映画『ひとつの太陽』の概要:台湾広告界の巨匠と称される鍾孟宏が手掛けた長編作。次男が巻き込まれた事件を機に、家族間で生まれた壁と行く末を追う展開。2019年の金馬奨で数々の賞を受賞した話題作である。
映画『ひとつの太陽』の作品情報
上映時間:156分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、青春
監督:チョン・モンホン
キャスト:チェン・イーウェン、ウー・チエンホー、サマンサ・コー、グレッグ・ハン etc
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映画『ひとつの太陽』の登場人物(キャスト)
- アーウェン(チェン・イーウェン)
- 運転免許教習所で講師として働く父親。優秀な長男を贔屓するもとある事件から精神的に参り始める。少年院を出て前向きに更生する次男を受け止めきれず葛藤する。
- チン(コー・シューチン)
- 愛する息子が巻き起こす事件に一喜一憂しながらも、新たな命を招くタイミングで考えを改めていく。典型的な理想を抱く夫との関係に悩みながらも前を向き進んでいく。
- チェン・ジェンハオ / アーハオ(シュー・グアンホン)
- 両親の期待を背に、医大を目指し一浪しながら勉強に励む長男。とても優しく人当たりは良いが、抱え込みやすく弟の事件以降考えこむことが多くなっていた。同級生のシャオゼンと出会い気分転換にはなるが、ある日大きな決断をする。
- チェン・ジェンフー / アーフー(ウー・ジェンホー)
- 事件に巻き込まれてしまった次男。優秀な兄と比べられてしまい、ツァイトウとつるむようになってしまう。恋人の妊娠を知り、心を入れ替えて懸命に生きるようになる。
- ツァイトウ(リウ・グァンティン)
- アーフーの同級生。突拍子もない行動を起こしがちで、アーフーをいじめていたオレンの手を斧で切り落とす事件を起こしてしまった。少年院を退所後もアーフーに付きまとっていた。
映画『ひとつの太陽』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ひとつの太陽』のあらすじ【起】
大雨の中バイクでとある店に向かう二人の青年。食事中のターゲットを見つけた青年は、ナタを振り落としターゲットの片手を切り落としたのだった。
後日、事件についての裁判が始まった。アーフーは実行犯ではないものの、現場まで乗り付けたバイクの窃盗や実行犯の友人を止めなかったことを罪に問われていた。父親のアーウェンは罪の意識から涙するアーフーには関心がなく、「育て方を間違えた」と言い捨てるのだった。アーフーは暴行罪で少年院に3年入ることとなる。そんな中、アーフーを訪ねてきた一組の母娘。用件は、15歳の娘・シャオユーがアーフーの子供を妊娠したため責任を取れと言うことだった。しかし、アーフーに話をしようも家にはいないのである。問題ばかりの弟・アーフーのことが気がかりな長男・アーハオ。医大を目指し昼夜勉強に励んでいるが、身が入らなくなっていた。上の空な態度で授業を受けていたため、教室から出されてしまったアーハオに一人の女子生徒が声をかけてきた。彼女の名前はグオ・シャオゼン。シャオゼンと過ごした時間はとてもいい気分転換になるのだった。
息子が少年院に入ったというのに、変わらぬ日常を送る父・アーウェン。教習所の生徒に子供はいるか問われ「1人」と答えたアーウェンにとって、優秀なアーハオだけがいればそれでいいのであった。とある日、アーウェンの職場に事件の被害者の父親が賠償金を求め訪ねてきた。しかし、アーウェンにとって事件は自分の身には関係ないことである。全く相手にしない素振りで、相手を追い返すのであった。
少年院に入った初日、同室の少年たちから暴力で歓迎を受けたアーフー。相容れないように感じた仲ではあったが、同年代の少年同士負った心の傷に近いものがあり少しずつ心を寄せ合い始めるのだった。
映画『ひとつの太陽』のあらすじ【承】
あっけらかんとした態度のアーウェンと対照的な表情で、事件後も黙々と仕事に励む母・チン。ホステスのヘアメイクの仕事を終えて帰路に就こうとしたところを、以前家を訪ねてきたシャオユーが待ち構えていた。夜も遅く、一人残すわけにはいかず自宅へ連れて帰ったチン。認めていない次男が事件を起こした上に、妊娠までさせていたと知り激怒するアーウェン。大声で少年院に居るアーフーを罵倒したため、シャオユーは状況を理解してしまい泣き崩れるのだった。翌日、シャオユーの母親に会いに行ったチン。話を聞くと、本当の母親ではないことを知ってしまう。崩壊した家族に嫌気がさしていたチンは、同情ではなく興味本位でシャオユーを預かることにした。
アーウェンの職場にはしつこく被害者・オレンの父親が訪ねてきていた。しかし罪悪感は一切見せず、強気な態度で突き返すのだった。その頃仄暗い自宅では、アーハオ一とシャオユーが話していた。婦人科検診についていくことになったアーハオは、シャオユーを元気付けようと一緒に少年院に出向いてみようと提案をする。喜ぶシャオユーだったが、実際に行ってみると、面会できるのは家族だけであった。アーハオは仕方なく一人で面会し、シャオユーが妊娠していることを伝えた。何度も面会に来ているチンからは聞いておらず混乱するアーフー。その様子を見たアーハオは何か心につっかえるものを覚えた。その夜、アーハオは自室から飛び降り自ら命を絶つのであった。アーハオに期待していたアーウェンは落胆し、生気を失ってしまう。
