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映画『誰がための日々』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『誰がための日々』の概要:新人監督ウォン・ジョンの長編デビュー作。新人発掘を目的とした「首部劇情電影計劃」の第1回受賞企画。イギリスから中国へ返還され、大陸との関係に様々に揺れる香港を舞台に、一組の父子があがきながら存在意義を見つけていく様を追う。

映画『誰がための日々』の作品情報

誰がための日々

製作年:2016年
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ウォン・ジョン
キャスト:ショーン・ユー、エリック・ツァン、エイレン・チン、チャーメイン・フォン etc

映画『誰がための日々』の登場人物(キャスト)

ウォン・サイトン(ショーン・ユー)
母親の期待に応えエリート街道を歩んでいたが、事故により母親の介護に専念することになる。婚約者との未来も破談となり追い込まれた末に取り返しのつかない事故を起こしてしまう。
ウォン・ダイホイ(エリック・ツァン)
トンの父親。額のないことを妻に卑下され、養育費だけをいれ家族とは離れて暮らしていた。トンが退院し引き取り手となり、空白の時間を埋めようと必死に寄り添っていく。
ロイ・リンユン(エレイン・ジン)
トンの母親。学歴にこだわり二人の息子に大きな期待をかけていた。事故により下半身不随となり、トンの介護のもと暮らしていたがきつく当たってしまう日々が続いた。

映画『誰がための日々』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『誰がための日々』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『誰がための日々』のあらすじ【起】

息子・トンの病状に関して医師から説明を受ける、父・ホイ。「家族の支えが必要」とだけ伝えられたホイは、うつ病を抱えるトンを一人で引き取ることになる。母親が借りていた部屋は解約してしまったホイは、自分の部屋でトンを養う決心を固める。

大人の男2人で暮らすには不自由な部屋に案内したホイは、トンにベッドの上を使うよう勧める。着替えはかつての婚約者だったジェニーが届けてくれたとホイが伝えると、トンは罪悪感から言葉を失ってしまった。久しく一緒に過ごしていなかったこともあり、重たい空気にホイは耐え兼ね買い出しに出る。一人になったトンは母親の介護に明け暮れた日々を思い返すのだった。

同じアパートの住人とも打ち解け始めた頃、トンは元同僚のルイスの結婚式に行くと言いスーツを身にまとって朝食を済ませた。ホイの心配をよそに会場に向かったトンだが、実は正体は受けていなかったのだ。それでもトンが回復したと思い歓迎するルイス。しかしトンは、ルイスのスピーチに耳を傾けない来賓者たちに苛立ち、突然スピーチを始めてしまう。主役の言葉に耳を傾けろ、と声を荒げたトンは最後にジェニーの行方を捜していると言い壇上から去るのだった。

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映画『誰がための日々』のあらすじ【承】

ジェニーとは母親の介護に関する意見のすれ違いで喧嘩が絶えなくなっていた。ジェニーと過ごした幸せな日々よりも、辛い記憶の方が鮮明に残っているトン。暗闇から抜け出せないトンの姿を見ていたホイは、少なからず力になろうと看護師に聞きブラックチョコレートを食後に与えるようになるのだった。

再就職を希望するトンだが、履歴書すら受け取ってもらえない日が続いた。ある日、隣の部屋の息子・ユーと屋上で初めて会話を交わしたトン。母親から過度の期待を受けるユーの姿に、トンは自分を重ねてしまうのだった。母親の期待通りエリート街道を進んでいたはずの人生は、いつからか母親の体を拭き下の世話までする日々に変わっていた。後悔に苛まれる中、ホイが事故に遭ったという連絡が入るのである。

大事に至らなかったホイは、屋上でトンと昔話に浸った。しかし、ホイの記憶は弟・チュンの思い出ばかりである。介護に明け暮れるトンを前に、母親はチュンに迎えに来て欲しいと泣くこともあった。辛い記憶を思い返し暗い表情のトンを気遣い、薬を飲むように勧めるホイだが、病人扱いされることでトンの怒りは限界を迎えた。母親の悪夢を見続けるというトンは「実刑を望んでいた」とホイに当たり散らしてしまうのだった。

