映画『ブレードランナー』の概要:アメリカのタイレル社が人間そっくりのロボットを開発した。そのロボットはレプリカントと呼ばれ、地球外基地で奴隷労働などをさせていた。ある時、そのレプリカントが反乱を起こしたため、取り締まりを行うブレードランナー特捜班が組織された。
映画『ブレードランナー』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:SF、アクション
監督:リドリー・スコット
キャスト:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス etc
映画『ブレードランナー』の登場人物(キャスト)
- リック・デッカード(ハリソン・フォード)
- 元ブレードランナー。レプリカントを殺すのが嫌になり、ブレードランナーを退職していた。ブライアントの要請を受け、強制的に復職させられる。
- ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)
- 地球へ密航してきた宇宙植民地のレプリカント。密航してきた仲間を束ねている。戦闘用のレプリカント。
- レイチェル(ショーン・ヤング)
- タイレル社の社長秘書。新しいレプリカントの試作品。自分がレプリカントであることを知らない。
- エドワード・ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)
- ロサンゼルス市警の警官。デッカードとは顔見知り。
- ハリー・ブライアント(M・エメット・ウォルシュ)
- ロサンゼルス市警幹部。デッカードとは旧知の仲。
- プリス・ストラットン(ダリル・ハンナ)
- 地球へ密航してきた宇宙植民地のレプリカント。兵隊慰安用のレプリカント。
- J・F・セバスチャン(ウィリアム・サンダーソン)
- タイレル社の遺伝子工学技師。25歳。老化病で老けている。
- リオン・コワルスキー(ブライオン・ジェームズ)
- 地球へ密航してきた宇宙植民地のレプリカント。タイレル社で廃棄物処理技術者として働いていた。
- エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル)
- タイレル社の社長。レプリカントを制作した科学者。
- ゾーラ・サロメ(ジョアンナ・キャシディ)
- 地球へ密航してきた宇宙植民地のレプリカント。人殺しの訓練を受けている。
- ハンニバル・チュウ(ジェームズ・ホン)
- レプリカントの眼球を製作している。
映画『ブレードランナー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ブレードランナー』のあらすじ【起】
21世紀初め。アメリカのタイレル社は、人間そっくりのネクサス型ロボットを開発。それらは“レプリカント”と呼ばれた。特にネクサス6型レプリカントは、体力も敏捷さも人間に勝り、知力もそれを作った技術者に匹敵した。レプリカントは地球外基地での奴隷労働や他の惑星の探検などに使われていたが、ある時反乱を起こして人間の敵に回った。地球に戻ったレプリカントを処分するため、ブレードランナー特捜班が組織された。
2019年11月、ロサンゼルス。デイヴ・ホールデンは廃棄物処理技術者のリオン(レプリカント)のテストを行っていた。くだらない質問をして感情がどう動くか調べていたが、リオンが突然発砲してきた。
求職中のデッカードは、元ブレードランナーで殺し屋だった。食事をしていると、顔見知りで警官のガフが現れ、ロサンゼルス市警幹部のブライアントの元に連れて行かれる。ブライアントはデッカードに、4体のレプリカントが事件を起こしたことを話した。スペース・シャトルを奪い乗組員を皆殺しにしたのだ。ブライアントはデッカードに、このレプリカント達の始末を任せようとしていた。デッカードは後輩のホールデンに頼めば良いと断るが、ホールデンは既に殺されていた。
ブライアントはデッカードと共に、ホールデンが行った質疑応答の録画テープを確認しながら事件の詳細を話した。宇宙植民地のレプリカントが、スペース・シャトルを奪って地球へ密航していた。3日前、タイレル社に押し入ろうとして1体が亡くなった。密航してきたレプリカントと知らぬまま雇われる危険性があるため、ホールデンがタイレル社の新入社員のテストを行って探っていた。密航してきたレプリカントはリオンの他に、仲間を束ねている戦闘用レプリカントのロイと、人殺しの訓練を受けているゾーラ、兵隊慰安用のプリスがいた。
