この記事では、映画『花宵道中』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『花宵道中』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『花宵道中』の作品情報
上映時間:102分
ジャンル:ラブストーリー
監督:豊島圭介
キャスト:安達祐実、淵上泰史、小篠恵奈、三津谷葉子 etc
映画『花宵道中』の登場人物(キャスト)
- 朝霧(安達祐実)
- 山田屋の遊女。人気者の遊女で、体温が上がると、肌に花が咲くという噂がある。男に溺れた母親を嫌っているが、半次郎に恋をしてしまう。死んだ半次郎を思い、自殺する。
- 半次郎(淵上泰史)
- 霧里の弟。染物職人。朝霧と出会い、恋に落ちる。霧里を酷い目に遭わせた吉田屋に近づき、吉田屋を殺す。朝霧と結ばれた夜に捕まり、死刑になる。
- 八津(小篠恵奈)
- 山田屋の遊女。朝霧の妹女郎。男を信じやすい女で、夫婦になることを約束されたお客に裏切られる。朝霧のことを慕っている。
- 江利耶(三津谷葉子)
- 山田屋の遊女。気の強い性格だが、優しい心を持っている。落ち込む朝霧を慰めたり、八津を裏切った男を非難したりする。
- 吉田屋(津田寛治)
- 山田屋の上客。遊女を見受けし、自分の商売に利用する悪人。朝霧を見受けしようとするが、真実を知った半次郎に殺されてしまう。悪知恵の働く男。
- 霧里(高岡早紀)
- 半次郎の姉。朝霧を拾った遊女。吉田屋に見受けされるも、追い出されて野垂れ死んでしまう。
映画『花宵道中』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『花宵道中』のあらすじ【起】
天保八年、吉原が炎上する。遊女として吉原の山田屋で働いていた朝霧は、久しぶりに吉原の外に出ることになる。山田屋の他の遊女達も、吉原の外に仮宅を作って営業を続けることにする。
朝霧のもとに新規のお客がやってくる。朝霧の服を脱がせるその男は、朝霧の体に浮かぶ噂の花を見て感動する。朝霧は人気者の遊女で、体温が上がると肌に花が咲くという噂を持っていた。
朝霧の妹分である八津が、八幡様に出店が出ているから一緒に行こうと朝霧を誘う。出店を見て回る二人。八津は、ギンマンの光る玉が欲しいと興奮している。すると人混みの中で朝霧がこけてしまい、二人ははぐれてしまう。
倒れてしまった朝霧を、半次郎という名前の男が抱き起こす。朝霧を心配する半次郎。片方の下駄を失くしてしまったという朝霧のために、半次郎は人混みの中へと入って下駄を見つけてくる。実はこの下駄の染物は、半次郎が染めたものだった。朝霧は、そんな優しい半次郎に心を奪われていく。

映画『花宵道中』のあらすじ【承】
翌日、朝霧は失くしてしまった簪を探しに外に出る。すると、再び半次郎に再会する。半次郎は朝霧の簪を見て、そのデザインに興味を示す。壊れてしまっていたその簪を直してくれるという半次郎。二人は、三日後に再会する約束をする。
朝霧と八津が、お店で甘酒を飲みながら雑談をしている。八津は、懇意にしている大島屋というお客から早くお見受けされたいと話す。八津は、大島屋といずれ夫婦になろうと約束をしていたのだ。
その夜、大島屋が他の遊女を連れて山田屋の前を通る。その姿を見た八津は、ショックで泣き崩れてしまう。その女々しい姿を見ていた江利耶は、男のことなんて信じるなと八津を非難する。朝霧は、八津の姿に実の母親の姿を重ね合わせる。朝霧の母は、男と酒に溺れた三流の遊女だったのだ。
半次郎との約束に遅れてしまった朝霧。約束の場所には半次郎はいなかった。その帰り道、半次郎が知らない女と親しげにしているのを朝霧は目撃してしまう。
映画『花宵道中』のあらすじ【転】
山田屋に、吉田屋からの宴会の仕事が入る。朝霧の姐女郎だった霧里という遊女が見受けされた程の大口のお客である吉田屋。病で亡くなってしまった霧里の話を聞きたいと、朝霧は少し期待する。
八津と共に、吉田屋の宴会へと向かった朝霧。そこには、吉田屋とその仕事相手である半次郎の姿があった。その場で朝霧と半次郎の関係に何かを感じた吉田屋。彼は、半次郎の前で朝霧を犯してしまう。朝霧は、その場で失神してしまう。
それから一年後、朝霧と半次郎が再会する。半次郎は、朝霧に簪を渡す。二人はお互いに抱き合いながら身の上話をする。朝霧を拾ってくれた霧里の花魁道中を見て、朝霧は花魁道中に憧れた。しかし、規制が厳しくなって花魁道中は禁止されてしまったのだ。一方の半次郎は、妹が売り飛ばされて遊女になり、自身は染め職人となって江戸に流れ着いた。
