この記事では、映画『人のセックスを笑うな』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『人のセックスを笑うな』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『人のセックスを笑うな』の作品情報
上映時間:137分
ジャンル:ラブストーリー
監督:井口奈己
キャスト:永作博美、松山ケンイチ、蒼井優、忍成修吾 etc
映画『人のセックスを笑うな』の登場人物(キャスト)
- みるめ(松山ケンイチ)
- 美術大学生19歳。人当たりの良い青年。どこか朴訥とした感じがある。ユリに惹かれて彼女と付き合うようになる。
- ユリ(永作博美)
- 視覚デザイン科のリトグラフ研究室の非常勤講師。どこか風変りで破天荒な女性。39歳。本名はサユリで、実は既婚者。簡単なことができない。
- えんちゃん(蒼井優)
- みるめの同級生。みるめに気があるが、告白はしていない。いつも元気な女の子。トレードマークはニット帽。
- 堂本(忍成修吾)
- みるめの同級生。えんちゃんに気があるも、相手にされていない。大相撲が大好き。
映画『人のセックスを笑うな』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『人のセックスを笑うな』のあらすじ【起】
とある早朝。美術大学で友人の堂本とえんちゃんとみるめは、軽トラに乗り走行中のトンネルで変わった女性と出会う。彼女は裸足で片方の靴を持ち、必死に走っているのだった。
女性は終電を逃した上に、靴擦れを起こしてしまったと言う。3人は女性を近くのバス停まで送ってあげた。
それから数日後、講習の合間で一服しに喫煙所へ来たところ、例の女性が煙草を吸っているのを発見。喫煙者のみるめは茫然としてしまい、彼女から火の点かないライターを貰ったが、女性は3人の顔を覚えていない様子。その後、彼女は咥え煙草で禁煙と張り紙がされた構内へと、姿を消したのである。
みるめは女性が気になって、密かに後を追いかけた。すると、女性は視覚デザイン科、リトグラフ研究室で黙々と作品を作っていた。
えんちゃんのバイト先である、映画館へやって来たみるめ。そこへたまたま、例の女性ユリがやって来る。2人は一服しながら世間話をし、話の流れでロバを眺められる喫茶店へ。なんとも和む風景である。2人はそこで、朝まで過ごし別れた。
みるめはユリの教示でリトグラフの体験をしてみる。緻密で同じ作業の反復だが、色の重なりにより絵に変化が現れる。和気あいあいと過ごす内、みるめはユリにモデルをやらないかと誘われるのであった。
ユリの自転車に2人乗りで、彼女のアトリエにやって来たみるめ。アトリエは古い一軒家で、彼はユリに促されるまま照れつつも全裸となり、彼女と関係を持ってしまうのだった。

映画『人のセックスを笑うな』のあらすじ【承】
近頃、みるめの様子がおかしいと気付いた堂本は、彼から恋人ができたことを聞き出す。どうやらその恋人というのが、あのユリという女性らしい。ユリはリトグラフの非常勤講師で年齢は39歳。えんちゃんは放課後の作品制作中、みるめとユリが仲睦まじく帰路につく姿を遠目から目撃し、ショックを受けるのだった。
ユリはどちらかと言うと破天荒な性格だった。みるめとも対等に話をし、子供のように無邪気にはしゃぐ。そんな彼女にみるめは、どんどん魅了されていく。
授業中もぼんやりとし、勉強にも身が入らない様子のみるめ。えんちゃんは彼から直接、ユリと付き合っていることを聞き、やはりショックで彼の前から走り去ってしまう。
リトグラフの授業が急遽、休講となってしまったため、心配になったみるめ。大学の事務所でユリの住所をこっそりメモし、その場所へ向かった。
そこでは、カメラ工房が営まれており、出て来た温厚そうな男性にユリのことを聞く。だが、男性はユリのことをサユリと呼ぶのだ。中へ案内されてお茶をいただいたみるめ。男性は丁寧にも、きなこ餅の食べ方を享受。そこへユリが登場し、なぜか一緒にお茶を飲む。
慌てた様子も見られない。お客さんが来たようで、男性はそちらの対応で退席。みるめは男性をユリの父親と思って対応していたのだが、ユリは事もなげに自分の旦那だと笑って言うのだった。呆気にとられ、固まってしまうみるめ。
映画『人のセックスを笑うな』のあらすじ【転】
大学の空き教室へユリを引っ張り込んだみるめだったが、彼女に笑顔で軽くいなされて逃げられてしまう。
