映画『ロック・ザ・カスバ!』の概要:アフガニスタンにやってきたアメリカ人のリッチーは、そこで歌手を目指すパシュトゥン人の少女と出会い、彼女の夢を叶えるために奔走する。イスラム教の教えにより、女性が人前で歌うことを恥とするアフガニスタンで、初めてテレビのオーディション番組に出演した実在の女性、セタラ・フサインザダに捧げられた作品。
映画『ロック・ザ・カスバ!』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:コメディ、音楽、ヒューマンドラマ
監督:バリー・レヴィンソン
キャスト:ビル・マーレイ、ケイト・ハドソン、ゾーイ・デシャネル、ダニー・マクブライド etc
映画『ロック・ザ・カスバ!』の登場人物(キャスト)
- リッチー・ランツ(ビル・マーレイ)
- カリフォルニア州在住の芸能マネージャー。マドンナを発掘したのが自慢だが、現在は落ちぶれている。金のために新人歌手のロニーを連れてアフガニスタンへ向かうが、ロニーに逃げられ、現地に取り残される。サリーマという歌のうまい少女と出会い、彼女を売り出すために奔走する。
- ボンベイ・ブライアン(ブルース・ウィリス)
- アフガニスタンに滞在するアメリカ人の傭兵。リッチーがパシュトゥン人の村へ武器を運ぶことになり、用心棒として雇われる。素性はよくわからないが、いずれは自分の体験を本にしようと思っている。
- マーシー(ケイト・ハドソン)
- アフガニスタンで金持ちを相手に娼婦をしているアメリカ人女性。オアフ島で不動産業を始めるため、セクシーな容姿を武器にして大金を稼いでいる。取り分の3割をもらう約束で、リッチーの仕事を手伝う。
- サリーマ(リーム・リューバ)
- パシュトゥン人の少女。アフガニスタンの砂漠地帯にある小さな村で暮らしている。父親は村長。歌うことが大好きで、「アフガン・スター」というオーディション番組に出演するのが夢。女性が人前で歌うことは禁じられているため、夜中に秘密の洞穴で歌っている。
- ロニー(ゾーイ・デシャネル)
- リッチーがマネージャーをしている無名の新人歌手。自作の曲を歌いたいが、リッチーに許してもらえない。戦闘地域の恐怖に耐えきれず、リッチーのパスポートと財布を盗んで、カブールのホテルから逃げ出す。
- リザ(アリアン・モーイエド)
- カブールのタクシー運転手。英語が話せるため、リッチーに通訳兼運転手として雇われる。英語の歌が好き。
- タリク(ファヒム・ファズリ)
- サリーマの父親で、パシュトゥン人の村の村長。武装勢力から村を守るため、アメリカ人の武器商人から弾薬を購入する。厳格なイスラム教徒なので、娘が人前で歌うことに大反対する。
映画『ロック・ザ・カスバ!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ロック・ザ・カスバ!』のあらすじ【起】
芸能マネージャーのリッチー・ランツは、カリフォルニア州のヴァン・ナイスに、小さなオフィスを構えている。オフィスと言っても寂れたモーテルの一室で、従業員のロニーは、リッチーが売り出そうとしている新人歌手だった。リッチーの自慢は、あのマドンナを発掘したことで、ロニーはその話を信じて契約を結んだ。しかし、ロニーは自分の曲を歌わせてもらえず、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。
今晩も、ロニーは嫌々ながら地元のライブハウスでロックのカバー曲を歌う。リッチーは盛り上げようと努力するが、客席はシラけていた。そんな中、米軍慰問ツアーのプロモーターだという男が、リッチーに声をかけてくる。アフガニスタンで慰問ツアーを行う有名歌手の前座として、ロニーを使いたいらしい。危険な戦地でのツアーとあって、ギャラはかなり高額で、ジリ貧だったリッチーは、その話に飛びつく。リッチーには、離婚した妻との間に娘が1人いたが、その娘への養育費も支払えなくなっていた。
強引にカブール行きの飛行機に乗せられたロニーは、殺されるかもしれないという恐怖で、錯乱状態だった。リッチーは、何とか彼女を落ち着かせようと努めるが、ロニーの恐怖は消えない。空港に到着し、軍の車でホテルまで向かう道中でも、爆弾騒ぎを目の当たりにして、ロニーは鎮静剤を服用する。大統領暗殺未遂事件があり、現地は一触即発の緊張状態が続いていた。
