映画『花、香る歌』の概要:2015年製作の韓国映画。朝鮮時代に伝統芸能パンソリで初の女性歌手になったチン・チェソンの激動の人生を、音楽、愛、運命を絡めて芸術的に描かれた感動作品。パンソリのシーンは見所の一つである。
映画『花、香る歌』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:ヒューマンドラマ、音楽
監督:イ・ジョンピル
キャスト:スジ、リュ・スンリョン、ソン・セビョク、キム・ナムギル etc
映画『花、香る歌』の登場人物(キャスト)
- チン・チェソン(スジン)
- 幼い頃に母を病気で亡くし知り合いに引き取られる。そこで初めてパンソリに出会い、歌い人にかけてもらった言葉が忘れられず自分もパンソリの歌手になりたいと願っている。
素直で優しく根性のある女性。 - シン・ジェヒョ(リン・セビョク)
- 初めてパンソリ養成所を作った指導者。チェソンが女性と知りながらその才能に惚れ込んでいく。寡黙で無愛想だが、熱心な情熱家。
映画『花、香る歌』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『花、香る歌』のあらすじ【起】
チェソンは幼い頃、母に連れられ芸子小屋にやってくる。
雪道の道中、血を吐いた母は病魔に蝕まれており先が短そうだった。
そんな母は1人になる娘のチェソンの身を案じて、昔のよしみだったこの小屋でチェソンを引き取ってもらえないか頼みに来たのである。
母はその後死に、チェソンは芸子としてではなく手伝い人として暮らしていた。
チェソンが初めてパンソリを見たのは、シムチョンという演目だった。
不幸な生い立ちのシムチョンが自分に重なり1人涙を流すチェソンに、ジェヒョという歌い手が「思い切り泣いて、そのあとは笑えば良い」と声をかけてくれる。
その言葉に救われ、彼女はパンソリの歌い手になりたいと夢を見るようになっていった。
芸子小屋の近くにはジェヒョが創設した、初のパンソリ養成所がある。
しかしこの時代パンソリを女子が歌うことは禁じられており、チェソンがどんなに頑張ったところで法により歌い手にはなれなかった。
直接ジェヒョに会い希望を言うが、叶わないと突っぱねられてしまう。
だが諦めきれないチェソンは日々練習していた。
映画『花、香る歌』のあらすじ【承】
ジェヒョはある夜、偶然に出会った旅人と酒を酌み交わした。
何気なく気楽に話しかけていたが、話しをよくよく聞くとその人は王族の大院君である。
大院君は王族により政治の中心から退けられていたが、ジェヒョは民の苦しみを知る大院君なら世を導けると言った。
恐縮しながらもジェヒョは、パンソリや政治について大院君と語り合う。
1846年大院君は息子を王に就け、自らは摂政となった。
その日はパンソリ養成所に入学するための試験の日。
男装したチェソンは試験に潜り込み、見事合格する。
男性に混じりながら学校の食事会に参加したチェソンは、ジェヒョが両班という身分である貴族の気ままな遊びに付き合い、しかも後援までしてもらっているのを目撃する。
そんなある日、大院君が景福宮の再建に伴い落成宴で新時代にふさわしい歌を歌えという御触れをだした。
しかし今のままではとてもチェソン達にはつとまらない。
厳しい練習が始まる。
それを見ていた後援者の両班は、大院君の為に練習している歌が気に入らない。
ジェヒョは以前大院君に会った時直接その歌が好きだと聞いたと言い返すが、「貧民の歌など歌うな」と一方的に断られる。
それに頭に来たジェヒョは、歌は元々民のものだと食い下がった。
この一件が原因で養成所は閉校した。
援助も切られ、生活できないものたちは全員去ったのだ。
しかし行く所が無い物達2人だけとジェヒョは、まだ閉校したこの学校に残っている。
酒に飲まれる日々を過ごしているジェヒョを無理矢理起こし、落成宴でもう1度歌おうと説得した。
