この記事では、映画『塀の中の懲りない面々』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『塀の中の懲りない面々』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『塀の中の懲りない面々』の作品情報
上映時間:91分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:森崎東
キャスト:藤竜也、植木等、山城新伍、小柳ルミ子 etc
映画『塀の中の懲りない面々』の登場人物(キャスト)
- 安倍直也(藤竜也)
- 恐喝罪、銃刀法違反で刑務所に入った囚人。囚人達の中ではリーダー的存在。愛する元妻のことを思い続けている。家族とは絶縁しているが、母親だけは直也に優しく接してくれている。
- 西畑(植木等)
- 囚人。前科15犯の偽医者。囚人や看守の診察をしている。囚人の中では年齢は上で、父親的存在。元妻への伝言を頼まれるほど、直也とは非常に仲が良い。
- 城山勉(柳葉敏郎)
- 囚人。脱獄に備えて、体を鍛えている。囚人達の中でも若造。革命家であり、同志が人質を取って城山の釈放を要求する。海外で革命家として運動をする。眼鏡をかけた、生真面目な男。
- 風見待子(小柳ルミ子)
- 直也の元妻。刑務所に入った直也と手紙のやり取りを続け、直也の帰りを待ち続けている。クラブを営んでいる。派手ないでたちだが、一途な女。
- 上洲河童(ケーシー高峰)
- 直也の独房の隣に収容されているオカマ。恋をした大学生に逃げられ、恐喝をして捕まる。中学生男子のグラビアを手に入れ、すぐに辛い過去を忘れる。
- 小山忠造(花澤徳衛)
- 国公立の場所でしか窃盗をしない窃盗犯。囚人達の中では、一番の年長者。小さい時から知っている近所の娘を、実の娘のように可愛がっている。病気になってしまい、医療刑務所への移動を命じられる。本当は仲間達と刑務所に残りたいと思っている。
- 飯田三郎(森山潤久)
- シャブで捕まる。ふくよかで、みんなに可愛がられるような性格の男。
- 鉄っつぁん(江戸家猫八)
- 看守。とても緩く、囚人達と平気で談笑をしたりする。腰が悪く、西畑によく診てもらっている。
映画『塀の中の懲りない面々』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『塀の中の懲りない面々』のあらすじ【起】
刑務所の中にいる囚人達が、看守の見張る中で入浴をしている。口笛を吹く囚人に対し、看守は厳しく律する。ここでは、口笛を少しでも吹くことすら許されていないのだ。しかし、囚人達は口笛くらいいいじゃないかと看守に喰ってかかる。中でも窃盗罪で捕まった安倍直也は、強い口調で看守に物申している。
ある日、囚人達が工場で木材切断の労働をしていた。新入りである飯田三郎はそこで、鼻に詰め物をしている。元医者である同じ囚人の西畑は、気をつけないと源吉にチクられてしまうぞと三郎に注意する。案の定源吉から看守にそれが伝わり、三郎は身体検査を受ける羽目になる。
直也は、塀の中の文豪として一目置かれていた。他の囚人達は、手紙を書くときはいつも直也に手伝ってもらっている。
刑務所の外。直也が服役前に離婚届を渡した恋女房の風見待子が営むクラブ「カサブランカ」で、直也の母が、待子宛ての直也からの手紙を読んでいる。もう一度復縁しないのかと尋ねる直也の母に待子は、もう男は懲り懲りだと答える。

映画『塀の中の懲りない面々』のあらすじ【承】
定年間近の看守である鉄っつぁんは、西畑に腰を診てもらっている。あまりに腰の硬い鉄っつぁんに西畑は、針でもあれば良いのだがと話す。
舎房と工場の間に、検身所と呼ばれる所持品の検査場がある。まんまと針を入手した直也と西畑は、難なく検身所を通過して舎房へと戻る。しかし、舎房の中の囚人が騒ぎ出し、針が見つかってしまう。そして、直也が独房へと入れられてしまう。
直也の独房の隣には、かつて小菅刑務所で一緒だったオカマの上洲河童がいた。河童は、大学生と仲良くしていたが、逃げられて恐喝してしまったのだ。しかし、中学生男子のグラビアを手に入れた河童は、もう何も未練はないのだと話す。
西森が大学で手術したことのある元患者が、刑務所の見学へとやってくる。彼は、それは弟だと嘘をつく。そのとき、囚人の小山忠造が倒れてしまう。小山は、国公立の場所でしか窃盗をしない男で、刑務所の長老でもある。西森は、医務官を呼んでほしいと看守に言う。看守は西森に、指示をするなと言う。起き上がった小山は、大丈夫だと西森に伝える。
映画『塀の中の懲りない面々』のあらすじ【転】
