映画『HELLO WORLD』の概要:2027年、優柔不断で平凡な高校生である少年の前に10年後の自分という男が現れる。彼は少年がこれから付き合う恋人を救うため、協力して欲しいと告げる。男の話によると、少年の世界は過去の記録だと言うのだが…。
映画『HELLO WORLD』の作品情報
上映時間:98分
ジャンル:SF、青春、アニメ
監督:伊藤智彦
キャスト:北村匠海、松坂桃李、浜辺美波、福原遥 etc
映画『HELLO WORLD』の登場人物(キャスト)
- 堅書直実(北村匠海)
- 優柔不断で取り得のない平凡な高校生。可愛らしく女の子らしい子が好みだが、一行瑠璃と接していくうちに恋をする。カタガキナオミと出会い、データに干渉し書き換えることのできるシステム、グッドデザインを使いこなせるようになる。
- カタガキナオミ(松坂桃李)
- 10年後の堅書直実で、アルタラのシステム直属メインディレクター。高校時代、一行瑠璃と恋人同士になるも、脳死状態となった瑠璃を覚醒させるため、過去の記録への侵入を試みる。一途で責任感のある人物で、直実からは先生と呼ばれている。
- 一行瑠璃(浜辺美波)
- 直実のクラスメイト。姿勢が良く決断力がありいつも1人でいる孤高の存在。携帯端末の使い方が分からない。読書家で行儀が良く、直実と接していくうちに恋をする。
- カラス(釘宮理恵)
- 三本足のカラスだが、データを書き換えることができるシステム、グッドデザイン。システム自体に意思があり、高校生の直実の努力を間近で見つめてきたことで、直実を助ける。
- 千古恒久(子安武人)
- クロニクル京都を実現するため、無限領域を持つ量子記憶装置アルタラを開発する。大らかでいつもおかしな行動をする天才肌。非常に優秀なカタガキナオミに頼り切っている。
映画『HELLO WORLD』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『HELLO WORLD』のあらすじ【起】
2027年、京都。高校生の堅書直実は優柔不断で凡庸な少年だった。押し付けられたような形で図書委員になった彼は、クラスメイトで同じ委員になった一行瑠璃に思い切って声をかけてみたが、瑠璃は携帯端末の使い方が分からないようで、住所をメモした紙を一方的に置いて行くのだった。
そんなある日の放課後、夕空にオーロラのようなものが出現。直実はその時、3本足のカラスに本を盗まれてしまう。逃げるカラスを追いかけると千本鳥居が並ぶ神社へ。そこで、ようやく本を返してもらったが、次の瞬間周囲に異変が現れ、白いフードを被った謎の男が現れた。男はぶつぶつと何事かを呟いていたが、なぜか直実のフルネームを知っており追いかけて来る。周囲には男が見えないらしく、彼は直実が何者なのか教えてやると不遜な態度で言い放つのだった。
翌朝、カラスに誘われて白いフードの男と会う。歴史資料館にて現在の京都の事業として行われている都市記憶の保存について学んだ。大企業と政府、京都が共同で開発した都市記憶の記録を再現するという事業はクロニクル京都と呼ばれている。だが、記憶を保存するには大規模な記憶領域が必要となるため、無限の領域を持つ量子記憶装置アルタラが開発された。
そこで、歴史博物館から近くの川原へ移動。落下して来たドローンが直実に当たり痛みに呻く彼に、男は話を続ける。2020年にクロニクル京都の真の事業が密かに開始され、無数のドローンによって京都全体の事象を記録することになった。
そのドローンによると、直実は川原で読書中に落下して来たドローンとぶつかったと記録が残っている。男が言うには、直実がいる世界は記録された過去であるらしい。男はそこでようやくフードを取り、自分は10年後の2037年に現実世界からアクセスしている未来の直実だと言うのだった。
ドローンとぶつかり右のこめかみを負傷。未来のナオミにも同じ場所に傷痕があった。ナオミの目的は一行瑠璃と恋人同士になり、彼女を未来で起こる事故から救い記録を改ざんすることだった。だが、アバターであるナオミは、助言はできても干渉することができない。頼みは過去の自分である直実だけだった。
ナオミを先生と呼ぶことになり、カラスによってアルタラの記録世界を書き換えるグッドデザインを得た直実。この力は想像を具現化し物質を書き換えるものだったが、制約も多い。直実は先生とグッドデザインを使いこなす修行をする傍ら、瑠璃と恋人同士になるため、行動を開始するのだった。
