この記事では、映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:アクション、コメディ、フィルムノワール
監督:ボブキャット・ゴールドスウェイト
キャスト:ジョエル・マーレイ、タラ・リン・バー、メリンダ・ペイジ・ハミルトン、マッケンジー・ブルック・スミス etc
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』の登場人物(キャスト)
- フランク・マードック(ジョエル・マーレイ)
- お腹の出た、見た目も考え方も普通の善良なおじさん。妻と娘とは離縁し、隣人のうるさい家族が毎晩騒ぎ、会社では誤解からセクハラで解雇され、更には脳腫瘍が見つかり余命を宣告されて、心身ともに疲弊してしまう。
- ロキシー(タラ・リン・バー)
- 人生に絶望する女子高生。ひょんなことからフランクと出会い、彼の行動に感銘を受けるとともに彼の理解者となる。本人曰く「荒んだ家庭で育っている」そうで、義理の父に毎日性的虐待を受け、母親は麻薬中毒で売春婦だとのこと。
- クロエ(マディー・ハッソン)
- 密着型のリアリティー番組に出演する、セレブ女子高生。誕生日のサプライズプレゼントが欲しかった車(リムジン)と違っていたことで大泣きするくらいにはわがまま。フランクとロキシーが出会うきっかけを作った人物でもある。
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』のあらすじ【起】
妻とも娘にも出て行かれ、壁の薄い狭いアパートで独り暮らしをしている中年フランク。唯一の相棒と言えば、毎度毎度、低俗な番組ばかりを垂れ流すテレビだけ。おまけに隣人は夜だろうと構わず大騒ぎする家族で、ストレスまっしぐらな劣悪環境そのものである。隣の部屋では今夜も赤ん坊が火でもついたかのようにガン泣きだ。フランクは妄想の中で、非常識なその一家を銃で全員撃ち殺す。勿論それは彼の脳内での出来事であり、現実ではないが、そんな風にしてフランクはやり場のない怒りを晴らすのであった。
ある日、フランクは会社で誤解からセクハラによりリストラを言い渡されてしまう。え!? セクハラだって?身に覚えがない!とばかりに慌てるフランクだが、優しくしてくれた女性社員に善意で花束を送ったり、手紙を送っちゃったりしたのがどうも良くなかったらしい。
しかし、フランクに降りかかった不幸はそれでは止まない。追い打ちをかけるかのように、医者からの脳腫瘍の宣告。医者によれば致死量の末期であり、もうすぐ死ぬね、と。1人アパートでフランクは悲観に暮れる。不意にテレビをつければ、流れてくるのはセレブのゴシップニュースや、知的障碍者を笑いものにするのど自慢番組、ヘイトスピーチに人種差別と度の過ぎたゲスな番組が溢れかえっている。まるで今のアメリカの腐敗ぶりを体現したかのようなラインナップだ――アメリカの倫理とは、一体何なのだ? ゲスゲスしい光景を見つめながらフランクは「もういっそ死んじゃおっか……」と自殺を考える。薄暗い部屋で1人、ピストルを口に咥えるフランク。そんな中で目にしたリアリティー番組に映し出された少女に、思わず引き金にかけた指が不意に止まった。少女の名はクロエ。女子高生にしながら金持ちの娘でセレブなクロエは誕生日に欲しかった車が買ってもらえなかったからといって放送中に大泣きし癇癪を起す。フランクはそんな小娘の姿にこのままではいけない、アメリカの堕落はもっと進んでいく一方だ!と自らのモラルに従い立ち上がるフランク。どうせ死ぬなら、この小娘を殺してからだ。
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』のあらすじ【承】
作戦決行日、クロエの撮影現場に忍び込むフランク。フランクの手筈では、1人になったところを狙いクロエを車に閉じこめ、火を放ち車ごと大爆発させて殺そうという作戦であった。……が、失敗し、当初の策とは違うものの拉致して慌てた様子で射殺。とりあえず生意気な小娘を殺すことには成功したのである。その現場を見ていたのは、女子高生のロキシー。のちに、フランクの片腕となる少女である。
クロエを殺したフランクは大急ぎでその場を離れ、彼の泊まるモーテルへと逃げ帰る。予定通り、クロエを殺害後に自分も死ぬつもりであった。しかし、先ほどの目撃者であるロキシーが追いかけてくるなりフランクに自殺を思い留まらせる。ロキシーは先程の光景に興奮し、彼にすっかり心酔してしまったようだ。
「このまま死ねば、あなたはテレビに出ていた女子高生をストーカーした挙句、ふられて殺害して後追い自殺。単なる変態オヤジの殺人犯扱いだわ!違うでしょ!?世の中にはもっと殺すべき馬鹿がいっぱいいるわ!!」
ロキシーの説得にフランクは自殺をやめ、半ば開き直ったように残りの命をかけて彼女と旅に出ることとなった。……そう、殺すべき馬鹿どもを成敗するために!
