映画『BOY A』の概要:僕は、ここに居てもいいの・・・?心の苦しさは誰にも理解されず奥底に閉じ込めたままの少年が選んだ更正の道は険しく理解されないものだった・・・。アンドリュー・ガーフィールド初期の珠玉の一作。
映画『BOY A』 作品情報
- 製作年:2007年
- 上映時間:107分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
- 監督:ジョン・クローリー
- キャスト:アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・ミュラン、ケイティ・ライオンズ、ショーン・エヴァンス etc
映画『BOY A』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『BOY A』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『BOY A』のあらすじを紹介します。
ソーシャル・ワーカーのテリー(ピーター・ミュラン)は、甥として、少年院に14年服役していた少年を引取り、今日からお前の名前はジャックと言うんだよ、という。
ジャック(アンドリュー・ガーフイールド)と呼ばれた少年は、テリーに呼ばれた瞬間、笑顔で一杯になった。
人生の再出発をきったジャックは運送会社の仕事を任され、会社では同僚のクリス(ショーン・エヴァンス)と親しくなり、同じ職場にいるミシェル(ケイティ・リオンズ)に恋をした。
しかし、いざという時に、自分の『素性』を明かせないジャック。
世間では同じ頃『Boy Aが出所してきた』という噂が囁かれていた。
Boy Aというのは10年前に少女殺人事件で少年刑務所に入った少年の事。だがその真相を知るものは居ない。
そんなある日、ジャックは事故に遭った車の中から少女を救い出し、その英雄ぶりが新聞の一記事として掲載される。
テリーは甥として引取ったジャックを息子の様に可愛がっていた。
しかし、そんな日々は長く続かなかった・・・。
映画『BOY A』 結末・ラスト(ネタバレ)
ジャックの正体は、10年前に少女惨殺事件を引き起こしたエリック。
上級生に苛められる内気な情念で、癌を患った母親からは見捨てられ、父親とは疎遠だった。
そんな彼の友人は兄から性的虐待を受けていたフィリップだけ。ある日少女が2人に言った何気ない一言が2人の逆鱗に触れ、少女は殺された。
表向き自殺と言われているフィリップが、刑務所でリンチに遭い首をつって自殺する様を、凍りつく様な目で見ているエリックの姿が映し出される。
そして刑期が過ぎ、世間が事件を忘れた頃にエリックを迎えに来たのがテリーだった。
しかしテリーには、ニートの息子がおり、彼がジャックの素性を新聞社にリークしてしまう。
電話一本で解雇する職場、背を向けるジャックの周囲の人々。
ラストはジャックが自殺を決意するところで幕となる。
映画『BOY A』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『BOY A』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
過去のエリック、現在のジャック、比較対比させて成立たせるドラマ
映画は、殺人事件を起こした事で一生の心の傷を負う事になったジャックの現在とエリックとしての過去を交錯させる形で進んでいく。
ジャックとしての現在の彼は、表面上はナイーブで爽やかで人あたりもいい。
職場にすぐなじむが、写真を撮るときは帽子を目深に被るなど身構えてしまう癖がある。
過去のエリックは、愛されたくても愛されない傷だらけの人生である。
母親は病に蝕まれ、父親はまるで大きな子供の様。
学校にいけば苛められ、エリックにはどこにも居場所がなかった。
罪を償った者の安住の地を奪うものの心理
ジャックは、テリーにより、ようやく安住の地を与えられるが、そんな彼の安住の地を壊すのが彼の過去の経歴を掘り返すものたちである。
皮肉にもそれはテリーの愛されていない息子である。
ジャックこと、エリックは父親から無視されて育ってきた、その輪廻が繰返されたとしか思えない状況でテリーの息子は、
自分が悪いにも関わらず前科者に父親をとられた感覚となり、罪を償ったエリックを警察にリークして、彼の未来を奪う。
周囲の人間も人間である。
過去は過去、未来は未来と思えない所が、彼らの弱さである。
人間の寛容性のなさを感じる映画
世の中、自分に直接関係ない事でも、気に食わない人や水のあわない人が傍にいようものなら、その人と腹を割って話そうともせず、
粗探しをし、噂話を流し、排除しようとする輩がいる。
何故その様な事をするのか。その人の人間性が低く、寛容さが狭いからである、最近では寛容性の狭さに関して開き直る人も居る。
この映画では、そんな人間にあたるテリーの息子を醜く描く事で、その様な人間は人相も悪く社会的地位もなくなるように描いているがそうでない場合もあるだろう。
ガーフィールド演じるジャックは、寛容性のない人間により排除された犠牲者なのだと思う。
映画『BOY A』 まとめ
この映画出演当時、アンドリュー・ガーフィールドは、目だった出演作がなく日本での知名度もなかった。
にも関わらず、この映画がガーデンシネマ系列で公開された当時は、かなり盛況だったのを覚えている。
これは一重にこの映画の持つテーマの深さ、普遍性、そしてガーフィールドの卓越した演技力なのかもしれない。
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