この記事では、映画『イナフ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『イナフ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『イナフ』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
監督:マイケル・アプテッド
キャスト:ジェニファー・ロペス、ビリー・キャンベル、ジュリエット・ルイス、テッサ・アレン etc
映画『イナフ』の登場人物(キャスト)
- スリム・ヒラー(ジェニファー・ロペス)
- 母子家庭で育ち、母親も死んだため、学校を中退してダイナーで働いていた。母親はジュピターという実業家の愛人のひとりだった。幸せになれると信じてミッチと結婚し、グレイシーという娘を産んだが、ミッチはとんでもない暴力男だった。
- ミッチ・ヒラー(ビリー・キャンベル)
- スリムの夫。建設会社を経営する裕福な家で生まれ育ち、自分が望めば何でも手に入ると思っている自信家。自分の思い通りにならないと、平気で暴力を振るう。
- ジニー(ジュリエット・ルイス)
- スリムの親友。2児を育てるシングルマザー。スリムが結婚してダイナーを辞めてからも、ダイナーの仲間たちと一緒にスリムを支え続ける。
- ジョー(ダン・ファターマン)
- スリムが学生時代に付き合っていた彼氏。現在はシアトルに住んでいる。とても優しい男性で、今もスリムに未練がある。
映画『イナフ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『イナフ』のあらすじ【起】
母親が死に、金銭的な問題で学校を中退したスリムは、海辺のダイナーで忙しく働いていた。父親とは幼い頃に会ったきりで、連絡を取り合っていない。そんなスリムにとって、ダイナーで一緒に働くコックのフィルやウェイトレスのジニーは、家族のような存在だった。
ある日、客の男に侮辱されたスリムを、ミッチという男性が守ってくれる。スリムは頼り甲斐のあるミッチに惹かれ、2人は恋に落ちる。そしてトントン拍子に結婚が決まる。
豪勢な結婚式の費用もミッチの家が負担してくれ、スリムは幸せの絶頂にいた。ミッチは、スリムが気に入った家を、その家の住民から強引に買い取ってしまう。娘のグレースも生まれ、何不自由ない生活と温かい家庭を手に入れたスリムは、満ち足りた日々を過ごす。
しかし、グレースが5歳くらいになると、ミッチは仕事を理由に家を空けることが多くなる。不審に思ったスリムは、ミッチの携帯に電話をかけてきた相手を突き止め、夫が浮気していることを知る。その時は“ただの遊びだ”と説得され、スリムも我慢するが、その後もミッチの浮気は続いていた。
ある晩、どうにも我慢できなくなったスリムは、ミッチに強く抗議し、夫婦は口論となる。すると、ミッチは態度を豹変させ、スリムを殴りとばす。ミッチは、金を稼いでいる自分にルールを決める権利があると主張し、堂々と浮気はするが離婚は絶対に認めないとスリムを脅す。それはスリムにとって、あまりにショックな出来事だった。
映画『イナフ』のあらすじ【承】
翌日、スリムは義母を訪ね、浮気と暴力のことを訴えようとする。しかし義母は息子の正体を知らず、味方になってくれそうもない。スリムから相談を受けたジニーは、すぐ警察へ通報するようアドバイスするが、スリムは娘の父親を犯罪者にするのも嫌だった。
ミッチは、その日のスリムの行動を全て把握しており、“このままだと最悪の事態になるぞ”と彼女を脅す。ミッチは、どんな手段を使っても欲しいものは必ず手に入れるという恐ろしい男だった。
スリムは“友人の話だ”と偽って、警察へ相談に行く。“子供がいるなら家庭裁判所へ行け”と言われ、スリムは警察を頼ることも諦める。しかし、このままミッチと暮らすのはどう考えても無理だった。
スリムは、フィルやジニーに協力してもらい、夜中に脱出を図ろうとする。しかし家を出る直前でミッチに見つかり、酷い暴力を受ける。室内に駆けつけたフィルたちに、ミッチは銃を突きつける。フィルは眠っていたグレイシーを起こし、ミッチの姿を見せる。さすがのミッチも娘の前では銃を隠し、スリムはグレイシーを連れて家から脱出する。
