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映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』あらすじネタバレ結末と感想

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』の概要:何もかもを手に入れたはずの男が、初恋の女性の死をきっかけに生き方を見つめ直していく。イタリアのパオロ・ソレンティーノ監督がその才能を見せつけ、各国の主要映画賞を総なめにした。2013年公開。イタリアとフランスの合作映画。

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 作品情報

グレート・ビューティー 追憶のローマ

  • 製作年:2013年
  • 上映時間:141分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:パオロ・ソレンティーノ
  • キャスト:トニ・セルヴィッロ、カルロ・ヴェルドーネ、サブリナ・フェリッリ、カルロ・ブチロッソ etc

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 あらすじ【起・承】

65歳になるジャーナリストのジェップ・ガルバリデッラ(トニ・セルヴィッロ)は、40年前に書いた小説で成功を手に入れ、それきり小説は書かず俗物的な日々を送っている。毎晩のようにパーティーへ顔を出すジェップは、ローマのセレブ界でも有名人だった。

ジェップは女性にもよくモテたが、初恋の人・エリーザ以上に愛せる女性は現れず独身を貫いていた。そんなジェップを突然エリーザの夫が訪ねてきて、彼女の訃報を知らせる。夫からエリーザは生涯ジェップのことだけを愛していたと聞かされ、ジェップはもう一度小説が書いてみたくなる。

自分の人生を振り返るため、ジェップは昔の友人を訪ねる。友人の娘で42歳にもなってストリッパーをしているラモーナに興味を抱いたジェップは、彼女をデートに誘う。ラモーナは強い意志を持った魅力的な女性で、ジェップは彼女と付き合い始める

ジェップはラモーナを大切な存在だと感じ、彼女もジェップに心を開く。しかしラモーナは重病を患っており、あっけなく死んでしまう。

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映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 結末・ラスト(ネタバレ)

初老を迎えていたジェップも彼の友人も、これからの人生について考えるようになっていた。ジェップの一番の友人であり40年もローマで暮らしてきたロマーノは“ローマに失望した”と言い残して故郷へ帰ってしまう。

ジェップはエリーザが自分を捨てたわけを知りたくて、彼女の夫を訪ねる。エリーザが密かに綴っていたという日記を読ませて欲しかったが、日記はすでに破棄されていた。堅実そうな女性と再婚したエリーザの夫を見て、ジェップは祝福の言葉を送る。

いつものように自宅ではセレブの集まるパーティーが開かれ、ジェップは狂騒の中にいた。その中でジェップは自分の人生を「無」だと感じていた。それをどう小説に書けばいいのか、ジェップにはわからなかった。

ジェップはアフリカのマリで長年慈善活動にいそしんできた高齢のシスター・マリアにインタビューをすることになる。マリで1日40グラムの草の根だけを食べているシスター・マリアは“根っこは大事だ”とジェップに告げる。

大いなる美を求め続けそれが見つからないことに失望していたジェップは、シスター・マリアの言葉に背中を押され、エリーザと初めて会った島を目指す。エリーザの美しさを思い出しながら、ジェップは小説の冒頭部分を考え始めていた。

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

大人を満足させてくれる映画

本作はある程度の人生経験を経た大人を満足させてくれる。誰が見ても面白いようなわかりやすい映画ではなく“じわじわとくる”作品だ。

冒頭、ローマの古典的な美しさには静寂があり、セレブたちが繰り広げるばか騒ぎには異様なエネルギーがある。この静と動のシークエンスに本作で何度も繰り返し描かれる死の要素が埋め込まれている。何が始まるのかはわからないが、少なくともこの映画が高い美意識を持った非凡な作品であることだけは伝わってくる。

本作は主人公のジェップが何を求め、何と葛藤し、何に苦悩しているのかをストレートに見せるようなことはしない。だが失い続ける痛みや埋没していく虚しさを感覚的にわかる人なら、ジェップの苦悩が理解できる。作品内の洗練された映像とセリフの中から人間の愚かさと愛しさがじわじわと浮かび上がってくる。このじわじわと浮かび上がってくる何かを掴むには、観客本人がある程度の大人であることが必要だろう。だからこそ、大人にはたまらない作品なのだ。

トニ・セルヴィッロ

ジェップを演じているトニ・セルヴィッロの醸し出す色気はすごい。“洗練された大人の男”という褒め言葉が、これほど似合う人も珍しいだろう。いやあ、実にかっこいい。

ジェッロというのは難しい役だ。ハイセンスなセレブたちに一目置かれる存在なので、当然彼も非常におしゃれであり、何をやっても様になる。65歳にもなるオヤジなわけだが、パーティーでのダンスもさりげなくかっこいい。嫌というほど遊んできた男の余裕と力の抜け具合が絶妙で“オヤジが年齢に逆らって頑張っている感”が全くない。このセレブたちのパーティーシーンには若者たちのクラブ遊びとは一味違う退廃的な狂気があり、なぜかクセになる。そこでのトニ・セルヴィッロが、憎らしいほど絵になっている。

その反面ジェッロには作家の魂があり人や自分の本質を鋭く見抜いている。彼は冷静な批評家でもあり、自分の本質を隠して虚勢を張ろうとする芸術家や友人に対しては辛辣だ。しかし根本的に人へ向ける眼差しは優しい。優しいが深入りはしない。そこは大人の間合いをわきまえている。

このあまりにも隙がなく一歩間違えばとんでもなくキザな男になってしまうジェップを、トニ・セルヴィッロはさりげなく自然に演じてくれるので、こちらも疲れない。どんな背景にも馴染んでしまう彼のスマートな存在感は絶品で、その魅力に引き込まれる。


ジェップのような暮らしをしている男性は、多くの人に憧れられる存在だと思うんです。しかし、当の本人は自分の人生に「無」を感じていました。
地位やお金があっても心が空っぽに感じてしまうのだととても可哀想に思ってしまいました。
しかし、ジェップが経験してきたこと、愛した人の存在があったからこそ今があるのだと思います。自分にとっての本当に大切なものを、自分で見つけて得られることほど幸せなことは無いのだと感じました。(女性 30代)

映画『グレート・ビューティー 追憶のローマ』 まとめ

これはもう、文句なし。素晴らしい。映画というものが総合芸術だとすると、本作はまさに総合芸術そのもの。映像、脚本、演出、キャスティング、音楽、美術…あらゆる点においてほぼ完璧で、文句のつけようがない。ただ、誰にでも楽しめる娯楽作品では全くないので、見る人によっては退屈に感じるかもしれない。

センスの塊のような作品でありながら、冷たい印象は受けない。どこまでも美しい映像の中に、しっかりと人間そのものが描けている。そしてとにかくかっこいい。イタリア人って…パオレ・ソレンティーノ監督って…すごい…。ため息。

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