映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』の概要:ジョン・シングルトン監督のデビュー作。23歳の若さでアカデミー賞監督賞にノミネートされた代表作と言っても過言ではない一作。ロサンゼルスの犯罪多発地域で生まれ育った少年たちの成長と葛藤を描く。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ジョン・シングルトン
キャスト:キューバ・グッディング・Jr、モリス・チェスナット、アイス・キューブ、ラリー・フィッシュバーン etc
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』の登場人物(キャスト)
- トレ・スタイルズ(キューバ・グッディング・ジュニア)
- 修士生である賢い母親と、元軍人の尊敬できる父親の元に生まれたが両親が別居状態で寂しい少年時代を送っていた。父と暮らすようになり、青年になった頃ある事件に巻き込まれてしまう。
- リッキー・ベイカー(モリス・チェストナット)
- トレの幼馴染。少年時代からアメリカンフットボールが好きでいつもボールを持ち歩いていた。自分ばかり贔屓する母親に葛藤しながらも、順風満帆な日々を送る。
- ダウボーイ(アイス・キューブ)
- リッキーの兄であり、トレの幼馴染。腹違いの兄弟であるリッキーとは仲がいいが、義母からの扱いの差がひどく悲惨な少年時代を過ごしていた。刑務所に何度か入っている。
- フューリアス・スタイルズ(ラリー・フィッシュバーン)
- トレの父親。妻・リーヴァとは若いうちにトレを授かり結婚したが、馬が合わず長年別居している。自分と同じ失敗をしないようにトレにはよく言い聞かせている。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』のあらすじ【起】
1984年アメリカ・ロサンゼルスのサウス・セントラル地区。登校する子供たちの話題は昨夜の銃声についてだった。目の前にはまさに昨夜の銃声により命を落としたと思われる死体が転がっていた。戸惑う子供たちだが、いつも通りの学校生活が待っていた。
白人の歴史教師による授業を受けていたトレだが、尊敬する父親から教わったこととは違いあまり興味が持てずにいた。その様子を見兼ねた教師が声をかけるとトレは意気揚々と人間の祖先について話を始める。しかし、トレの話をバカにする生徒がいた。口論のすえトレは我慢できず手を上げてしまう。修士生として勉強の身であるトレの母親は、教師から連絡を受けトレを別居中の父親・フューリアスに預けることにするのだった。
フューリアスの家の近所には仲良しのリッキーとダウボーイが住んでいる。週末だけフューリアスの家で過ごしていたトレだが、あまり清潔感のない環境にうんざりしていた。一緒に住むために家事を任せられたトレ。その夜、二人が寝静まった頃に小さな物音がした。泥棒の存在に気付いたフューリアスは銃を手に取りすぐに発砲する。殺さないために足を狙ったフューリアスだが、靴に当たったようで犯人を取り逃がしてしまった。通報からしばらくして警察が来たが、「厄介なニガーが減ったのに」と暴言を吐く態度に、二人は嫌悪感を覚えるのだった。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』のあらすじ【承】
リッキー、ダウボーイと遊ぶため二人の自宅まで迎えに行ったトレは、同じ兄弟ながら差別を受けるダウボーイの境遇を知ってしまう。ダウボーイの忠告を聞かず、ラグビーボールを持って出かけたリッキー。もう一人合流して空き地にある死体を見に行くのだった。しかし、その場所には体格のいい青年たちが溜まっている。父親が買ってくれたボールを奪われ、果敢に立ち向かうダウボーイ。リーダー格の青年はダウボーイの勇気を買って、仲間からボールを奪い返してくれるのだった。
買い物に行くというダウボーイと別れ、フューリアスと釣りに行ったトレ。軍人だったフューリアスの話を聞くトレは、父子の時間を楽しむが帰り道にダウボーイが警察に連行される様子を目撃する。リッキーに事情を聞くと「盗みだ」とうつむいて答えるのだった。