チェソンも戻ってくると言う。
彼女の声は主役のイメージ通りの声だった。
観客がいる中、始まったパンソリ。
自分の番を裏で待つチェソンに、いつか会った女だと気がついたジェヒョは舞台に上がるなと厳しく言った。
しかしそれでも民のために歌いたいと泣きながら言うチェソンを止めることが出来ず、彼女は舞台に上がる。
だが舞台で歌い始めた時、被っていた帽子が取れ彼女の長い黒髪が現れた。
女だとばれたのだ。
映画『花、香る歌』のあらすじ【転】
法に触れた罪により、ジェヒョは役人から罪を責められ暴行される。
翌日の明け方痛々しい姿で戻って来たジェヒョは弟子達に「山で修行しよう」と言い、全員で都を離れた。
山間で必死にパンソリの稽古をする弟子達だったが、チェソンはどうしても自分が演じる歌い手の「愛する気持ち」が理解出来ない。
人を愛したことが無いのだ。
だが一方的に愛することも愛なのかと兄弟子に問うとそうだと言われ、チェソンはジェヒョの顔を思い浮かべる。
彼への愛。
彼女はその愛を歌に込めた。
すると今までの彼女とは全く違う歌声に変わる。
肉体的にも厳しい山での特訓は女性のチェソンには厳しいものであり、仲間の中からは彼女を帰そうという声もあったがジェヒョはしなかった。
そして都での歌の審査会に出かける。
だがジョヒョ達の番になった時、チェソンが女では無いかと審査員が言い始めた。
何とか乗り越えようとしたその時、よりによって以前ジョヒョに援助していた両班がやってくる。
彼もこの場に来ていたのだ。
この両班の男によりチェソンが女だとばれ、予選は失格になる。
ジョヒョは我慢ならず直接大院君にお目通りを願い出て、何とか会うことが出来た。
女性だが才能がある彼女の歌を聴いて欲しいと言うジョヒョ。
しかし理解してくれるだろうと信じた大院君は、「きれい事を言うな。自分の出世の為だろう」と言うとジョヒョは収監されてしまう。
翌日の夜。
芸子に混じり大院君の宴の席に紛れ込んだチェソンは、パンソリを披露した。
大院君に気づかれたチェソンはジェヒョを助けてくれと頼むと、そのまま歌を続ける。
彼女の歌に魅了された大院君は、助けてやるが優勝しろと言った。
もし出来なければ2人とも打ち首だと。
映画『花、香る歌』の結末・ラスト(ネタバレ)
大会の日。
お堀のような場所で審査会は始まる。
審査員と王が座る場所まで手こぎボートで進んだ。
乗っているのはジェヒョとチェソンだ。
いよいよ船が到着し歌を歌い始めるチェソンだったが、あまりに緊張し上手く声も台詞も出てこない。
それを見たジェヒョは、アドリブでチェソンを励ます歌を歌い始めた。
その歌声で励まされ勇気を持ったチェソンは歌い始める。
その姿は堂々とし、りりしくもあった。
堀の周りで見ている弟子達も、歌に会わせて相槌を入れ全員で演技を始める。
その歌は民主を魅了し、王族をも魅了した。
見事優勝を勝ち取ったジェヒョ達は助かるが、大院君がチェソンを気に入ってしまう。
そこでジェヒョを呼び出し、彼女を自分の元に置いていくように命令をするが、ジェヒョは答えない。
そして静かな口調で「彼女だけは失いたくない」と思いを口にするジェヒョだったが、チェソンを殺すと脅され宮廷を去る決意をした。
チェソンもまたジェヒョを殺すと脅され、チェソンの元に行く覚悟をしていたのだった。
そんな2人は宮廷ですれ違ったが、触れることも許されなかった。
6年が経つと大院君は勢力を無くし、失脚した。
チェソンに好きなところに行くが良いと言った彼の周りには、もう付き人もいなかった。
雪の積もった道を急ぐチェソン。
ジェヒョはあの養成所の縁側で、ずっと入り口を見つめ座っている。
頭は白髪だらけで年をとった。
するとチェソンが現れ、笑顔を見せることの無かったあのジェヒョが6年ぶりの再会にふっと微笑むのだった。
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