映画『6才のボクが、大人になるまで。』の概要:6歳の少年が巣立っていくまでの12年間を、本当に12年の歳月をかけて撮影したヒューマンドラマ。子役だったエラー・コルトレーンとローレライ・リンクレイターの成長に合わせ、思春期の悩みや親子関係の変化をリアルに描き出しており、リチャード・リンクレイター監督の斬新な試みは高く評価された。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』の作品情報
上映時間:165分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:リチャード・リンクレイター
キャスト:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター、イーサン・ホーク etc
映画『6才のボクが、大人になるまで。』の登場人物(キャスト)
- メイソン・エヴァンス・ジュニア(エラー・コルトレーン)
- 子供の頃から感受性が鋭く、内向的な一面がある。両親は離婚しており、6歳の時に母親の実家があるヒューストンへ引っ越す。父親とは定期的に会っている。勉強と運動は苦手で、芸術面の才能がある。高校生になる頃から写真にハマり始める。
- オリヴィア・エヴァンス(パトリシア・アークエット)
- メイソンの母親。23歳でメイソンの父親と結婚するが、数年で離婚。地元のヒューストンに帰って大学へ行き直し、心理学の勉強をして大学講師となる。男運がなく、2度目の結婚相手は酒乱だった。
- サマンサ・エヴァンス(ローレライ・リンクレイター)
- メイソンの姉。学校の成績も優秀で、自分の意見をはっきりと言うしっかり者。
- メイソン・エヴァンス・シニア(イーサン・ホーク)
- メイソンの父親。若い頃から音楽活動をしており、オリヴィアと離婚後はアラスカでバイトをしながら曲作りをしていた。明るい自由人だが、一応保険会社で働いている。アニーという女性と再婚して、クーパーという息子ができる。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『6才のボクが、大人になるまで。』のあらすじ【起】
6歳のメイソンは、ママと姉のサマンサと3人暮らしだ。両親は離婚しており、ママには新しい彼氏がいた。しかし子持ちの恋愛は難しく、彼氏とは別れてしまう。オリヴィアは将来のことを考え、地元のヒューストンへ帰って大学で心理学を学び、教職資格を取ることにする。サマンサとメイソンは嫌だったが、抵抗しても無駄だった。
ヒューストンでの生活が始まった。ママは実家の母親の助けを借りて、大学へ通い始める。そんなある日、アラスカへ行っていたパパが、1年半ぶりにメイソンたちに会いに来る。
メイソンとサマンサは、遊び上手なパパのことが大好きで、楽しい時間を過ごす。パパは家まで送ってくれ、帰宅したママと顔を合わせる。ママは外でパパと喧嘩を始め、パパは怒って帰っていく。メイソンは窓からその様子を見ていた。
ママは大学教授のビルと恋に落ちて再婚する。ビルにはサマンサとメイソンと同じ年頃のミンディとランディという子供がいた。子供同士もすぐに仲良くなり、新しい家族はなかなかうまくやっていた。しかしビルは酒好きで、その量がどんどん増え始める。
ビルは常に酒を飲むようになり、やたらと口うるさくなる。ママもビルには遠慮していた。
メイソンとサマンサにとって、パパと会っている時だけが安らぎの時間となる。パパはバンド仲間のジミーと同居中で、気ままな独身生活を楽しんでいた。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』のあらすじ【承】
ビルの酒乱ぶりは悪化していき、ひどい暴力を振るうようになる。家族はいつもビクビクしながら暮らしていた。ある日、ママが突然いなくなり、子供たちは恐ろしい思いをする。翌日、ママは友人のキャロルに助けてもらい、メイソンとサマンサを救出にくる。着の身着のままで逃げ出した2人は、残されたミンディとランディのことが心配だった。しかしママにはミンディたちを連れ出す権利がない。サマンサはこの状況に苛立っていたが、メイソンは黙って耐える。