彼はもうユリとの関係を続けないよう、携帯を封印しようとするも、その最中に着信があり、必死で封印を解こうとしてしまう。そんな自分を不甲斐なく思い、更に落ち込んでしまうのだった。
バイト中のえんちゃんの元へ、ユリがやって来る。彼女と喫茶店へ入ったえんちゃん。みるめとの関係を問い質すが、ユリに悪気はないようだ。彼女はみるめに触ってみたかったと言う。だから、付き合いたいのだけど、ダメかと笑うのである。そうして、展覧会のチケットをえんちゃんに渡して、席を立つのだった。
1人で展覧会へやって来たえんちゃん。ユリはスタッフに呼ばれて、すぐに立ち去ってしまったため、所在なさげにベンチへ座り、腹いせに用意してあったクッキーを1皿平らげて帰った。
傷心に登校して来ないみるめを心配したえんちゃんは、彼の家へ。途中、堂本に絡まれるも振り切って来たが、姿を現したみるめの態度はすげない。彼女は半ば、強引にみるめを引っ張り出して遊園地へ誘った。
観覧車に乗ったが、その間もみるめの携帯が鳴り続ける。彼は必死にユリと会わないよう、電話に出ることを頑なに拒否。電話に出れば会いたくなってしまうからだ。
えんちゃんは、そんな彼の姿に自分の思いは届かないのだと自覚し、悲しくなってしまうのだった。
結局、会いたい思いを断ち切ることができず、みるめはユリへ会いに行ってしまう。行けば彼女は必ず、みるめを受け入れてしまうのだ。会わなかった時間を埋めるかのように、濃密な時間を過ごす2人。
映画『人のセックスを笑うな』の結末・ラスト(ネタバレ)
そんなある日、みるめはえんちゃんから、ユリが学校を辞めたと聞かされる。何も知らなかったみるめは、構内の掲示板でそれを確認し、ユリに電話してみるも繋がらない。彼は彼女の所在を確かめるため、学校から飛び出した。
ユリのアトリエに自転車はあるも、本人は不在のようだった。
年が明け、えんちゃんは大学を辞めて塗装屋に就職。堂本はえんちゃんを訪ねた。
みるめはあれ以来、家に引き籠ってしまい大学には出ていないらしい。えんちゃんの方は吹っ切れた様子で、みんな弱いからと笑うのであった。
そんなみるめを、久々に訪ねてみたえんちゃん。彼女は姿を現したみるめに、ユリを見たと話す。2人はユリのアトリエへ行ってみたが、やはり無人だった。
その後、画廊へ向かってユリの所在を聞いてみると、なんと彼女は海外へ旅に出ていると言う。結局、徒労に終わった2人。
長閑な田んぼを背に、バス停のベンチで一息ついた時、えんちゃんが告白。ユリを見たというのは嘘だったようだ。みるめは無言で農場バイクのエンジンをかけ、えんちゃんを乗せて走り出すのだった。
居酒屋で潰れてしまったみるめを引き摺って、ホテルへ入ったえんちゃん。空いていた部屋はツインで、ベッドは1つしかない。えんちゃんは酔っぱらって眠るみるめの唇を奪おうとするも、ユリの名を呟かれたのでやめてしまった。なんと腹立たしいことか。彼女はベッドの上で飛び跳ねて、みるめをベッドから突き落とした。
翌早朝、みるめはえんちゃんを置いて、1人でバイクに乗りユリの家へ向かうも、やはり誰もいない。そこへ、ユリから電話がある。彼女は旦那さんとインドにいるらしい。話の途中で通話は切れ、更にバイクのエンジンも止まる。全く、ツイてない。彼はバイクを押して歩きつつ、大学の屋上へ。ここなら電波が届きやすいと思ったのだがしかし、携帯は待てども鳴らなかった。
そうしている内に、なぜか堂本とえんちゃんが大学構内へやって来る。手には花火を持っていた。彼は隙を見てえんちゃんにキス。堂本は密かにえんちゃんを狙っていたのである。
そんな2人を屋上から目撃してしまったみるめ。彼は複雑な心境で、ユリから貰ったライターをいじくり、初めて火が点いて驚くのだった。
映画『人のセックスを笑うな』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
つかみどころのない魅力的な女性とは、常にどこか気まぐれに優しくそして冷たく、あるがままに生きて無邪気なのかもしれない。
永作博美は、そういう女性を演じさせるのにぴったりである。彼女の行動すべてが何の悪気もなく、だからこそ接する人間からすればたちが悪いとも言える。男なら、こんな女性を愛したことが一度はあるのではないだろうか。
いつもそばに居てくれる、何のしがらみもなく恋愛できる女性や慕ってくれる人がいたとしても、それでは得られない強烈な感情が生まれるのは叶わぬ恋にこそあるのかもしれない。(女性 30代)