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』のあらすじ【転】
二人の逃避行は、ロキシーが半ばフランクに意欲を起こさせるような形で始まっていく。ロキシーは積極的な性格で、親子程年の離れたフランク相手にも「私可愛い?それともブス?」などと聞いてみたり、少々こじらせてはいるものの年頃の女の子らしいことを気にもする。一方でフランクは、そんな彼女に対して「子どもには興味がない」と一蹴してしまう。ここで、フランクが一応その辺りの良識がある人物であることが伺える。なので、ロキシーにはきちんと「家に戻らないと家族が心配するのではないか?」と、問いかける。
「母親は薬漬けの売春婦だし、義理の父親は毎日私に性的暴力を振るうから逃げてきたの」
それを聞いて何て酷い、と顔を歪ませるフランク。お互いどこかしら鬱屈とした部分を抱えていたからこそ、2人はこうして出会ったのかもしれない。さて、そんな2人が抹殺していくのは映画館で大声で喋る輩どもや、駐車マナーのなっていない上に逆ギレする奴、最低限のモラルや配慮に欠けた連中はあっさり拳銃で手にかけてゆく2人。2人の旅はニューヨークへと移り、そこでも馬鹿退治を繰り返す。次にターゲットになったのは、テレビ番組で過激な政治番組で銃規制反対を訴える司会者の男性だ。殺される理由の決め手になったのは「視聴者の恐怖を無意味に煽る」からだそうである。ランニング中の司会者を襲い、躊躇いもなく撃ち殺すロキシー。銃規制を反対していた彼が銃で殺される、という何だか皮肉な最期だ。
お次は保守政党の党員を狙撃したり、同性愛反対のデモを行うキリスト教団体の列に車で突っ込んだりと、その制裁もどんどん過激にエスカレートしていく。
そんな中で、フランクの脳腫瘍が実は医者の誤診だったことが判明。ロキシーと共に腐ったアメリカを離れフランスへ移住しようと考えるフランクだったが、ロキシーの両親から捜索願いが出ていたことが分かる。彼女の家庭は至って普通で、ロキシーの身の上話は全て家出娘の作り上げた出鱈目であった。すぐさま両親のもとにロキシーを返すフランク。こうしてフランクは、再び1人になってしまう。
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ロキシーが去り、単身となったフランクが決意したのは、知的障碍者の音痴さで笑いを取るオーディション番組『アメリカン・スーパースター』の関係者を全部抹殺することだった。
武器商人から手に入れたアサルトライフルAK-47を持ち、大量の拳銃と爆弾を武装したフランクは会場へと乱入する。オーディション会場では、例の知的障碍者で笑い種にされているスティーブがオープニングを務めていた。このスティーブ、過去に番組に出たことで自殺未遂をしており、フランクはそこへも怒りが鬱積していた。これがアメリカのあるべき姿で本当にいいのか、とフランクはステージに乱入しスティーブをからかう客や審査員をまずは射殺。騒然となった会場だったが、そこには実家へと戻った筈のロキシーも駆けつけていた。ステージの上でフランクはカメラに向かい、メディアがいかに悪意に満ちているか、そして残酷であるかを嘆き、訴える。己の正義を信じ、スピーチをするフランク。しかし、当のスティーブは自分の自殺未遂の原因は馬鹿にされたからではなくテレビに出してもらえなかったことが原因であったと訂正する。しかし、ここまで来てしまっては引っ込みもきかなくなってしまう。フランクは隣のロキシーに向かって微笑みかけ、そして呟いた。
「君はすごく可愛いよ」
フランクとロキシーは、全てに向かって(何とスティーブさえも巻き込んで!)銃を乱射する。すぐさま突撃してきた警察官達に射殺される、フランクとロキシー……というところでエンドロール。
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
