映画『ベン・イズ・バック』の概要:薬物依存にて施設に入っていた長男のベンがクリスマスイブの朝に突然、帰って来た。家族は強い不安に駆られたものの、母ホリーは息子の帰宅に喜んだ。しかし、このことがきっかとなり、家族へと危険が迫りベンが姿を消してしまう。ホリーは息子を救うべく奔走する。
映画『ベン・イズ・バック』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:ピーター・ヘッジズ
キャスト:ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、コートニー・B・ヴァンス、キャスリン・ニュートン etc
映画『ベン・イズ・バック』の登場人物(キャスト)
- ホリー(ジュリア・ロバーツ)
- 4人の子供の母親で、上の2人は連れ子。黒人のニールとは再婚になる。子供達へと深い愛情を注ぎ育てていたが、長男のベンが薬物依存となってしまう。息子を更生させるべく、毅然とした態度で接し、諦めずに深い愛情で守ろうとする。
- ベン(ルーカス・ヘッジズ)
- ホリーの息子で長男。19歳。薬物依存に陥り悪事を繰り返していた。治療を受けるため、施設へと入っていたが、ホリーの願いに応じて勝手に帰宅して来る。本来は明るく優しい性格で、母親に似て愛情深い。恋人マギーを薬物依存に貶め、亡くしてしまったことを深く悔いている。
- アイヴィー(キャスリン・ニュートン)
- ホリーの娘でベンの妹。兄の粗暴により酷く疑り深くなってしまう。とても秀才で理論的。考え方は継父のニールと似ているが、母と兄のために継父を引き止めていてくれる。
- ニール(コートニー・B・バンス)
- ホリーの夫。真面目で愛情深くホリーと連れ子の子供達も自分の子供同様に愛情を注いでいる。非常に真面目で理論的。ベンを施設に入れ面倒を見てくれるが、厳しくもある。
映画『ベン・イズ・バック』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ベン・イズ・バック』のあらすじ【起】
クリスマスイブ。薬物依存にて施設へと入っていた19歳の長男ベンが突然、自宅へと帰って来た。驚愕した母ホリーはとても喜び迎え入れたものの、妹のアイヴィーは危険を感じて継父のニールへと連絡を入れてしまう。慌てて帰ったニールは、ベンの帰宅はまだ早いと考え説得。すると、息子は肩を落として施設へと戻ると言う。ベンの帰宅に合わせてこっそり家中の薬を隠したホリー。実は彼女も息子が帰るにはまだ早いと思っていた。アイヴィーとニールは結託してベンを施設へ戻そうとしているが、ホリーは2人を非難し車で待つベンの元へ向かった。
すると、ホリーの気持ちを汲んだニールは、1日だけの滞在を許可する。ただし、薬物テストを行い24時間、ホリーが付き添うことが条件だった。息子はそれでもいいと条件を飲み、数カ月ぶりに自宅で過ごすことが決定した。
その後、ニールはホリーに頼まれた買い出しへ向かい、ホリーが付き添えない時はアイヴィーが見張り役としてベンに付き添う。一家にはアイヴィーの下に幼い弟と妹がいて、無邪気な声が家の中で飛び交っていた。ホリーはベンとアイヴィーにプレゼントの包装を頼む。すると、ベンが下の子たちに自分が選んだプレゼントを贈りたいと言い出す。様々な言い訳をして外出させまいとしたが、どうしても行きたいと言うため、仕方なく街へと連れて行くことにした。
息子と腕を組んでショッピングモールを歩く。買い物の途中、一服休憩をした母子。ホリーはそこで、ベンが薬物依存に陥るきっかけとなった医師夫婦を発見する。ホリーは一言、恨み言を言っておこうと足を止めたがその間、ベンが誰かと連絡を取っている。席へ戻って誰と連絡を取っていたのか聞くと、不安になったから支援者に電話していたと言う。こういう時はミーティングへ行けと言われているらしく、薬物依存者のピアカウンセリングへと向かうことになった。