タイトル通りの官能的な内容を想像していたが、思いの外切実な「愛」をテーマにした作品だった。
本作は、山崎ナオコーラの原作小説を映画化したもの。年の差カップルの切なくてちょっぴりクスッとくる恋愛物語がリアルに描かれている。
永作博美演じるユリの積極的で小悪魔な役柄がぴったりとマッチしていて、可愛らしかった。彼女の掴みどころのない性格や何を考えているのか分からない様子がまた魅力的だった。
みるめはそんな彼女に恋する大学生だが、初めての恋に舞い上がる青年を松山ケンイチが好演している。そんな2人の醸し出す自然な空気感がとても良かった。(女性 20代)
映画としてはストーリーに物足りなさを感じてしまうが、まるで誰かの日常を覗いているような感覚に陥るほど松山ケンイチと永作博美の演技で引っ張りながら、スローな展開や自然な音楽で世界観を作っていてとてもよかった。ただ、終盤は会話が少なく少し長すぎるように感じるシーンもあったので、飽きてしまいそこは少し残念だった。
タイトルにインパクトがあるので、観るまでどのような作品なのか色々想像したが、内容はとても爽やかなもので、気軽に楽しみながら観ることが出来た。(女性 20代)
昔の作品なので、少し画質が良くないシーンもありましたが、その点もホームビデオみたいで逆に雰囲気が出てとってもいいです♫私は、現在大学生ですが事件が何にも起きず暇そうにだるーっとしている感じが「あるある!」と感じ、何か懐かしいような気分になりました。蒼井優が展示会で一人ぼっちでアメニティのお菓子をパクパク食べちゃうシーンが1番お気に入りです!そのほかお気に入りなシーンが沢山ある作品なので、定期的に観たくなる映画です。(女性 20代)
人によって好みの分かれそうな映画だと思った。原作を読んだことはなかったが、タイトルのわりにはかなりまったりとしていて爽やかな話だった。日常のひとつひとつを丁寧に映している印象だったが、それがうっとおしく感じる人もいるだろう。
恋愛小説に出てくる女性にありがちなミステリアスで、掴み所のないキャラクターのユリと、まだ初々しい学生のみるめ。よりリアルな恋愛を感じるような日常的動作を特にしっかりと映していて、なおかつローテンポ。個人的には定期的に観たくなるような映画だと感じた。(女性 20代)
毎年、秋から冬にかけて何度も見る作品です。みるめくんとユリの、二人の恋の世界観を愛しています。39歳と19歳の男女の恋となると、二人がお互いに求めるものが違います。それに加えて、えんちゃんや堂本の気持ちも考慮しながら見ると、あらゆる恋を擬似体験しているかのようです。ユリのアトリエや、猪熊さんと暮らしている家など、空間がゆったりとしていて見ているだけでリラックスできます。色合いや音楽などの演出にも、センスを感じられる作品です。(女性 30代)
恋愛の正解がないことを改めて思い知らされる映画。由紀夫の不器用な恋と、ユリの気まぐれでつかみどころのない魅力に振り回される様子がリアルで、まるで誰かの本当の恋愛を覗いているようだった。特に、ユリがあっさりと去っていく終盤は呆気なさすぎて、逆に心に残る。静かな演出の中にある生々しい感情の揺れがクセになる。(20代 男性)
満島ひかり演じるユリのミステリアスさと、松山ケンイチのもどかしい青年像が妙に心に残る作品だった。女性の立場から観ると、ユリの言動にイラっとする瞬間もあったけど、それが逆にリアルだった。人間のエゴとか弱さ、恋の曖昧さが丁寧に描かれていて、何度も「ああ、わかる」と思わされた。美術学校の空気感も懐かしくて良かった。(30代 女性)
最初はタイトルに惹かれて軽い気持ちで観たが、思いのほか切ない恋愛映画だった。不器用で純粋な由紀夫と、自由で奔放なユリの関係は、美しくもあり、どこか残酷。ユリのような女性は現実には近づきたくないけど、スクリーンの中だとその魅力に抗えない。どこか文学的で、説明しすぎない構成も好感が持てた。(40代 男性)
恋愛って、こんなにふわっと始まって、ふわっと終わることあるよね…と妙に共感してしまった。由紀夫の感情は常にユリに寄り添っていて、でも彼女はそれを全部受け止めない。心が通ってるようで、通っていないような、そんな“ズレ”がリアルで切なかった。観終わった後に、しばらくぼーっと考えたくなるタイプの作品です。(20代 女性)
映画『人のセックスを笑うな』を見た人におすすめの映画5選
ナイン・ソウルズ
この映画を一言で表すと?
