映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』の概要:かつての輝きを失った「グレイ・ガーデンズ」と呼ばれる屋敷。その屋敷に住む実在の親子を取り上げたTVムービー。日本では劇場未公開の一作。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史
監督:マイケル・スーシー
キャスト:ドリュー・バリモア、ジェシカ・ラング、ジーン・トリプルホーン、ダニエル・ボールドウィン etc
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』の登場人物(キャスト)
- イーディス / “ビッグ・イディ”・ビール(ジェシカ・ラング)
- 第35代アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディ夫人のジャクリーン・ケネディ・オナシスの叔母。浪費家で夫に愛想をつかされてしまい、離れていく娘を手放さまいと奮闘する。
- イディ / “リトル・イディ”・ビール(ドリュー・バリモア)
- 夢半ば自分を育てる道を選んだ母を見捨てられず、軌道に乗り始めた自身の夢を捨てグレイ・ガーデンズに戻ってきた。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』のあらすじ【起】
自身が踊る姿を映した映像を見ながら微笑むイディ。隣には母のイーディスが座っている。過去の自分達を再現させた映像を眺めながら、それぞれに思いふけるのであった。
かつて「社交界の華」と謳われていた母娘。しかしイディは自身の夢を追いたいと、とあるパーティーから逃げ出した。そんな娘にイーディスは「自由を与えてくれる男性と結婚すればよい」と諭すのであった。そんな希望に溢れた日々から30年が経った。母娘が暮らす廃れた一軒家にメイルズ兄弟が訪ねてきた。用事は母娘のドキュメンタリー映画を製作したいというものである。映画好きの二人は快諾。芸術家による芸術家を追ったドキュメンタリーの製作が始まるのである。
ニューヨーク州イースト・ハンプトン。緑豊かな環境にぽつんと聳え立つ豪邸に身を寄せていた母娘。夫のフィーランはこの家での煌びやかな生活を送る妻に不満が募っていた。浪費家の妻に課せた責任は「娘を良家に嫁がせる」こと。仕事優先の夫は家庭に寄り付かず、若い音楽家と浮つく妻に呆れ返っていた。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』のあらすじ【承】
かつて歌手として活動していたイーディスは、夫のおかげで掴んだ富に溺れ、夢の続きを見るかのように、毎晩客人を招き若い音楽家と歌い明かしていた。夫が帰宅する金曜日であることも忘れていたある晩。ついに離婚を切り出されるのであった。そして娘のイディも歌手とダンサーという夢を追いかけ、ニューヨークへ単身移り住むという。引き留めるイーディスの心配をよそに、イディはフィーランとともに大きな屋敷を出ていくのであった。
心機一転新たな生活を送り始めたイディだったが、父親からの生活の支援が打ち切られてしまった。母と同じ「芸人」の道を歩もうとする娘の夢に賛同できないフィーラン。浪費家で過去の夢にすがりつく妻に呆れ返っていたフィーランは、かねてより秘書として仕事を支えてくれていた若い女性とプライベートでもパートナーとなっていたのである。
生活を危ぶまれるイディであったが、ショーモデルのような小さな仕事を重ねながらなんとか食い繋いでいた。とある日の仕事で見かけた有名プロデューサーに熱心に売り込みをするイディの姿を見かけたクルーグは彼女に声をかける。内務長官であるクルーグに興味を持ったイディは一夜を共にするのであった。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』のあらすじ【転】
夫に愛想をつかされ、娘は夫を選び、夢を叶えるために自分を置いて家を離れてしまったが、イーディスにはかねてから目をかけていた若い音楽家という支えであった。しかし、彼もわがまま放題のイーディスに嫌気がさし始めていた。とある夜、音楽家の提案をすべて拒むイーディスを見兼ねて、荷物をまとめ出ていってしまったのである。一方でイディはクルーグと順調に関係を続けていた。自宅でクルーグと過ごすイディの元に、一人孤独に追われるイーディスから何度も連絡が入った。なんとかはぐらかしクルーグとの夜を楽しもうとするイディだったが、母親をだますことはできず男性と一緒にいることがバレてしまう。さらにはクルーグが既婚であることも見抜いたのである。
