映画『ビッグ』の概要:不思議なゾルター人形の魔法で、大人の姿になってしまった12歳のジョシュ。中身は子供のままで大人の世界へ飛び込んだジョシュは、大人の女性と恋に落ちる。トム・ハンクスが、姿は大人だが中身は子供という複雑な設定の主人公を見事に演じており、物語に強い説得力を与えている。
映画『ビッグ』の作品情報
上映時間:102分
ジャンル:コメディ、ファンタジー
監督:ペニー・マーシャル
キャスト:トム・ハンクス、エリザベス・パーキンス、ロバート・ロジア、ジャレッド・ラシュトン etc
映画『ビッグ』の登場人物(キャスト)
- ジョシュ・バスキン(成人期:トム・ハンクス / 少年期:デヴィッド・モスコー)
- 12歳の平凡な少年だったが、移動遊園地でゾルター人形に“僕を大きくして”と願い事をして、中身は子供のままの成人男性の姿になってしまう。身を隠すためにニューヨークへ行き、おもちゃ会社に就職していきなり出世する。
- ビリー(ジャレッド・ラシュトン)
- ジョシュの親友。ジョシュとは家も隣同士で、彼の秘密を知る唯一の人物。しっかりした少年で、困惑するジョシュに的確なアドバイスをして彼を支える。
- スーザン(エリザベス・パーキンス)
- ジョシュが就職したおもちゃ会社の女重役。出世のために男を利用する野心家。中身が子供だと知らないまま、ジョシュと恋に落ちる。
- ポール(ジョン・ハード)
- ジョシュの同僚。スーザンと恋人同士だったが、ジョシュの出現により振られる。何かとジョシュを敵対視している。
映画『ビッグ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ビッグ』のあらすじ【起】
12歳のジョシュは、野球とコンピューターゲームが大好きなごく普通の少年だ。郊外の一軒家で、両親とまだ赤ちゃんの妹と暮らしている。隣は大親友のビリーの家で、2人はいつも一緒だった。
ある晩、ジョシュの一家は移動遊園地へ遊びに行く。ジェットコースターの列には憧れのシンシアが並んでおり、ジョシュもその列に加わる。しかしシンシアは背の高い年上のボーイフレンドと一緒で、しかもジョシュは身長制限に引っかかってジェットコースターに乗せてもらえない。
傷心のジョシュは、広場の外れで25セントを入れると動き出す機械式のゾルター人形を見つける。何となく25セントを入れると、ゾルター人形の目が赤く光り“願い事を言いなさい”というメッセージが表示される。ジョシュが“僕を大きくして”と呟くと、“願いを叶える”と書かれたカードが出てくる。不思議なことに、機械のコンセントは抜けたままだった。
翌朝、目を覚ましたジョシュは、鏡に見知らぬ男が映っているのを見て驚愕する。ジョシュは一夜にして成人男性の姿になっていた。ジョシュは大急ぎで広場へ行くが、すでに遊園地は移動しており、あのゾルター人形もなくなっていた。
母親は大きくなったジョシュを誘拐犯だと勘違いして騒ぎ出す。ジョシュは仕方なく家を出て、ビリーに相談する。ビリーはジョシュの話を信じてくれ、どうすればいいかを一緒に考えてくれる。
映画『ビッグ』のあらすじ【承】
警察は誘拐事件として捜査を始め、地元は大騒ぎになる。ビリーのアイデアで、ジョシュはもとの姿に戻るまでニューヨークにいることにする。お金や着替えはビリーが用意してくれた。しかし、治安の悪いニューヨークの安ホテルへやってきたジョシュは、心細くて泣き出してしまう。
ビリーとジョシュは、あのゾルター人形の行方を捜すため役所を訪れる。移動遊園地の書類が届くまで6週間もかかることがわかり、ジョシュは仕事を探す。ビリーは毎日バスでニューヨークへ来て、ジョシュのことを支えてくれた。
大手おもちゃメーカーのコンピューター・オペレーターの求人広告を見て、ゲーム好きのジョシュは面接を受けに行く。ジョシュは経験者としてすぐに採用され、コンピューターの打ち込み業務を始める。ジョシュはオフィスの電話を使って母親に電話をかけ、自分の無事を知らせる。母親はジョシュのことを心配して泣いていた。