出所していた直也の囚人仲間が、再び刑務所へと戻ってくる。彼は、直也に教わった方法で詐欺を働いたが、失敗してしまったのだ。
冬になり、牢獄の中は厳しい寒さに襲われていた。少しの風も受けたくない三郎は、目を閉じながら本を読み始める。そして、自分の過去を話し出す。
三郎は、恋人とシャブをやっているときにガサ入れに入られる。三郎はとっさに、恋人の飼っていた犬の腹にシャブを隠す。見つけられない警察に恋人が暴言を吐くが、結局見つかってしまって刑務所にきてしまったのだ。
かつて同じ町内会に住んでいて、小さいときから娘のように小山が可愛がっていた娘が慰問にくることになる。これは、小山のために直也が頼み込んで実現したことだった。しかし、小山は重病だと判断されて医療刑務所への移動を命じられてしまう。
直也や三郎など、小山と同じ部屋の囚人達は小山を元気づけようとする。しかし、看守は厳しく彼らを律し、小山は医療刑務所へと運ばれていってしまう。小山と同じ部屋の囚人で、脱獄の日に備えて体を鍛えている城山は、このことがきっかけでより厳しく鍛え始める。
映画『塀の中の懲りない面々』の結末・ラスト(ネタバレ)
春になり、西畑が出所する。直也は西畑に、待子に伝言を頼む。待子を愛しているが自信のない直也は、自分のことを待ってくれるかどうかを確認したかったのだ。
「カサブランカ」へとやってきた西畑。直也と手紙のやり取りをしていた待子は、すぐに西畑に気づく。西畑は待子に、直也が待っていて欲しいと言っていたと伝える。
刑務所内にヘリコプターが着陸する。それは、革命家でもある城山の同志達が城山を迎えるためによこしたヘリコプターだった。彼らは人質を取って、城山の解放を命じたのだ。城山は刑務所を出るとき、一緒に革命家として海外で活動しませんかと直也に声をかける。直也はそれを断る。
看守を殴ってしまった直也は、懲罰房に入れられる。そこへ、絶縁した直也の両親が面会に訪れる。家族の中で、唯一直也に優しくしていた母親は、そこでも冗談を言って直也を笑わせる。母親は、自分の生きているうちに出所してくれと言い残して面会所を去っていく。
面会終わり、口笛を吹く囚人達が直也の前を通る。その中には、西畑の姿あった。西畑は直也に、嬉しい知らせを届けたのだった。
映画『塀の中の懲りない面々』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
実録ベースで描かれた安部譲二の半生は、笑いと哀愁が入り混じる不思議な味わいでした。刑務所の中の人間関係や日常が意外なほど温かく描かれていて、単なる監獄映画とは一線を画しています。中でも藤田まことさん演じる主人公の飄々とした語りが魅力で、罪を重ねながらも人間らしさを失わない姿に惹かれました。出所しても“また戻る”というラストに、皮肉と諦念を感じつつもクスッと笑える不思議な余韻が残ります。(30代 男性)
タイトル通り「懲りない」男たちの生き様が、妙に可笑しくて愛おしくなる映画。刑務所ものと聞くと重たいイメージがあったが、実際はユーモラスな語り口で進むので非常に観やすかった。安部譲二という人間の憎めないキャラクターと、彼を取り巻く“面々”の魅力が最大の見どころ。出所しても再び戻るというオチは社会の壁の厳しさを感じさせるが、同時に人間の弱さにも共感できる。(40代 女性)
昭和の空気を濃厚にまとった刑務所映画。特に、厳しい環境の中で芽生える人間関係がとても温かく、心に残った。安部譲二という人の魅力を藤田まことがうまく引き出していて、ただの囚人ではなく“人間”としての深みを感じさせる。出所後に何度も塀の中に戻ってしまうという設定が切ないけれど、笑いを交えて描かれているのがこの作品の魅力だと思う。(50代 男性)
刑務所という舞台なのに、なぜか安心して観られる不思議な映画。出てくる登場人物がどこか間が抜けていて、それがリアルな人間くささを感じさせる。反社会的な行為をしていても、どこか憎めない、そんな描き方が絶妙だった。とくに終盤で出所するもすぐに“帰ってくる”あたりは、社会との断絶や更生の難しさがさらりと描かれていて印象深かった。(20代 女性)
刑務所モノとしては異色の作品。『網走番外地』のような硬派な作風を想像していたが、むしろ人情喜劇に近い。安部譲二本人の体験をベースにしているからか、描写に妙なリアリティがある。特に印象に残ったのは、看守とのやり取りや、仲間内の妙な連帯感。出所しても再犯を繰り返してしまう安部の姿が、社会の冷たさを象徴していて深く考えさせられた。(60代 男性)
軽快な語り口で描かれる“塀の中”の日常に、思わず何度も笑ってしまいました。刑務所を舞台にした映画なのに、こんなに人間臭くてユーモアにあふれている作品は初めてかもしれません。登場人物たちのやりとりや、小さな事件の数々がどれも愛おしく感じられます。出所後のオチがまたブラックユーモアで、笑いながらも考えさせられる良作です。(30代 女性)
