映画『フィアレス』の概要:航空機の墜落事故に遭い、恐怖を感じなくなってしまった主人公。彼はセラピストの紹介で、同じ事故にて子供を失った女性と会う。同じ経験をした者同士、次第に親密な関係になる2人だったが、そこに救いはなく。後遺症にて苦しみつつ救われていく姿を描いた作品。
映画『フィアレス』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ピーター・ウィアー
キャスト:ジェフ・ブリッジス、イザベラ・ロッセリーニ、ロージー・ペレス、トム・ハルス etc
映画『フィアレス』の登場人物(キャスト)
- マックス・クライン(ジェフ・ブリッジス)
- 建築家であり、共同経営で会社を運営している。墜落事故に遭い、死に対して鈍感になってしまう。愛妻家で神経質。イチゴにアレルギーを持っており、口にすると呼吸困難に陥る。無意識下で事故の後遺症に苛まれ苦悩する。
- ローラ・クライン(イザベラ・ロッセリーニ)
- マックスの妻。バレエ教室の講師をしている。事故後のマックスの行動に危機感を覚え、助けようと努めるものの、拒否されてしまい離婚の危機に陥る。
- カーラ・ロドリゴ(ロージー・ペレス)
- 墜落事故にて幼い我が子を失ってしまう。深い悲しみと絶望に苛まれ、生きる希望を失っていた。マックスと会うことで救われる。
- ビル・パールマン(ジョン・タトゥーロ)
- 航空会社に雇われているセラピスト。事故後の精神障害を専門に扱っている。マックスとカーラを引き合わせ、相乗効果で心の救済を図るという賭けに出る。
映画『フィアレス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『フィアレス』のあらすじ【起】
凄惨な航空機事故に遭うも、生存者を誘導して奇跡的に生還したマックス・クライン。彼は騒然とする事故現場から勝手に抜け、最寄りのホテルへ向かってしまう。翌日は車をレンタルしてLAを目指した。しかしその翌日、宿泊していたモーテルにFBI捜査官が訪ねて来る。航空会社が捜査を依頼してまで、マックスを探したらしい。
航空会社は彼に列車のチケットを渡し、自宅へ送り届けると言うが、彼は飛行機のファーストクラスを希望するのだった。
マックスは元々、神経質で飛行機が嫌いだったし、イチゴにアレルギーを持っていた。だが、事故に遭って以来、イチゴを食べても平気になり、墜落事故で悲惨な経験をしたはずが、飛行機に乗ってもどういうことか恐怖を感じない。
彼には航空会社に雇われたセラピスト、ビル・パールマンがつけられることになった。
無事に帰宅したマックスは、妻ローラや息子、友人達と涙の再会。
翌朝、自宅から出ると大勢の報道陣がインタビューに集まっていた。巷では大勢の乗客を助けた英雄として称えられるマックス。
彼はその場から逃げ出し、光に目が眩んで車が行き交う道路へと踏み出す。轢かれてもおかしくない状況だったが、彼は恐怖を感じることなく無事に道路を渡り切り、神は自分を殺せないのだと傲慢に言い放つのであった。
映画『フィアレス』のあらすじ【承】
その後、帰宅したマックスは疲れてベッドへと横たわる。そこで彼は、飛行機が墜落する前の記憶を夢に見た。
共同経営者と共に飛行機へ乗ったマックスは、飛行中に妙な音を耳にする。何か異変が生じていると感じていたが案の定、飛行機が激しく揺れ始める。マックスは恐怖に怯え、窓の外に光を見て死を覚悟する。直後、彼は恐怖を感じなくなり無我の境地へと至るのだった。
後日、マックスはビルの紹介でカーラという女性と会う。彼女も墜落事故の被害者だったが、そのせいで大事な子供を亡くしてしまい、深い悲しみと絶望で生きる気力を失っていた。
カーラは神を信じているが、マックスは無神論者だ。故に彼は人の生死に理由はなく、危険はどこにでもあると言う。それでも、マックスは自分といれば大丈夫と謎の自信を持っていた。なぜなら、自分はもう死んでいるからである。
その話を聞いたカーラは急に涙ぐむ。彼女は事故当時の記憶を思い出し、抱いていたはずの我が子がいないことに愕然とする。彼女の両手をマックスが掴むことで、カーラは彼に救いの道を見出すのだった。
マックスは日に日に様子がおかしくなり、ロボットのような話し方をして毎日、建物ばかりを見ている。そんな夫が心配なローラはビルから話を聞いた。
マックスは現在、死に対して鈍感になっている。恐怖を克服すればするほど、感情は麻痺し理性を失う。彼はカーラと会い、彼女に大きな愛を感じると言った。ローラにしてみれば、聞き捨てならない言葉であったが、ビル曰くマックスはカーラを助けたいと思っているのだろう。ビルにとっても2人を会わせることは、大きな賭けだった。
数日後、ビルは墜落事故の被害者を集め、グループセラピーを行うことにした。被害者を輪に座らせ、1人ずつ事故当時のことを語るのである。これにはカーラが参加していたが、彼女はCAを強く責め立て会場から飛び出してしまう。
一方、マックスは航空会社から補償金を得るため、弁護士の元へ赴いていた。弁護士はより多くの補償金を勝ち取ろうとして、被害者であるマックスに嘘を吐けと言う。だが、マックスは嘘が嫌いなので、訴訟に乗り気ではない。そんな彼の態度に、亡き共同経営者の妻が腹を立て責め立てる。マックスは傷ついてしまい、好きなようにすればいいと立ち去るのだった。
映画『フィアレス』のあらすじ【転】
彼はその足でビルの屋上へ行き孤独に苛まれる。そして、屋上の縁に立って叫び声を上げた。すると、次第に心が凪ぎ穏やかな気持ちになる。そんな夫を目にしたローラは、強い危機感を覚えるのであった。