数年後、サマンサは15歳になり、メイソンも思春期を迎えようとしていた。パパは彼氏ができたという娘に避妊の大切さを教える。メイソンはパパと2人きりでキャンプへ行き、恋の悩みを打ち明ける。ママはテキサスのオースティンで大学講師の仕事を見つけ、メイソンはまた引っ越すことになる。メイソンはパパと離れるのが嫌だったが、パパはどこへでも行くからと言ってくれる。
ママは心理学の先生となり、立派に教壇へ立っていた。サマンサは少々派手目の女子高生になり、メイソンはどこか影のある少年に成長していた。
メイソンの自宅で開かれた感謝祭のパーティーには、ママの教え子や多くの友人が参加する。その中には元兵士のジムがおり、ママは彼のことを気に入っているようだった。
15歳になったメイソンは、酒を覚えマリファナも吸うようになる。ママとジムは恋人同士になり、一緒に暮らしていた。そして中古の家を購入する。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』のあらすじ【転】
パパもアニーという女性と再婚し、2人の間にはクーパーという赤ちゃんが生まれる。メイソンはパパの一家と一緒に父方の祖父母宅へ行き、15歳の誕生日を祝ってもらう。祖父からは散弾銃、パパからは自分で編集したビートルズのベスト盤とスーツをもらう。パパは以前よりも落ち着いた大人になっていた。メイソンはアニーやクーパーのことは好きだったが、パパが普通の大人になっていくのは少し寂しかった。
高校生になったメイソンは、写真に夢中だった。メイソンは、いつか自分の写真でアート作品を作りたいという夢を持つ。ママとジムの関係は続いていたが、中古の家は修理代がかさみ、ママは金欠で苦しんでいた。
メイソンはパーティーでシーナという女の子と知り合い、恋に落ちる。夜中に帰宅すると、ジムが家の前で酔っ払っており、メイソンに絡んでくる。ジムは今の生活に不満を感じていた。メイソンも体育会系のジムが嫌いだった。
サマンサはテキサス大学に進学し、家を出て寮生活を始める。ジムと別れたママは、相変わらず金欠だった。メイソンは皿洗いのバイトをして、自分の小遣いを稼ぐ。
メイソンはシーナと付き合っており、2人でサマンサのところへ遊びに行く。高校2年生になったメイソンは、サマンサと同じテキサス大学への進学を考えていた。サマンサは大学生活を満喫しているようで、イケメンの彼氏もできていた。その夜、メイソンとシーナはベッドを共にする。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』の結末・ラスト(ネタバレ)
高校卒業を控えたメイソンは、写真コンクールで銀メダルを取る。あれからシーナには地元の大学に通うラクロス選手の彼氏ができ、メイソンは失恋していた。メイソンは、シーナが自分と全く違うタイプの男を選んだことがショックだった。
卒業式の日。ママは自宅でメイソンの卒業パーティーを開き、パパとアニーも招待する。メイソンは照れ臭いので嫌だったが、多くの人がメイソンの巣立ちを祝ってくれた。そしてパパは、2人の子供を立派に育ててくれたママに感謝の言葉を述べる。
その夜、メイソンはパパと2人で、パパの友人のジミーのライブへ行く。メイソンはシーナのことをパパに聞いてもらう。
ママは家を売って、小さなアパートへ移ることにする。アパートに余計なものは置きたくないので、サマンサとメイソンに自分の荷物を整理させる。
メイソンが旅立つ日。ママは荷造りをするメイソンに怒り出す。そして“人生最悪の日だ”と言って泣き出す。気丈なママも、メイソンが巣立っていくことはやはり寂しかった。メイソンは車にわずかな荷物を積んで、ママのもとを去っていく。
大学の寮へ入ったメイソンは、ルームメイトのダルトンに誘われ、ダルトンの彼女とその友達のニコールとハイキングへ行く。そこは昔パパとキャンプへ来た場所だった。メイソンとニコールは2人で静かに語り合う。メイソンは何となく幸せだった。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』の感想・評価・レビュー
12年間、主要キャストの4人を追うように撮り続けた、という異例の撮影の仕方だったからこそ、本作のストーリーが大変リアルなものに感じられます。
両親への不満や、将来への不安、自分とは何なのかというモラトリアム、友人や恋人との人間関係など、誰もが一度は思い悩むであろう壁もリアリティに溢れていて、本当に1人の少年の成長を見守っているような気持ちにさせられました。