オッサン×少女=断罪モノというジャンルで、『キック・アス』や『スーパー!』と比べられることの多い本作。それらと比べると大分マイルドではあるが、低俗なメディアに対する痛烈な皮肉や批判は本国にも通じる部分があるのではないか。ラストの2人の散り際もまるで2人のために与えられていたかのような聖域のように感じられて切なかった。やっていることは殺人行為なのに嫌悪感を沸かないのはジョエル・マーレー氏の演技力の成せる業か。(MIHOシネマ編集部)
終始呆気にとられながら見ていた。ばっさばっさと人を倒していく様は爽快感があった。現実でこんなことが起これば迷わず逃げるが、作り物の映画なので深く考えずに見るのが良いと思う。ストーリーが分かりやすく、テンポの良さとブラックユーモアが楽しめる作品。やっていることは過激すぎるが、フランクとロキシーの気持ちは分からなくはない。中年男と女子高生という対局な位置にいる二人の、友人のような相棒関係がおもしろかった。(女性 30代)
世の中の低俗さや自分の不運な境遇にうんざりした中年の男が悪いやつ、気に入らないやつを成敗していくストーリー。物語の序盤でフランクが妄想の中で隣人を殺すシーンが出てくるので、まさかの夢オチ?と思いながら鑑賞していましたが、最後の最後までよく分からない作品でした。
やりきった2人が射殺されてエンドロール…という形でしたが、あまりにスピーディーな展開でまだ何かあるのでは?と探ってしまいました。
とてもテンポが良く、呆気にとられているうちに終わってしまったのでもう一度見たいなと思います。(女性 30代)
この映画はブラックコメディの極地。フランクとロキシーが“腐ったアメリカ”に対して一線を越えて暴力で抗う様子は衝撃的でありながら、どこか痛快でもありました。正義感というより、やり場のない怒りのエネルギーを描いている点がリアル。終盤のテレビスタジオでの銃撃は完全に突き抜けていて、言葉を失いました。(30代 男性)
最初はただの風刺映画かと思って観ていたけれど、想像以上に感情を揺さぶられました。現代社会の病理、特にメディアの毒やモラル崩壊を、ここまで極端に描ききったのは逆に清々しい。ロキシーの存在がこの作品をただの暴力映画にしない役割を果たしていて、ラストでの彼女の成長にもグッときました。(20代 女性)
フランクが最初に少女を射殺した瞬間、映画のトーンが決まったと感じた。笑っていいのか、怒るべきなのか分からない不思議な感情に包まれながら、ラストまで一気に観てしまいました。あまりに過激で共感はできないけれど、現代社会に感じる不快感を過激に代弁してくれる“カタルシス”としては痛烈でした。(40代 男性)
倫理的には最悪な内容だけど、なぜか目が離せない。世の中への怒りが暴走していく姿をここまでエンタメとして昇華しているのはすごい。フランクが実は病気だったという設定も哀しみを加えていて、ただの怒れる男じゃないんだとわかる。暴力の中に孤独や絶望がにじんでいて、見終わった後にずっしり残りました。(50代 女性)
ロキシーという存在が良かった。彼女の破天荒なキャラクターが、この殺伐とした物語の中で一種のユーモアと救いを与えてくれた。二人が“悪”を選ぶ動機に共感できる部分があるのが怖い。最後、スタジオでの銃撃シーンは正直トラウマレベルだったけど、あれがこの映画の真骨頂。ある意味で傑作だと思う。(20代 男性)
社会風刺としては非常に鋭く、テレビやネットの“愚かさの消費”に対する批判が強烈。笑えない現実を誇張して見せるスタイルで、逆に心が冷えるような感覚がありました。ラストの展開で、観客が拍手するシーンが特に皮肉が効いていて秀逸。観終わってしばらく無言になってしまう映画でした。(30代 女性)
こんなにもストレートに現代人のイライラを代弁してくれる映画はなかなかない。暴力で解決することの是非は当然問われるけど、だからこそフィクションとしての存在意義がある。正義も法律も関係ない、極端な“解放”を見せる作品として唯一無二。あの強烈な冒頭から、ラストの無慈悲な幕引きまで、目が離せなかった。(40代 男性)
映画『ゴッド・ブレス・アメリカ』を見た人におすすめの映画5選
ナチュラル・ボーン・キラーズ
この映画を一言で表すと?
