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映画『午後の遺言状』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『午後の遺言状』の概要:老女優の蓉子は体を休めるために、長野にある別荘にやってきた。そこで知った知人の自殺や、古い友人である登美江と夫の藤八郎との再会で、死について考え始める。豊子の発言により亡くなった夫についても考え、今までの人生を見つめ直していく。

映画『午後の遺言状』の作品情報

午後の遺言状

製作年:1995年
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:新藤兼人
キャスト:杉村春子、乙羽信子、朝霧鏡子、観世榮夫 etc

映画『午後の遺言状』の登場人物(キャスト)

森本蓉子(杉村春子)
東京で女優をしている老女。体を休めるために長野の別荘に滞在する。管理人の豊子とは長年の付き合いである。登美江と藤八郎とは、昔舞台で共演した仲間であり古い友人である。プライベートよりも仕事を優先し、豊子の発言により亡くなった夫について考え始める。話好きでフットワークが軽い。
柳川豊子(乙羽信子)
蓉子の別荘の管理をしている老女。標準語を喋る蓉子に対して、独特な村の方弁を話す。20歳を超えた娘が結婚を控えており、蓉子の夫との子供であることを話そうか迷っている。蓉子の体の心配をしたり、注意したりする。
牛国登美江(朝霧鏡子)
蓉子と舞台で共演した女優の老女。数年前から認知症を患ってしまい、夫の藤八郎に介護をしてもらっている。正気に戻ったときに蓉子の名前を口に出し、蓉子の別荘にやってきた。食欲旺盛で、藤八郎のお稽古中は意気揚々と声を出す。
牛国藤八郎(観世栄夫)
登美江の夫であり、京都で能役者として活躍していた。認知症になってしまった登美江のお世話をしており、登美江の願いを叶えるために蓉子の別荘に連れてきた。寛大で心優しく、登美江のことを1番に考えている。

映画『午後の遺言状』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『午後の遺言状』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『午後の遺言状』のあらすじ【起】

老女優の蓉子は豊子に管理を頼んでいた長野の別荘に向かい、10日ほどゆっくりするつもりでいた。蓉子は豊子と豊子の娘と久しぶりに会い、たわいの無い話しをしていた。蓉子は庭で無造作に生えている木を見つめ、毎年手入れをしてくれていた男性について豊子に問いかけた。豊子は魂が抜けたような顔で、男性が去年の秋に自殺したことを蓉子に話し出した。また奇妙なことに、男性は棺桶の上に手紙を置きその上に丸い石を乗せていたのだ。気になった蓉子は豊子を連れて、川の付近で見つけた丸い石を持ち帰った。

蓉子と豊子が帰宅したとき、蓉子宛てに電話がかかってきた。電話の相手は、蓉子の古い友人である登美江と夫の藤八郎だった。電話の後すぐに、登美江と藤八郎が蓉子の別荘にやってきた。蓉子は登美江の姿に衝撃を受け、言葉が出なかった。藤八郎は数年前から登美江が認知症を患ってしまい、正気に戻った時に蓉子に会いたいと聞いたことがきっかけで蓉子に会いに来たのだ。

その日の夜、登美江を寝かしつけた藤八郎は、蓉子と晩酌を交わしながら将来について話していた。藤八郎の献身的な介護について素晴らしいと蓉子は伝えたが、藤八郎は長年お世話をしてくれた恩返しだと言った。

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映画『午後の遺言状』のあらすじ【承】

翌朝、散歩から帰ってきた登美江と藤八郎は、蓉子と共に朝食を食べていた。蓉子と豊子は食欲旺盛な登美江の姿に圧倒され、一言も話さずご飯を食べていた。朝食後、登美江と藤八郎は30年間続けているお稽古を始めた。そのとき、黒いマスクを被った男が家に入り込み、銃を持ちながら豊子にご飯を作れと脅してきた。男はご飯をかきこみながらマスクを脱ぎ、蓉子に銃を向けた。動揺する中、登美江が男を殴り銃を奪おうとした。遅れてやってきた警察は、庭に逃げ出した男を捕まえた。

事件が収まったあと、先ほどの警官が蓉子を訪ねにやってきた。警官は男から銃を奪った件について表彰したいと蓉子に言ったが、蓉子は登美江だけを表彰してくれと頼んだ。翌日、警察署に向かった蓉子、豊子、登美江、藤八郎は表彰式を受けた。登美江は警察署長から表彰状を受け取ったあと、警察署長のほっぺにキスをした。

その日の夜、いつものように登美江を寝かしつけた藤八郎は、晩酌をとっている蓉子に明日帰ることを伝えた。翌日、別荘をあとにした登美江と藤八郎は、切符売り場で切符を買おうとした。すると登美江の前に、昨日銃を持って脅してきた男が警察に連れられ現れた。男は登美江を襲いかかろうとしたが、両手を縄で結ばれていたため何も起こらなかった。

