この記事では、映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』の作品情報
上映時間:90分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:サリー・ポッター
キャスト:エル・ファニング、アリス・イングラート、アレッサンドロ・ニヴォラ、クリスティナ・ヘンドリックス etc
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』の登場人物(キャスト)
- ジンジャー(エル・ファニング)
- 16歳の多感な時期を迎えた少女。ローザとは同じ日に同じ病院で生まれ、それ以来ずっと親友。冷戦時代のロンドンで、核戦争による世界の終わりに怯えている。繊細な心を持っており、詩人になりたがっている。
- ローザ(アリス・イングラード)
- ジンジャーの親友。父親は幼い頃に出て行き、母子家庭で育った。父親の違う幼い妹や弟がいる。ジンジャーよりも早熟で、男性経験も豊富。親の愛情に飢えて育ったため、永遠の愛を求めている。
- ローランド(アレッサンドロ・ニヴォラ)
- ジンジャーの父親。“パパ”と呼ばれるのを嫌い、娘にも“ローランド”と呼ばせている。平和主義者で、“自由の概念”という記事を書き、仲間とそれを発行している。妻のナタリーとうまくいっていない。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』のあらすじ【起】
1945年、広島に原爆が投下された日、ジンジャーとローザはロンドンの同じ病院で生まれた。母親のナタリーとヌシュカは意気投合し、ジンジャーとローザも双子の姉妹のようにして育つ。しかしローザは父親に捨てられ、心に傷を負ったまま成長する。
1962年。アメリカとソ連の冷戦が続き、世界中が核兵器の脅威に怯えていた。16歳になったジンジャーは、相変わらずローザと大親友だった。
ローザはタバコや酒を覚え、セックスも経験済みだった。ジンジャーはまだ幼く、ローザと一緒ならば、何をしていても楽しかった。夜中の2時に帰宅した2人を、ジンジャーの母親のナタリーは叱るが、父親のローランドは何も言わない。ローランドはジンジャーにとって自慢の父で、ローザもローランドを慕っていた。
ラジオでは連日のように世界の危機が伝えられ、ジンジャーは死への恐怖を感じる。ジンジャーは単純に世界の終わりを恐れていたが、ローザは永遠の恋人がいれば救われると考えていた。核兵器反対の抗議活動に興味を示しているジンジャーに、ローザは教会で祈ることを勧める。
何をするのも一緒で、何でも話し合ってきたジンジャーとローザだったが、その関係は少しずつ変化し始めていた。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』のあらすじ【承】
ジンジャーとローザは外出することが多くなり、母親から注意を受ける。それでも2人は母親の言うことなど無視して、核兵器反対の集会へ出かける。年上の人ばかりの集会は、何となく居心地が悪かった。
ジンジャーの両親は、最近うまくいっていない。ジンジャーはベッドの中で2人の口喧嘩を聞きながら、ノートに詩を書く。ジンジャーはいつか詩人になりたいと思っていた。ジンジャーは、“私たちはもうすぐ死ぬ”とノートに記す。
自由を愛するローランドは、家庭を持ち父親になっても、俗物的な人間になることを嫌っていた。ジンジャーはそんなローランドを尊敬しており、集会に出たことや詩を書いていることを話す。一方ナタリーは、毎晩帰宅の遅いローランドに、苛立ちを募らせていく。
核兵器反対のデモ行進に参加したジンジャーとローザは、ブロンド美女と車で走り去るローランドを見かける。この女性のことは、ナタリーも気づいていた。
ナタリーは愚痴っぽくなり、ローランドの顔を見ると、嫌味を言うようになる。ローランドはそんなナタリーに嫌気がさし、ボートに逃げる。ジンジャーやローザは、夫や子供に振り回される母親を見て、あんな風には絶対になりたくないと感じていた。
ジンジャーとローザは、ローランドのボートに乗せてもらう。ローザは繊細で情熱的なローランドに、異常な興味を示すようになる。ローザは“ローランドの気持ちがわかる”と言って、彼に手紙を書き始める。ジンジャーはなぜか不愉快になり、見知らぬ男と酒を飲んで帰宅する。
