映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』のネタバレあらすじ結末と感想 | MIHOシネマ

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」のネタバレあらすじ結末と感想

腑抜けども、悲しみの愛を見せろの概要:自身の劇団を持つ本谷有希子が、劇団の公演用に執筆した同名戯曲とその小説が原作。女優志望の主人公が類稀なる勘違い女で、そのあまりに不条理な傍若無人ぶりが見もの。物語はドロドロしているが、吉田大八監督の演出が軽快なので、後味の悪さはない。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろの作品情報

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

製作年:2007年
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:吉田大八
キャスト:佐藤江梨子、佐津川愛美、山本浩司、土佐信道 etc

腑抜けども、悲しみの愛を見せろの登場人物(キャスト)

和合澄伽(佐藤江梨子)
女優志望の22歳。4年前に無理を言って東京へ出て、家族に仕送りさせて女優を目指しているが、演技も下手で性格も最悪のため、全く芽が出ない。才能がないと言われると逆上し、見境なく暴力を振るう。超人レベルのわがまま女。
和合清深(佐津川愛美)
澄伽の妹。高校3年生。ホラー漫画好きの根暗な少女で、漫画家としての才能がある。破茶滅茶な姉をモデルにしたホラー漫画を描き、漫画賞を受賞するが、そのせいで姉にいびられ続けている。
和合宍道(永瀬正敏)
澄伽の兄。炭焼きで生計を立てている。母親の連れ子で、澄伽と清深とは血の繋がりがない。長男として、家族を大事にしている。澄伽に誘惑され、肉体関係を持ってしまったため、彼女の下僕状態。嫁の待子に対しては暴力的。
和合待子(永作博美)
最近宍道と結婚した和合家の嫁。孤児院育ちで、天涯孤独の身の上のため、家族に憧れがある。宍道にひたすら尽くしているが、なかなか報われない。変な人形を作る趣味があり、少々不気味な存在。
小森哲生(土佐信道)
海外で映画賞を受賞した若手映画監督。その記事を読んだ澄伽が、小森宛に手紙を送り続ける。
萩原(山本浩司)
澄伽の高校時代の同級生。高校時代、金で澄伽を買っていた。現在は文房店の店番をしながら、小金を貯めている。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのネタバレあらすじ

映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのあらすじ【起】

北陸の山深い田舎町。高校3年生の和合清深は、両親がトラックに轢かれてバラバラになる凄惨な現場を見てしまう。母親は猫を助けようとしてトラックの前に飛び出し、その母親を救おうとした父親も犠牲になった。

葬儀の日。兄の宍道と妻の待子は、清深のことを気遣う。亡くなった両親は再婚同士で、宍道は母親の連れ子だった。清深と姉の澄伽は父親の連れ子で、宍道とは血の繋がりがない。それでも、宍道は家族を大切にしており、宍道と結婚したばかりの待子も、清深に優しく接する。

東京で暮らしている澄伽は、葬儀が終わった頃に帰ってくる。澄伽は女優志望の派手な女性で、病的なまでにわがままだった。しかし、宍道も清深もなぜか澄伽に頭が上がらず、彼女の言いなりだった。「家族のことに口出しするな」と宍道に釘を刺された待子は、釈然としないまま、澄伽のわがままに付き合う。

澄伽は、4年前に東京へ出てから、ずっと仕送りをもらっていた。しかし、働き手の両親が亡くなり、宍道の収入だけでは仕送りを続けられそうにない。それを聞いて澄伽は激怒し、父親の遺産を出せと宍道に迫る。宍道は、父親の借金で遺産は消えてしまったことや、炭焼きの収入だけでは生活するのもやっとであることを説明する。それでも澄伽は引き下がらず、「約束を破るの?」と宍道に詰め寄る。澄伽の要求は明らかに不条理だったが、宍道は何も言い返せない。

