この記事では、映画『息もできない』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『息もできない』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『息もできない』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ヤン・イクチュン
キャスト:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク etc
映画『息もできない』の登場人物(キャスト)
- サンフン(ヤン・イクチュン)
- 短気で粗野。言葉遣いも悪く暴力的。優しい面があるも、優しくする術を知らないため、どうちらかと言うと攻撃的。ヨニと出会うことにより、愛情表現の仕方を少しずつ覚える。
- ヨニ(キム・ヨッピ)
- 勝気で強気な高校3年生の女の子。その反面、傷ついた心を内に秘めており、必死に耐えている。優しく慈悲深い。
- ヨンジェ(イ・ファン)
- ヨニの弟。攻撃的で反抗的。友人に誘われサンフンの弟分になる。普段は大人しめだが、一旦切れると爆発するタイプ。
- マンシク(チョン・マンシク)
- サンフンの年の離れた幼馴染で、高利貸の社長。気前の良い性格で広い心を持っており、サンフンの面倒を見る。サンフンを心配し宥めたり、抑制したりしている。兄のような存在。
- ヒョンイン(キム・ヒス)
- サンフンの甥で幼稚園児。サンフンの姉の子供。叔父を怖がりつつも、不器用な優しさを察している。
映画『息もできない』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『息もできない』のあらすじ【起】
幼い頃、父親のDVにより母親と幼い妹を亡くしたサンフン。彼は父親を深く恨み、その憤懣を暴力に訴えることで生きてきた。
彼は年の離れた幼馴染マンシクが経営する、高利貸の会社で借金取りの仕事をしている。狂犬のように手がつけられないサンフンは、会社でも社長に次ぐ地位に就いていた。
若い社員よりも優遇された給料を手にするサンフンだったが、彼はその金を持って幼い甥ヒョンインの元へ通っている。サンフンの姉の子だったが、姉も夫の暴力に脅かされ離婚しており、今はシングルマザーでヒョンインを育てていた。
サンフンはそんな姉を支援するつもりで金を渡している。だが、優しくする術を知らないサンフンは、どうしても言葉遣いが乱暴になってしまうのであった。
その日も甥の元を訪れたサンフン。不器用な愛情で戯れた後、いつものように金を渡して去る。その帰りだった。たまたま擦れ違った女子高生に吐いた唾が飛んでしまい、呼び止められたサンフン。彼は明らかにチンピラ然としており、通常ならば誰も関わりたいと思わない風勢だったが、その女子高生は気丈にも突っかかってくる。思わぬ事態にサンフンはつい彼女を殴ってしまい、女子高生は気絶してしまうのだった。
気絶した女子高生ヨニをそのまま置いて去るわけにもいかず、サンフンは彼女の意識が戻るまで付き添うことにした。
目が覚めたヨニだったが、怯えるでもなくやはりサンフンに口答えしてくる。彼は仕方なく殴ったお詫びとして、彼女に飲み物を驕ってやったが、ヨニはそれだけで満足せず連絡先を交換することになった。
1カ月前、刑務所に入っていた父親が出所した。そのせいで、サンフンの精神状態は下降の一途を辿っている。甥に会ってからの帰り道、またしてもヨニと会ったサンフンだったが、彼女に八つ当たりし、通りかかった警官を殴り倒してしまう。そんな危険な彼の姿を目の当たりにしたヨニだったが、彼女の態度は変わらなかった。

映画『息もできない』のあらすじ【承】
ヨニには元兵士の父親と弟がいる。母親は彼女が幼い頃に亡くなっていたため、家のことは全てヨニがやっていた。弟のヨンジェは家にいて働きもせず、毎日金をせびってくるし、父親はベトナム戦争の後遺症で心を病んでしまい、母親が死んだことも分からなくなっている。ヨニは父と弟に板挟みとなり、苦しい生活をどうにかやり繰りしているのだった。
サンフンに弟分ができた。やり手の借金取りでもあるサンフンはすぐに手が出るため、他の組よりも回収が早い。新人はそんな彼に怯えつつも、上手くやろうと必死であった。そんなサンフンをマンシクはいつも心配しており、給料も弾んでくれるのである。