クルーグとともに朝を迎えたイディの元に、突如フィーランが迎えに来た。それはイディが既婚者と関係を持っているということを、イーディスがフィーランへ伝えており、娘の身を案じての行動であった。強制的にグレイ・ガーデンズへ連れ戻されてしまったイディ。しかしそこは以前自分が住んでいた頃と異なり、荒れ果てていた。母の荒んだ心情を察するが、数日後にオーディションを控えていたイディは母の拘束を潜り抜け車でニューヨークへと向かった。すぐさまクルーグの元へ駆けつけたイディ。気持ちを込めた詩を電報でクルーグの職場の受付に託すが、その行為が仇となりクルーグに別れを告げられてしまった。傷心したイディは大事なオーディションを前に、グレイ・ガーデンズへ引き返した。
この頃からイーディスの猫収集は始まっていた。そして、イディもストレスから円形脱毛症を患っていたのである。悲劇は留まることを知らず、フィーランが亡くなった知らせが入った。経済的にフィーランの支援をもって成り立っていた母娘の生活に危機が迫る。遺産は後妻がほとんどを相続するため、2人の息子が母の生活を心配し移住のプランを提案するも、イーディスは「グレイ・ガーデンズは売らない」と言い張るのだった。その夜、イディの精神は限界を迎え自身の髪の毛を乱雑に切り荒れていた。その様子を目の当たりしたイーディスは娘を抱きしめることしかできなかった。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』の結末・ラスト(ネタバレ)
経済的に追い込まれた母娘は粗悪な環境で生活を続けていた。繁殖し続ける猫やアライグマの世話を怠っていたことや片づけられないゴミは悪臭を放ち、役所が「居住禁止」の命令を下すのであった。隠し撮りを目論むカメラマンを利用し、芸術家としての尊厳を守ろうとするイディであったが、世間の目はすでにこの母娘を芸術家とは認めておらず誹謗中傷が記事になっただけであった。
世間との確執が目に余る状態になった母娘の元に、イーディスの姪であるジャクリーンが訪ねてきた。ジャクリーンに対してとげとげしい態度で言葉をあびせるイディ。それは大統領夫人となったジャクリーンへの嫉妬からだった。しかしジャクリーンは嫌な顔ひとつせずに、母娘の現状を見定めていた。そしてイーディスに寄り添い言葉をかけ、子供たちですら成しえなかった説得をいとも簡単にしてみせたのだった。荒んだグレイ・ガーデンズへ人を入れることを頑なに拒んでいたイーディスの気持ちを動かしたジャクリーンは再会を誓い、その場を去った。翌日かグレイ・ガーデンズ再生のための人手が集まった。荒れ果てた庭に寂れた家、ゴミとノミだらけの室内は改善。二人は息を吹き返した自宅で自分たちのドキュメンタリー映画を鑑賞していた。二人の感想は両極端であった。イディは再び外の世界を夢見始め、イーディスは自分たちの惨めさを露呈するのを拒んだ。反発する娘の姿に胸打たれたイーディスは、ずっと隠していたネックレスをイディに託した。そして映画のプレミア上映へ着けて行ってほしいと伝えるのであった。ニューヨークで行われたプレミア上映は見事大成功。イディは若いころから夢焦がれたニューヨークで脚光を浴びるのであった。
映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』の感想・評価・レビュー
若かりし日から老いを隠せない年代まで、一人の女優が演じ切る。環境により言葉の放ち方も大いに変わる女性の繊細さを描き切った今作は、共感もあり反面教師でもある。「浪費家の金持ち親子」が堕ちていく様は見事で、潔いほどに惨めである。プライドが邪魔をする様は、“謙虚”に生きることの難しさを表現しているようにも見えた。皮肉にも曲がりくねった闇の時代を以ってして夢焦がれた外の世界での脚光を得たイディ。輝かしい母娘の物語ではないが、女性の絆やプライドを身に染みて味わえる一作であった。(MIHOシネマ編集部)
凄いの一言です。お金持ちの男性と結婚するのは女性の憧れでもあり、夢かもしれません。しかし、そんなに上手くいかないのが人生。夢を持ちながらも、普通の男性と結婚し、普通の生活を送るのが「幸せ」だと感じている人も多いでしょう。
今作に登場する母娘は夫の収入のおかげで裕福な暮らしをしていたものの、それは最初のうちだけ。金銭的に困難な状況が続くと、あれだけ輝いていた人が、ここまで落ちぶれてしまうのかと驚きました。
夢を見続け、自分を信じた母娘の結末をしっかり見届けて欲しい作品です。(女性 30代)
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