ハラハラ・ドキドキする展開はほとんどありませんが、「自分もこの年頃に、同じようなことで悩んだな」と思わず自分の人生を振り返ってしまう作品です。(女性 20代)
12年もの間、同じキャストで1年に1度撮影、そんな映画初めて観る。
観る前からワクワクし、観終わってからも満たされた。
見応えのある映画でした。
イーサン・ホークが演じた父親、若い頃は破天荒で二人乗りのスポーツカーでキャンプにも行く、そんな彼が保守的な環境で育ったと思われる女性と家庭を育むうち、車はミニバンになり、保守的になっていく様に苦笑い。
同年代のイーサン・ホーク、そんな人周りにたくさんいる。
リアル過ぎる。(女性 40代)
ドキュメンタリーとフィクションの境界線を観ている様な作品です。
手法が斬新なことで話題になりました。制作期間の長さを考えると、途中で頓挫しなかったこと自体が凄いです。
内容はタイトル通りのヒューマンドラマです。非現実的な事件が起こることもなく、本当に成長過程を観ているかのような感覚でした。リアリティと手法が今作最大の特徴です。(女性 20代)
タイトルの文字通り、主人公のメイソンの幼少期から大人になるまでを描いている。数年にわたり撮影をして実現した本作。メイソンや他の登場人物の変化、声変わり、少年から青年に変わる過程をリアルに観る事ができる。他の映画ではない要素で話題となった。若くして子供を持った両親は離婚し、複雑な家庭環境にある家族の人生に密着している。シングルマザーの母が仕事と家庭の両立する中で直面する葛藤に共感できた。何と言っても、小さかったメイソンがどんどん成長して、思春期に入り、大人らしくなっていく姿を観察しているような気分で興味深い映画だ。(女性 30代)
母親の事象で家庭環境がコロコロ変わる中で、色々な人と交流し成長するメイソンの姿が描かれています。物語は普通で、ラストの終わり方も突然で消化不良でした。観終えて調べてこの作品の妙なリアルさに納得しました。12年間かけて同じキャストで撮影する試みは素晴らしいです。本当にメイソンが成長する過程を見続けたのだと思い、感動が遅れてやってきました。メイソンの人生はこの先長いでしょう。また12年後続編が出ても面白いのかなと思いました。(男性 20代)
みんなの感想・レビュー
考えようとしてもなかなか思いつかないほど、メイソンの人生は波乱に富んだものでしたね。普通、あんな体験をしてしまったら、とてもまともな大人には成長できないようか気がするのですが、環境の変化に耐え、芸術家になるため旅立っていくメイソンの姿を観て感動しない人はいないでしょう。
実際に12年もかけて撮影を行ったスタッフには驚くばかりで、強烈なリアリティに満ちています。だって、エラー・コルトレーン実際に成長していくわけですからね。嘘は一切なし!イーサン・ホークとパトリシア・アークレットの老け方も変わりゆく街の姿も、全てがリアルです。長年暖め続けた企画を映画化する、というのはあまり珍しいことではないのですが、実際に10年かけて撮影を行うというのは、はるか遠くに見える富士山を目指して歩く旅人のような気持ちだったことでしょう。凄いです。スタッフの狂気にも似た意欲に作品としての面白さが負けていないというのもまた凄い。過去に戻って撮り直しができない分、通常の映画撮影以上に失敗は許されないわけですから、現場の雰囲気を想像すると恐ろしいです。和気藹々とした雰囲気の中に殺伐さが同居しているなんて……。お話はなにかを象徴的に描いているというわけではなく、ある少年の波瀾万丈な思春期をリアルに描き出しているといった感じ。近年まれに見る傑作であることに間違いありませんが、中盤の展開が刺激的すぎてついて行けない人も少なからずいるんだろうなぁと思います。上映時間も長いので、受け付けない人は少なからずいるんでしょうね。
映画のリアリティは映画ごとに異なるわけですが、本作はまるで現実世界とリアリティラインを共有しているかのようなイメージを受けました。12年もかけて撮影されているわけですから、少年の人生の一部分どころではなく、重要な部分をばっちり目撃してしまった気まずさ、気恥ずかしさも感じられる当たりが他の映画との差を生み出しています。貴重な映画ですよ。絶対に観るべきだと思います。