映画『フライト』の概要:『フライト』は、デンゼル・ワシントン主演のヒューマンドラマ。旅客機のパイロットとして事故を最小限に留め、英雄と称えられた機長だったが、血液検査でアルコールが検出されたことで世間の評価が一変する。
映画『フライト』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:138分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
- 監督:ロバート・ゼメキス
- キャスト:デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン etc
映画『フライト』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『フライト』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『フライト』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『フライト』 あらすじ【起・承】
旅客機の機長であるウィップは、その日寝不足のまま目覚める。昨夜から恋人兼同僚のトリーナと過ごし、今日は9時にフライトが控えている。
目を覚ますためにコカインを吸引し、ウィップはアトランタ行の旅客機に乗った。
天候は悪く、離陸後すぐに乱気流によって機体は不安定になるが、一流のパイロットであるウィップは難なく切り抜ける。
安定するとウィップはオレンジジュースにウォッカの小瓶を二本開けて飲み、しばらくは副操縦士のエヴァンスに任せてひと眠りした。
しかし、機体は突然急降下し始め、ウィップは目を覚ます。制御不能で、車輪を出したり燃料を捨てたりと対策をとるが、どうにもならない。
このままいけば乗客乗員全員が無事ではすまず、目の前の住宅街に突っ込んで大参事になってしまう。ウィップは機体を反転させて背面飛行することで水平を保ち、人の少ない野原に着陸させた。
ウィップの機転によって被害は最小限に留められたが、乗客4名・乗務員2名が亡くなった。
病院で目を覚ましたウィップは、海軍パイロット時代の同僚チャーリーか現状を聞かされる。ウィップは軽傷で済んだが、死者が出たこと、そしてその中にトリーナがいることを知り、悲しむ。
世間は奇跡的な着陸を果たしたウィップを英雄視し、病院の周りや自宅はマスコミで溢れていた。
映画『フライト』 結末・ラスト(ネタバレ)
退院したウィップは、酒類をすべて処分し、酒をやめると宣言。
チャーリーに呼び出された先で、事件は飛行機の故障であると説明されるが、そこには弁護士の姿もあった。
実は、ウィップの血液・毛髪からアルコールと薬物の反応が出ており、これが事故の原因とされる可能性が浮上したのだ。事故の調査委員会にこのことが知られ、過失致死となればウィップの終身刑は免れない。
チャーリーらのパイロット組合はウィップを守るために弁護士を呼んだのだった。
これを知ったウィップは自分の人生が終わるかもしれない恐怖に愕然とし、やめることを誓った酒をまた大量に買い、煽るように飲んでしまう。
ウィップはアルコール中毒であった。元妻にはそれが原因で離婚を突き付けられ、息子ともろくに会話できない。最近知り合った女性にはまたアル中が原因で逃げられてしまう。
ウィップの奇跡的な操縦をシミュレーションで知り、尊敬すらしたという弁護士は、機内で飲酒したという告白を聞いて軽蔑する。しかし、それでもなおウィップを守るために動いてくれた。
調査委員会の公聴会当日。
アル中のウィップを10日ほど監視してくれたチャーリー、そしてこの日のために尽力してくれた弁護士を裏切り、ウィップは夜中から酒を煽り、酔った挙句トイレで倒れていた。
コカインで目を覚まし公聴会に臨み、飲酒については全てを否定した。しかし、調査委員会がトリーナからアルコールが検出されたことを聞かされ、「彼女がウォッカを飲んだと思うか」と尋ねられた時、ウィップは激しく動揺する。そして、「自分が飲んだ」と答えたのだった。
その後、刑務所に入ったウィップは、酒を断ち、過去を悔い、今やっと自由になって晴れ晴れとしていた。
映画『フライト』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『フライト』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
メインは航空サスペンスではない
他の国ではどうかはわからないが、日本での宣伝(予告編など)では、単純な航空サスペンスのように感じられた。しかし、ストーリーのメインはアルコール中毒の主人公が世間からヒーローとして見られながら、それが脅かされそうになる、人生すら左右してしまいかねない事態になり、自分自身とどう向き合っていくか、というドラマである。
勿論、冒頭から数十分の飛行機事故の場面は迫力満点である。
素人目には何が何やらわからないが、このシーンは実際に起こったさまざまな航空事故を調べた上で作られたようで、航空関係者から見てもかなりリアリティのあるいい出来であったらしい。急降下する機体を反転させて背面飛行し、水平を保つなんて簡単にできることなのだろうか?背面飛行自体、戦闘機くらいでしか見たことがない。『永遠の0』では確かそんなシーンがあった。旅客機では、誤作動などのミスでしか事例を聞いたことがないので、この選択は一か八かの懸けだったか、よっぽど自信があったかだろう。
航空サスペンスがメインではないとはいえ、このシーンだけでも相当の労力が割かれていると思う。
ヒーローは完璧でなければならないのか
主人公ウィップは、事故を最小限に留めたことで一躍ヒーローとなるが、彼の実生活はヒーローとは程遠いものである。
常にアルコールを摂取し、大勢の命を預かる仕事中でさえ酒を飲む。倫理的に見てヒーローとは言えない。彼の中毒症状は相当なものらしく、どれだけ酒を絶とうと決めてもすぐに手を出してしまう。
それでも、事故の原因はウィップの飲酒にはなく、機体の故障が原因である。ウィップが乗客乗員を救ったことに違いはないのだが、世間は事実を知ると幻滅するのである。
最後、飲酒の事実を告白して刑務所に入ったことはわかるが、事故の責任を取らされたのか、それとも単に薬物とアルコールのために逮捕されたのか、その辺はわからないが、やはり世間はウィップへの評価を変えただろう。ヒーローは完璧でなければならないのか、善でなければならないのか、この疑問が大きなテーマだと思う。
映画『フライト』 まとめ
アカデミー賞の多数の部門でノミネートされたが、どれも受賞には至らなかった。ストーリーは途中飽きてくるところもあったが、アルコール中毒の主人公の心理描写は丁寧で良かった。アルコールを長い間絶った後、偶然開いていたホテルの隣室冷蔵庫で大量の酒のボトルを見つけるところなんて、暗い部屋で大量のボトルを照らす冷蔵庫の明かりや、一度ボトルを開封してまたキャップを閉じ、ボトルをひっつかむところは、アル中の心理がなんとなくわかる演出で、素晴らしかった。
みんなの感想・レビュー