映画『HELLO WORLD』のあらすじ【承】
先生は過去の記憶を詳細に日記として残している。助言に従いバスで瑠璃と会話する機会を得た直実はその後、彼女と徐々に距離を縮めていく。一方で災難や苦難に対処するための心構えとグッドデザインを使いこなす修行も継続。
同じ図書委員として瑠璃と交流を続ける直実。先生と会ってから2カ月が経過し、6月に入った。学校でチャリティ古本市が開催されるため、直実はこの日に向けて瑠璃と共に古本を集める。瑠璃は背筋がぴんと伸びた実直な性格で、直実と違って決断力に優れ孤高を誇っていたが、互いに好きな本に関して打ち明け合うことで更に距離を縮める。
ところが、翌日。必死で集めた古本が火事によって全て燃え尽きてしまう。このことで古本市が中止となったが、先生はこれをきっかけに瑠璃と恋人への第一歩を踏み出すと言う。だが、直実は先生の助言に従うことができず、失われた本の一部をグッドデザインで復元するのだった。
他の図書委員も各々古本を持ち寄ってくれ、チャリティ古本市が無事に開催される。結果的に瑠璃と付き合うことになったため、終わり良ければ総て良しということになった。
修行の方も順調で先生から及第点が出される。Xデイは7月3日の夏祭り。瑠璃と直実は花火大会へ2人で出かけ、落雷により瑠璃が亡くなる。そこで、直実は瑠璃を花火大会へ誘わず、彼女の家の前で待機した。
先生が直実と接触し記録の改ざんを行おうとしていることを察したアルタラの自動修復システムが作動。狐面を付けた警備員が直実の前に大勢現れる。直実はグッドデザインにて攻撃を開始。落雷がある20時10分まで、先生のサポートを受けながら瑠璃を守る。その頃、瑠璃は自室にて読書していたが、外での騒動には気付かない。
ところが、狐面は改ざんを防ぐためにシステムの権限をフルに活用し、直実と瑠璃を落雷地点へと転送してしまう。直実は何としてでも瑠璃を助けるべく、制約を無視してまでブラックホールを作り出し落雷をも吸い込んで瑠璃を助けた。
映画『HELLO WORLD』のあらすじ【転】
茫然としていた瑠璃だったが、このことで直実への恋心を確信。しかし、そこで直実のグッドデザインが新たに起動し、瑠璃を閉じ込めてしまう。そこへ、先生がやって来て真実を告げる。瑠璃は落雷によって死んだのではなく、脳死状態となったのだと。先生は過去の記録で瑠璃を当時の心身状態にし、その記憶でもって脳死状態の瑠璃を目覚めさせようとしていたのだ。囚われた瑠璃のデータは転送され、忽然と直実の前から消えてしまった。
画して、そのデータは現実世界での瑠璃へ転送され、彼女はとうとう目を覚ます。
その頃、アルタイル内では瑠璃が消失したことで、データの破損が発生し瑠璃の家には入れなくなっていた。直実は狐面に目を付けられ追われる羽目になる。
現実世界ではアルタイルをリカバリーする準備が始まった。カタガキナオミはそのシステムの直轄メインディレクターだったのだ。
瑠璃が脳死状態となった後、ナオミは必死で勉強に励みアルタイルを開発した千古恒久の研究所へ入る。そうして、千古と苦楽を共にし、とうとうシステム直轄メインディレクターとなった。そこからは独学でアルタイル内へ侵入するための研究を行い、自らの身体で試す。そのために背中に大きな火傷を負い、更に脊髄を損傷し左足を引き摺る羽目になってしまう。それでも、ナオミは諦めずに何度も何度も侵入を試みた。そうして、とうとう過去の記録へと入り込むことができたのだ。
アルタラのリカバリーが開始される。リカバリーとは現在ある過去の記録データを一旦、全て削除しリセットを行う作業である。狐面に追われていた直実は奴らが変貌し、周囲のデータを削除する様子を目にした。自分の世界が消えていく。空には赤いオーロラが出現し、あらゆる物を吸い込んでは消し去る。だが、直実はオーロラの中心に光の柱が立っているのを発見。瑠璃が消えた時も光の柱に吸い込まれて行った。あの先に向かえば何かがある。彼は勇気を奮い立たせ、オーロラへと飛び込んだ。
恐ろしいまでの世界を通り過ぎ直実の体が消えて行く。だが、不思議なことに彼の意識は留まり、深淵に辿り着いた。気が付くとカラスが目の前にいる。カラスは瑠璃を助けるための力になると言う。グッドデザインでもあるカラスは直実の右手に再び戻った。そうして、彼はアルタラの深淵から抜け出すのである。
映画『HELLO WORLD』の結末・ラスト(ネタバレ)