吉田屋が半次郎に、商売の力関係を利用して結婚の話を持ちかける。さらには朝霧への見受け話をも強引に決めてしまう。こうして吉田屋と朝霧、半次郎と吉田屋が紹介した女のお祝いが行われる。朝霧は、半次郎に裏切られた気持ちでいた。
映画『花宵道中』の結末・ラスト(ネタバレ)
半次郎は朝霧に、霧里が実の姉なのだと打ち明ける。そのために吉田屋に近づき、霧里が死んだ本当の理由を探ろうとしていたのだ。決して朝霧を裏切らないと、半次郎はそこで誓う。
半次郎に乗せられ、吉田屋が真実を語る。吉田屋は、見受けした女郎を自分の商売に利用していた。霧里も、吉田屋に追い出されて野垂れ死んでしまったのだ。それを聞いていた朝霧が吉田屋の前に姿を現し、激怒する。さらに半次郎も激怒し、吉田屋を殺してしまう。逃げろと言う朝霧を残して、半次郎はその場を逃げ去る。
指名手配されてしまった半次郎。朝霧は仕事に身が入らなくなる。そんなある日、朝霧は半次郎から手紙を受け取る。その夜、二人は再会する。
花魁道中がしたかったという朝霧のため、自分で染めた着物を持ってきた半次郎。二人だけの花魁道中をした後、二人は激しく抱き合う。そして、半次郎がその場で捕まってしまう。
山田屋の狭い部屋に閉じ込められてしまった朝霧。八津が心配になって様子を見にくるが、朝霧は痩せ細って見る影もない。そして朝霧は、半次郎が打ち首になったことを知る。
ドブから死体となって発見された朝霧。彼女は自殺してしまった。可哀想だと話をする山田屋の遊女達。それを聞いていた八津は否定し、朝霧は見事に花を咲かせて散ったのだと話す。そして、朝霧の形見である簪を髪に刺すのだった。
映画『花宵道中』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
もう少し物語に深みが欲しかった。映像は映画のスケールだったがストーリー的には昼ドラのように感じてしまった。安達祐実は好演していただけに、その部分が実に残念である。
作品全体の雰囲気作りは素晴らしかったと思う。切なく儚い、そして美しい雰囲気というのは存分に伝わってきた。しかしそれだけでは成り立たないのが映画であり、ストーリーも含めて全てが揃っているのが名作と言われるものだと思う。そういった意味では今作は名作には及ばず、可もなく不可もなくといった映画だった。(男性 20代)
陳腐な言葉ではあるが、本当に切ない物語だなと思った。遊女として苦労し、見受けされた後も散々な扱いを受けて死んでしまった霧里。現実の世界でも、彼女のように辛い目に遭った遊女がいたかもしれない。
男に溺れた母を嫌った朝霧。それでも半次郎に思いを寄せるようになった姿を見て、恋というのは理屈じゃないのだなと思った。二人だけの花魁道中が本当に美しく、同時に切なく感じた。安達祐実さんの体当たりの演技が素晴らしかった。(女性 30代)
時代劇としての美しさと、遊女の儚い恋の物語が絶妙に交錯する作品でした。主人公・朝霧がかつての恋人・清一郎と再会し、禁断の恋に落ちていく過程は、観ていて胸が締めつけられるようでした。特にラストシーン、朝霧が命を落としてしまう場面は衝撃的で、彼女の覚悟と想いの深さに涙が止まりませんでした。主演の安達祐実さんの演技も圧巻で、遊女の強さと儚さを見事に表現していました。(30代 女性)
恋愛映画としては珍しく、激しい情熱と哀しみを両立させたストーリーに驚きました。男目線では、清一郎の優柔不断さが歯がゆくもありましたが、それがリアルで逆に共感もできました。過去に囚われながらも未来を見ようとする朝霧の姿は、強くも切ない。江戸時代の遊郭文化も丁寧に描かれていて、映像美と共に惹き込まれました。もっと評価されるべき作品だと感じました。(40代 男性)
序盤は少し退屈に感じましたが、中盤以降の展開に一気に引き込まれました。清一郎との再会から始まる朝霧の心の葛藤が非常にリアルで、感情移入しやすかったです。最終的に彼女が選んだ結末があまりにも悲しくて、しばらく余韻が残りました。映像も幻想的で美しく、音楽の使い方も印象的でした。女性の視点から描かれる恋の物語として、とても完成度が高いと思います。(20代 女性)