愛と暴力が交差する、過激すぎるメディア風刺のカルト映画。
どんな話?
ミッキーとマロリーという2人の連続殺人犯が、アメリカ中を逃避行しながら殺人を繰り返し、その様子がメディアによってセンセーショナルに報道されていく。暴力と名声、そしてメディアの狂気を描いた作品。
ここがおすすめ!
オリバー・ストーン監督による、暴力と報道の歪な関係を極端なスタイルで描いた問題作。『ゴッド・ブレス・アメリカ』同様、道徳観を逆なでするような描写が満載で、見る者の倫理感を試される映画です。
フォーリング・ダウン
この映画を一言で表すと?
ごく普通の男が、日常の不条理にキレていく狂気の暴走劇。
どんな話?
渋滞と暑さに苛立つ男が、ふとしたきっかけで社会に対して怒りを爆発させていく。ひとつひとつの不満が、徐々に大きな暴力と破壊衝動へと変わっていくさまをリアルに描くサスペンスドラマ。
ここがおすすめ!
現代社会のストレスや抑圧に共感してしまう“反ヒーロー”映画。『ゴッド・ブレス・アメリカ』と同じく、正義のようで正義でない複雑な感情を描き、観る者の価値観に鋭く切り込んでくる名作です。
タクシードライバー
この映画を一言で表すと?
孤独と怒りを抱えた男が“救済者”に変貌する社会の闇。
どんな話?
退役軍人のタクシードライバー、トラヴィスは、眠らないニューヨークで次第に社会への怒りと孤独を募らせ、最終的には暴力で“街を浄化”しようとする狂気に飲み込まれていく。
ここがおすすめ!
マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の名作。『ゴッド・ブレス・アメリカ』に通じる、“怒れる一般人”が極端な行動に出る心理描写が秀逸で、静かに心をざわつかせる作品です。
スーパーダークタイムズ
この映画を一言で表すと?
思春期の友情が、ある過ちをきっかけに崩壊していく青春スリラー。
どんな話?
90年代のアメリカ郊外。仲良しの男子中高生グループが、ある日突然の事件に巻き込まれ、そこから罪と嘘が加速度的に拡大していく。少年たちの視点から、取り返しのつかない日常の崩壊を描く。
ここがおすすめ!
暴力が“突発的”に起こる恐ろしさと、その後の精神的破綻を丁寧に描いた作品。『ゴッド・ブレス・アメリカ』とは違うベクトルながら、暴力と倫理の崩壊を描くという点で強く共通しています。
ヘザース/ベロニカの熱い日
この映画を一言で表すと?
学園の闇をユーモアで爆破する、毒舌ブラックコメディの金字塔。
どんな話?
人気女子グループ“ヘザース”に属するベロニカは、転校生JDとともに、学園の腐った秩序に反旗を翻す。しかし、その反抗は次第に殺人という取り返しのつかない道へと進んでしまう…。
ここがおすすめ!
若者の不満と暴力を、ポップかつ毒々しい世界観で描く異色作。『ゴッド・ブレス・アメリカ』のロキシーのように、破壊的な若者が持つ“純粋さ”と“狂気”の共存に惹かれる人にぴったりの映画です。
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