映画『ブレードランナー』のあらすじ【承】
デッカードはタイレル社の社長であるタイレル博士から、レプリカントに試しているVKテストが人間にも有効か調べるため、秘書のレイチェルに試して欲しいと頼まれる。レイチェルに質問をしながら、瞳孔の開閉具合や虹彩の拡張を調べた。テストが終わった後、デッカードはレイチェルがレプリカントだと気づく。だが、レイチェル本人は自分がレプリカントであることを知らなかった。タイレル博士は人間以上のロボットの制作を目指しており、レイチェルはその試作品だった。レプリカントに過去を埋め込み、感情を目覚めさせようとしていた。
ロイとリオンはレプリカントの眼球を制作しているチュウの元を訪ね、構造と寿命、製造年月日について質問した。だが、チュウは眼球を製造しているだけで、それ以上のことは知らなかった。レプリカントの頭脳を設計したタイレル博士なら答えられるかもしれないと、ロイ達に伝えた。だが、タイレル博士の周りは警備が強固なため、簡単には会いに行ける人物ではなかった。ロイは代わりに、J・F・セバスチャンの居場所を尋ねた。
デッカードが家に帰ると、レイチェルが待ち構えていた。レイチェルは自分が何者なのか知りたがっていた。デッカードは仕方なく偽の記憶が植えつけられていることを話すが、レイチェルが泣き出してしまったため、レプリカントじゃないと否定して慰めた。レイチェルは写真を投げ捨てて部屋を出て行った。その写真には、存在しない母と写る幼いレイチェルの姿が写っていた。
プリスは迷子の振りをしてJ・F・セバスチャンの前に現れた。セバスチャンはプリスを警戒する様子もなく、自宅に招き入れた。セバスチャンはタイレル社の遺伝子工学技師で、自宅にもセバスチャンが作った小さなロボット達がいた。
映画『ブレードランナー』のあらすじ【転】
デッカードはリオンの部屋から出てきた写真と鱗を調べた。写真の鏡に、顔に蛇の入れ墨を入れたゾーラの姿が写っていた。リオンの部屋から出てきた鱗は人工蛇の鱗で、彫られていた製造番号からアブドル・ハサンが作った物だと分かった。デッカードはハサンを訪ね、蛇を購入した人物について質問した。ハサンの情報から、チャイナタウンのルイスが購入した物だと判明する。デッカードはバーにいたルイスを訪ね、ゾーラについて尋問した。だが、あっさりと躱されてしまう。
バーでゾーラがスネークショーを行う踊り子として登場した。デッカードは芸人組合員の振りをしてゾーラに声を掛けた。だが、油断してしまい、ゾーラに殴られ首を絞めて殺されそうになる。偶々人が部屋に入ってきたため、ゾーラは殺すのを止めて店の外に逃げて行った。デッカードは慌てて後を追いかけ、ゾーラを射殺した。撃ったのはレプリカントだが、女性の死体を前にしてデッカードは複雑な気持ちを抱く。
ブライアントはデッカードに、レイチェルの始末を頼んだ。自分がレプリカントだと知り、脱走してしまったのだ。デッカードが憂鬱な気持ちで町を歩いていると、リオンに襲われ、寿命について質問される。デッカードはレプリカントが4年しか生きられないことを話した。リオンは自分と同じ目に遭わせるためデッカードを殴って殺そうとするが、後ろからレイチェルに撃たれて死んでしまう。
デッカードはレイチェルを自宅へと連れて帰った。レイチェルは自分が殺されることを恐れて怯えていた。だが、デッカードは助けてもらった恩もあり、レイチェルを殺そうとはしなかった。デッカードは慰めるようにレイチェルの頬にキスをした。すると、経験のないことにレイチェルは戸惑い、部屋を出て行こうとした。デッカードはレイチェルを引き留め、キスを教えて体を求め合った。
映画『ブレードランナー』の結末・ラスト(ネタバレ)
ロイはセバスチャンに会いに行き、プリスの友人だと自己紹介をした。そして、タイレル博士に会わせてくれと頼んだ。脅されたセバスチャンは、ロイを連れてタイレル博士に会いに行った。ロイはタイレル博士に寿命を延ばして欲しいと頼んだ。だが、無理だと断られてしまう。タイレル博士は寿命を引き延ばせるか実験を行ったことがあるのだが、失敗してしまい被験者は亡くなっていた。ロイは怒りに任せてタイレル博士を殺してしまう。