フラフラでホテルに到着したロニーは、リッチーがチェックインの手続きをしている間に、傭兵のボンベイと親しくなる。ボンベイは、タリバン兵を逆さ吊りにして刑務所に入っていたという物騒な男で、リッチーは彼を警戒する。部屋に入ると、ロニーは気を失うように眠ってしまう。リッチーは、パスポートと財布を洗面所の棚に隠し、ホテルのバーへ行く。バーでは、現地の武装勢力に武器を横流ししている2人組の男に話しかけられ、名刺を渡される。
公演の時間が迫ってきたので、リッチーは部屋へ戻る。ところが、ロニーの姿がどこにもない。ロニーはリッチーのパスポートと財布を盗み、逃亡していた。出演者のロニーがいなくなってしまい、リッチーは米軍からも見捨てられる。
映画『ロック・ザ・カスバ!』のあらすじ【承】
途方に暮れたリッチーは、武器商人の2人組に相談し、カブール在住の外国人が集まる秘密クラブへ連れて行ってもらう。リッチーはすでにヤケクソ気味で、2人組の言いなりになっていた。武装勢力の銃撃をかいくぐり、何とかたどり着いた秘密クラブの中は、外とは別世界のように賑わっていた。
リッチーはそこで、マーシーという魅力的な娼婦と出会う。マーシーに誘われ、リッチーは金の代わりにブランド品の時計を渡し、彼女のトレーラーハウスへ移動する。マーシーは、そのトレーラーハウスに男を誘い込み、金を稼いでいた。
翌朝、リッチーの身を案じて米軍兵士がトレーラーハウスを訪ねてくる。リッチーは妙なプレイをしていたらしく、オムツ姿でベッドに拘束されていた。トレーラーハウスを出たリッチーは、英語が話せるリザのタクシーを拾って、宿泊先のホテルへ帰る。ロビーで別れた妻に電話して、数千ドルの送金を頼んでみるが、「その前に未納になっている2ヶ月分の養育費を送れ」と言われてしまう。
ホテルの部屋では、銃を構えたボンベイが待っていた。ボンベイはロニーから前金1000ドルを受け取り、彼女をドバイまで送る段取りをしていたが、約束の場所に彼女は現れなかった。残りの1000ドルはリッチーが払うことになっていたらしく、ボンベイは「24時間以内に金を用意しろ」とリッチーを脅す。しかし、リッチーにそんな金はない。
リッチーはアメリカ大使館に助けを求めるが、パスポートの再発行には2週間もかかると言われる。リザの案内してくれた店で、やけ酒を飲んでいたリッチーは、店のテレビで「アフガン・スター」というオーディション番組を見る。「アメリカン・アイドル」に似たこの番組は、優勝すれば賞金5000ドルとレコードの発売契約がもらえるので、歌手を目指す若者たちに大人気だった。ただし、イスラム教の戒律により、出演者は男性のみに限られていた。
リッチーの窮状に目をつけた武器商人の2人組は、2万ドル近い高額な報酬で、パシュトゥン人の村へ弾薬を運ぶ仕事を彼に依頼する。「観光レベルの安全な仕事だ」と言われ、どうしても金が必要なリッチーは、その仕事を引き受ける。
映画『ロック・ザ・カスバ!』のあらすじ【転】
ボンベイを用心棒に雇い、通訳としてリザに同行してもらい、リッチーはパシュトゥン人の村へ向かう。しかし、途中の砂漠地帯で弾薬を積んだトラックが爆発し、リッチーは「こんなの聞いてない!」と怒り出す。そこへ、パシュトゥン人の騎馬隊がやってくる。
村長のタリクは、リッチーを家に招待し、お茶を飲みながら契約したいと申し出る。リッチーは気が進まなかったが、断ったら殺されるとリザが言うので、渋々タリクの招待を受ける。リッチーはヤケクソになり、厳粛な食事の席で「スモーク・オン・ウォーター」を熱唱する。
25年にも渡る戦闘により、村にはほとんど財産が残っていなかった。それでも、武装勢力から村を守るため、タリクはなけなしの財産をリッチーに渡す。最近は、アザムという男が率いる武装勢力が、麻薬の精製をさせるために村を支配しようと狙っていた。
その夜、用足しに外へ出たリッチーは、岩山の方から聞こえてくる女性の歌声に気づく。岩山の洞窟では、タリクの娘のサリーマが、ギターを弾きながら英語の歌を歌っていた。リッチーの姿を見て、サリーマは驚いて逃げてしまう。洞窟の中には、「アフガン・スター」の雑誌があり、リッチーは彼女が歌手に憧れていることを知る。
