映画『インランド・エンパイア』の概要:曰く付きの映画のリメイク作へ出演することになったヒロイン。主人公へなりきる内に、映画と現実の狭間へ落ち込み、何が現実なのか今が何時なのか、自分が誰なのかすら分からなくなる。様々な世界が交錯し、観る者を惑わせる魅力を持った作品。
映画『インランド・エンパイア』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:デヴィッド・リンチ
キャスト:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ハリー・ディーン・スタントン、ジャスティン・セロー etc
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映画『インランド・エンパイア』の登場人物(キャスト)
- ニッキー・グレイス / スーザン・ブルー(ローラ・ダーン)
- やや落ち目の女優。夫と豪邸に住んでいるが、デヴォンと密かに逢瀬を重ねている。スーザンという役に入り込みすぎ、現実との境目を失くしてしまう。
- キングスリー・スチュワート(ジェレミー・アイアンズ)
- 映画監督。ニッキーの実力を知る1人。迫真の演技を魅せるニッキーをひたすら撮り続け、その演技力を絶賛する。
- デヴォン・バーク / ビリー・サイド(ジャスティン・セロー)
- 俳優でニッキーの相手役。現実でもニッキーと逢瀬を重ねている。
映画『インランド・エンパイア』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『インランド・エンパイア』のあらすじ【起】
女優のニッキー・グレイスは夫と執事、何人もの使用人を雇って豪邸で暮らしていた。彼女の女優としての人気はやや落ち気味であったが、この度の新作映画で主役に大抜擢され、人気の最盛が期待されていた。
監督はキングスリー・スチュワート。ヒロインの相手役には長年タッグを組んできたデヴォン・バーグが起用される。しかし、監督含め誰もがオリジナルの新作だと思っていた作品が実はリメイクであることが判明。ポーランド民話を元にした『4-7』という映画は、製作途中で何らかの事件が起き、未完成で撮影が中止されたという曰く付きの映画だった。
しかし、『4-7』は未完成。製作会社は製作陣には何も伝えず、新作として『暗い明日の空の上で』とタイトルを改め、映画を作ることを遂行したのである。
ニッキーとデヴォンはリメイクなら出演は断っていたと言うが、制作はすでに開始されている。今更、中止することはできないとして撮影は続行されることになった。
映画の内容は、ニッキー演じるスーザンと、デヴォン演じるビリーが不倫をする話である。撮影は順調に進められたが、役に引きずられた2人は現実でも身体を重ねてしまう。
その最中、ニッキーは昨日撮ったシーンは明日のシーンだと謎の言葉をデヴォンに告げるのだった。
映画『インランド・エンパイア』のあらすじ【承】
全ての行動には結果が伴う。それが予想していなかったものだとしても、1つの行動によって引き起こされる結果は甘んじて受け入れなければならない。
デヴォンに告げた通り翌日、ニッキーは裏路地に車を停めて買い物へ。その後、車へ戻って来て、ある文字に目を止める。彼女はその文字に誘われるよう、ドアの向こうへ歩き出した。
薄暗い室内を進んで行くと、そこには撮影を始める前の光景が広がる。自分とデヴォン、キングスリーがセリフ合わせをしていた。そう、あの時。セットの影に誰かがいると、デヴォンが見に向かったが、誰もいなかった。あれは、未来の自分がそこにいたからである。ニッキーはその場にいるが、デヴォンには見えずに素通りされてしまう。彼女は必死に彼を呼ぶも結局、見つけてはもらえなかった。
不思議な世界に入り込んでしまったニッキー。その場から移動を開始。そして、気付いたらとある部屋のソファーに座り込んでいた。部屋の中は薄暗く、彼女の周囲には大勢の女性がおり、それぞれに身上を語り始める。
総勢9人の女性は、1人ずつニッキーに身上を体験させる。ある者は父親との確執を抱え、ある者は恋人に乱暴される。皆、この世界に囚われた女性達であった。
9人の女性の運命を体験していくニッキー。最早、本当の自分が何者であったかを見失い始める。
映画『インランド・エンパイア』のあらすじ【転】
不倫をする女。ドライバーで男を刺し殺す女。彼女達は誰もがトラブルを抱えており、窮地に陥っていた。
シルクの布に煙草で穴を開け、全てをそこから覗き見ているような世界だった。
ニッキーは飽くまでもスーザンという役柄でそこにいた。彼女はビリーの自宅へ向かい、彼の家族の前で不倫している事実を明かす。そうして、ビリーの家庭を壊してしまった。
現実なのか妄想なのか、幻想なのか。サーカスで扱う動物の面倒をみる男の話や、ウサギの面を被った家族の話。様々な世界が交錯していく。
トラブルから脱し、傷だらけのスーザンは夜の街を歩いていて、きっかけとなった文字を目にする。彼女は周囲を見渡し、鬼のような形相で追いかけて来る女を見て、再び逃走を開始した。
私を見て。女達は口にする。