サンフンの父親は出所後、人が変わったように大人しい。自分がやった罪を心底悔いているため、息子の暴行を甘んじて受けている節があった。
一方、ヨニの父親とヨンジェは特に気が合わないため、いつも争っている。家の中の雰囲気は常に最悪だった。
父親がいないと近所の友達にからかわれているヒョンイン。そんな甥のためにサンフンは、欲しがっていたゲーム機を買ってやることにする。だが、彼は子供の扱いに慣れておらず、ヒョンインと上手くコミュニケーションが取れない。彼はヨニに助けを乞うことにした。
高校の授業を抜け出し、サンインとヒョンインに会いに行ったヨニ。3人はまるで親子のように、楽しい時間を過ごすのだった。
ヒョンインを家に送り、姉と遭遇したサンフン。すぐに帰ろうとするも、ヨニの言葉になぜか頭が上がらない。彼女はサンフンの恋人だと姉に笑って言うのだ。ヒョンインと姉はヨニとすぐに仲良くなる。その後、屋台へと入ったサンフンとヨニ。何だかんだと言い合いつつも距離を縮め、ここにきてようやく名乗り合うのだった。
映画『息もできない』のあらすじ【転】
友人に誘われ豪遊後、朝帰りしたヨンジェ。姉に再び金の無心をするも、ヨニは一向に金をくれない。ヨンジェは苛立ちつつも諦めて出かけ、友人と落ち合う。連れて行かれた場所はマンシクの事務所である。友人とヨンジェはサンフンと共に借金の集金へと向かうことになった。
サンフンには味方も敵もない。女も男も関係ない。歳上だろうが下だろうが、それも関係ない。ヨンジェは仕事が終わるまで、サンフンにやり込められる。その対価と言わんばかりに、マンシクは上機嫌で大金をくれるが、ヨンジェの中では怯えと苛立ちが募り始める。
マンシクから通帳と携帯を持てと言われたサンフン。姉が務める携帯ショップへ行き、流れで食事をしたサンフンだったが、姉の言葉に怒りを爆発させてしまう。
発奮させるために父親の元へ向かって拳を振り上げた。だが、父親を殴っている姿をヒョンインに目撃されてしまう。
毎日、サンフンの言葉と暴力にやり込められるヨンジェ。しかし、サンフンは他にやりようを知らない。彼は通帳を2冊作り、給料を交互に入れるようマンシクに頼んだ。そして、1冊を姉へ渡そうとするも、会社は昼までで帰宅したと言う。家へ行ってみると、父親と姉とヒョンインの3人で仲良くゲームをしていた。
その頃、ヨニは屋台でアルバイトを開始。帰宅するとヨンジェと小競り合い。ヨンジェは姉の心配を突っぱねる。
毎日毎日。弟と喧嘩して父親の世話をするヨニ。父親は母親が死んだことを信じず、他の男の元へ行っていると言う。疲れ果てて心の余裕を無くしたヨニは、とうとう憤懣を父親へとぶちまけてしまう。すると、父親は包丁を手に、娘へと迫るのだった。
自分がこんなに悩んでいるのに、3人で幸せそうにしていることが気に入らないサンフン。マンシクと一杯飲んで気を紛らわそうとするも、失敗。更に怒気を孕ませ、父親を殺そうと決心し家へ向かう。しかし、扉を開けると手首を切って自殺を図った父親を発見。サンフンはしばし逡巡し、父を背負って病院へ向かった。
映画『息もできない』の結末・ラスト(ネタバレ)
包丁を突き付けられたヨニ。泣きながらどうにか、自宅を脱出。どこにも行けず、街角で座り込んでいると、携帯が鳴った。サンフンだった。
川原で落ち合った2人。互いの事情など一切明かしてはいなかったが、それでも何か通じるものがあった。いつものように会話をするが、いつもとは少し様子が違う。
サンフンは、どうしたらもっと良い生き方ができるかとヨニに問う。ヨニは笑って、私のためにお金を使えば幸せになれると言うのだった。
それでも、その一言がサンフンにとって救いになる。彼はヨニの膝に頭を乗せ、ひとしきり涙を流す。ヨニも彼の頭を抱き、涙に暮れるのだった。
翌朝、何事もなく生活が始まる。サンフンはヒョンインの元へ向かい、幼い甥に謝った。サンフンはヨニとヒョンインのために、今の仕事から足を洗う覚悟を決める。
マンシクの元へ向い、仕事を辞めることを告げた。すると、マンシクも一緒に今の仕事から足を洗って、焼き肉店を開店させようと考えていた。
その日の夕方はヒョンインの学芸会があった。日中の仕事が終わったら、学芸会へ向かうため、マンシクとヨニを誘ったサンフン。昼間の仕事を区切りとし、これから新しい日々が始まろうとしていた。