しかし、ミッチはすぐにカードや銀行口座を凍結し、スリムを困窮させる。ミッチは、2人が宿泊していたモーテルの場所まで突き止め、部屋に乗り込んでくる。間一髪で逃げ延びたスリムは、シアトルで暮らす昔の彼氏のジョーを頼ることにする。
ジョーは快く2人を迎えてくれるが、ミッチは金にモノを言わせて裏社会の人間を雇い、スリムを追いつめる。ジョーまで危険な目に遭い、スリムはこれ以上ジョーに迷惑をかけられないと考え、シアトルを離れる。
スリムは、サンフランシスコにいる実の父親を訪ねる。父親のジュピターは、やり手の実業家だが、母親の死を知らせても返事をくれないような冷たい男だった。スリムは、ジュピターを頼ることも諦める。
映画『イナフ』のあらすじ【転】
スリムはフィルの知り合いを頼り、ミシガン州北部の移民地区へ移動する。そこですでに死亡しているエリンという女性になりすまし、別人として新しい生活を始める。
ある日、フィルから郵便物が転送されてくる。それは、その後スリムの事情を知ったジュピターからの手紙とお金だった。ミッチはジュピターのところにも男たちを送り、“ミッチを助けたら殺す”と脅しをかけていた。しかしジュピターは脅しに屈せず、スリムへの協力を約束してくれる。
スリムはそのお金で小さな一軒家を購入し、グレイシーと暮らし始める。ジニーたちに電話する時も細心の注意を払い、15秒以上の会話は避けていた。しかしミッチは警察とも繋がりがあり、スリムがミシガン州にいることをすでに突き止めていた。
ミッチは警察官のロビーをミシガンへ行かせる。ロビーは、ダイナーでスリムとミッチが出会うきっかけを作った男だった。ミッチは、最初からスリムを騙していたのだ。
心細い日々を送っていたスリムは、ジョーに連絡する。ジョーは遠いシアトルからミシガンまで来てくれた。3人は楽しい時を過ごすが、その様子は全てロビーに隠し撮りされていた。2ヶ月後にはグレイシーの親権裁判が始まることになっており、ミッチは周到にその準備を進めていた。
ジョーがシアトルに帰った日の夜、スリムは悪夢にうなされる。翌朝、スリムの前にミッチが姿を現し、彼女の首を絞め始める。ミッチは止めに入ったグレイシーまで突き飛ばし、スリムを殺そうとする。スリムは催涙スプレーで反撃し、ミッチがひるんだ隙に車で逃げる。しかし外にはロビーが車で待機しており、スリムの車を追ってくる。2台の車は激しいカーチェイスを繰り広げ、スリムはなんとか逃げ延びる。
自分の力だけではどうにもならないと感じたスリムは、友人が紹介してくれた弁護士の事務所に駆け込む。弁護士は、告訴するチャンスを棒に振ったスリムの過ちを指摘し、お金も社会的地位もあるミッチが単独親権を獲得し、その後ミッチの手下がスリムを殺すだろうと絶望的な見解を述べる。
映画『イナフ』の結末・ラスト(ネタバレ)
決してミッチから逃げることはできないのだと悟り、スリムはある決意をする。スリムは、グレイシーを守るためにも、強くなるしかなかった。
まずはジニーにグレイシーを預け、長期の旅行に連れ出してもらう。そしてスリムは一流のインストラクターのもとで、実践的に敵と戦う方法を学ぶ。訓練は厳しいものだったが、スリムは必死で体を鍛え、心身ともに強くなっていく。
もうすぐ親権裁判という日。準備を整えたスリムは、ジュピターに協力してもらって尾行を巻き、深夜にミッチの新しい自宅へ侵入する。翌朝、ミッチが仕事に出かけたのを確かめ、スリムは家の中を念入りに調べ始める。まずは、銃や刃物などの武器を処分し、家の構造を体に記憶させる。そして、机の引き出しには“話し合いをするため会いにいく”という開封済みの手紙を忍ばせておく。電話線も切り、携帯の電波を妨害する機械も仕込んでおいた。
帰宅したミッチと対峙したスリムは、“襲われたから抵抗した”という正当防衛を成り立たせるため、ミッチをわざと挑発する。ミッチは挑発に乗り、2人の格闘が始まる。訓練を積んだスリムは見違えるように強くなっており、とうとうミッチを追い詰める。しかし、どうしてもトドメが刺せない。それをジニーに電話で訴えている最中にミッチが目を覚まし、スリムは後方から襲われる。スリムは、今までミッチに受けた暴力を思い出し、心を鬼にしてミッチを2階の踊り場から突き落とす。そしてミッチは死亡する。
