この記事では、映画『ブルーベルベット』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ブルーベルベット』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ブルーベルベット』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ミステリー
監督:デヴィッド・リンチ
キャスト:カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー、ローラ・ダーン etc
映画『ブルーベルベット』の登場人物(キャスト)
- ジェフリー・ボーモント(カイル・マクラクラン)
- ランバートン出身の大学生。父親が怪我で入院したため一時的に帰省している。好奇心が強く、この世は謎に満ちていると考えている。
- ドロシー・ヴァレンズ(イザベラ・ロッセリーニ)
- クラブシンガーの女性。フランクに家族を人質に取られ、倒錯的な性行為を強いられている。マゾヒスティックな性的嗜好がある。
- フランク・ブース(デニス・ホッパー)
- ランバートンで暗躍する非道の男。母親像やベルベット生地に異常な性的興奮を覚える。ドロシーの家族を人質にして、彼女を言いなりにしている。
- サンディ・ウィリアムズ(ローラ・ダーン)
- ジェフリーの幼馴染の朗らかな少女。ジェフリーが卒業した高校に通っている。世界は闇に屈することなく、いつか愛と光に満たされる、と信じている。
- ジョン・ウィリアムズ(ジョージ・ディッカーソン)
- サンディの父親の刑事。ジェフリーの父の旧友。
- ゴードン / 黄色い服の男(フレッド・ピックラー)
- フランクの仲間の男。実はフランク側へ潜入している刑事。
- ベン(ディーン・ストックウェル)
- フランクの知人の同性愛者。街の外れの自宅で麻薬取引を行っている。ドロシーの家族を監禁している。
映画『ブルーベルベット』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ブルーベルベット』のあらすじ【起】
大学生のジェフリーは、父親が怪我をしたために一時的に帰省し、実家の金物屋を手伝っている。ある朝、ジェフリーは散歩の途中の野原で、切断された片耳を発見する。
ジェフリーは、父の旧友の刑事ウィリアムズへ通報するために警察署へ赴く。警察は捜査を開始する。ジェフリーは、事件の行方が気になって仕方がない。その日の夜、ジェフリーはウィリアムズの自宅を訪問し事件の内容について質問するが、ウィリアムズは何も教えない。
ジェフリーがウィリアムズ家を出ると、ウィリアムズの娘で幼馴染のサンディがジェフリーを待っていた。父親と警察との電話を聞いていたサンディは、ジェフリーにドロシーという歌手が捜査対象になっていることを教える。ドロシーの住むアパートはジェフリーの家の近くだった。ジェフリーとサンディは、ドロシーのアパートを見に行く。
翌日、ジェフリーはサンディに、ドロシーの自宅へ侵入する計画を話す。サンディは始めは反対するが、好奇心を抑えられず計画を手伝うことにする。
ジェフリーの計画は、まず害虫駆除業者のフリをしたジェフリーがドロシー宅に入り、数分後にサンディが宗教勧誘と偽ってドロシーの家を訪問し、その隙にジェフリーが窓を開けて後から侵入できるようにする、というものだった。
害虫駆除業者のフリをしたジェフリーを、ドロシーは疑うことなく家に入れる。駆除作業を装いつつ、ジェフリーは家の中を物色する。玄関のベルが鳴り、その隙にジェフリーはドロシーの家の鍵を盗む。扉から入ってきたのはサンディではなく、黄色い服を着た男ゴードンだった。男に先を越され、サンディはドロシーの家へ近づけなかった。ドロシーは男を追い返し、ジェフリーはドロシー宅を後にする。

映画『ブルーベルベット』のあらすじ【承】
翌日の夜、ジェフリーとサンディはドロシーの家へ忍び込む前に、ドロシーが歌手を務めるクラブに立ち寄る。ジェフリーは、ステージで歌うドロシーに目を奪われる。
ジェフリーとサンディは車でドロシーの家へ向かう。ジェフリーが侵入している間、サンディは外で見張りをする。
ドロシーの家の中で、ジェフリーは子供用の家具やおもちゃを見つける。しばらくすると、ドロシーが帰ってくる。サンディはクラクションを鳴らして合図をするが、ジェフリーは気付かない。サンディは先にその場を離れる。