葬儀にはアーフーも参列した。手錠と足かせを付けた状態ではあったが、アーフーとシャオユーはようやく再会を果たした。アーハオの訃報を知りシャオゼンも駆けつけていた。実は授業に出ていなかったアーハオ。最後にシャオゼンがあったのは一緒に動物園に行った日だという。アーハオはこの世で一番公平なのは「太陽」だけだと言い残していた。優等生だと思い込んでいたチンは、アーハオの知られざる一面を知るのだった。
映画『ひとつの太陽』のあらすじ【転】
少年院ではアーフーが感情を抑えきれずに暴れてしまっていた。優秀な兄の存在はアーフーの心に影をもたらしたが、亡くなった後に大切さを痛感していたのだ。その頃、シャオユーはアーフーの子供を出産した。チンは二人を結婚させるつもりでいた。大事な息子を失ったが、新たな命を迎えたことで少しずつ気持ちに明るさを取り戻していたのだ。少年院の中で簡易的な結婚式をした二人。兄を失いながらも、恋人と再会し子供を授かったアーフーは凛とした表情で気持ちを持ち直すのだった。前を向き始めた二人とは対照的に、アーハオを失った傷が癒えないアーウェン。刑期を終え、少年院の仲間たちに見送られながら退所したアーフーの存在も受け止められなかった。会社に寝泊まりするようになり、アーフーを避けるようになるのだった。
アーフーは昼に洗車場で、夜はコンビニで働き始めた。一方でアーウェンは亡き息子の影を追い、夜道を彷徨う日々を送っている。たまたまアーフーが働くコンビニに寄ってしまったアーウェン。しばらくぶりに話す機会を得た二人は、互いの近況を報告し合った。アーウェンには家に戻ってほしいと願うアーフー。家を出る決意をしていることを伝え、その日は別れた。アーウェンはそのまま帰路についた。チンはシャオユーと子供のためにもクラブのヘアメイクの仕事を辞め、美容院を開こうと思っていることをようやく伝えることができた。アーウェンは否定することもなく、チンの変化を受け入れるのだった。
熱心に仕事に励むアーフー。そんなアーフーの元に、事件の実行犯であるツァイトウが退所し、訪ねてきた。金を要求しに来たツァイトウに対して、凛とした姿勢で対応したアーフー。しかし、次にツァイトウはチンとシャオユー、そして子供に会いに行くのである。家族の危険を感じたアーフーは、次にツァイトウから連絡が来たときにも対応せざるを得なかった。
映画『ひとつの太陽』の結末・ラスト(ネタバレ)
アーフーは事件の被害者・オレンと再会した。手首から先を失った被害者は、義手をして必死に働いていた。その姿を見て謝ることしかできなかったアーフー。その日の夜も職場である洗車場にツァイトウは尋ねてきた。深夜の仕事も控えているアーフーは、必死に追い返そうとするが実は一度仕事を受けてしまっていたため弱みを握られている状況であった。事件を起こしてしまった日のような大雨の中、ツァイトウの頼みを聞くアーフー。得体の知れない取引を終え、車に戻るとツァイトウの姿が見当たらなくなっていた。どうしていいかわからないアーフーはひとまず職場に戻ることにする。一息ついた時、自分が取引したカバンには見たこともない大金が入っていることに気付くのだった。後日、職場に取引した相手が押し掛けてきた。無理やり車に乗せられ、尋問されたアーフー。ツァイトウから取引について詳しく聞かされていないことが伝わり、報酬を少し分け与えられ大きな橋の上で降ろしてもらうことができた。自由になったように思えたアーフーは、颯爽と走り出すのだった。
アーハオの命日。アーウェンとチンは一緒に参りに行った。帰り道、散歩がてら誰もいない丘でゆっくりと話す二人。アーウェンは大雨の日の出来事を話し始めた。実はツァイトウを手にかけたのはアーウェンであった。アーフーの身を案じて行動を見張っていたアーウェン。ツァイトウが一人になった時、衝動にかられ車で轢いた後大きな石で殴り殺してしまったという。この告白を聞き、さんさんと照り付ける太陽の下でチンは泣き崩れるのだった。
身の回りの整理をするため、引っ越しすることになった一家。準備中にアーフーはチンを散歩に誘った。道中停めてある自転車を盗み、チンを後ろに乗せて走り出したアーフー。息子の逮捕、息子の死、新たな命、夫の罪。家族が巻き起こす浮き沈みに翻弄されるチンを、太陽は包み込むように照らし続けるのだった。
映画『ひとつの太陽』の感想・評価・レビュー
物語は残像が残るような事件から始まる。しかしどこか気の抜けた音楽が寄り添うことで生まれる違和感。家族という小さなコミュニティで巻き起こる浮き沈み。最初は陽の光が似合う存在であった父親が、どんどん滑稽に見えてくるのは演出の妙なのか俳優の力なのか。誰にでも平等に暖かさを与える太陽が、母親であるチンを照らし始めたときに物語の行く末は曇り始める。バラバラなこの一家に同じ陽が灯ることを願いたくなる一作であった。(MIHOシネマ編集部)
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