退屈しのぎに雑誌を見ていた澄伽は、海外で映画賞を受賞した小森哲生という映画監督のインタビュー記事を読む。小森は、新進気鋭の映画監督として将来を期待されており、次回作のヒロインとなる新人女優を探していた。小森が「手紙」という通信手段に興味を持っていると知った澄伽は、早速彼に手紙を書く。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのあらすじ【承】

小森の連絡先を知るため、所属している芸能事務所に電話をかけた澄伽は、「お前は帰ってくるな」と、一方的にクビを言い渡される。澄伽は、芝居も下手で性格も最悪だと業界内で噂になっていた。おまけに、サラ金業者から借金をしており、事務所にまで迷惑がかかっていた。事務所の人間から罵倒され、澄伽は怒りに震える。

自力で小森の連絡先を探すため、澄伽はこの町で唯一パソコンのある文具店へ向かう。そこで店番をしていたのは、高校の同級生の萩原だった。澄伽は小森の住所を調べ、真っ赤なレターセットを購入すると、逃げるようにして帰宅する。この町の人々は、澄伽を見かけると、ヒソヒソと噂話を始めるのだった。

その原因は、4年前の出来事にあった。高校生だった澄伽は、東京へ出て女優になることを父親に反対され、親子喧嘩を繰り返していた。ある晩、父親から「お前には才能がない」と言われ、激昂した澄伽は、ナイフを振り回す。その際、止めに入った宍道の額を傷つけてしまうが、このことは家族だけの秘密にされた。

その後、澄伽は上京資金を貯めるため、萩原に体を売って金を稼ぐ。中学生だった清深は、そんな姉を密かに観察し、澄伽をモデルにしたホラー漫画を描く。『女優になりたい!』というタイトルの清深の漫画は、ホラーコミック雑誌のコンテストで入賞し、雑誌に掲載される。作者名が本名だったため、清深の漫画はすぐに町中の噂となり、澄伽の家庭内暴力や売春行為も世間に知れ渡ってしまう。

清深は深く反省し、漫画家になる夢を諦めていたが、澄伽は許してくれない。負い目のある清深は、どんなにひどいことをされてもじっと耐えていた。澄伽は、女優として芽が出ないのは、あの漫画のせいだと不条理なことを言って、清深をいじめ続ける。澄伽が女優になれないのは、全て本人のせいだったが、自意識過剰な澄伽にはそれがわからない。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのあらすじ【転】

澄伽は、小森に自分を売り込むため、写真を同封して手紙を出す。退屈していた澄伽は、すぐに2通目の手紙も出し、自分を猛アピールする。しかし、なかなか返事がなく、その苛立ちを清深や待子をいびることで晴らす。澄伽が帰ってきてから、宍道もイライラしており、待子に冷たく当たる。清深は、夜中に澄伽と宍道が怪しげな雰囲気になっているのを目撃していた。

そんなある日、石森から待望の返事が届く。石森は澄伽に興味を示し、文通を続けたいと書いていた。待子は、機嫌の良さそうな澄伽に、宍道と一度も夫婦の営みがないという悩みを打ち明ける。待子は孤児院育ちで、家族への強い憧れがあった。宍道とは結婚相談所を通して知り合い、縁あって結婚したのだが、待子はまだ処女のままだった。

その話をしている最中、急に待子が「目が痛い」と叫び始める。先ほど、そばつゆに入れる薬味のことで宍道の怒りを買い、つゆをぶっかけられていた待子は、目に入ったつゆが原因で、失明寸前の危機に陥っていた。待子は救急車で運ばれ、そのまま入院する。

待子がいなくなった夜、澄伽は清深を熱湯風呂に入れて虐待する。宍道が止めたので、大事には至らなかったが、澄伽の妹いじめは、エスカレートする一方だった。清深は、心配する宍道に、自分が悪いから仕方がないと話す。宍道は清深を慰めながら、4年前のことを思い出す。