サリーマの歌声に惚れ込んだリッチーは、彼女のマネージメントをしたいとタリクに申し出る。しかし、タリクが「娘を侮辱された!これは死に値する!」と激怒したので、リッチーとリザは村を逃げ出す。
途中でタイヤがパンクしてしまい、修理のために車を停車させたリザは、トランクに隠れていたサリーマを発見する。リッチーと父親の話を聞いていたサリーマは、どうしても歌いたいという想いが抑えきれなくなり、家出してきたのだ。リッチーは正直迷うが、サリーマの熱意にほだされ、彼女と握手をして契約を交わす。
リッチーはマーシーとも契約を交わし、サリーマの世話を依頼する。リッチーは、「アフガン・スター」の司会者と交渉し、サリーマの出演を許可するよう頼み込む。司会者は、「この国で女性が歌うのは危険すぎる」と躊躇していたが、実際にサリーマの歌を聴き、彼女の出演を許可してくれる。番組にとっても、女性のサリーマを出演させることは、大きな賭けだった。
サリーマは、準決勝からの特別参加を許され、番組に出演する。サリーマの歌は素晴らしかったが、審査員も観客も、そしてテレビを見ている視聴者も、彼女の出現に戸惑う。サリーマが人前で歌ったことは各地で議論を巻き起こし、大きな話題となる。その騒ぎの中、サリーマは迎えに来たタリクに連れられ、村へ帰ってしまう。
映画『ロック・ザ・カスバ!』の結末・ラスト(ネタバレ)
サリーマが村へ帰ってしまった以上、番組は棄権するしかない。リッチーは彼女のことを諦め、ドバイ経由でアメリカへ帰ることにする。しかし、マーシーは納得していなかった。マーシーは、諦めたのはサリーマではなく、リッチーの方だと彼を非難する。マーシーの言葉に触発され、リッチーは一か八かの行動を開始する。
リッチーは、サリーマを候補者として残してもらい、彼女への投票を呼びかけるビラを撒く。決勝進出者の3名は、視聴者の投票で選ばれることになっていた。そのビラを見たアザムたちの武装勢力は、サリーマのことを口実に、タリクの村を襲撃する計画を立てる。
リッチーの呼びかけが功を奏し、サリーマは1位で決勝に進出する。サリーマの歌と勇気ある行動は、確実に人々の心を動かしていた。リッチーもこの流れに勇気を得て、サリーマを迎えに行くことにする。
ボンベイに護衛を頼み、村へ向かっていたリッチーに、マーシーから電話が入る。マーシーはアザムたちのパーティーに呼ばれ、そこで彼らの会話を盗み聞きしていた。アザムとあの武器商人はグルで、タリクの村に運んだ弾薬は不良品だった。彼らは、サリーマが決勝に出たら村を攻撃すると話しており、リッチーは彼女の出演を諦めようとする。しかし、リザに「あなたはサリーマのマネージャーなのでしょう」と説得され、再び思い悩む。実は、リッチーがマドンナを発掘したという話は嘘で、彼は今まで大物と組んだことがなかった。そんなインチキくさい自分に、サリーマは自分の将来を託してくれた。リッチーはマネージャーとして、最後まで彼女と運命を共にする決断をする。
村に到着したリッチーは、まずタリクを説得する。「父親のあなたが娘を信じてやらなくてどうするんです」とリッチーに説得され、タリクも考えを改める。その頃、アザムの武装勢力は、トラックを連ねてタリクの村へ向かっていた。
ボンベイもリッチーに説得され、自分たちの武器と弾薬を村に提供し、戦闘準備を開始する。サリーマは、命がけで自分を守ってくれようとしているリッチーに、感謝の気持ちを伝える。サリーマは、必ずうまくいくと信じていた。
そうこうしているうちに、アザムたちが村の前までやってくる。リッチーは自分の流儀で、彼らと交渉しようとする。しかし、リッチーの不用意な一言が彼らを刺激し、リッチーは肩を撃たれてしまう。それを見てタリク側も銃撃を開始するが、ボンベイが間に入り、すぐに休戦となる。地面に倒れたリッチーは、今まで感じたことのない満足感を味わう。
サリーマは決勝戦に出演し、平和への願いを込めた歌を披露する。タリクも、村のテレビで娘の晴れ姿を見ていた。歌い終えたサリーマは、拍手と歓声に包まれる。視聴者投票の数字もどんどん伸びていた。舞台袖でサリーマを見守っていたリッチーは、感動のあまり言葉を失う。リッチーはマネージャーとして、そして1人の人間として、勇気あるサリーマの歌声に心を打たれていた。
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