映画『ベン・イズ・バック』のあらすじ【承】
ベンが施設へ入って薬物を絶ち、77日が経過している。彼は同じ境遇で苦しむ人々を前に、今の自分がいるのは母ホリーのお陰だと話した。ピアカウンセリングの後、クリスマスの後に施設へと入る予定だという女性と話をしたベン。ホリーは少し離れた場所から息子を見守り、他の元薬物依存者と会話していたが、その会話の中で油断は禁物だと注意される。不安に駆られたホリーだったが、息子を信じてミーティングの後にベンの服を選びに向かった。
ところが、試着室へ入る際、息子が意味深な言葉を残す。はっとしたホリーは周囲から奇異な目を向けられながらも、ベンにドアを開けるよう迫る。ようやく開けた息子の手には、ミーティングで会った女性から取り上げたという薬が握られていた。ショックを受けたホリーは買い物をやめて、息子を墓場へと連れて行く。薬で死んだ時のための埋葬場所を選ばせるためだった。
それまでにこやかだった母は一変し言い訳も一切、聞かない。帰宅してからは、ベンを幼い姉弟に任せた。その後、一家は教会へ。クリスマスイブの演劇にアイヴィーと幼い姉弟が出演。ベンは心から反省しホリーに謝罪しようとしていたが、それすらも母は聞く耳を持たなかった。だが、アイヴィーが歌う聖歌を耳にしたベンは自分がこれまでしてきたことを深く反省し、泣き出してしまう。ホリーはそんな息子に寄り添い慰めるのであった。
しかし、教会から帰るとクリスマスツリーが破壊されている。即座に家中を見て回るベンとニール。一家団らんの温かい気持ちは失われ、アイヴィーも子供達も不安そうな顔をする。幸い盗まれた物はなかったが、愛犬の姿が見当たらない。ニールとアイヴィーはベンのせいだと言い始め、責任を感じた息子は犬を探すために家を飛び出してしまう。
子供達を寝かしつけたホリーがリビングへ戻るとベンの姿がない。ニールとアイヴィーに事の経緯を聞いた母は車を出して息子を追う。見つけたベンは薬物依存から抜け出そうと必死に頑張ってきたのに、どんなに努力しても台無しにしてしまうと今にも泣きだしそうな様子だった。ベンには危険な知り合いが多過ぎる。そのせいで、犯人が誰か分からない。
映画『ベン・イズ・バック』のあらすじ【転】
ひとまずは説得して車へ乗せる。心当たりのある人物の家を訪ねた。その中には歴史の教師までおり、ホリーは嫌悪感から嘔吐してしまうが、気持ちを切り替えて先へと進む。
次に向かった先は薬物依存で亡くなったベンの元彼女マギーの父親の家だったが、そこにも愛犬はいない。
ベンはまだホリーも知らない何かを隠している。それが何かを聞き出そうとしたホリー。ベンがレストランへ入ったため、母も一緒に向かった。そこで、息子がマギーに薬を勧め、彼女をも薬物依存に貶めたことを聞く。結果、マギーは命を落としてしまうが、息子はそのことをとても気に病んでいて自分が死ねば良かったのだと呟く。
その時、店に目当ての人物がやって来る。相手の男はベンの姿を一目見ると脱兎の如く逃げ去る。息子は奴を追いかけて愛犬を攫った人物を聞き出した。
どうやら最低最悪の男が犯人らしい。ベンは大金を男へと渡さなければならないと言う。ホリーは出せる限りの現金とネックレスを出したが、犬よりも息子が大事だと話す。だが、息子曰く今、金を渡さなければ被害は犬だけに留まらず、家族にも及ぶらしい。
犯人はベンに対して恨みを抱えているようだ。そこで、ベンはホリーを危険に晒す前に家へと帰そうとする。だが、ホリーは息子を絶対に見捨てないと言い張る。ベンはストアーに入り買い物するふりをして母親から逃げ出すのだった。