遊郭という題材に惹かれて鑑賞しましたが、期待以上でした。単なる恋愛映画ではなく、ひとりの女性が自分の人生をどう生きるかというテーマが強く感じられました。朝霧が自分の「本当の気持ち」に向き合い、最後には命を懸けてまで愛を選んだ姿は忘れられません。個人的には、もっと清一郎の描写が深ければなお良かったと思いますが、総じて心に残る一作でした。(50代 男性)
人生経験を積んだからこそ分かる、朝霧の切実な想いが胸に刺さりました。若い頃に一度でも許されない恋を経験した人には、特に響く映画だと思います。安達祐実さんの演技は見事で、表情ひとつで心の揺れを表現していて圧倒されました。ラストで彼女が自らの運命を受け入れる姿には、涙を抑えきれませんでした。静かに心を打つ名作です。(60代 女性)
映像の美しさにまず魅了されました。ぼかしや光の使い方が幻想的で、まるで夢の中を見ているよう。内容的には重いテーマですが、朝霧の一途な想いが胸に響きました。清一郎とのやり取りも切なくて、人を好きになることの尊さと残酷さを改めて感じました。観終わったあと、しばらく動けないくらい感情を揺さぶられました。(30代 男性)
原作ファンとして映画化を楽しみにしていましたが、期待以上でした。朝霧の心の声や葛藤が丁寧に描かれていて、映画ならではの静かな演出が効いていました。特に朝霧と清一郎の再会シーンの緊張感と、それに続く情愛の描写には胸を打たれました。遊女という厳しい立場にありながらも、純粋な愛を貫いた朝霧の強さに涙です。(40代 女性)
正直、最初は官能的な映画かと思っていましたが、全然違いました。むしろ、こんなに純粋な愛の話だったのかと驚きました。安達祐実さんの演技は繊細で深く、特に目の演技が素晴らしかったです。朝霧の選んだ最期は本当に悲しいですが、彼女なりの答えだったのかなと納得しました。余韻がすごく長く残る映画でした。(20代 男性)
映画『花宵道中』を見た人におすすめの映画5選
『さくらん』(2007)
この映画を一言で表すと?
「艶やかに、激しく──花街に咲いたひとりの花の革命」
どんな話?
吉原遊郭を舞台に、自由奔放な少女が一人前の花魁へと成長していく姿を描いた異色の時代劇。豪華な映像美とロックな感性が融合した、蜷川実花監督のデビュー作。
ここがおすすめ!
花街という閉ざされた世界で、自分らしく生きようとする女性の姿に胸を打たれます。『花宵道中』と同じく、遊女の内面を力強く描いた作品として必見です。
『鬼龍院花子の生涯』(1982)
この映画を一言で表すと?
「激動の昭和を、誇りと哀しみを抱えて生きた女たち」
どんな話?
高知の豪商・鬼龍院家を舞台に、複雑な家庭環境と愛憎の中で育つ花子の半生を描く。男社会の中で逞しく生きる女性たちの生き様が濃密に描かれる名作時代劇。
ここがおすすめ!
『花宵道中』のように、過酷な運命に翻弄されながらも自らの人生を選び取る女性像に共感必至。重厚なドラマと圧倒的な演技力が魅力の一本です。
『雪国』(1957)
この映画を一言で表すと?
「逢瀬の先にあるのは、情熱か、それとも儚さか」
どんな話?
川端康成の代表作を映画化。温泉街を訪れた男と芸者・駒子の儚く美しい恋を、雪景色の中に描き出す。情感あふれる台詞と静かな余韻が胸を打つ純愛ドラマ。
ここがおすすめ!
時代と身分に縛られた恋愛模様は、『花宵道中』に通じる切なさがあります。映像詩のような美しさと、抑えた演技の中に燃える情熱を感じられる文芸映画です。
『花芯』(2016)
この映画を一言で表すと?
「女であること、生きること──情念の美学」
どんな話?
瀬戸内寂聴による官能文学の映画化。形式的な結婚生活に虚しさを抱くヒロインが、抑えられた欲望と愛情のはざまで揺れながら、自身の生き方を見つめ直していく。
ここがおすすめ!
女性の内面を大胆かつ繊細に描いた点で、『花宵道中』と共鳴する作品。情熱と哀しさ、そして自由への希求を静かに描いた、大人のための官能的ドラマです。
『牡丹燈籠』(1968)
この映画を一言で表すと?
「美しくも恐ろしい、愛に取り憑かれた女の幽霊譚」
どんな話?
身分違いの恋に破れた男女が死と再会を果たす、古典怪談の映画化。美しい花魁の幽霊が夜ごとに男のもとを訪れる姿は、妖艶でありながら切ない余韻を残す。
ここがおすすめ!
遊女と宿命、愛と執着の物語は『花宵道中』ともリンクするテーマ。幻想的な演出と日本的情念が混ざり合い、観る者を不思議な感情に引き込んでいく名作です。
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