ヨンジェと共に集金へ向かったサンフンだったが、暴力を振るわないよう、帰るつもりだった。しかし、意に反してヨンジェが飛び出してしまう。その姿に昨日までの自分を見たサンフン。大人しく帰ろうとしたが、家の主からハンマーで殴られてしまう。それでも、ヨンジェを制止して家を去った。
後頭部を押さえたまま、車まで戻って来たサンフンだったが、眩暈と頭痛、鼻血まで出てくる。ヨンジェは紙を探すふりをして、ハンマーでサンフンを襲った。今までの鬱積と失望が折り重なって、止まらなかった。
一方的に殴られたサンフンは血塗れのまま動けず、学芸会へ行かなければ、連れてってくれと呟き、そして命を落とした。
サンフンに誘われた面々が、彼を幼稚園の門前で待っている。だが、当の本人は一向に姿を現さない。
しばらく後、マンシクの焼き肉店が無事に開店した。店は繁盛し、そこにはサンフンの家族が、祝いに駆けつけた。
あの日、学芸会が終わった後、サンフンの死を知った家族は、誰もが泣き叫び悲しんだ。無残な彼の遺体に縋り付き、いつまでも泣き叫んだのだ。
焼肉屋から出たヨニは、街角を歩いていて屋台を壊す一団を目にする。その中に弟ヨンジェの姿を発見し、茫然と立ち尽くす。ヨニは狂犬のような弟の姿に、サンフンの姿を重ね合わせるのだった。
映画『息もできない』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
息も出来ないとはこういうことかとタイトルに妙に納得しながら終わるまで本当に息ができないほど苦しい気持ちになりながら観続けた。
暴力がいけないことなんて常識的なことだけれど、この人たちには暴力しかないんだと思うと本当に悲しくて胸が苦しくなった。
普段は考えず生活しているが、本当にこういう人たちは存在するはずだと思う演出の仕方が素晴らしかった。
結末の予想は途中からなんとなく分かってはいたが実際観たら涙が止まらなくなった。(女性 20代)
原題を『トンパリ』とした韓国映画であるが、トンパリとは「クソバエ」という意味で罵倒する言葉らしい。おおよそ、韓国の貧民たちを描いた作品では、こういった家族のDVに非力な女性や子供が晒されているシーンが多い。今作は底辺にいる男女が出会い心を通わせていくのだが、最初から最後まで息苦しく、声にならない悲痛な叫びには非常に胸が痛む。監督は主人公サンフンを演じたヤン・イクチョンであり、今作が長編映画監督のデビュー作となっている。今後の作品に期待したい俳優であり、監督でもある。(女性 40代)
暴力を振るうことでしか自分の感情を表出できない主人公が、勝ち気だけれど暴力によって苦しめられてきた女子高生と出会い、互いに見えない心の溝を埋め合っていく姿を描いた作品です。二人になった時だけ、表面上は荒々しいけれどどこか素直になれる関係性が見えて、素敵だなと思う一方、互いが持つ問題の重みを思うと切なくなりました。
ラストは、胸を抉られるような悲痛な展開で、涙が止まりませんでした。観終わった後、しばらく頭の中でぐるぐる考えてしまうほど、心に強く刻まれます。(女性 20代)
ヤン・イクチュン監督、主演作品。彼が描く作品はとにかくハードで目を覆いたくなるような過激なシーンがたくさんありますが、見終わったあと心に残る何かが必ずある作品です。
この作品で描かれていたのは「暴力」とそれに対する「愛」や「憎しみ」。何のための暴力なのか。暴力でなければ解決できないのか、生きていけないのか。ずっと続く暴力の連鎖に嫌になりますが、そこには必ず理由があって、伝える術が「暴力」しか無かったと気づいた時、心がすっと開けたような気がしました。(女性 30代)
暴力にまみれた男と、家庭に問題を抱えた女子高生。この2人の出会いが、まるで奇跡のように描かれていて、どこか詩的ですらありました。ヤン・イクチュンの演技が凄まじく、彼が監督・脚本・主演を務めていることに驚きました。タイトルの通り、感情が溢れすぎて“息もできない”ほど心が締めつけられました。(20代 男性)
冒頭からひたすら罵声と暴力の連続。最初は見るのが苦しくて途中でやめようかと思ったけど、見終わる頃には不思議と涙が出ていた。ヤン・イクチュンとキム・コッピの関係性が徐々に変化していく様子が丁寧に描かれていて、心の奥にある優しさや寂しさが伝わってきた。こんな映画、そうそうない。(30代 女性)
韓国映画の底力を感じた一本。美しさも娯楽性もない、ただただ生々しい人間の感情と生活が描かれていて、むしろそこに惹きつけられた。暴力に慣れきった男が、一人の少女との出会いで少しずつ変わっていく様はとてもリアル。ラストの衝撃と、その中にある静かな救いが心に残る。(40代 男性)