その頃、目覚めた瑠璃の元を訪れていたナオミだったが、病室に狐面が現れる。不審に思ったナオミは自分がいる世界すらも記録の世界であることに気付き、狐面の目的が瑠璃という異物の排除であることを知る。脳死状態となった瑠璃の中には過去の瑠璃が入っているため、異物と判断されたのだ。瑠璃はナオミの前で殺されそうになるが、そこへ直実が現れ彼女を救った。
過去の瑠璃はナオミの瑠璃ではない。直実は先生を殴りつけ、瑠璃を背負って病室から出た。一大事業クロニクル京都が施行された街では、景観をデータで変化させることができる。狐面はそれらを利用して瑠璃を追う。直実もグッドデザインにて奴らを牽制。カラスによると、アルタラに瑠璃を再変換できる最適な場所があるらしい。直実はグッドデザインにて自転車を作り出し、そこへ向かった。
直実の創造力は凄まじく、瞬時に物質を書き換え瑠璃を助ける。そこへ、先生が車で迎えにやって来る。全ては自分が引き起こしたこと。彼は直実に協力することで、責任を取ろうとしていた。
先生の協力もあり、無事に京都駅の大階段へ辿り着く。カラスが変換ゲートを作り、瑠璃がナオミに別れを告げてゲートをくぐって行く。次は直実の番だが、狐面が一つに固まり怪物のようになって襲い掛かって来る。直実は怪物を倒したが、次のゲートを作るには時間が必要だった。
その頃、千古は暴走するアルタラの修復システムを直接止めようとしていた。今や修復システムは京都の街そのものを飲み込もうとしている。より巨大になったシステムは、2人の直実に襲い掛かったが、直実にもグッドデザインにも限界がある。そこで、先生は直実か自分が消えることで事態の収拾ができると告げた。だが、直実はどちらも生きるのだと叫ぶ。そうしている間にもシステムは直実を標的に定める。抗う直実だったが、反撃が遅れてしまい先生が命を張って助けてくれるのだった。
血塗れになったナオミはグッドデザインによって姿を消し、同時に千古がアルタラの主電源を落とす。すると、修復システムは動きを止めて灰となり、アルタラは新たに再起動された。世界が消えて新たに編成される。
光に包まれた直実が気付くと、そこには先に戻っていた瑠璃がいた。2人は抱き合い口づけを交わす。カラスは直実を助けたことで力尽き、灰となって消えた。未来でもアルタラが丸ごと姿を消したことで誰もが唖然としている。千古は動じることなく、新しい世界へ行ったのだと呑気にも笑うのだった。
映画『HELLO WORLD』の感想・評価・レビュー
3DCGを用いた作画を得意とするグラフィニカが手掛けたアニメーション映画。今作では先に声優の演技を収録し、後から画を合わせるプレスコ方式が採用されている。
主演は声優初挑戦の北村匠海で未来のタクミを松崎桃李が演じている。プレスコ方式であるため、アニメーションとの違和感がなくストーリーに集中できる。軸としては付き合ったばかりの恋人を救うことだが、今作はとても複雑な設定になっている。主人公がいる世界は過去でしかも記録された世界。更に未来のタクミがいる世界も実は記録世界であったことが判明する。そうして、ラストシーンでは真実が明かされるのだが、そのラストシーンでまた考えさせられる。素晴らしくよくできた作品である。(MIHOシネマ編集部)
個人的にはこの作品は『君の名は』や『天気の子』と同系統だと思うのだが、決してつまらなくはなく、同程度に面白いかと言われると若干の物足りなさを感じさせる出来。
理由の一つは、『Official髭dism』という今旬のアーティストを使っているのにもかかわらず挿入のタイミングがあまりハマらなかったこと。もっと盛り上がるタイミングがあった気がする。もう一つはこの映画単品ではすべてを理解できず、スピンオフ小説まで手を伸ばさなければならないこと。読まなければ意味ありげに出てきて物語にあまり関わらない美鈴の存在の意味が、まるで分からない。(男性 30代)
風景とか建物がリアルで本当に美しい。アニメってここまで綺麗になったのかと感動する。
SFラブストーリーだから仕方がないのかもしれないが、シミュレーターと仮想世界とか特殊な設定があるので、若干頭が混乱するストーリーだった。もう少し分かりやすかったら、もっと楽しめたかもしれない。
最後まで見て、堅書直実と一行瑠璃がお互いに深く思い合っているのが感じられて感動した。相手を蘇生させるために自分だったらどこまで努力できるかと、ふと考えさせられた。(女性 30代)
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