ホテル暮らしにも慣れ、最初の給料を手にした頃、ジョシュは休日のおもちゃ屋で会社の社長と出くわす。ジョシュはおもちゃに対する子供目線の意見を聞かせ、社長にすっかり気に入られる。そしていきなり商品開発部の副社長に出世する。と言っても、仕事はおもちゃで遊んでその感想を言うだけで良く、ジョシュには最高の環境だった。
同僚で恋人同士のポールとスーザンは、そんなジョシュを敵視していた。しかしスーザンは会議でジョシュの素晴らしいアイデアを聞き、ジョシュという男に興味を抱く。
映画『ビッグ』のあらすじ【転】
高給取りになったジョシュは広いアパートを借り、高価なおもちゃを買いまくる。ジョシュは両親に手紙を書き、自分は元気に暮らしているから心配しないでと報告する。
会社のパーティーへ出席したジョシュは、スーザンに誘われてパーティーを抜け出す。スーザンはジョシュを誘惑するつもりで彼の部屋へ泊まるが、中身が子供のジョシュは幸せそうにさっさと眠ってしまう。しかしスーザンにはそれが新鮮だった。
ジョシュはポールに殴られてケガをする。スーザンはジョシュの手当てをしてやり、ポールと正式に別れる。スーザンは本気でジョシュに恋をし始めていた。
ビリーはレストランでジョシュの誕生日を祝ってくれる。今日は2人で楽しく遊ぼうというビリーの誘いを、ジョシュは他に約束があるからと断る。そしてスーザンとデートする。
移動遊園地へやってきた2人は、子供のようにはしゃぎ回る。ジョシュはスーザンとの楽しい時間に夢中で気づかなかったが、そこにはあのゾルター人形があった。ジョシュはスーザンとチークダンスを踊り、初めてキスをする。そしてスーザンの部屋に帰って、大人の関係になる。
スーザンに恋をしたジョシュは、本物の大人のようになっていく。ビリーとも以前のように遊ばなくなり、ビリーはさみしい思いをしていた。そんな時、ビリーのもとに役所から例の書類が届く。
映画『ビッグ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ビリーはこれで全て元通りになると喜び、すぐにジョシュへ連絡する。しかしジョシュがなかなか捕まらず、会社まで押しかける。しかし、大事な会議を控えていたジョシュは、ビリーの話を聞こうとせず、2人は喧嘩別れをしてしまう。
ジョシュはひとりで地元へ帰り、本来の自分を思い出す。そしてスーザンに、ゾルター人形の魔法でこんな姿になったが、本当の自分はまだ子供なのだと打ち明ける。そんな話を信じられるはずもなく、スーザンはこれを別れ話と受け止めて深く傷つく。
翌朝、ビリーは会議へ向かうジョシュにゾルター人形がニューヨークの公園にあることを告げにくる。スーザンのことで悩んでいたジョシュは、迷いながらも会議へ出席する。しかし途中で会議室を飛び出していき、スーザンはジョシュの後を追う。
公園でゾルター人形を見つけたジョシュは、25セントを入れて願い事をする。そこへスーザンがやってくる。ジョシュは、スーザンのことが大好きだから子供に戻ることを迷っていたのだと語る。ジョシュの話が本当なのだとわかったスーザンは、落ち着いてこの事実を受け止める。そしてジョシュを自宅前まで送ってくれる。
別れ際、“忘れないよ”と誓うジョシュの額に、スーザンは優しくキスをする。車を降りて歩き出したジョシュは、子供の姿に戻っていた。笑顔で手を振る子供のジョシュを見て、スーザンは驚きながらも微笑む。ジョシュが家へ入ると、自宅からは母親の歓喜の声が聞こえてくる。そしてジョシュは日常へと戻っていく。
映画『ビッグ』の感想・評価・レビュー
