この記事では、映画『害虫』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『害虫』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『害虫』の作品情報
上映時間:92分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:塩田明彦
キャスト:宮崎あおい、田辺誠一、沢木哲、天宮良 etc
映画『害虫』の登場人物(キャスト)
- 北サチ子(宮崎あおい)
- 中学生。母の自殺未遂などが原因でどこにも居場所を見つけられないでいる。自由なタカオと出会って惹かれていく。小学校時代に、担任の緒方に恋をしていた。
- 緒方智(田辺誠一)
- 元教師。サチ子との仲を疑われて教師の職を失う。現在は秋田原子力発電所で働いており、サチ子とは文通をしている。
- タカオ(沢木哲)
- 地元の不良少年。当たり屋などでお金を稼いでいる。サチ子とはいつも一緒にいる。地元のヤクザに目をつけられている。
- 山岡夏子(蒼井優)
- サチ子の同級生。優等生で、サチ子のことを放って置けない。サチ子とは真逆の性格である。
映画『害虫』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『害虫』のあらすじ【起】
中学一年生の北サチ子は、学校に行かずに川沿いを歩いたり図書館で時間を潰したりしている。図書館では、誰かと交わしている文通の返事を書いたりしている。
サチ子は母の稔子と二人暮らしをしている。かつて稔子は恋人に捨てられた悲しみで手首を切り、自殺を図ったことがあった。サチ子の学校では悪い噂が立ち、それが学校に行けなくなった原因の一つでもある。
夜、サチ子が道を歩いていると後ろからスーツを着た男がつけて来る。それをタカオという青年が助ける。学校へ行かないサチ子は、タカオと川沿いを散歩したりして時間を潰している。タカオの前では、家でも学校でも見せることのない笑顔を見せるのだった。
サチ子とタカオはキュウゾウという人物のもとを訪れる。そこはダンボールなどで作られたホームレスの家だった。
稔子と男がバーで飲んでいる。家に帰った稔子は涙を浮かべながら玄関で床を叩き、壁にもたれかかる。
ある日、山岡夏子というサチ子の同級生がサチ子の家を訪ねて来る。稔子はサチ子に、サチ子が学校に行っていないという事を夏子から聞いたと伝える。稔子は、サチ子が学校に行っていないことを知らなかったのだ。しかし、決して怒らない稔子の優しさに対して何も反応せず、サチ子は無言で部屋へと戻る。
映画『害虫』のあらすじ【承】
小学生時代のサチ子は、担任の緒方という教師に恋心を抱いていた。そして、度々緒方の自宅へと足を運んでいた。サチ子の文通相手は緒方だったのだ。
いつものように友人と登校する夏子。すると、サチ子が自宅から出て来る。友人たちは夏子に、サチ子は夏子の気持ちを分かっていないと言い、小学校時代に担任といけない関係にあったのだという噂話を始める。
車を電話しながら運転している男の前に人が飛び出してくる。倒れていたのはキュウゾウで、そこにタカオが駆けつける。彼らは当たり屋だったのだ。騙し取ったお金をタカオはサチ子に見せびらかしている。
ある日、地元のヤクザに目を付けられていたタカオはリンチされる。
キュウゾウとサチ子がタカオの部屋を訪れる。するとそこには、顔面傷だらけのタカオがベッドに寝ていた。病院には行けないというタカオ。そしてサチ子に、今いくら持っているのかと尋ねる。サチ子はお金なら母に貸してもらうと言ってその場を去る。
サチ子はラブホテルの前をうろついている。売春でお金を得ようとしていたのだ。するとそこへ、男が話しかけにくる。サチ子は怖くなりその場を走り去って行く。
映画『害虫』のあらすじ【転】
サチ子が家に帰ると、そこには母と恋人の徳川がいた。あからさまに嫌な顔をするサチ子。
サチ子はタカオのもとへと訪れると、当たり屋をやると言い出す。タカオはそれを止めるが、サチ子はやると言って聞かない。しかし、結局サチ子は恐怖から飛び込む事が出来なかった。
翌日、サチ子との待ち合わせの時間に現れなかったタカオ。サチ子は心配してタカオの部屋を訪れると、そこには知らない男の死体があった。