ナタリーはそんな娘をたしなめる。ジンジャーはナタリーに、“ママみたいにはならない”と反発し、家を出ようと考える。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』のあらすじ【転】
ジンジャーは、学校をさぼってローランドのところへ行く。ローランドは、仕事仲間と一緒に、古い建物で暮らしていた。ジンジャーは、“ここで暮らしたい”と頼んでみる。ローランドは戸惑いつつも、仲間に聞いてみると約束する。ナタリーの友人のマークおじさんは、“焦って大人になるな”とジンジャーにアドバイスする。
ローランドから手紙の返事をもらったローザは、ボートへ行く約束をしていた。ローランドは、ジンジャーも誘うべきだと言っているらしく、ローザは“一緒に来る?”とジンジャーに聞いてみる。ジンジャーはとても不愉快だった。
3人はボートで海へ出る。ジンジャーは、親密そうに話す父親と親友の姿を、なるべく見ないようにしていた。その晩は、3人でボートに泊まる。ジンジャーは、夜中にローザの喘ぎ声を聞き、布団の中で泣きながら震えていた。
ローランドの家で暮らし始めたジンジャーは、孤独な日々を送る。ローザもこちらの家に出入りするようになり、料理まで作り始める。ローランドはローザを賞賛し、ジンジャーの目の前でいちゃつく。ジンジャーは深く傷つき、黙って涙を流す。
ジンジャーはいたたまれなくなり、母親の家に帰る。ナタリーは結婚してからやめていた絵を再び描き始め、自分の世界を持とうとしていた。ここにも居場所がないと感じたジンジャーは、ローランドの家へ戻る。
ローランドは、娘を悲しませていることに気づいており、自分には父親の資格がないと話す。ジンジャーは、ただとても悲しかった。ローランドは、“真実の愛には身を委ねるしかない”と言いながら、ナタリーにローザのことは言わないよう、ジンジャーに頼む。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』の結末・ラスト(ネタバレ)
ローザは、傷ついたローランドを自分なら救えると思っていた。ジンジャーはローザの思い上がりに怒りを感じ、彼女と激しく衝突する。“年をとれば絶対に捨てられる”とジンジャーに言われ、ローザは妊娠したことを打ち明ける。信じがたい事実を告げられ、ジンジャーの目の前は真っ暗になる。
ジンジャーは、衝動的に家を飛び出し、違法な抗議活動の集団に加わる。活動家たちは次々と警察に身柄を拘束され、ジンジャーもパトカーに乗せられる。それきりジンジャーは、何も喋らなくなる。
ジンジャーを診察した精神科医は、“反対運動の裏に精神的な問題が隠れている”と話す。留置場から家へ戻っても、ジンジャーは言葉を口にせず、ただ涙をこぼしていた。ナタリーはそんな娘を心配し、“ローザを呼んだ”とジンジャーに伝える。
ローザが来ると聞いて、ジンジャーの様子が一変する。ジンジャーはパニック状態に陥り、“絶対に言えない、言ったら私が爆発する”と怯えたように叫ぶ。そしてついに“ローランドがローザとセックスしている”と口走ってしまう。
その場にいたローランドもそれを認め、今度はナタリーが取り乱す。母親とやってきたローザは、黙ってお腹に手を当てていた。その様子から、みんなはローザの妊娠を悟り、ナタリーは2階の部屋に閉じこもってしまう。
ドアを壊して部屋へ入ると、ナタリーは大量の薬を飲み、自殺を図っていた。ローザは、“許して”とジンジャーに懇願する。しかしジンジャーは、何も答えない。
ジンジャーとローランドは黙り込んだまま、病院の待合室でナタリーの回復を待つ。ジンジャーはノートにローザへの想いや自分の気持ちを書き始める。ローランドはジンジャーに謝罪するが、ジンジャーは何も答えない。ただノートにだけは、“許すよ”と書いていた。
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
この行き場のない感情を理解し愛し、次に進もうと辛くても前を見ているジンジャーはとても強い子だ。彼女は、核兵器の爆発に怯える少女のはずだったのに、残酷な現実が彼女の心を振り回し、かき乱したのだ。
生まれてからずっと一緒の親友が自分の父親と愛し合うようになる。愛している自分の世界を親友を父親を受け入れようと葛藤し、涙し、爆発するシーンがとても印象的だ。