その後、ローラはマックスに心を開くよう話すも彼は、墜落事故は人生最高の出来事だったと言う。ローラは彼がそう言うのなら、自分も墜落事故に遭えばいいと言うも、マックスはそんなことをしても、自分の気持ちなど分かるわけがないと言うのだった。
そんなある日、マックス夫妻は感謝祭を祝うために友人知人を招き、食事会を開催。テーブルには豪勢な料理が並び、ローラは子供達とダンスを披露。食事会は和やかに進んだ。
しかし、マックスの息子が他の子供達を引き連れて、自分の部屋でゲームをし始める。そのことに苛立ちを募らせたマックスは、息子からゲーム機を取り上げ食事会へ戻るよう叱った。すると、息子は父親に対し反論してくる。そのせいで、止めに入ったローラとマックスが喧嘩してしまい、妻は夫に家から出て行けと口にしてしまうのであった。
その日の内に家を出て、ホテルの部屋へ入ったマックス。彼はあの後もカーラとの逢瀬を続け、関係は更に親密になっていた。カーラの夫は航空会社との訴訟で揉めており、妻のことを慮ってはくれない。それ故に夫よりも同じ経験を持ち、気持ちを共有できるマックスといることを望んだのだった。
2人はクリスマスカラーに彩られたショッピングモールでデート。マックスは買い物中の母子の姿を見るカーラを慮り、彼女が失った子供に贈り物を贈ろうと提案。そして、マックスは13歳の時に亡くなった父親にも贈り物を買おうと決める。父親には工具セット、カーラの子供には積み木を選んだ。
2人はまるで付き合いたてのカップルのように閉店まで楽しんだがその帰り、車での移動中にカーラが泣き始める。そして、彼女は誰にも話していない秘密をマックスに明かした。
飛行機が無事にトウモロコシ畑へと着陸できたと思ったカーラは、もう大丈夫だと子供から手を放した。だが次の瞬間、機体が大きく揺れ気付いたら子供がいなくなっていたと言う。彼女は事故のせいで子供を失ったと話していたが、実は彼女自身が手放したせいで子供は死んだのである。
映画『フィアレス』の結末・ラスト(ネタバレ)
マックスはカーラが嘘の証言をしていたことにショックを受ける。だが、カーラはヒステリックに泣き喚きマックスの話を聞こうともしない。カーラは更に泣き叫び、耳を塞ぐ始末。困り果てたマックスは一旦、車から降りていい案を思いつくのだった。
カーラを車の後部座席へと座らせ、工具箱を子供に見立てて腕に抱かせる。その後、彼は車を急発進させ、子供を手放さず絶対に守れとカーラに声をかけた。そして、そのまま突き当りの壁へと正面から突っ込むのである。凄まじい衝撃にカーラが抱いていた工具箱は、フロントガラスを突き破って車外へと吹っ飛ばされた。
その後、病院へと搬送された2人。カーラは軽症だったが、マックスは重傷で集中治療室に入った。壁に激突したことで、墜落時の状況を理解したカーラは、罪の意識から解放される。全ては衝撃のせいだったのだ。自分が手放したのではなく、衝撃があったから子供が手から離れたのである。彼女は駆け付けたビルにそう話した。
しばらく後、怪我から回復したカーラがローラの元を訪れる。カーラはマックスとの間には友情しかないと言い、自分を救ってくれた天使なのだと告白。だがローラは、彼は天使ではなく普通の人間であり、カーラの救いにはなっても本人にとっては救いにならないと言うのだ。それを聞いたカーラはマックスの見舞いへ行き、彼に別れを告げるのだった。
カーラから自宅へ戻って、自分のことをもっと心配しろと言われたマックス。自宅へ戻りローラに助けを求めた。その直後、自宅へ弁護士が訪問。どうやら訴訟に勝利したらしく、多額の補償金を獲得した様子。弁護士は土産として果物の盛り籠を持参していた。
そこで、マックスはイチゴを口にしてみる。弁護士は早口で話し続けていたが、そこへローラが戻り、夫が手にしているものを見て慌ててイチゴを奪った。すると、マックスは呼吸困難に陥り倒れてしまう。
マックスの脳裏には、墜落時の凄まじい記憶が蘇った。ローラはすぐさま救急車を呼び、人工呼吸を行う。一時、彼の呼吸が停止したが、妻の祈りが届いたのか奇跡的に息を吹き返す。マックスはローラを強く抱き締め、自分は生きていると泣きながら口にするのであった。
映画『フィアレス』の感想・評価・レビュー
飛行機の落下事故という普通の人では経験できないことが起こった主人公が「死」を感じどのように気持ちが変化するのかという物語だが、実際に経験した人でなければ感じることが出来ないことなので主人公の行動が理解できないことも多く、そんな行動や考えがとても興味深くて最後まで楽しんで観ることが出来た。
ラストまで観ると彼の理解出来なかった今までの行動も分かるような終わり方だったのでいい収まり方だなと思った。(女性 20代)
航空機墜落事故に遭ったために恐怖を感じなくなってしまった男性の行動と心の傷が癒されていく様子を描いている。
心身共に危険を感じた時、人の脳は思わぬ結果を叩き出す。主人公は元々、神経質で飛行機が苦手だった。故にあまりの恐怖に心が耐え切れず、いわゆる心の向こう側へ行ってしまったのだろう。その結果、恐怖を感じなくなったと思われる。本来なら子供を失った女性のようにトラウマを抱え、心のバランスを崩すのが当たり前のことと思う。果たして、主人公のように無我の境地へ渡ってしまうのと、その手前で心を痛め続けるのとどちらが幸せなのだろうかと考えさせられる作品。(女性 40代)
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