映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』の概要:タリバン政権下のアフガニスタンを舞台にした、社会派アニメーション映画。男尊女卑、弱者排除の時代の中で生きる人々の強さを描いた、美しく、勇気づけられる作品である。現実と空想の世界を手法の違うアニメーションで表す芸術性の高さも見所だ。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』の作品情報
上映時間:94分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争、アニメ
監督:ノラ・トゥオメィ
キャスト:サーラ・チャウディリー、ソーマ・チハヤー、ラーラ・シディーク、シャイスタ・ラティーフ etc
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映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』の登場人物(キャスト)
- パヴァーナ(サラ・チャウドリー)
- 少年のふりをして町で働き、捕らわれた父を助けるために一人で刑務所まで父を助けに向かう。家族のためならば危険を冒してでも行動をする、優しく勇敢な少女である。パヴァーナが語る空想の「物語」は、辛い環境の中で、家族や自身の心の拠り所となる。
- シャウジア(ソーマ・パディア)
- パヴァーナの同級生。シャウジアも町で少年のふりをして働いていたところ、パヴァーナと出会う。シャウジアとパヴァーナはすぐに打ち解け、助け合いながら共に働く。シャウジアの家庭環境も厳しいが、他人を気遣う心優しい少女。
- ヌルラー(アリ・バドシャー)
- パヴァーナの父。戦争で片足を失っている。元は教師をしていて、知的で家族思い。ある日突然、無実の罪で捕らえられ刑務所に送られてしまう。
- ファティマ(ララ・サディグ)
- パヴァーナの母。刑務所に入れられてしまった夫のヌルッラーを助けようとして、襲われてしまう。怪我で憔悴するが、子供たちを守ろうと奮闘する芯の強い女性。
- ソラヤ(シャーイスタ・ラティフ)
- パヴァーナの姉。家族の世話をしてもらうために、嫁に行くことになる。パヴァーナとは違った形で、家族のために闘う。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』のあらすじ【起】
舞台はタリバン政権下のアフガニスタン。この時代は極端な女性軽視が一般的で、女性というだけで様々なことが禁じられていた。肌の露出やメイクは勿論、女性のみで外に出ること、どんなに幼くても笑うことや、外で足音を立てることすら許されなかった。
そんな時代にパヴァーナは、父のヌルラーを手伝い、町で文字の読み書きの代行をする仕事や、持物を売る仕事をしていた。ある日、パヴァーナは店の前を通りかかった男に絡まれる。ヌルラーが庇いその場は収まるが、絡んできた男はパヴァーナの家までこっそりと跡をつけてきた。そして、その男は仲間を引き連れてパヴァーナの家へ押しかけ、パヴァーナに本を読んだと言いがかりをつけ、ヌルラーを強引に刑務所へ連行してしまう。ヌルラーは昔、戦争で片足を無くしており身体が不自由であった。その上、一家の主がいなくなってしまえば生活は成り立たないため、パヴァーナの家族は不安と絶望に暮れる。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』のあらすじ【承】
ヌルラーを助け出そうと、パヴァーナとパヴァーナの母のファティマは、危険を覚悟の上で刑務所へと出かけた。しかし、町の男たちに女性だけで出かけていることを気付かれてしまい、ファティマは激しい暴行を受け、2人は刑務所に辿り着くことすらできなかった。パヴァーナとファティマはなんとか帰宅したが、ファティマの状態は悪く憔悴しきっていた。
パヴァーナと姉のソラヤはファティマの看病と、幼い弟の世話することに必死だった。しかし、食料を調達したくても女性に物を売ってくれるお店はなく、生活は一層厳しくなっていった。