この映画は、エル・ファニング演じるジンジャーの揺れ動く繊細な心模様を写しているが、魅力はそれだけではない。少し冷たさを感じる時代の映像にも注目してほしい。(女性 20代)
友人、家族、恋愛、戦争、色んな出来事に心を動かす少女達の姿が、リアルに描かれていたと思う。大人になった自分が改めてジンジャー達の姿を見ると、初々しさと同時にどうしようもない息苦しさを感じた。何とか幸せになろうと必死に足掻いている彼女達の姿が、目に焼き付いた。
ジンジャーの立場から見たら、ローザの行動はとても受け入れられるものではないと思う。でも、愛に飢えたローザも苦しそうで、何とも言えない気持ちになった。(女性 30代)
多感な時期だからこそ、多くのことに悩み苦しむのは皆同じだと思いますが、本当だったら悩まなくて良いことまで考えなければいけないようなジンジャーが置かれた環境はとても可哀想で切なくなりました。
親友がいつも近くにいることは、心の支えとなり、とても心強かったと思います。しかし、その関係はとても危うくて少しの価値観のズレから全く違う方向へ進んでいってしまうのだと儚さや悲しみを感じました。
前を向き、他人を理解しよう、許そうとするジンジャーがとても健気でした。(女性 30代)
思春期の痛みや葛藤が、繊細かつ静謐に描かれていて胸に刺さりました。ジンジャーが核戦争の恐怖に怯えながらも、自分の内面と向き合っていく姿はまさに“成長の物語”。しかし親友ロザとの関係の破綻と、父親とロザの関係という裏切りは、思春期の心を粉々にする衝撃で、観ていて苦しくなりました。終盤のジンジャーの怒りと孤独がリアルで、心に深く残りました。(20代 女性)
ジンジャーとロザの関係性が美しく、だからこそ壊れていく過程が辛かった。反核運動を通じて世界の崩壊を恐れるジンジャーと、個人的な愛情に傾くロザ。そのすれ違いは大人になる途中の少女たちが通る分岐点のように感じました。父親の裏切りはひどすぎて、そこからのジンジャーの精神的崩壊が痛々しい。でも最後、彼女が一歩大人になる姿に救われました。(30代 女性)
エル・ファニングの演技が素晴らしい。彼女の目の奥にある不安、怒り、戸惑いすべてが伝わってくる。世界が崩れそうな中で、自分の世界も崩れていく――その二重の恐怖を表現する手法が非常に効果的でした。父親の裏切りと親友のロザとの決別、これは本当に容赦ない。でも、それがリアルな成長物語として描かれていたのが素晴らしかったです。(20代 男性)
どこか詩的で、でも現実的で、決して“甘やかさない”思春期映画でした。特にジンジャーが父の裏切りを知った時の絶望的な表情が忘れられません。信じていた人に裏切られ、親友には裏切られ、唯一の拠り所だった運動にも迷いが生じていく…。ジンジャーが最後に言葉を紡ぐ詩のようなモノローグが、心をじわじわと締め付けてきました。(40代 男性)
1960年代のイギリスという設定だけでも魅力的なのに、そこで描かれるのが少女たちの成長と崩壊の物語というのが素晴らしかった。ロザの選んだ道には正直共感できなかったけれど、彼女なりの愛の探し方だったのかもしれないと、観終わったあとに思いました。ジンジャーが世界の終わりを恐れながらも、結局は「身近な裏切り」に最も傷つく構成が秀逸です。(30代 女性)
核戦争という大きな不安と、少女の内面の揺れがリンクしている構成がすごくうまい。ジンジャーが政治的な問題に興味を持つのも、どこか現実逃避のように思えて、それがまたリアル。思春期の女の子が身の回りの人間関係でボロボロになっていく姿は見ていてつらかったけれど、それを真正面から描いたのは勇気ある映画だと思いました。良作です。(40代 女性)
感情的な爆発が抑えられた作品だけど、それが逆にリアルだった。ジンジャーの“内面の大洪水”は、彼女の表情や視線、言葉少なな態度からひしひしと伝わってきた。父親に裏切られ、親友にも見捨てられる。世界も崩壊しそう。そんな中で、彼女が最後に静かに立ち上がる姿がとても美しかった。派手ではないけれど、深く心に残る作品。(30代 男性)
映画『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』を見た人におすすめの映画5選
17歳の肖像(An Education)
この映画を一言で表すと?