スリムはすぐに電波妨害の機械などを処分し、外で警察を待つ。ジニーから通報を受けて駆けつけた警察は、スリムが生きているのを見て、“あなたは運が良かった”と告げる。
ミッチという敵を倒したスリムは、旅行から帰ったグレイシーとともに、シアトルのジョーのところへ向かう。そして3人は、幸せな時間を過ごすのだった。
映画『イナフ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
裕福な家庭で育ち、お金持ちな夫が実はDV夫だったってお話。実際本当に裕福でお金があったらDVなんてするのかなあ…と考えてしまいましたが、暴力を振るうような男が一番鬱陶しく感じるのは「反抗的な女」ですよね。暴力を振るってもめげずに立ち向かってくる女は本当に鬱陶しくて、更に暴力がエスカレートするような気がします。
ラストの展開はあまり納得がいきませんが、一番可哀想なのは子供でした。できることならこういう男性を夫にはしたくないですね。(女性 30代)
DV夫ものですが、テンポよく進みそこまでダークではないのでストレスなく観れます。かと言ってコメディよりでもないです。DV夫からとにかく逃げて最後は戦うのですが、ストーリーは普通でも細部にこだわっている作品だと思います。
逃げる準備を常にしているので車を暗証番号で開くようにしていたり、トラップが仕掛けてあったり。夫の家に侵入してコーヒーメーカーの電源の切り忘れを見つけて切ってしまうところなんかはなんだかリアリティがありました。(女性 30代)
ジェニファー・ロペスが主演するこの作品、DVから逃げ、自らの手で人生を取り戻す姿がとても力強かった。夫の暴力から逃げて、ひっそりと暮らすも、やがて娘と自分を守るために立ち上がる。ラストの格闘シーンは手に汗握る展開で、エンタメ要素も十分。現代にも通じるテーマを扱った良作。(30代 女性)
サスペンス調の展開にドキドキしながら観ましたが、最終的には“女性の自己解放”を描いた作品として印象に残りました。最初は怯えるだけだったスリムが、次第に覚悟を決めていく過程が良かったです。特にトレーニングを始めるシーンから、終盤の対決までの流れが見応えありました。(20代 男性)
ただのDVサバイバル映画ではない、というのが第一印象。自分がどれだけ弱く見えても、最後には立ち上がれるというメッセージがこもっていました。娘のために変わることを決意する母の姿は、本当に感動的でした。ジェニファー・ロペスの本気の演技にも圧倒されました。(40代 女性)
「逃げる」ことが悪ではない、でも「戦う」覚悟もまた必要だと感じさせてくれた映画でした。最後はスリムが元夫に対して物理的に勝つわけだけど、それ以上に精神的に“恐れなくなった”ことが大きな勝利だったと思います。テーマが強くて考えさせられる作品でした。(30代 男性)
全体的にテンポも良く、スリル満点の展開で最後まで飽きずに観られました。暴力から逃げるだけじゃなく、自らを鍛えて向き合おうとする主人公の姿が、とてもリアルで共感できた。女性が自分の身を守る手段を“自分で持つ”ことの大切さが伝わってきました。(20代 女性)
元夫のミッチがどんどん本性を現していく描写が怖すぎた。優しそうな顔の裏にあんな狂気が潜んでいたと思うと、ゾッとする。現実でもこういう支配欲の強い男はいるんだろうなと、他人事じゃない気持ちで観ました。後半の逆転劇は胸がスカッとしました。(50代 女性)
スリムが“強くなる”という変化が、現実離れしていなくて説得力がありました。あくまで「母親として」娘を守るための行動なんだとわかるから、観ていて納得感がある。あの結末も賛否ありそうだけど、個人的にはあれ以外に選択肢はなかったと思う。リアルに刺さりました。(40代 男性)
暴力的な描写があるので気軽には薦めにくいけど、見終わったあとに残るのは“勇気”だった。女性が声を上げられない社会の構造、それでも一歩を踏み出す勇気をどう持つか。それを問いかけてくるような作品でした。主演女優の演技もとても自然で引き込まれました。(30代 女性)
映画『イナフ』を見た人におすすめの映画5選
スリープレス・ナイト
この映画を一言で表すと?