サチ子からの手紙を読んでいる緒方。緒方はサチ子との関係を疑われ教師としての職を失い、秋田県の原発で働いている。
夏子に連れられて学校に登校するサチ子。夏子は積極的にサチ子がクラスに馴染むように行動する。まるで優等生を演じるようにサチ子と接する夏子。するとある日、夏子の好きだった花坂董平という男子生徒がサチ子に告白をする。サチ子は、夏子の気持ちに気づいていながらすんなりと董平と付き合うことにする。サチ子は夏子の優等生ぶりをあまりよく思っていなかった。夏子はサチ子に、応援するからと強がりを言うのだった。
映画『害虫』の結末・ラスト(ネタバレ)
サチ子が家に帰ると母の姿はなく、徳川がいた。夏子が、間違えて持って帰ってしまったサチ子のノートを届けにサチ子の家に行くと、徳川がサチ子を襲っていた。そこへ稔子も帰ってくる。夏子は稔子に、サチ子が可哀想だと訴える。
再び学校にはサチ子の噂が飛び回る。必死に夏子はサチ子とコミュニケーションを取ろうとするが、サチ子の態度は冷たい。
ある日、サチ子はキュウゾウに再会する。董平とも別れ、キュウゾウと行動を共にするようになったサチ子は再び学校へ行かなくなる。キュウゾウと色々な悪戯を楽しむサチ子。しかし、そこにはタカオの姿はない。タカオはヤクザに殺されてしまっていた。
大量の火炎瓶を作ったサチ子とキュウゾウは、悪ふざけでそれらに火を点けて夏子の家に投げ込む。夏子の家は炎上し、恐怖を覚えたサチ子はヒッチハイクでトラックに乗り込み、その場を逃げ去る。
ヒッチハイクを続けてサチ子が向かったのは秋田原子力発電所だった。サチ子は緒方に電話をかけ、喫茶店で待ち合わせする約束をする。
喫茶店で緒方を待っているサチ子。待ち合わせの時間は過ぎたが緒方は現れない。緒方は車のトラブルで遅れていたのだ。するとサチ子の目の前に若い男が座る。その男はサチ子をナンパし、サチ子はその男について行く。男の車に乗り、喫茶店を後にする二人と入れ違うように緒方が到着する。遠くなる喫茶店の中に緒方を見つけるサチ子。しかし、サチ子は再び前を向き、車に揺られるのだった。
映画『害虫』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
本作は、家にも学校にも自分の居場所を見つけることができない思春期の主人公サチ子の不安や葛藤を描いた青春ヒューマンドラマ作品。
まだ幼さの残る宮崎あおいや蒼井優、田辺誠一といった豪華な俳優陣がキャスティングされている。
家と学校という二つの世界しか知らない子どもにとって、その両方に居場所がないことの孤独や苦しみほど辛いものはないと思う。自分の過去を振り返って、主人公に強く共感した。
そして、鑑賞後も腑に落ちないモヤモヤとした余韻が残る作品。(女性 20代)
どこか薄幸で陰があるのに幼く可愛らしく、図らずも周囲を破滅させてしまう、そんなアンバランスな少女サチの物語。初めは典型的なファムファタルの話かなという印象だったが、自身も周りも悪循環に陥っていくあまりの救いのなさと、それに反して淡々と進む展開に妙なリアルさを感じゾッとした。時折垣間見えるサチの子供らしい純粋さが、欲に塗れた大人たちの汚さを引き立たせ、鑑賞後はモヤモヤと嫌な無力感が残る、インパクトの強い作品だった。(女性 20代)
学生時代って「学校」と「家庭」が世界の全てと言っても過言では無いですよね。そのどちらにも居場所が無いサチ子はとても可哀想だと感じると同時に「愛」が欲しかっただけなのだろうと強く感じました。
サチ子のことを可哀想と感じたのはもちろんですが、サチ子にも原因がある様に思います。愛情を受けられなかったせいでひねくれてしまったと言われれば納得できますが、もっと誰かに頼って助けて貰ってもいいのになと感じました。
とても複雑な何とも言えない気持ちになる作品です。(女性 30代)
主演が大好きな宮崎あおいということだけで鑑賞した作品。観たのは10年以上も前だが、改めて観ると友達役は蒼井優、憧れの先生役は田辺誠一と豪華メンバーであったことに驚いた。家の中にも学校にも居場所がない思春期の女の子を描いた作品で、思春期ならではのモヤモヤを増幅させたような作品。とはいえ家庭環境も特殊で、共感できるような部分は多くはないが、なぜか見入ってしまう不思議な作品である。何度も観たくなる作品ではないが、忘れられない作品。(女性 20代)
