念を断ち切ったロチェスターを選んだジェーンの選択は正しかったのでは、と思わせてくれるラストでもある。
原作のロチェスターのイメージは、気難しい当主ではあっても色気漂うイケメンいうわけではない。
しかし原作通りにキャスティングしてしまうと、ただの辛気臭い時代ものに終わってしまっただろう。
マイケル・ファスペンダーをロチェスターに抜擢した事は、観る側からしてみれば、同情をひきやすいロチェスター像であり、ミア・ワシコウスカ演じるジェーンは背中を押してあげたくなる役でもある。
その他にも衣装の見事さには目を見張るものがあるので見逃せない。
宣教師といじめっこの母方の従兄弟ジョンは、別人です。原作では、宣教師は、父方の従兄弟です。映画では、宣教師が従兄弟だったことは、省かれています。なお、いじめっこのジョンは、自殺しています。
あまりにも内容が違うので、気になりました。