デッカードは無線連絡を受け、タイレル博士とセバスチャンが殺されたことを知る。セバスチャンの家を捜索するが、そこで人形に扮していたプリスに襲われる。プリスが苦しみだした瞬間を狙い、デッカードは銃で撃ち殺した。そこに、ロイが戻ってくる。
ロイはデッカードを襲い、仲間達の死を復讐するため指を折った。激しい死闘を繰り広げる中、ロイは自分の寿命が尽きようとしていることに気づく。雨が降る中、デッカードは壁を伝って屋上へ逃げた。ロイも追ってきたため、デッカードは走って反対側のビルに飛び移った。しかし、出っ張っていた鉄筋に辛うじて捕まれただけで、すぐにでも滑り落ちそうだった。ロイも反対側のビルに飛び移って、デッカードが落ちるのを眺めていた。デッカードの手が鉄筋から離れた瞬間、ロイはデッカードの手を掴んで引っ張り上げた。
ロイは座り込み、今まで見た思い出をデッカードに話した。オリオン座の近くで燃える宇宙船や、オーロラなど。ロイは記憶がなくなることを悲しみながら、静かに息を引き取った。デッカードはただその死を見ていることしかできなかった。
デッカードはレイチェルに愛しているか確認した。愛していると言う答えを聞き、共に逃げることを決める。家の前には、ガフが折った折り鶴が置かれていた。ガフはきっとレイチェルが“4年の命”しかないと思って逃がしたのだろうが、タイレル博士はレイチェルに寿命はないと話していた。レイチェルに残された時間は、誰にも分からないのだ。
映画『ブレードランナー』の感想・評価・レビュー
40年近く前の作品なのだが、今見ても古く感じない映画である。全体的に暗いのだが、おしゃれで観ていて楽しくなる作品なのだ。海外映画にありがちな派手なSFというわけではなく、哲学的な側面がある。お金をかけてやたらと派手に作り上げる海外映画が苦手な人でも、今作は楽しめるだろう。
是非映画館で観てみたかった。暗い映画館で大スクリーンで今作を観ると、感動が何倍にもなっていたのだろう。今作をDVDなどで観る際は、部屋を暗くしてできるだけ大きな画面で観ることをお勧めする。(男性 20代)
言わずと知れたSFの金字塔。
この作品の影響を受けた映画やアニメのなんと多いことか。原作というか原案のある話だが、タイトルを全く違うものにしたのも正解だ。(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」だったらここまで語り継がれただろうか)
とにかく画面に漂う退廃的な世界観が観る者を魅了する。それが架空のものだと知りながら、そこに行ってみたい、そこに存在してみたいと思わせる。
ただただその世界観に酔いしれるも良し、深淵なテーマに思いを馳せるも良し、画面の隅々を観るも良し。何度でも観たい1本。(男性 40代)
多国籍かつ独創的な近未来都市、人造人間の脅威とその悲哀、そしてその人造人間たちに立ち向かう人間と、あらゆる要素がのちに続くSF作品へ多大な影響を与えた、巨匠リドリー・スコットの名作。
本作に登場する、人類の進んだ科学によって、新たな労働力として作られた人造人間「レプリカント」による、人間社会への反乱。人間に限りなく近づいた心身を有した彼らの姿に対比する、創造主たる人間によって与えられた運命とその末路の悲しさは必見。(男性 20代)
SF好きならたまらない設定や世界観、そこから漂う空気感さえすべてが愛おしく魅力的な映画。かといって雰囲気だけではなく、これまたSF好きにはたまらない“人間とロボット”の問題にも深く、鋭く切り込んでおり、ぞくぞくするような描写やハッとするような展開も沢山ある。つまるところ“SF好きにはたまらない映画”なのだ。この作品が多くのSFファンに愛され続けている理由がよくわかる。
レプリカントという単語がこの映画による造語というのも驚いた。ロボットやサイボーグよりも何故か一番儚げな印象がして好きだ。(女性 30代)
映像に古さを感じるものの、ストーリーが非常に斬新な作品です。これほどストーリーで面白いと感じる作品は最近でもほとんどないでしょう。
前知識なし、かつ原作も読まないで観ると、何度かリピートしないと理解しづらい部分があります。この作品ならではの造語も多いです。原作を後から読みましたが世界観を壊さず映画化できていると思います。
必見なのは、ロイの最後のセリフです。『like tears in rain』という表現が非常に美しいです。(女性 30代)