ドロシーが帰宅し、ジェフリーは急いでクローゼットの中へ隠れる。突如フランクから電話がかかってくる。フランクはドロシーの夫ドニーと息子ドンを人質に取っており、ドニーの耳を切断して野原に捨てていた。フランクは二人の声をドロシーに聞かせる。
電話の後、ドロシーは隠れているジェフリーに気付く。ドロシーはジェフリーに刃物を突きつけ、クローゼットから出て服を脱ぐように命じる。前触れなく、ドロシーはジェフリーに口淫をする。
玄関のベルが鳴り、ジェフリーは再びクローゼットに隠れる。フランクは部屋へ入ってくるなりドロシーに暴力を振るい、倒錯的な性行為を強要する。フランクが出て行った後、ジェフリーはドロシーを助けたいと申し出る。ドロシーは混乱しており、ジェフリーに自分をぶつように言う。ジェフリーはドロシーをなだめ、その場を後にする。
翌日の夜、ジェフリーはサンディに昨夜の様子をかいつまんで話す。ジェフリーとサンディはお互いに惹かれあっていることを確信している。
その後、ジェフリーはドロシーの家を再び訪れる。ドロシーは快くジェフリーを迎え入れ、二人は肉体関係を持つ。
ジェフリーはドロシーが務めるクラブへ通い始める。ある夜ジェフリーは、手下を連れてクラブで飲んでいるフランクに気付く。ジェフリーはフランク達の車を尾行し、フランクの自宅を突き止める。
翌日、フランクは車に隠しカメラを仕込み、フランクの自宅近くで張り込む。ジェフリーはフランクがゴードンや麻薬売人と会っている現場を撮影する。
映画『ブルーベルベット』のあらすじ【転】
サンディと交際を始める一方で、ジェフリーはドロシーとも関係を深めている。ある夜、ジェフリーはドロシーの家から帰ろうとする際に、フランクと手下達に出くわす。怒ったフランクは、ジェフリーとドロシーを強制的にドライブに連れ出す。
車は麻薬ディーラーのベンの家へ着く。ベンの家にはドニーとドンが監禁されている。ドロシーは家族との束の間の面会を許可される。ベンの家を出た後、フランク達は町外れの製材所でジェフリーをリンチする。フランクは、二度とドロシーに近づくなとジェフリーに警告する。
事の重大さを思い知ったジェフリーは、ウィリアムズに一部始終を話そうと考える。ジェフリーが警察署へ行くと、ウィリアムズの部屋にはゴードンがいる。ゴードンは、ウィリアムズと同室の刑事だった。ゴードンをフランクのスパイだと思ったジェフリーは引き返す。
その夜、ジェフリーは自宅にいるウィリアムズを訪ね、撮影した写真を見せながら事件について話す。ウィリアムズは、ジェフリーにこれ以上この事件に関わらないよう釘を刺す。ジェフリーはサンディと金曜日のデートの約束をして、ウィリアムズ家を後にする。
金曜の夜、ジェフリーがサンディを車で自宅まで迎えに行くと、そこにはウィリアムズと共にゴードンがいる。ジェフリーは動揺を抑え、サンディとダンスパーティへ出かける。
パーティからの帰り、ジェフリーとサンディは、サンディのボーイフレンドに絡まれる。ジェフリーが喧嘩をふっかけられているところへ、茂みから裸で傷だらけのドロシーが現れる。暴行するフランクから逃げ出したドロシーは、裸のまま街をさまよっていた。ジェフリーとサンディはドロシーを保護し、サンディの家へ連れていく。
ジェフリーに縋り付くドロシーを見て、サンディは二人の間柄に気付き泣き崩れる。ドロシーの搬送に付き添った後、ジェフリーはサンディに電話をかけて謝罪する。サンディはジェフリーを許す。電話の後、ジェフリーはドロシーの家へ向かう。サンディは警察へ連絡し、ウィリアムズに助けを求める。
映画『ブルーベルベット』の結末・ラスト(ネタバレ)
ドロシーの家の中で、ジェフリーはゴードンとドニーの無惨な遺体を発見する。ドニーの左耳は切り取られていた。ゴードンの黄色い上着のポケットには、警察の無線が入っている。ゴードンはフランク側に潜入していたが、正体がばれてフランクに殺されたのだった。
同時間、ウィリアムズはフランクの自宅への突入を指揮している。ゴードンが持っていた無線を使って、ジェフリーは現場のウィリアムズに連絡を取る。同じく警察の無線を入手していたフランクは、ジェフリーがドロシーの家にいることを知って戻ってくる。ジェフリーはゴードンの上着から銃を抜き取ってクローゼットに隠れる。