そんな辛い生活の中でも、パヴァーナは弟に物語を語ることを日課にしていた。物語は、勇敢な少年が村を襲う怪物と対決するために冒険をする、というもので、パヴァーナ自身も語りながら空想で気持ちを奮い立たせていた。パヴァーナの語る物語は、パヴァーナの家族やパヴァーナ自身に勇気や希望を与え、心の糧となっていた。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』のあらすじ【転】
ある晩、少ない食事を家族で囲んでいる最中に、パヴァーナは突然立ち上がり洗面台に向かい、背中まで伸びた長い髪をハサミで切り落とす。ソラヤは状況を察し、髪を切ることを手伝った。パヴァーナは少年を装って町に出ることを決意したのだ。
髪を切ったパヴァーナは、翌日から町で家族のために食料を調達し、ヌルラーの代わりに働くようになる。なんとかバレることなく過ごしていたパヴァーナは、同じように少年を装って働くシャウジアに出会う。パヴァーナとシャウジアはすぐに打ち解け、一緒に遠くまで働きに行ったり、危険な時には助け合うような親友となった。
見た目が少年のようになったパヴァーナでも、いざ働くとなると力が弱く、仕事先の男性たちから不当な扱いを受ける。毎日のように怪我をして帰るパヴァーナを心配したファティマは、ソラヤを嫁に出して、嫁ぎ先の主に家族全員の世話をしてもらおうと決意する。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』の結末・ラスト(ネタバレ)
パヴァーナの家族4人は、ソラヤの結婚が決まり町を離れることになる。しかし、パヴァーナは刑務所にいる父のヌルラーを置いていくことに納得できず、出発前になんとか助け出したいと再び刑務所に向かう。家族たちは危険すぎる行為に大反対であったが、パヴァーナの決意は固かった。
パヴァーナは刑務所に向かう途中、シャウジアに近々町を離れることを告げに行く。シャウジアは寂しさのあまり反発するが、最後は餞別にと今まで必死に働いたお金をパヴァーナに渡す。そして、20年後に海で会おうと約束し、パヴァーナとシャウジアは別れる。
パヴァーナは、遠い道のりをひたすらに歩いていた。その頃、パヴァーナの帰りを待つ家族のもとに、ソラヤの嫁ぎ先の遣いが予定よりも早く一家を迎えに来てしまう。パヴァーナを置いていくことは絶対にできないと、ファティマは抵抗する。しかし、戦争が直に始まるため町を離れるのは今しかないと、遣いは抵抗するファティマ達を無理やり車に乗せて出発する。
刑務所に辿り着いたパヴァーナは、そこで以前町で知り合った男を見つける。パヴァーナは男に事情を説明し、ヌルラーを助けてくれるよう嘆願する。その男は、夕暮れまでに戻って来なかったら諦めて帰るようにとパヴァーナに告げて刑務所の奥へと入っていった。
パヴァーナは男とヌルラーを待つ間にとてつもない恐怖に襲われたが、家族に語っていた勇敢な少年の物語の続きを空想し、気持ちを紛らわせた。
日が暮れて夜になりかけた頃、ヌルラーを肩に抱えた男が現れた。男は大きな怪我を負っていたが、ヌルラーは無傷だった。男が身体を張ってヌルラーを庇ってくれたのだ。パヴァーナはヌルラーを荷台に乗せて、家への帰路を歩く。
パヴァーナの母たちも、やはりパヴァーナを置いては行けないと、車を降りて歩き出す。ソラヤの結婚は破談になるが、家族たちの心に揺るぎはなかった。女性が自分たちの力で歩き始める姿を象徴するかのように、夜空の雲の隙間から大きな満月が顔を覗かせる。
映画『ブレッドウィナー/生きのびるために』の感想・評価・レビュー
家族のために危険に飛び込むパヴァーナや、パヴァーナを置いて行けないと一度決まった結婚を破談にした母など、辛い状況下でも強さと優しさを持ち、自らの心に従って行動する女性の姿に心打たれた。国や時代は違うが、差別や弱者排除は身近でも起こりうることである。そんな時、この作品の女性達の行動は全ての人を勇気づけ、心を動かすだろう。また、アニメーションが現実世界と空想世界のコントラストを上手く引き出していた。特に、空想世界のシーンはその世界観に引き込まれてしまうほど芸術的で見応えがあった。(MIHOシネマ編集部)
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