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映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の概要:死刑判決を受けながらも生き延びてしまった男と、長野県にある精神病棟で過ごす患者たちに舞い降りた事件を描く一作。自身も精神科医として勤めながら山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生の小説「閉鎖病棟」が原作。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の作品情報

閉鎖病棟 それぞれの朝

製作年:2019年
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:平山秀幸
キャスト:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈、高橋和也 etc

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の登場人物(キャスト)

梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)
妻とその不倫相手、ボケて寝たきりの母親を自分の手で殺めてしまい死刑判決を受けていた男。不運にも生きながらえてしまい、数々の精神病院をたらい回しにされた過去を持つ。
塚本中弥 / チュウさん(綾野剛)
幻聴が聴こえるようになり秀丸と同じ精神病院に入院していた男性。患者の中でも極めて冷静なタイプ。外出許可をもらい下の町で買い出しをしては患者たちに売り小遣い稼ぎをしていた。
島崎由紀(小松菜奈)
秀丸たちの入院する精神病院へ母親に連れられ、やって来た少女。義理の父親に性的なDVを受け、気を病んでしまっている。秀丸やチュウと過ごし、少しずつ明るさを取り戻した。
重宗(渋川清彦)
秀丸たちと同じ病院に入院している薬物中毒患者。患者たちから疎まれる存在で、いつも苛立っている。由紀が一人になる瞬間を狙っていた男。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のあらすじ【起】

死刑囚・梶木秀丸は、手順通りに死刑が執行されたものの死に至らなかった。2度の死刑執行は許されず、脊髄を損傷し下半身に麻痺を患うこととなった秀丸は内密に外部の施設へと送られることとなった。

長野県にある六王子病院。精神病を患っている入居者は「坂の上の人たち」と揶揄されてしまう。看護師たちの監視の元、規則正しい生活を送る入居者たち。チュウさんこと塚本中弥は時折外出許可をもらい、坂の下の町へ買い物に向かう。陶芸小屋で焼き物に勤しむ秀丸からお使いを頼まれるのだった。

チュウさんは洋服やお菓子を買い込み、他の患者に売っていた。職員に見つかり怒られてしまったチュウさんだが、カメラが好きなしょうちゃんこと昭八の面倒もよく見ているのだった。

母親に連れられた女子高校生・島崎由紀が来院した。誰が問いかけても喋ることのない由紀は、医師の大谷から妊娠について聞かれると突如部屋を飛び出した。居合わせた秀丸から花瓶を奪い医師たちに投げつけた由紀。屋上へ向かい秀丸の目の前で飛び降りた。幸いねんざ程度の怪我で済んだ由紀。しかしお腹の子供は亡くなってしまった。

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映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のあらすじ【承】

なかなか馴染めずにいる由紀にも優しく声をかけるチュウさん。穏やかな性格のチュウさんだが、妹夫婦が面会に来て母親の話を聞かされ冷静さを失っていく。過去がフラッシュバックし、一晩一人部屋に入ることになったチュウさん。翌朝、チュウさんを出迎えた秀丸はそっと水を差し出すのだった。

由紀は秀丸のいる陶芸小屋を訪ねた。「ここにいるほど病人になってしまう」と話す秀丸だが、由紀の事情を深く聞こうとはしない。義父に性的な虐待を受け傷ついている由紀は帰る場所はないと思っていた。しかし翌日、義父により無理やり退院させられることとなった。

由紀の妊娠は義父が原因だと母親は知っていた。由紀の存在を疎ましく思う母親は、行く場所のない由紀を家から追い出した。義父の会社から小銭を盗もうとした由紀。義父に見つかってしまい、逃げようともみ合いになり義父を階段から突き落としてしまった。

再び六王子病院に戻って来た由紀。その日はカラオケ大会があった。それぞれに楽しむ患者たちだが、問題を起こしてばかりの重宗が会場に来たことで空気は一変する。薬物中毒の重宗が暴れ出し、秀丸が抑止すると「人殺しの死にぞこない」と声を荒げ始めた。秀丸の過去を患者たちの前で暴露した重宗。秀丸はひとりで過去と対峙するのだった。

