映画『駅馬車(1939)』の概要:西部を走る駅馬車に乗り合わせた乗客たちの人間模様と、アパッチとの戦いを描いた不朽の名作。猛スピードで走る駅馬車とアパッチ軍団が戦うクライマックスのアクションシーンは必見。ジョン・ウェインの出世作としても有名。
映画『駅馬車』の作品情報
上映時間:99分
ジャンル:西部劇、アクション、ヒューマンドラマ
監督:ジョン・フォード
キャスト:ジョン・ウェイン、トーマス・ミッチェル、クレア・トレヴァー、ルイーズ・プラット etc
映画『駅馬車』の登場人物(キャスト)
- リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)
- 17歳の時にプラマー三兄弟のボスを殺して入獄した脱獄囚。父親と弟をプラマー三兄弟に殺され、復讐するために脱獄した。銃の名手。駅馬車に同乗していたダラスに恋をする。
- ダラス(クレア・トレヴァー)
- トントの町で娼婦をしていたが、婦人連盟の女性たちに追い出され、駅馬車に乗る。子供の頃に家族を殺された。
- ブーン(トーマス・ミッチェル)
- 医師。酒が大好きで、四六時中飲んでいる。酔っ払いだが、医師としての腕は確か。陽気な男。
- カーリー(ジョージ・バンクロフト)
- 人情味のある昔気質の保安官。キッドの父親とは旧知の仲で、復讐をやめさせるためにキッドを逮捕しようとする。
- ルーシー・マロニー(ルイーズ・プラット)
- 騎兵隊の大尉をしている夫に会うため、バージニアからやってきた。臨月を迎えており、旅の途中で出産する。
- ハットフィールド(ジョン・キャラダイン)
- 悪名高いギャンブラーだが、実は名門グリンフィールド家の息子。父親は判事。貴婦人のルーシーを護衛するため、駅馬車に乗り込む。
- ピーコック(ドナルド・ミーク)
- 酒売りの商人。善良そうな風貌をしているため、よく牧師と間違えられる。カンザス出身。
- ゲートウッド(バートン・チャーチル)
- トントの炭鉱夫畜産家用銀行の銀行家。5万ドルを横領するため、駅馬車でローズバーグへ向かう。
- バック(アンディ・ディバイン)
- 駅馬車の御者。愚痴は多いが気のいい男。
映画『駅馬車』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『駅馬車』のあらすじ【起】
西部のアリゾナ周辺では、ジェロニモの率いるアパッチが暴れ回っており、ローズバーグから緊急連絡が入る。しかし通信は“ジェロニモ”という一言で途切れてしまう。
そんな中、バックが御者を務める駅馬車が、トントの町に到着する。駅馬車には、バージニアからきたルーシーという貴婦人と、炭鉱夫の給料を運んできた男たちが乗っていた。ルーシーは騎兵隊の大尉をしている夫に会うため、ドライフォークへ行く予定だった。
銀行家のゲートウッドは、炭鉱夫の給料5万ドルを預かる。酒飲みの医師のブーンと、娼婦のダラスは、婦人連盟から目の敵にされ、町を追い出される。
ドライフォークとアパッチ・ウェルズ経由でローズバーグへ向かう駅馬車には、ルーシー、ブーン、ダラス、そして酒売りのピーコックが乗り込む。しかしピーコックは、ジェロニモに襲撃されるかもしれないという騎兵隊の話を聞き、駅馬車を降りたがる。酒好きのブーンは、ピーコックの酒目当てで彼を引き止め、ギャンブラーのハットフィールドは、ルーシーの用心棒を名乗り出て駅馬車に同乗する。
保安官のカーリーは、リンゴ・キッドが脱獄したという知らせを聞いて、駅馬車に乗る。キッドは、ローズバーグにいるプラマー三兄弟に父親と弟を殺され、復讐のために脱獄していた。カーリーはキッドを逮捕し、彼の復讐を止めるつもりだった。
ゲートウッドは、先ほど預かった5万ドルをカバンに詰め込み、駅馬車に乗る。彼は“ローズバーグから連絡があった”と言っていたが、カーリーはゲートウッドが嘘をついていると睨んでいた。
御者のバックとカーリーが前に乗り、馬車の中には6人の乗客が乗る。次の町までは、騎兵隊が護衛してくれることになる。
映画『駅馬車』のあらすじ【承】
ローズバーグへ向かう途中、馬がダメになってしまったキッドが駅馬車の前に現れる。カーリーは、キッドの銃を没収し、駅馬車に乗せてやる。
駅馬車がドライフォークに到着する。ルーシーの夫であるマロニー大尉が率いる騎兵隊は、すでにアパッチ・ウェルズへ出発した後だった。ここまで護衛してくれた騎兵隊は、命令に従って帰ることになっており、みんなはこのまま先へ進むか引き返すかを話し合う。多数決の結果、前進することが決まり、駅馬車は先を急ぐ。
ダラスは、具合の悪そうなルーシーの体調を気遣う。しかし上流階級育ちのルーシーは、ダラスのことを軽蔑しているようだった。キッドは、寂しそうなダラスに優しく接する。
ドライフォークから7時間かけて、駅馬車はアパッチ・ウェルズに到着する。しかし昨晩ここでアパッチとの戦闘があり、マロニー大尉は負傷してローズバーグへ運ばれたということだった。ルーシーはその話を聞いて倒れてしまう。