映画『午後の遺言状』のあらすじ【転】

蓉子と二人になった豊子は、煙草を吸いながら蓉子に爆弾発言をした。それは、豊子の娘は11年前に亡くなった蓉子の夫との子供だということだ。冗談だと笑っていた蓉子だったが、現実を受け止め混乱していた。さらに豊子は、蓉子の夫とは愛し合っていた仲であり、蓉子が夫より芝居に夢中だったことも指摘した。蓉子は豊子に怒りをぶつけながら、夫との思い出や豊子と夫の関係性に改めて違和感を感じていた。蓉子は豊子の娘に父親のことは黙っておけと豊子に伝え、夫の写真を見つめながら芝居に打ち込んできたことを後悔していた。

翌日、一晩考え込んだ蓉子は豊子の家に行き、豊子の娘に事実を伝えろと言った。豊子は呆れていたが、明後日娘と結婚相手の足入れ式があることを蓉子に伝えた。足入れ式とは、結婚式の予行練習と言われるものであった。蓉子は豊子に招かれた程で、豊子の娘の足入れ式に行くことにした。当日、蓉子と豊子は娘の足入れ式を微笑みながら眺めていた。

翌朝、いつも通り別荘に出勤してきた豊子は朝ごはんを作っていた。蓉子は豊子の娘の姿に元気をもらい、のんびりしてはいられないと感じ東京に戻ることにした。豊子は長年黙っていた真実を話すことで損をしていたが、蓉子は真実を聞いて得をした。

映画『午後の遺言状』の結末・ラスト(ネタバレ)

蓉子を訪ねに別荘にやってきた記者の女性は、登美江と藤八郎が心中したことを伝えた。また女性は、登美江と藤八郎が蓉子宛に書いた遺書についても話した。女性は登美江と藤八郎の心中前の行動を自ら実施し、二人が見た景色や泊まったホテルなどを蓉子に伝えた。登美江と藤八郎は二人で海に入り、心中したのだ。それを聞いた蓉子は、女性と豊子を連れて登美江と藤八郎の故郷に向かった。

登美江と藤八郎は心中前に故郷に帰ってきたが、誰からも歓迎されずこそこそと人目を気にして歩いていたことを蓉子は察した。蓉子たちは登美江と藤八郎が亡くなった海に向かい、二人に手を振ったあと膝をついて手を合わせた。

帰宅した蓉子は荷造りをしながら、タクシーを呼んでくれと豊子に言った。豊子は、娘に真実を話したことを蓉子に伝えた。別荘を出て行こうとした蓉子は、川から取ってきた丸い石を見つめながら死について考えていた。蓉子は登美江と藤八郎の死が、自分にとってかなりの衝撃であったことを改めて感じたのだ。

蓉子が東京へ戻っていったあと、豊子は別荘の戸締りをして帰る支度をしていた。その際蓉子が川から取ってきた丸い石に目が行き、その石を持って川に投げ捨てた。

映画『午後の遺言状』の感想・評価・レビュー

別荘にやってきた蓉子が死について考え出したり、登美江と藤八郎との再会で夫婦についていろんな形があることを学んだりと、さまざまな角度から映し出していた。管理人の豊子の爆弾発言なども面白く、次々と事件や真実が明らかになっていく、飽きさせない演出も素晴らしかった。蓉子と豊子の会話も友達みたいな感じであり、なんだかんだありながら信頼し続けている姿が見所であった。登美江と藤八郎が心中前に行った行動も感慨深く、登美江を支えてきた藤八郎の気持ちが共感できた。(MIHOシネマ編集部)


死や老いについて考えさせられる作品で、実際に森本蓉子達が存在しているかのようなリアルさがあった。年を重ねてから見ると、今とはまた違った感想が生まれるような気がする。
藤八郎が登美江の世話をしていることは素晴らしいことだと思うが、相手が認知症を患っていることもあり本当に大変だったと思う。故郷で歓迎されなかったところも、寂しさを感じた。豊子の告白には衝撃を受けた。もし夫が生きていれば、蓉子は受け入れることができなかったかもしれない。(女性 30代)


自分の好きなことをして好きなように生きることが幸せなわけでは無いのだと感じる作品でした。好きなことをしているときはもちろん幸せで、これで良いんだと思うかもしれません。しかし、歳をとって夫を亡くし、友人も死んでしまった時、本当にあれは幸せだったと思うことが出来るでしょうか?
人の捉え方はそれぞれなので、あの時幸せだったから良いと思う人もいれば、あの時あんなことをしていなければ…と後悔する人も居るでしょう。
私は、蓉子のように歳をとって怒ったり、落ち込んだり、悲しくなったりしても、すぐに前を向いて自分のために行動できる女性はとても素敵だなと感じました。(女性 30代)

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