12歳の少年を演じるトム・ハンクスの姿が本当に幼い少年に見え、表情や仕草などさすがの演技者だなと感じた。この作品で一番素晴らしかったのは、ジョシュとビリーの友情だと思う。ジョシュの姿が変わっても、心が離れそうになっても、常にジョシュを思い助けようとするビリーの子供らしい姿が本当に可愛らしく、素敵に感じた。
大人の世界に子供の世界を入れることで、その無垢で純粋で素直な子供らしさが引き立ち、大人が忘れていた無邪気さを思い出させてくれるような作品である。(女性 30代)
13歳の少年の些細な願いが叶ってしまった話。心は子供で、見た目は大人。純粋な子供の目を通した社会が描かれています。ジュディの幼さに引っ張られ、一緒に遊んだり、喧嘩したりと、大人たちが少し童心に返る様子は見ていてほっこりします。”一度生きたから”と子供に戻ることを断り、別れを告げるシーンはほろ苦い。子供の頃の感覚は貴重なんだと、作品を通して実感しました。
何といっても純粋無垢な少年を演じた、トムハンクスの演技が素晴らしい。(男性 20代)
コミカルな心温まる作品です。トム・ハンクスが大人なのに中身は子供のままの役柄を上手に演じていて、仕草も子供っぽく、会話を誤解するところも可愛いです。
映画中に登場するブラウン管の大きいパソコンや、就職の書類の社会保障番号を適当に書いて通ってしまう所に古さを感じます。
いつ見ても面白いのは、大きな鍵盤で遊ぶシーンと、銀行で給料を何ドル札で下ろすかビリーと相談するシーンです。
微笑ましいストーリーの中に、子供とは?大人になることが正解なのか?など問いかける部分がたくさんある映画です。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
ジョッシュは、35歳の姿になっても中身は12歳(中盤で13歳になるが)の少年である。まあ12歳の少年にしては、子供すぎる面もあるように感じるが、ゲームやスポーツで親友のビリーと遊ぶのが大好きな子供である。
面白いのが、大人の姿になったジョッシュがパフェを食べながらふざけて遊ぶのに対して、ビリーは真剣にジョッシュの仕事を探してやる場面だ。ふざける35歳のジョッシュをいなす12歳のビリー。ビリーはもともとジョッシュよりは大人びた印象はあったが、どっちが大人かわからないくらいだ。
35歳の大人がオレオのクリームだけなめたり、ヤングコーンの外側だけ食べたりする様子は笑える。
ジョッシュは、おもちゃ会社で働き始めて恋人もでき、仕事に慣れ始めると子供っぽいところが少なくなっていくが、ジョッシュを演じたトム・ハンクスはこの時33歳くらい。はじめの辺りはどこに行ってもキョロキョロしたりして落ち着かない様子で、子供らしい演技が本当にうまいなと思った。
ジョッシュは、恋人スーザンを置いていくことにためらいながらも、最後は13歳の姿にもどって二人は別れる。
ラブストーリーとしてみると切ない終わり方ではあるが、これから10数年後にまたスーザンに会うことがあったとしたらどうなるんだろうとか考えると、ただ悲しいだけの終わり方ではないなあと思う。
子供から大人になって、不慣れながらも頑張って出世して、恋人には正体をかくして……と、ハラハラする要素もあるし、笑えるところもある。いろんな要素がつまったハートフルコメディである。
トム・ハンクスは、今でこそハリウッド映画界を代表する俳優の一人で、シリアスな作品にも数多く出演する俳優だが、若いころはコメディアンだった。出演する映画でもこの映画のような役柄を得意としていた。この映画は、ただ笑えるだけのコメディではなく、切なくて心温まる場面もある。その後有名俳優になるトム・ハンクスの出世作でもあるのだ。
この映画は反響を呼び、ミュージカルやドラマなど複数リメイク作が存在する。映画では、おもちゃ屋でジョッシュが社長と一緒に巨大な鍵盤の床の上ではねて演奏するという印象的なワンシーンがあって、記憶に残るシーンの一つである。笑って泣けるストーリーといい、ミュージカルになるというのも納得である。