ヤクザ映画の延長かと思って観たら、全然違った。むしろ刑務所という閉ざされた空間の中で人間関係が築かれていく様子が、どこか学校生活を思い出させるような感じだった。安部譲二という人物の持つ魅力と、藤田まことの演技が絶妙に噛み合っていた。コメディのようでいて、ラストは妙に切ない。社会復帰がいかに難しいかを暗に示している。(20代 男性)
「更生」って何なんだろうと考えさせられる作品だった。罪を重ねながらも、人として魅力的なキャラクターたちに心を奪われる。特に安部譲二の“語り”が面白くて、まるで落語のようなリズムで進むのが心地よかった。刑務所というテーマを重くせず、軽妙に見せる手腕は見事。クライマックスの“戻ってきちゃった”ラストも皮肉で秀逸だった。(40代 男性)
父にすすめられて観ました。昔の日本映画の語り口って、今の映画とはテンポが違っていて新鮮でした。中でも、塀の中での暮らしを淡々と描きながらも笑いがあるのが良かったです。主人公の安部譲二があっけらかんとしつつも、心の奥ではどこか寂しさを抱えているように見えて、印象的でした。現代の若者にも見てほしい映画。(20代 男性)
ドラマ性よりも語りのテンポや雰囲気で見せていく作品。藤田まことの語り口が軽妙で、重い題材なのに全然重く感じなかった。塀の中という特異な空間での人間模様が面白く、笑いながらもグッとくる場面が何度もあった。最後に出所してもすぐに戻るというラストには、現実の厳しさと人間の弱さを感じた。とても良い意味で“昭和”を感じる映画だった。(30代 男性)
映画『塀の中の懲りない面々』を見た人におすすめの映画5選
ショーシャンクの空に
この映画を一言で表すと?
絶望の中に希望を見出す、刑務所映画の金字塔。
どんな話?
無実の罪で収監された銀行員アンディが、刑務所内で希望を失わず、自らの知識と信念で人生を切り拓いていく。厳しい環境の中でも人間の尊厳と友情を守り抜く姿は、多くの観客に感動を与えてきた。
ここがおすすめ!
『塀の中の懲りない面々』と同じく、刑務所内の人間模様や人生のやり直しがテーマ。笑いよりも感動を重視した作品だが、観終わったあとに心が洗われるような清々しさがあります。必見の一本です。
網走番外地
この映画を一言で表すと?
任侠と義理人情がぶつかる、昭和の名作・刑務所映画。
どんな話?
極寒の網走刑務所に収監された元ヤクザ・橘が、仲間とともに刑務所生活を送る中で再び抗争に巻き込まれていく。高倉健演じる主人公の静かな強さと、男たちの熱い絆が胸を打つシリーズの第一作。
ここがおすすめ!
昭和のヤクザ映画としての魅力はもちろん、『塀の中の懲りない面々』と同じく塀の中での人間ドラマが描かれる点が共通。より硬派で渋いテイストが好きな方におすすめの一本です。
刑務所の中
この映画を一言で表すと?
塀の中の日常を淡々と描いた、ユーモラスで人間味あふれる秀作。
どんな話?
漫画家・花輪和一の実体験をもとに、刑務所内での生活を日記風に描いた作品。食事、風呂、運動など、日々のルーティンが細かく描かれる一方で、登場人物たちの関係性に温かみが感じられる。
ここがおすすめ!
刑務所ものというより“生活映画”としてのユニークさが光る。『塀の中の懲りない面々』のような、刑務所内の人間くささや笑いに惹かれた人にぴったりの作品です。山崎努の好演も見ものです。
俺たちに明日はないッス
この映画を一言で表すと?
脱力系ヤンキーたちが繰り広げる、青春と更生の物語。
どんな話?
更生施設で暮らす元不良少年たちが、恋や友情、将来に悩みながらも少しずつ自分の道を見つけようと奮闘する。笑いと涙を交えながら、少年たちの心の成長が描かれる青春ドラマ。
ここがおすすめ!
社会から一度は外れた人間たちが、それでも前を向こうとする姿が『塀の中の懲りない面々』と重なる。シリアスすぎず、どこか肩の力を抜いて観られるのも魅力の一つです。
極道の妻たち
この映画を一言で表すと?
裏社会で強く気高く生きる女たちの、愛と矜持の物語。
どんな話?
ヤクザの男たちの影で生きながらも、自らも“極道の妻”としての覚悟を背負って戦う女性たちの姿を描く。裏社会の仁義と掟、そして夫への愛と誇りがぶつかり合う硬派な人間ドラマ。
ここがおすすめ!
『塀の中の懲りない面々』に登場する男たちと同様、極道という世界で懸命に生きる者たちの苦悩とユーモアが描かれる。女性視点からのヤクザ映画としても異色で、見ごたえのあるシリーズです。
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