7年後。ダウボーイの出所祝いのパーティーが開催された。服屋の店員として働いているトレはダウボーイに改心するように諭すが、疎まれてしまう。その姿を見ていた女性たちはトレに目を奪われる。幼馴染であり恋人のブランディはその様子に機嫌を損ねるのだった。
帰宅したトレはフューリアスに髪を切ってもらう。同じの年齢の頃にはトレを授かっていたことから、フューリアスは女事情を探ってきた。見栄を張るためトレがつい嘘をついてしまうと、フューリアスは病気を防ぐためにもコンドームをするようにきつく叱った。腑に落ちないトレはリッキーとドライブに出かけ、ブランディとまだ関係を持てていない不満をぶつけるのだった。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』のあらすじ【転】
ブランディと一線を越えたいトレだが、カトリック教徒であるブランディは結婚するまでは絶対にダメだと拒絶し続ける。一方で母親からの扱いの差に不満を抱き続けているダウボーイ。アメフトを続けていたリッキーを訪ね、ある日カルフォルニア大学のスカウトが自宅へやって来た。自宅の外へ追い出されてしまったダウボーイたちは、女の口説き方について話し合っているが、リッキーは学力的な問題と息子の存在が露わになり厳しい現実とぶつかるのだった。
フューリアスは社会勉強のため、自分の仕事にトレとリッキーを同行させた。ある空き地に向かったフューリアスは、土地の価格が下がっていると嘆く老人や酒やドラッグに溺れる若者たちと対峙しながら「黒人と白人」の根本的な差について説く。銃社会になれてしまった若者たちに「未来」を想像させ前を向かせたのである。
その夜、ダウボーイたちが遊びに行ったパーティーに途中から参加したトレとリッキー。しかし、喧嘩はどこでも起こり、ある青年がマシンガンを発砲したのである。トレとリッキーは関係することなく帰路に就いたが、通りかかったパトカーに止められ発砲事件に関与していると勝手に決めつけられたトレは警察から喉元に銃を突きつけられるのだった。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』の結末・ラスト(ネタバレ)
疑いは晴れたが、納得いかないトレはブランディの家に寄った。感情がおさまらず思わず泣いてしまったトレ。慰めてくれたブランディと一夜を明かし、互いの気持ちを確かめ合うのだった。一方でフューリアスも妻と向かい合っていた。トレとブランディの関係について賛成するフューリアスと認めることができない妻。二人の話し合いは平行線のまま、何も解決することはなかった。
学力試験の結果を確認したリッキーはCMの影響を受け軍隊に入りたいと言うようになった。しかしフューリアスの話を聞いていたトレは猛反対する。話しながら歩いていた二人は町のギャングと遭遇し、二手に分かれて逃げるがリッキーが撃たれてしまう。銃声を聞きつけダウボーイたちも駆けつけたがすでにリッキーは亡くなっていた。
遺体を自宅に連れ戻したダウボーイたち。トレはフューリアスの言葉を聞かず、復讐するためにダウボーイたちの車に乗り込んだ。のんきに食事するギャングたちに制裁を下すことができたトレたちだが気分が晴れることはない。翌朝、玄関先で考え事をするトレに話しかけるダウボーイ。唯一自分を認めてくれる家族を失った哀しさを正直に明かすと、トレは「弟はここにもいる」と自分を指すのだった。
リッキーの葬式の2週間後、ダウボーイは射殺される。トレはジョージア州の大学へ進み、ブレンディも近くの大学へ進学した。残された者の指名である「平和を広めるため」二人は人生を歩み続けるのだった。
映画『ボーイズ’ン・ザ・フッド』の感想・評価・レビュー
映画とは自分の知ることのない「日常」を教えてくれるものである。今作もまた、平和ボケしている自分には想像することもない「当たり前」で溢れていた。51歳の若さで急逝した、ジョン・シングルトン監督だが、自身の半生を映し出したようなこの作品を残してくれたことに本当に感謝したい。同じ種族での殺め合いの不毛さや、貧困の中に生まれた者が環境に染まらず成長していくことの難しさが切実に伝わる時間であった。冒頭・エンディングのメッセージ含め、後世に伝えていきたい。(MIHOシネマ編集部)
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