部屋に入ってきたフランクは、クローゼットの中のジェフリーに気付く。すんでのところで、ジェフリーがクローゼットの中からフランクの頭を撃ち抜く。サンディとウィリアムズがドロシーの家に駆けつける。
事件が解決し、ジェフリーとサンディは順調に愛を育む。ドロシーはドンを取り戻し、平穏な暮らしへ戻る。街には再び平和が訪れる。
映画『ブルーベルベット』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
大学生のジェフリーは、庭仕事中に突然異常な発作に襲われた父を病院で見舞った帰りに、蟻が集った切り落とされた人間の片耳を拾う。
物語の導入部分となるこのシーンはとてもインパクトが強く、観終わった後も独特な余韻を残していた。
「片耳を拾う」という現実では起こり得ないことを物語の始まりにしているところが、面白くて非常に興味を惹かれる。
デヴィッド・リンチ独自の官能的で、どこか狂っている不思議な世界観に夢中になった。(女性 20代)
静かな郊外の町に潜む狂気を描いたサスペンス。冒頭、草むらから切断された耳が見つかるという異様な始まりから、デヴィッド・リンチ特有の不気味な世界に引き込まれた。主人公ジェフリーがドロシーの部屋に隠れて見た“真実”の描写は衝撃的で、観客の倫理観を揺さぶる。フランクの異常性も圧倒的で、現実とは思えない恐怖がそこにある。ラストの「ブルーバード」が逆に不気味だった。(30代 男性)
この映画は、表の「善」と裏の「悪」がいかに隣り合わせで存在しているかを突きつけてくる。ジェフリーは探偵ごっこのつもりでいたが、実際には自身の中に潜む欲望や暴力性とも向き合わされていく。イザベラ・ロッセリーニ演じるドロシーの狂気と悲しみには目が離せなかった。フランク役のデニス・ホッパーの怪演は忘れられない。(40代 女性)
初めて観たリンチ作品だったが、完全に心を掴まれた。映像の美しさと、背筋が凍るような静けさが交互に現れる不協和音のような世界。特にドロシーの「助けて」のセリフには、言葉以上の絶望が詰まっていた。町の完璧な芝生の裏に広がる腐敗した現実…そのギャップがすべてを物語っている。(20代 男性)
デヴィッド・リンチが創り出す世界観は本当に中毒性がある。『ブルーベルベット』では、若者の好奇心が想像を超える闇に接触してしまう恐怖が丁寧に描かれていて、単なるサスペンスとは一線を画す。エロティシズムと暴力が不快なほど生々しく、でも目が離せない。ドロシーが全裸で現れるシーンは、観る側の良識を試すような演出。(50代 男性)
一見牧歌的な町に広がる狂気と堕落。ジェフリーの視点を通して、観客もその“裏の世界”に巻き込まれていく。人間の欲望や破壊衝動をストレートに描いた作品で、特にフランクのキャラクターはトラウマ級。観終わった後に感じた“気持ち悪さ”が数日間尾を引いた。でも、それが本作の魅力。(30代 女性)
サスペンスというより、心理ホラーに近い印象。ジェフリーの好奇心が引き起こした連鎖は、まるで夢のような悪夢のような感覚。青いベルベット、酸素マスク、耳の断片など、印象的なモチーフの使い方も巧み。ラストで何事もなかったように鳥が飛ぶ描写が、逆にこの町の狂気の永続性を示している気がしてゾッとした。(20代 女性)
昔観た時より、大人になってからの方が本作の意味がよく分かる気がする。ジェフリーの正義感と、ドロシーの苦悩に対する無理解は、“善”を信じていた若さゆえの傲慢さでもある。リンチはその危うさを描いているのだと思う。『ツイン・ピークス』の原型のような空気感もあって、リンチ作品の入門にも最適。(40代 男性)
イザベラ・ロッセリーニの演技が本当に凄い。彼女の壊れっぷり、そしてその裏にある絶望が、セリフ以上に体で語られている。フランクの暴力に晒されながらも彼に執着する姿は、単なる被害者ではなく、人間の弱さや依存も映している。性的暴力の描写はショックだったが、それすら芸術的に昇華されていた。(50代 女性)
観ている間ずっと、現実か夢か分からなくなるような不安定さが続いていた。ブルーベルベットの布が象徴する“性的支配”と“快楽の暗部”に強く惹きつけられた。全体を通して抽象的な象徴が多くて、解釈の余地があるのも魅力。フランクが叫ぶ「ママ!」の意味が分かると、彼自身のトラウマにも想像が及ぶ。(30代 男性)
映画『ブルーベルベット』を見た人におすすめの映画5選
ツイン・ピークス:ローラ・パーマー 最期の7日間
この映画を一言で表すと?