最初は暴力描写がきつくて観ていて辛かったけど、だんだんとキャラクターたちの傷や弱さが見えてきて、ただの暴力映画じゃないことが分かってくる。セリフが少なくても感情が伝わってくる演出がすごい。特に、海辺での2人のシーンには泣かされた。観るのに体力が要るけど、観る価値はある。(20代 女性)
リアルというより、“痛すぎて目を背けたくなる現実”を突きつけてくるような作品だった。だけどその痛みの中にある、小さな希望や優しさがすごく貴重に感じる。誰かを救うことができるのは、結局人との関係だけなんだと思わされた。静かなエンディングが逆に心に刺さった。(30代 男性)
全編に漂う緊張感と重苦しい空気に、ずっと胸が詰まるような気持ちで観ていました。言葉で説明しすぎない演出が巧みで、観客の想像力に訴えかけてくる構成が素晴らしい。主人公が変わっていく姿は静かだけど確実に心を打つ。社会の影の部分を正面から描いた作品として、傑作だと思います。(50代 女性)
映画『息もできない』を見た人におすすめの映画5選
『オアシス』(2002)
この映画を一言で表すと?
“社会のはみ出し者”たちの、痛くて切ない純愛。
どんな話?
刑務所を出たばかりの男と、脳性麻痺で動けない女性が出会い、世間から理解されない中で心を通わせていく物語。障害や過去に縛られながらも、自分たちなりの愛を見つけていく様子が描かれます。
ここがおすすめ!
『息もできない』と同様、社会の片隅で生きる者たちの“魂の交差”を感じさせる名作。ソル・ギョングとムン・ソリの圧巻の演技、リアルな感情の描写、そして美しさと痛みが共存する世界観に心が震えます。
『パラサイト 半地下の家族』(2019)
この映画を一言で表すと?
社会の格差と人間の欲望が交錯する、衝撃のヒューマンサスペンス。
どんな話?
貧しい一家が裕福な家族に“寄生”していく中で、やがて隠された秘密と悲劇が明らかになっていく物語。社会構造に潜む分断を、笑いとスリルを織り交ぜながら描いた異色の作品。
ここがおすすめ!
『息もできない』が描いた“社会の不条理”や“生まれ育ちの呪い”というテーマを、より寓話的かつスタイリッシュに描いた傑作。韓国社会の矛盾と格差をリアルに感じたい人には間違いなしの一本です。
『誰も知らない』(2004)
この映画を一言で表すと?
子どもたちだけの世界で静かに進む、絶望と小さな希望の記録。
どんな話?
母親に捨てられた4人の兄弟が東京の一室でひっそりと生きていく。周囲の無関心の中で、長男・明が必死に弟妹を守ろうとする姿が描かれる。実際の事件をもとに作られた静かな衝撃作。
ここがおすすめ!
『息もできない』のように、声をあげられない人々の現実を静かに、しかし鋭く突きつけてくる映画。子どもたちの目線で見た社会の残酷さと、それでも生きる姿が観る者の胸を深く打ちます。
『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)
この映画を一言で表すと?
夢を追う若者たちの転落を描いた、絶望のビジュアル詩。
どんな話?
薬物に依存する若者たちと母親の視点を通して、“夢”が破壊されていく過程を描いたドラマ。彼らが追い求めたものが、次第に幻想へと変わっていく様子が強烈な映像と音楽で綴られます。
ここがおすすめ!
『息もできない』がリアルな“暴力の連鎖”を描いたように、本作もまた“欲望の連鎖”がもたらす破滅を直視した作品。観終わった後、ただ暗くなるのではなく、何かを考えさせられる力があります。
『ブルージャスミン』(2013)
この映画を一言で表すと?
すべてを失った“元セレブ”の、精神の崩壊と再生の物語。
どんな話?
贅沢な生活を送っていたジャスミンは、夫の詐欺が明るみに出たことで地位も財産も失う。妹の家で暮らしながら過去を引きずり続ける彼女は、次第に精神的に壊れていく――。
ここがおすすめ!
『息もできない』の登場人物と同じように、本作の主人公も“人生の敗者”。ただし彼女はエリートからの転落という異なる視点から、現代社会の残酷さや再生の困難さを体現しています。ケイト・ブランシェットの怪演にも注目です。
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