映画『誰がための日々』のあらすじ【転】

怪我をしたホイの代わりに社会復帰を目指すトン。しかし現実はそう甘くなかった。その日、ユーを預かることになり、トンはホイからユーには大陸の戸籍がないことを聞くのだった。株のレートを見ながら子守りをしていたトンに、ジェニーから連絡があった。久しぶりの再会に喜び、テーブルをいっぱいにしてレストランでジェニーを待ったが、要件はトンの借金についてだった。「強くなった」と哀し気に笑うジェニーを前に、トンはただ謝ることしかできなかった。

ジェニーとの再会で少しだけ心につっかえていたものが軽くなったトンは、隣人の息子と屋上に庭園を造った。しかし、ニュースでルイスの死を知ったトン。人員整理によるストレスからの自殺だという。トンの晴れやかな表情は一変するのだった。

ジェニーに連れられ、ある集まりに連れられたトン。新たな仲間だと紹介されたトンは戸惑うが、ジェニーは壇上で過去の出来事を全て告白した。そしてトンのことを心から憎んでいると懺悔したのだった。その姿に耐えられなくなったトンは、会場を抜け出しスーパーに駆け込んだ。売り物のチョコレートを食べ続け泣き明かすトン。その姿は多くの人が撮影し拡散した。そしてトンは、独りシャワールームで自殺を図るのだった。

映画『誰がための日々』の結末・ラスト(ネタバレ)

「チョコ・サイコ」と名付けられたトンの動画は周囲の見る目も変えてしまった。部屋に籠ったトンは、ホイに無理やりシャワールームへ連れていかれ母との最期の時間をフラッシュバックさせてしまった。それは自分の手で母親を殺めた日である。泣きじゃくるトンに声をかけたホイだが、どんな言葉もトンには響かなかった。鬱患者の家族が集う会に通い始めたホイは、鬱の夫を抱える女性から「再入院」に関して前向きにとらえるようアドバイスを受けるのだった。

久しぶりにチュンに連絡したホイだが、トンの動画はアメリカにも伝わっていた。再入院を諭され、何もできない自分にホイは葛藤する。鬱患者の家族の集いで、ようやくホイは自分の無力さと覚悟について人に明かすことができたのだった。

しかし、アパートではトンとホイに引っ越して欲しいと話し合いが行われていた。精神病は「普通」病気ではないと隣人に詰め寄られたホイは、アパートを出る決断をする。その頃、ユーと屋上で話をしていたトン。ユーの母親はその姿を見て、恐怖に震え上がる。何もかも察したかのように、トンはホイを強く抱きしめるのだった。

映画『誰がための日々』の感想・評価・レビュー

低予算かつ限られた日数で試験的な撮影により制作された今作。後悔や偏見、すれ違う気持ちは決して明るい兆しなど見せてくれない。それでも見なければならないと強く感じるのは、「インファナル・アフェア」での共演が印象深い二人の熱演によるものだろう。空白だった父子の溝は想像よりも早く埋まる。しかし、周囲からの溝はどんどん二人を追い込んでいた。「普通」とは何か、環境が生み出す不便や弱者を露呈させる展開。言葉が刃となり、盾ともなる瞬間を見せてくれる一作であった。(MIHOシネマ編集部)


本作は、重度の介護鬱の末に母親を亡くした青年トンと家族の苦悩と葛藤の日々を描いた香港の社会派ヒューマンドラマ作品。
香港の作品だが日本の現状にも似ているところがあって、日本でも同じ苦しみに苦しむ人は多いのではないだろうか。決して他人事とは言えない。
トンたちを追い詰める周囲の環境の酷さに観ているのも辛かったけれど、少し希望が見えるような終わり方でホッとした。
邦題の通り、家族や介護や自分自身についても考えさせられる、胸を打つ内容だった。(女性 20代)


生きていくことは決して幸せなことばかりではないし、この作品を見るとなぜ生きているんだろう、なんのために生きているんだろうという負の感情が生まれてきてしまいますが、それでも生きなければいけないのだという強いメッセージを受け取りました。
自分が努力してどうにかなることなら一生懸命努力します。しかし、努力だけではどうにもならないことを他人に責められたり、批判されることほど惨めで辛いことはありません。
彼らはこの環境を乗り越えられるのか、その先に何が待っているのかと、いつの間にか心が磨り減る思いで鑑賞していました。(女性 30代)

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