「男たちの逃避行が描き出す、切なさと希望のロードムービー」
どんな話?
刑務所を脱獄した9人の男たちが、ある“宝”を目指して旅をする物語。それぞれに過去と罪を抱えながら、バラバラなようでどこかつながっている彼らの姿が、ユーモアと哀愁を帯びて描かれます。
ここがおすすめ!
荒削りな生き様を持つ登場人物たちの描写が『人のセックスを笑うな』に通じる魅力。個々の関係性や感情のズレが生々しく、ラストには静かな余韻が残ります。石井裕也や山下敦弘監督作品が好きな方にもおすすめ。
恋人たち
この映画を一言で表すと?
「愛の形に“正解”なんてないと教えてくれる静かな傑作」
どんな話?
全く関係のない3人の男女が、それぞれの孤独や痛みと向き合いながら、日常の中で“愛”を模索していく群像劇。見過ごされがちな感情が丁寧に描かれ、観る者の心にじわりと沁みてくる。
ここがおすすめ!
不器用で不安定な人間関係を静かに映し出す点が『人のセックスを笑うな』に似ていて、どこか放っておけない人物ばかり。淡々と進むストーリーの中に、深い愛と切なさが詰まっています。
リンダ リンダ リンダ
この映画を一言で表すと?
「音楽がつなぐ、一瞬の青春の輝きを切り取った名作」
どんな話?
高校の文化祭を目前に、バンドメンバーを探していた少女たちが、韓国人留学生ソンをボーカルに迎えて「リンダ リンダ」を演奏するまでの数日間を描く青春ストーリー。
ここがおすすめ!
空気感や“間”で語る演出が光る、青春映画の傑作。『人のセックスを笑うな』と同様、説明しすぎずに感情を描くスタイルで、ゆるやかな時間の流れが心地よい。淡い恋愛や人間関係に敏感な人に響きます。
青い春
この映画を一言で表すと?
「若さと暴力、無気力の中に漂う“青春の不安定さ”を描いた衝撃作」
どんな話?
荒れた男子校を舞台に、退屈と無力感の中で日々を過ごす高校生たちが、やがて暴力や仲間の裏切りを通じて、自分の存在を問い始めていく。青春の“空白”を描いた坂口拓主演の異色作。
ここがおすすめ!
「わかり合えないけど惹かれ合う」そんな関係性の不安定さが、『人のセックスを笑うな』と通じています。恋愛よりも友情や人間の未成熟さに焦点を当てた作品で、思春期のむずがゆさを見事に表現。
好きだ、
この映画を一言で表すと?
「言葉にできない想いが交錯する、詩のような恋愛映画」
どんな話?
高校時代の淡い片想いと、大人になった今も残るその感情を描いたラブストーリー。10年後の再会と、言えなかった“好きだ”という言葉が、静かな空気と音楽にのって紡がれていく。
ここがおすすめ!
『人のセックスを笑うな』が持つ、余白の美学や未完成な感情の描写がそのまま詩のように流れる一作。セリフよりも映像と間がすべてを語るスタイルで、静かに胸を打ちます。美術・音楽好きにもおすすめ。
みんなの感想・レビュー
ストーリーに深みはなく物足りなさを感じるが、登場人物の心理描写や作品の雰囲気など、部分的に見るととても優れた作品だと感じる。松山ケンイチの空回り感や永作博美のミステリアスさなど、各俳優の表現力は一流である。それだけにやはりストーリーがもったいない。
雰囲気は全体的にゆったりとしているので、タイトルから刺激的な内容を求めて鑑賞する人はがっかりするかもしれない。好みの分かれる作品だと思う。個人的にはこのような作品は嫌いではないので、映画が長く感じるようなことはなかった。