恐らく当時としては斬新な世界観の映画で評価が高かったのだろうが、一度の視聴では正直よく意味が分からなかった。けれども、分からないなりに引き寄せる強烈な魅力がこの作品にはある。
疑問点としては誰がレプリカントで、誰が人間なのか。バージョンによってはデッカードの目が光る演出がされているそうなので、そうなると「デッカードはレプリカント?」という解釈になる。
色々多様に解釈できるのが、この作品が名作と呼ばれる所以なのかもしれない。(男性 30代)
人工知能を持つロボットが意志を持ち、人間に対し犯行を企てる。今となっては何度も擦られている内容なので、そこまで面白くはない。話のテンポの遅さや、催眠的なBGMは眠気さえ誘う。しかし、ここまで有名なのは、製作時期にシンギュラリティという概念が斬新であったためである。よって「ブレードランナー」は、SF映画に新たな発想を持ち込んだ作品だと言え、当時映画館で観ていた人は目を丸くしていたのだろうと想像すると、この作品に対する違った面白さを現代っ子は感じる。(男性 20代)
みんなの感想・レビュー
①「エイリアン」の作風を引き継ぎ、そしてスケールアップしたリドリー・スコットの名作
2019年と言えばすぐそこへ迫っている近未来の時代設定だが、車が空を飛ぶ時代はいつになるのだろうか?と「バックトゥ・ザ・フューチャー・パートⅡ」を観た時にも思ったのであるが、現代の文明はSF映画の中で描かれる時代背景に遠く及んでない。「エイリアン」との大きな違いは、H.R.ギーガーからシド・ミードのデザインに影響されたというところだろう。シド・ミードはアメリカNASAやフォードというクライアントを持つ工業デザインのオーソリティーである。彼のデザインした車のみがこの映画の未来性を大きく反映している。あとの部分は地球の未来都市というイメージを打破し、酸性雨が舞い落ちる退廃的な近未来都市を、リドリー・スコットお気に入りの新宿の雑多な街を象徴に取り入れて、ロサンゼルスのカオス的な未来都市像を表現している。エンキ・ビラルの作品の世界観を参考にしたというのも頷ける部分である。「エイリアン」では人間の住む街は登場しないが、どこかその作品の空気感が継承されており、暗くじめじめした風景に潜む得も言われぬ不快感が漂っており、現在の社会問題をそのままに科学のみが進歩したら、このような都市が存在しても何の不思議もないだろう。そしてヴァンゲリスの音楽も映画の世界観に大きく貢献している。
②『E.T.』の陰に隠れた公開当時
アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存されたという作品にもかかわらず、同じ年に全世界を席巻したスピルバーグの『E.T.』に客を取られ、日本では全く振るわなかったという哀しい運命の上映当時だった。他にも「トッツィー」、「愛と青春の旅だち」、「ロッキー3」など人気作品が目白押しで、本作品は10位以内にもランクされていなかった。憶測ではあるが、本作品の持つ陰湿な近未来設定という内容にも相俟って、「エイリアン」の監督という部分も駆け出しであったがゆえにさほどクローズアップされなかったのかも知れない。主演のハリソン・フォードは「スター・ウォーズ」や「インディアナ・ジョーンズ」のシリーズで人気を博していたにも拘わらずである。制作費2800万ドルで興行収入はアメリカとカナダ併せて3280万ドル。300万ドルほどの利益しか上がっていない。同時期に上映された『E.T.』の制作費は、ブレード・ランナーの半分以下の1050万ドル。売り上げはアメリカだけでブレードランナーの15倍にも及ぶ4億3500万ドル。全世界で8億ドルの興行収入を記録している。日本ではカルト映画扱いされたという哀しい話である。
リドリー・スコットも後に「グラディエーター」でオスカーを受賞し、遅咲きながら成功を収め映画界の名士になったが、彼の持つ独特な世界観はやはり万人には受け入れがたい部分も多いと感じる。しかしその世界観に影響された監督も多く、隠れた名作も多く残しているアメリカでも数少ない映画人のひとりに間違いない。本作のような万人受けしない名作を撮れる監督が一体何人いるというのか考えると、商業主義に陥りやすいハリウッドでは希な存在である。年齢を考えるとあまり新作も期待できないが、いつかまた彼がメガホンを取った衝撃作品を目の当たりにしたいものだ。