易々とベンを逃がしてしまったホリー。携帯に電話しても出る様子はない。車は息子が乗って行ってしまったため、彼女はマギーの母親を訪ねた。ニールに連絡すれば警察を呼ばれてしまうので、頼れる人がいなかったのだ。息子のせいで娘が死んだと言っても過言ではなかったが、深夜にもかかわらずマギーの母親は強心剤と車を貸してくれる。
映画『ベン・イズ・バック』の結末・ラスト(ネタバレ)
母親を振り切って犯人の元へ向かったベンは、落とし前をつけるべく大金とホリーのネックレスを渡したが、簡単に許してくれそうにない。かつて男の配下だったベンは、命令により薬の運び屋と売人をしていた。男は最後の仕事として、再びベンに薬を運ぶよう命令する。腹に大量の薬を巻いたベンは、ホリーへと心配しないようメールを送るのだった。
その頃、ホリーは新しい強心剤を入手しようとしたが、薬局では売っていないと断れてしまう。その後、ベンを探して方々を巡り、レストランで逃げ出した男を見つけ出す。彼からベンが向かった先を聞き出した。犯人と思われる男はこの地域のボスらしく、恐れられる存在らしい。多くを話すと殺されると言うのだった。
目的地へ向かう途中でニールへと連絡を入れる。アイヴィーに電話を替わると娘はGPSでホリーの携帯とベンの携帯を追跡していたらしい。アイヴィーにはニールの対応を頼み、自分の携帯でかけ直すよう話した。程なくして娘から折り返しの着信がある。アイヴィーから案内してもらい、ベンの後を追った。ところが、息子の携帯はゴミ捨て場に捨てられており、完全に手がかりを失ってしまう。ホリーは娘を安心させる嘘をつき電話を切った。
ゴミ捨て場から少し進んだ所に質屋があった。店の前にいた浮浪者にベンの行方を聞くと、川の向こうへ行ったと言われる。
一方、ボスの命令にて薬の取引を無事に終わらせたベンは、分け前だと薬を渡されてしまう。彼は葛藤しつつも犬を返して欲しいと言い募った。
夜が明けた頃、ベンを見つけられなかったホリーは、とうとう観念してニールへと電話をした。途方に暮れた彼女は息子を案じるあまりに泣き出してしまい、疲れ果てて家へと帰ることにする。それでも、彼女は諦めきれずに車を街へと戻した。
同じ頃、犬を無事に取り返したベンは犬に餌をやり、車に張り紙をしてその場を去る。
警察へ向かって息子を逮捕して欲しいと言い募ったホリーの元へ着信が入る。車と犬を発見した男性からだった。ホリーは急いでその場へ向かい、敷地内の納屋で意識を失っているベンを見つける。彼女は強心剤を注入し、必死に息子の意識を取り戻そうと人工呼吸を繰り返す。薬を絶っていた者が強い薬を使用した際に陥る症状で最悪の場合、命を落としてしまう。マギーもそうして亡くなったのだ。ホリーは必死に息子の介抱をし諦めかけた頃、ベンがようやく息を吹き返すのであった。
映画『ベン・イズ・バック』の感想・評価・レビュー
息子を決して諦めない母親役のジュリア・ロバーツが渾身の演技を見せている。今作の演技についてキャリアベストと評されるほどだったが、アカデミー賞にノミネートされることはなかったらしい。
なぜ息子が薬物依存になってしまったのか、さりげなくショッピングモールでのシーンで明らかにしている。母は深い愛情でもって決して息子を諦めずに追い続ける。堕ちる時は一瞬でも、戻るには一生の時間を費やす。それが薬物依存なのだと思う。ラストシーンで復活した息子は、これから新たな戦いへと立ち向かわなければならない。母親の愛情と薬物依存の恐ろしさを描いた素晴らしい作品。(MIHOシネマ編集部)
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