秀丸は仕事を早く終え帰宅したある日、妻と役所の男が不倫している現場に遭遇してしまった。勢い余って二人を殺めてしまった秀丸。ボケ始め、寝たきりの母親を一人残すことを躊躇し、自分が贈ったマフラーで首を絞めて殺したのだった。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』のあらすじ【転】

よく外泊をしていたサナエは、いつもめかし込んで家族の話をする。その日も由紀にワンピースを自慢していた。しかしサナエには家族はおらず、カプセルホテルに泊まっているのだとチュウさんは由紀にこっそりと教えた。秀丸の過去が気にかかる由紀だが、チュウさんの「事情を抱えてない人間なんていない」という言葉に口を紡いだ。

秀丸やチュウさんのおかげで笑うようになった由紀。花瓶を割ってしまったお詫びに、秀丸へ柄物のアームカバーをプレゼントした。チュウさんはいつもの買い出しに由紀と秀丸、しょうちゃんを誘いだした。買い物中、秀丸は由紀にシュシュを贈る。公園で弁当を食べながら穏やかな時間を過ごした4人は、記念写真を撮るのだった。

病院に戻るとサナエの死が知らされた。海の傍の公園で亡くなっていたというサナエは死後3日経ち発見されたという。家族の元ではなく、病院に戻ってきてしまったサナエの存在は他の患者たちに大きな影響を与えパニックになった。「行く場所がない」患者たちだが、チュウさんは秀丸に「ここを出たら、いつか一緒に暮そう」と未来の話をするのだった。

サナエを送るため、陶芸小屋にある花瓶を取ってきてほしいと秀丸から頼まれた由紀。しょうちゃんは由紀を見かけついて行くと、その前に重宗が現れた。看護師の監視を逃れ、由紀を襲った重宗。話すことができないしょうちゃんは、どう助けたらいいのか分からず精一杯カメラでその様子を収めた。翌朝、由紀の姿がないと知ったしょうちゃんはチュウさんに写真を見せた。秀丸に相談したチュウさんは、「誰にも話すな」と指示を受けた。

秀丸は誰にも言わず、重宗を殺めた。警察に連行される秀丸を見送る患者たちは「みんなのためにありがとう」と感謝を言葉にするのだった。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の結末・ラスト(ネタバレ)

再び面会に来た妹夫婦にチュウさんは退院する覚悟を決めていることを報告した。看護師の井波も背中を押し、秀丸の弁護士と連絡を取れるように手配してくれたのである。しょうちゃんは4人で外出したときの写真を渡し、チュウさんは病院を後にする。久しぶりに帰宅したチュウさんを母親は泣きながら迎え入れるのだった。

弁護士を介して、秀丸と再会したチュウさん。しかし、秀丸は生きる気力をすっかり失っていた。しょうちゃんが撮った事件の写真は破棄してしまった以上、チュウさんには秀丸を減刑にする手助けは手立てがなかった。

仕事に就き、安定した日々を送っていたチュウさんは、新聞の記事で秀丸の裁判について知った。傍聴席には井波と秀丸を慕っていた二人の患者も来ている。チュウさんは裁判所で由紀と再会した。秀丸にプレゼントされたシュシュを付けた由紀は、弁護側の証人として出廷したのである。

由紀はゆっくりと重宗にレイプされたことや秀丸が重宗を殺めたのには理由があったことを語った。患者たちの誰が被告人となっていてもおかしくない中、秀丸に感謝していることを告げ、秀丸の出所まで待つ覚悟を明かすのだった。チュウさんもまた、退院したことを伝え「待ってるから」と小さくつぶやいた。

刑務所の中庭で朝日を浴びる秀丸は、ゆっくりと両足を車椅子からおろし自分の足で歩こうとするのだった。

映画『閉鎖病棟 それぞれの朝』の感想・評価・レビュー

「感動のあまりむせび泣きました…」このキャッチフレーズがとても印象深い小説が原作である。1995年に発売された原作ファンにとって、このさっぱりとした仕上がりはどう映るのだろうか。監督が原作に惚れこみ11年越しで映画化したという今作。「ディア・ドクター」以来10年振りの主演作である笑福亭鶴瓶の演技は見事である。院内では救世主のような存在の秀丸が再び加害者となる。笑福亭鶴瓶の一連の変化をたっぷりと味わえる一作である。(MIHOシネマ編集部)

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