実はルーシーは妊娠中で、ダラスだけがそのことに気づいていた。ダラスは酔っ払っていたブーンをルーシーのもとに連れて行き、お湯をたくさん沸かすよう男たちに頼む。産気づいているルーシーを見たブーンは、コーヒーをたくさん飲んで酔いを冷ます。ゲートウッドだけは、一刻も早く出発したがっていたが、ルーシーのお産が終わるまで、出発するのは無理だった。ブーンやダラスのおかげで、ルーシーは元気な女の子を出産する。
映画『駅馬車』のあらすじ【転】
キッドは、ダラスの労をねぎらい、彼女と話をする。ダラスも子供の頃に家族を殺されており、孤独な人生を歩んでいた。キッドはダラスに運命を感じ、“国境の先にある牧場で、2人で住もう”とプロポーズする。
翌朝、宿の主人の女房が、銃と馬を持って消えていた。女房はジェロニモの親戚で、主人は“必ずジェロニモが現れる”と怯える。
ダラスは、キッドのプロポーズを受けるべきか悩んでいた。プラマー三兄弟に対決を挑めば、キッドが殺されてしまう可能性が高い。もし復讐が成功しても、脱獄囚のキッドはカーリーに逮捕されて刑務所へ戻ることになる。ダラスは、どうしてもローズバーグへ行くというキッドを“結婚するなら命を大切にしてほしい”と言って説得する。キッドもダラスの言葉に心を動かされ、カーリーの目を盗んで、一足先に約束の牧場へ行こうとする。ところが、丘の上でアパッチの戦闘合図の煙が上がっているのを見て、馬から降りてしまう。キッドはみんなと一緒に出発し、アパッチと戦うつもりだった。
一行は、ルーシーが出産した赤ちゃんも連れ、大急ぎで出発する。陸路は危険だと判断し、川を渡ることにするが、すでに船もアパッチによって燃やされていた。キッドたちは馬車に木の浮きをつけ、馬車ごと川を渡る。その様子を高台からアパッチが見ていた。
映画『駅馬車』の結末・ラスト(ネタバレ)
もうすぐローズバーグへ到着するという時になって、馬車はアパッチに襲撃される。ピーコックの胸に弓矢が突き刺さり、駅馬車とアパッチ軍団の壮絶な撃ち合いが始まる。馬に乗ったアパッチ軍団は、すごい勢いで駅馬車を追ってくる。キッドやカーリー、そしてハットフィールドは、銃でアパッチを次々と撃つ。バックは全速力で馬車を走らせるが、腕を負傷してしまう。
キッドたちは善戦するが、ついに銃弾が切れてしまう。もはやこれまでと思い込んだハットフィールドは、残りの一発でルーシーを楽に逝かせてやろうとする。しかし、ルーシーを撃つ前にハットフィールド自身がアパッチの銃弾に倒れ、命を落とす。
ギリギリのタイミングで騎兵隊が現れ、アパッチ軍団を撃退してくれる。駅馬車はローズバーグへ到着し、ピーコックとバックも無事だった。ルーシーは、ずっと赤ちゃんを守ってくれたダラスにお礼を言う。銀行の金を横領しようとしたゲートウッドは、保安官に逮捕される。
キッドが現れたと言う知らせを受け、町の酒場は緊張に包まれる。プラマー三兄弟のルークは、ギャンブルの手を止めて、キッドとの対決に備える。
キッドは、カーリーに10分だけ時間をもらい、ダラスを牧場に送り届けてくれるよう頼む。ダラスはキッドとの未来を諦めようとしていたが、キッドは彼女に待っているよう告げる。
酒場の前の道で、キッドとプラマー三兄弟は対峙する。両者はじりじりと間合いを詰めながら、睨み合う。そして銃声が鳴り響き、ルークは銃弾に倒れる。
心配していたダラスの前に、キッドが姿を現す。キッドはダラスに一目会ってから、馬車でカーリーと刑務所へ戻るつもりにしていた。しかし、カーリーはキッドとダラスを馬車に乗せ、2人だけで行かせてやる。2人を見送った後、カーリーとブーンは満足げに酒場へ向かうのだった。
映画『駅馬車』の感想・評価・レビュー
1939年のこの作品。CGも特撮も無い、「スタント」で作られたことを忘れずに見て下さい。
全速力で走る馬の群れの中で落馬し引きづられ、馬と馬を飛び移りそんなシーンを同じスピードで動くカメラで撮影しているんです。同じ人間がこれをやっていると考えると信じられない迫力で「圧巻」という言葉がぴったりでしょう。
アクションを創生したと言われるこの作品。ぜひ1度見て欲しいです。あのアクションシーンに魅了され、何度も見たくなるはずです。(女性 30代)
ヒューマンドラマとアクションの緩急が小気味良く、あっという間の一時間半でした。馬車に個性的な登場人物が複数人乗り込み、集います。会話からそれぞれの過去や、人物像が浮かび上がります。所謂グランドホテル形式での展開です。80年も昔の作品には思えない程、映画について重要な要素が全て詰め込まれています。それなのに、無駄がありません。クライマックスでは、馬が駆ける躍動感やガンアクションの凄まじさを堪能できました。(女性 30代)
古典西部劇の始まりを示した作品でもあり、名コンビであるジョン・ウェインとジョン・フォードの最初の作品でもある。インディアンとのアクションシーンと仇討ちの決闘の二段構成も見応え抜群だが、この作品には駅馬車の中で展開される人間模様の面白さもある。
脱獄囚で一見悪であるかのように思えたリンゴ・キッドだが、内側に悲惨な過去を秘めていることや常に動じない強さと落ち着きはいつも西部に求められる代表的な男らしさであり、それを体現したジョン・ウェインの不動さが素晴らしい。これを観ずして西部劇は語れない。(女性 20代)
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