“子を守る父が一夜限りの死闘に挑む、タイムリミット・サスペンス”
どんな話?
潜入捜査官がギャングとのトラブルに巻き込まれ、誘拐された息子を取り戻すためラスベガスの一夜を駆け抜ける。汚職・裏切り・時間制限…すべてが追い詰める中、父の執念が爆発するクライムアクション。
ここがおすすめ!
『イナフ』と同じく“愛する者を守るためなら闘う”というテーマが共通。ジェニファー・ロペスの戦う母に対し、こちらは父が命を賭けて戦う姿に胸を打たれます。テンポも良くアクション好きにもおすすめ。
スリーパーズ
この映画を一言で表すと?
“正義の名のもとに復讐を果たす、友情と贖罪の壮絶ドラマ”
どんな話?
少年院での壮絶な虐待体験から十数年後、大人になった4人の仲間が加害者に復讐する計画を実行に移す。友情・法廷劇・サスペンスが絡み合う社会派ドラマ。実話を基にした重厚なストーリー。
ここがおすすめ!
『イナフ』のように過去の被害から立ち上がり、自らの正義を貫こうとする姿が重なる。心理的な闘いと道徳的葛藤を描きつつ、観客に“正義とは何か”を突きつけてきます。名優たちの演技も必見。
ノック・ノック
この映画を一言で表すと?
“自宅が戦場に変わる、予測不能の侵入サイコスリラー”
どんな話?
家族が不在中の家に現れた2人の若い女性。最初は無邪気に見えた彼女たちが、徐々に主人公を追い詰め狂気に変わっていく。誘惑・暴力・恐怖が交錯するワンシチュエーション・スリラー。
ここがおすすめ!
『イナフ』のような“家庭が安全な場所でなくなる恐怖”を感じさせる作品。逆転劇や極限状況の心理戦を好む方にぴったり。テンポよく進む展開と息苦しい演出が癖になる一作です。
ロング・キス・グッドナイト
この映画を一言で表すと?
“母は最強の元暗殺者!失われた記憶が彼女を覚醒させる”
どんな話?
記憶喪失の平凡な主婦が、ある日突然自分が政府の暗殺者だったことを思い出す。娘とともに追われる身となりながら、かつての自分を取り戻し、巨大な陰謀に立ち向かうバイオレンス・アクション。
ここがおすすめ!
『イナフ』同様、“母親としての強さ”をアクションで体現した作品。守るために覚醒する女性ヒーロー像に、スカッとする展開も満載。ヒロインアクション好きには必見の一本です。
ゴーン・ガール
この映画を一言で表すと?
“完璧な妻の“失踪”が暴き出す、結婚の裏側と真の恐怖”
どんな話?
ある日突然、完璧な妻が失踪。疑われる夫。だがそこには計画された真実が隠されていた…。現代社会における夫婦の歪み、メディアと世間の眼、そして恐るべき心理操作を描いたサスペンススリラー。
ここがおすすめ!
『イナフ』と同様、“一見幸せに見える夫婦関係の裏に潜む暴力や支配”を鋭く描いています。女性のしたたかさやサバイバル術が印象的で、心に残るどんでん返しも楽しめる重層的な映画です。
みんなの感想・レビュー
今の時代のリアルな描写である本作品。
夫のDVという社会問題になりつつあるテーマを女性が強くなるという目線から描いているのが悪くない。
ただ、最後はやむ終えず殺してしまいましたというバッドエンディングはいまいち。
子供のために殺人を犯すというのは何とも苦しい最後である。
しかしジェニロペの魅力も満載でファンにはたまらない作り。
彼女を見るためだけでも見る価値はあるし、テンポ感想もよくスムーズに進むので退屈しない。