助けを求めて小さな劇場へ逃げ込んだスーザン。彼女は別室に案内され、裏口から行けと示される。
先へと進んだ彼女は建物の階段を上り、そこにいた男に事の顛末を話した。
だが、問題は時系列がバラバラであること。どれが先でどれが後かが分からない。
明日のことが昨日だったり、今日のことが明日だったりする。記憶と体験がごちゃ混ぜとなり、説明のしようがないのである。
その時、男に電話がかかってくる。会話の内容を聞いたスーザンは、誰かが追いかけて来ることを察して、部屋から外へ出た。
映画『インランド・エンパイア』の結末・ラスト(ネタバレ)
街路には9人の女達がおり、どこへ行っていたのかと質問してくる。
スーザンは持っていたドライバーを手にするも、1人の女に奪われ腹部を刺されてしまう。
刺した女は早々に逃走。女達も悲鳴を上げて逃げて行った。スーザンは腹に刺さったドライバーを引き抜いて、痛みに顔を歪めつつも走り出す。道路を横切り、力尽きて倒れる。道端には浮浪者がおり、なぜかポモーナ行きの話を始める。話は更に別の女性の話へ移行し、彼女がいかに不幸かを語り続けた。
スーザンはそこで立ち上がろうとして吐血。彼女を心配するアフリカ系女性にライターの炎を見せられ、慰められる。そうして、スーザンは息を引き取った。
カメラが引いて撮影にカットの声がかかる。ニッキーはふらふらと立ち上がり、朦朧としたまま画面から去る。役から抜けきれないのか、様子がおかしかった。
セットの外へ出たニッキー。歩む先に劇場があった。そのスクリーンには、先ほどまで撮影していた映像が流れる。しかし、次のシーンでは現在の状況が映し出される。話を聞いた男の姿が見えていた。まだ続いているのだ。彼女は男を追って先へと進んだ。
そこには、またもあの文字。ドアを開けると寝室で、チェストの上にはオレンジ色のランプ。引き出しには銃があった。彼女はおもむろに銃を手にして、先へと進む。迷路のように連なる部屋を幾つも横切り、ある一室の扉の前で立ち止まった。部屋の扉には47という番号がつけられていた。
部屋の前にたたずむニッキーへと男が近寄って来る。彼女は恐怖に戦き、銃を発砲。しかし、男は倒れない。その顔は次第に変化し、亡霊のような相貌を見せた。
扉の向こうにはウサギの家族が住んでいる。だが、ニッキーが中へ入るとウサギ達は姿を消していた。
ニッキーはスポットライトを浴び、その中に1人の女性が夫と息子の2人にようやく再会する姿を垣間見るのだった。
映画『インランド・エンパイア』の感想・評価・レビュー
正直不可思議な物語で、自分には理解できなかった。この作品を見て、一回で理解できる人はなかなかいないのではないだろうか。何度も見た方が物語を理解できるのは分かるが、自分はあまり見たいとは思えなかった。終始、疑問符が頭に浮かぶ映画。この作品を見るなら、あらすじや解説を見てから視聴するのがおすすめ。ただ、おしゃれな雰囲気を感じる映画なので、そこは良かったと思う。独特な世界観が魅力の作品だと思う。(女性 30代)
本作は、役柄とプライベートが錯綜する主人公の女性が、後に一人二役、時間、人格、外見までもが混同していくという深い世界を描いている。
リンチワールド全開で様々な要素が入り混じっていく為、観ている方も混乱するほど理解不能の三時間だった。
しかし、ドキッとするようなフレームワークや、映像の一つ一つが洗練されていてかっこよかった。
特に、ウサギのシーンは印象的だった。
内容もヴィジュアルも衝撃的でインパクトのある迷宮作品。(女性 20代)
コアなファンにはたまらないデビッド・リンチ作品。『イレイザーヘッド』や『エレファントマン』のイメージが強いので意味不明で理解できない作品を期待しましたが、今作はかなりストーリーがしっかりしていて、とても分かりやすかったと思います。
よく「役作り」なんて言葉を聞きますが、クリスチャン・ベイルは役作りのために、減量や増量を繰り返しているそう。プロの俳優はやはりすごいですよね。今作に出てくる女優は「役作り」というよりも、役から抜け出せなくなってしまった感じ。作品と現実の世界が分からなくなってしまいます。
理解が難しい部分もありますが、ストーリーはかなり魅力的で惹きつけられるものがありました。(女性 30代)
予備知識なしの初見だと恐らくは、全く理解不能な作品だと思うが、非常に深い作品である。想像を超える世界観とシーンの切り替わり、ストーリーの展開から見ても非常に秀逸。さすがデビッド・リンチ作品。そう言う自分も多少のあらすじは見たものの、ほとんど初見で今作を鑑賞した。だが、主人公が役に深く入り込み過ぎて抜け出せなくなったのかもしれないということは理解できたし、彼女が体験する出来事は正に人の奥深くにある深層心理を描いたものだということも分かった。人の心や脳内は正にこんな感じかもしれないと思えば、理解もできる。想像力と理解力を試される作品であることは間違いなく、こんな作品を作ることができる監督もなかなかいない。深く面白い作品だが、とても混乱するし鑑賞するには精神力を必要とするので、自分的には何度も観返す勇気がなかなか出ない。(女性 40代)
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