4年前、「女優になれないなら死んだほうがマシ」と言って、自暴自棄になっていた澄伽を、宍道は一生懸命励ましていた。澄伽が自分にとって必要な存在であると語ると、澄伽は宍道にキスしてきて、「お兄ちゃんは一生私だけを必要とすること」と約束させる。宍道は誘惑に負けて澄伽と肉体関係を持ち、生真面目にその約束を守ってきた。

澄伽の妹いじめに歯止めが効かなくなってきた頃、石森から「映画のヒロインとして出演を申し込みたい」という手紙が届く。澄伽は有頂天になり、今まで八つ当たりしてきたことを清深に謝罪する。清深は、ようやく姉に許してもらえたと安堵していた。

退院した待子は、宍道と本当の夫婦になるため、自ら彼を襲う。最初は頑なに拒んでいた宍道も、健気な待子が愛しくなり、2人はついに結ばれる。一方、澄伽は東京から追ってきた借金取りに脅され、金を工面する必要に迫られていた。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのあらすじ【結】

澄伽は、借金取りの指示で美人局をして、萩原から金を巻き上げる。大金を脅し取られた萩原は気の毒だったが、ずっと気になっていた問題が解決し、澄伽はスッキリする。清深は、姉を尾行して全てを見届け、再び澄伽を主人公にした漫画を描き始めていた。澄伽に隠し通すのは大変だったが、清深は澄伽を観察すると、描かずにはいられなくなる。

借金の問題も片付き、小森とのコネもできたので、澄伽はさっさと東京へ帰りたくなる。澄伽は疲れている宍道に、仕送りを続けるよう執拗に迫り、待子に注意される。澄伽は、待子の変化を鋭く見抜き、宍道が待子を抱いたのだと直感する。

真夜中、澄伽は宍道と2人きりになり、彼を誘惑する。同時に澄伽は宍道の喉元にカッターを突きつけ、「私以外の女とやったでしょう」と、兄を責める。澄伽の宍道に対する独占欲は異常で、どこまでも執念深い。宍道も、そんな澄伽に刃向えない。澄伽を観察していた清深は、薄々気づいていた兄と姉の関係に確信を持つ。宍道は、清深に覗かれていたことに気づくが、黙って彼女を見逃す。

その夜、絶望的な気持ちで炭焼き小屋に出かけた宍道は、大量の木を燃やして火事を出し、そのまま焼け死んでしまう。

宍道まで亡くなり、和合家には澄伽と清深、そして待子の女3人が残される。そんな和合家に、東京の出版社から郵便物が届く。密かに投稿していた清深の漫画がグランプリを受賞し、ホラーコミック雑誌に掲載されたのだ。今度の漫画は、澄伽が女優を諦めるという内容だった。清深は全てを打ち明け、東京へ行って漫画家になると宣言する。

唖然としている澄伽に、清深は、いかに澄伽が痛々しいほどの勘違いをした面白いキャラクターであるかを語る。小森宛の手紙も、郵便局でバイトしていた清深が、全て配達前に回収していた。つまり、澄伽に届いた小森の返事も、清深が書いていたのだ。清深に「女優の才能はない」と断言され、澄伽は逆上し、清深をナイフで刺す。しかし、それはイタズラ用のおもちゃで、清深は無傷だった。清深はそんな澄伽を嘲笑い、家を出ていく。

残された澄伽は、清深から返された小森宛の手紙を全て破る。待子もどこか楽しそうにそれを手伝う。その後、澄伽は清深の後を追う。バスから逃げ出した清深は、田んぼで澄伽に捕まり、2人は泥だらけになって格闘する。

しかし、澄伽は清深にトドメは刺さず、「漫画にするならちゃんと最後まで見なさい」と意外なことを言う。2人は泥だらけのまま、一緒に東京行きのバスに乗る。車内で眠ってしまった姉の姿を、清深はスケッチし始める。清深の描いた澄伽の寝顔は、なぜかとても美しかった。

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