夢と恋に酔った少女が現実に目覚める、美しくも切ない成長物語。
どんな話?
1960年代ロンドン。名門大学を目指す少女ジェニーは、年上の魅力的な男性と出会い、刺激的な大人の世界に惹かれていく。だがその関係の裏にある真実に直面した時、彼女は本当の「自分の道」を見つけていく。
ここがおすすめ!
『ジンジャーの朝』と同じく、思春期の少女が理想と現実の狭間で揺れる姿が丁寧に描かれています。キャリー・マリガンの演技が光る、静かで力強い成長の物語。華やかさと痛みが交錯する余韻の残る作品です。
レディ・バード(Lady Bird)
この映画を一言で表すと?
“わたし”を探す旅は、母とのぶつかり合いの中にあった。
どんな話?
カリフォルニアの小さな町で育つ高校生レディ・バードは、都会への憧れと家庭の現実の間で揺れていた。恋愛、友情、進路、そして母との衝突を通して、彼女が少しずつ大人になっていく姿を描く青春ドラマ。
ここがおすすめ!
10代特有の感情の揺らぎと、その裏にある愛情の不器用さを温かく、鋭く描いた作品です。『ジンジャーの朝』同様、自我の芽生えと喪失感がテーマで、笑って泣けて心に残る映画。親子関係に注目してほしいです。
ヴァージン・スーサイズ(The Virgin Suicides)
この映画を一言で表すと?
少女たちの死が残したのは、美しさと謎と哀しみだった。
どんな話?
1970年代のアメリカ郊外。リスボン家の5人姉妹が次々に命を絶った衝撃の事件。彼女たちに憧れを抱いていた少年たちは、思春期の記憶の中で、彼女たちの心に何があったのかを探し続ける。
ここがおすすめ!
ソフィア・コッポラ監督による少女たちの幻想的で儚い日々。『ジンジャーの朝』のように、10代の繊細な心と、壊れやすい人間関係を描いた本作は、観る者に強烈な余韻を残します。映像と音楽も美しい一作です。
フランシス・ハ(Frances Ha)
この映画を一言で表すと?
大人になりきれない私たちへ贈る、白黒の青春賛歌。
どんな話?
ニューヨークでダンサーを目指す27歳のフランシスは、親友との距離ができ始め、夢と現実のギャップに迷いながら、自分の居場所を探し続ける。軽やかで切ないモノクロ映像が印象的な青春ドラマ。
ここがおすすめ!
人生がうまくいかなくても、どこかに希望がある――そんなメッセージが詰まった作品です。『ジンジャーの朝』のように、友情と自立の間で揺れる女性の姿が共感を呼びます。笑って泣ける、リアルな自分探しの映画です。
マイ・サマー・オブ・ラブ(My Summer of Love)
この映画を一言で表すと?
運命の出会いがもたらした、ひと夏の幻のような恋と崩壊。
どんな話?
イギリスの田舎町で出会ったモナとタムジン、社会も家庭も違う少女同士が、強く惹かれ合う。情熱と依存、嘘と幻想の境界で揺れ動く2人の関係が、やがて静かに終わりを迎える。
ここがおすすめ!
『ジンジャーの朝』と同じく、少女たちの関係性の危うさを描いた心理劇。淡く美しい映像と、心に忍び込むような静かな展開が特徴で、観終わったあとに深く考えさせられる映画です。エミリー・ブラントの演技も必見。
みんなの感想・レビュー