ただひたすらに孤独を描いた作品だった。友達も家族も信用できず、誰にも頼れないサチ子が最後に選んだのは「独りで生きる」こと。あの無言の決意があまりにも重たかった。淡々と進むけど、ものすごい力を持った映画。(10代 女性)
何気ない日常の中に潜む絶望を、こんなにも静かに、でも確実に伝えてくる映画はなかなかない。サチ子の無表情さの裏に隠れた痛みを想像すると、涙が止まらなかった。宮崎あおいの演技がすべてを物語っていた。(20代 女性)
「害虫」というタイトルの意味をずっと考えながら観た。社会から疎まれ、居場所を奪われた子どもたちのことを、そう表現したのかもしれない。救いのないラストに、ただただ無力感を感じた。深く心に残る映画だった。(30代 男性)
登場人物たちが皆どこか壊れていて、でも誰も本当には悪くない。そんなやりきれなさが全編に漂っていた。サチ子が何も言わずに自分の道を選んだ瞬間、言葉にならない感情がこみ上げた。静かな名作。(40代 女性)
普通の青春映画を期待して観たら、完全に裏切られた。でもこの作品に描かれているのは確かに「リアルな青春」だと思う。どこにも行けない若さの閉塞感、孤独、絶望。全てが胸に突き刺さる映画だった。(50代 男性)
孤独と絶望をこれほどまでに静かに描き切った映画は初めてだった。サチ子の心の中にずっと溜まっていた「助けて」が聞こえた気がする。派手な演出は一切ないけれど、それが逆にリアルで圧倒された。(60代 女性)
映画『害虫』を見た人におすすめの映画5選
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
「孤独な子どもたちの静かな叫びが胸に響く、究極のリアルドラマ」
どんな話?
東京の片隅で、母親に置き去りにされた4人の兄妹が、誰にも知られず生き延びようとする姿を描く。日常の細部を丁寧に積み重ねながら、子どもたちの純粋さと残酷な現実を静かに映し出します。
ここがおすすめ!
淡々とした演出ながら、観る者の心を締め付ける力を持った作品。『害虫』と同じく、大人に見捨てられた子どもたちの孤独と強さを描いており、深い余韻が残る映画です。
リリィ・シュシュのすべて
この映画を一言で表すと?
「壊れていく心と、救いを求める少年たちの痛ましい青春」
どんな話?
インターネット掲示板を通じて交流する少年たちの、表と裏の顔、暴力、裏切りを描く。音楽アーティスト・リリィ・シュシュを心の拠り所にしながらも、現実に押しつぶされていく中学生たちの苦しみが描かれます。
ここがおすすめ!
鮮烈な映像美と共に、青春の痛みを生々しく映し出す名作。『害虫』で感じた胸を締めつけるような閉塞感や、少年少女の孤独に共鳴した人には強くおすすめできる一作です。
誰かの花
この映画を一言で表すと?
「社会の片隅で生きる人々の、痛みと希望を描く静かなドラマ」
どんな話?
ある事故をきっかけに、関わる人々それぞれの孤独や喪失が浮き彫りになっていく。直接的な感情の爆発を避け、淡々と日常の中に潜む痛みを掬い上げた繊細な人間ドラマです。
ここがおすすめ!
大きな事件も劇的な展開もないのに、心の奥に深く刺さる。『害虫』に共通する、登場人物たちの孤独と静かな絶望感を丁寧に描いた作品です。静かな映画が好きな方に特におすすめ。
おくりびと
この映画を一言で表すと?
「生と死の境界で、人間の尊厳と再生を描く感動作」
どんな話?
仕事を失った青年が、納棺師という仕事に出会い、死と向き合いながら自らの生を見つめ直していく物語。日本の伝統文化を背景に、生と死、家族の絆を繊細に描いています。
ここがおすすめ!
人生に絶望しかけた人間が、死を通して生きる意味を見出していく過程に心を打たれます。『害虫』のように、静かに人生の本質を問いかける映画を探している人にはぴったりの一作。
鉄コン筋クリート
この映画を一言で表すと?
「壊れた街で生きる少年たちの絆と孤独を、鮮烈な映像美で描く」
どんな話?
混沌とした街「宝町」で生きる二人の少年、クロとシロの物語。暴力と優しさ、破壊と救済が交錯する中で、彼らが抱える孤独と絆が浮かび上がる。
ここがおすすめ!
スタイリッシュなアニメーションながら、描かれているテーマは深く重い。『害虫』のように、誰にも救われない孤独と、それでも誰かを想う気持ちを描いた作品を探している人にぜひ観てほしい一本です。
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