少女の死の真相を描く、リンチ流“悪夢”の集大成。
どんな話?
TVシリーズ『ツイン・ピークス』で描かれたローラ・パーマーの死。その直前の7日間に何が起こったのかを描くプリクエル映画。家族、恋人、学校、そして闇…すべての崩壊を静かに、そして衝撃的に映し出す。
ここがおすすめ!
『ブルーベルベット』同様、美しい少女の裏に潜む地獄を描いた作品。夢と現実の境界が曖昧になっていく構成、トラウマ描写、象徴的な音楽が心に残る。リンチ作品ならではの“心の迷宮”を深く味わえる一作。
アメリカン・ビューティー
この映画を一言で表すと?
郊外の平穏な家庭に潜む、静かな狂気と欲望の物語。
どんな話?
一見理想的な中年男性が、娘の友人への欲望をきっかけに、自身の人生や家庭の崩壊に向き合っていく。アメリカ郊外に潜む不満や虚無感をユーモアと不穏さを織り交ぜて描いた心理ドラマ。
ここがおすすめ!
『ブルーベルベット』と同じく“表と裏”の構造が際立つ作品。映像美と音楽のセンスも絶妙で、平穏に見える日常が一瞬で崩れていく過程が衝撃的。ラストの余韻も深く、見る者の価値観を揺さぶります。
エレファント・マン
この映画を一言で表すと?
醜い外見の奥に宿る、人間の尊厳と静かな悲しみ。
どんな話?
19世紀ロンドン、重度の奇形を持って生まれた青年ジョン・メリックが、見世物小屋から医学界へと救われていく。人々の好奇心、差別、そして彼自身の尊厳が交錯する、実話を基にした感動の物語。
ここがおすすめ!
デヴィッド・リンチが描くもう一つの“異形”の物語。『ブルーベルベット』のような衝撃的な演出は控えめながら、静かな感動と深い人間描写が沁みる作品。モノクロ映像も美しく、心に残る映画です。
ロスト・ハイウェイ
この映画を一言で表すと?
記憶と存在が歪む、夢と現実のループスリラー。
どんな話?
謎のビデオテープをきっかけに逮捕された男が、刑務所で突如として別人に“入れ替わる”ところから始まる物語。記憶、欲望、嫉妬、時間が混線し、観客を混沌へと引きずり込む。
ここがおすすめ!
『ブルーベルベット』以上に難解かつ濃密なリンチの代表作。構成のトリックと不穏な映像がクセになる中毒性。理屈ではなく感覚で観るサスペンスが好きな人にはたまらない一本です。
ミッドサマー
この映画を一言で表すと?
陽光に包まれた村で起きる、美しくも恐ろしい儀式。
どんな話?
恋人との関係に悩む女性が、スウェーデンの田舎村で開かれる祭りに参加するが、そこには狂気と伝統に基づいた“美しい恐怖”が待っていた。極限の不安と異文化の違和感を描いたフォークホラー。
ここがおすすめ!
『ブルーベルベット』が闇の中に狂気を見せるなら、本作は“まばゆい光”の中でそれを描く。常に不穏な空気が流れる映像美、ショッキングな展開、そして感情の暴走が融合する異色の作品です。
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