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映画『光と血』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『光と血』の概要:それぞれに平穏な日常を送っていた人々がある日突然、人生が一変する出来事に襲われる。事故による被害者遺族と加害者、レイプ被害に遭った女子高生、通り魔殺人にて恋人を殺された男。それぞれに喪失や罪悪感、多くの懊悩を抱える人々の姿を描いた作品。

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映画『光と血』の作品情報

光と血

製作年:2017年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:藤井道人
キャスト:世良佑樹、打越梨子、小林夏子、出原美佳 etc

映画『光と血』の登場人物(キャスト)

金井陽(世良佑樹)
付き合っていた恋人にようやくプロポーズし、幸せな家庭を築こうとしていたが、恋人を通り魔殺人で亡くす。以来、助けられなかったという罪悪感と喪失を抱え荒んだ生活を送る。
前田光(打越梨子)
女子高生でいじめに遭っているあかりの友達になる。交流を続けていたが、学校からの帰りにレイプされてしまう。以来、頭を丸刈りにし夜な夜な街頭に立っている。カメラマンの古賀と出会い、親交を持つ。
染谷マナ(小林夏子)
被災地へ復興支援に向かっていた弟の姉。不慮の事故で弟を亡くし、加害者である三井浩二に深い恨みを抱えている。ピアカウンセリングにて陽と出会い、互いに励まし合う。
三井あかり(出原美佳)
父と二人暮らしをしている女子高生。学校ではいじめに遭い、唯一親しくしてくれた光との交流に救いを見出していたが、光から拒絶される。以降はネット世界へ没入。実は会話の相手は陽の幼馴染だった。
三井浩二(裕樹)
あかりの父親でアマチュアのミュージシャンだった。友人の高校教師の誕生日祝いの夜、誤って青年を轢き殺してしまう。非常に謙虚な男性で、ひたすら被害者遺族である染谷に頭を下げ続ける。
古賀壮亮(南部映次)
元カメラマン。海外へ撮影に行った折、紛争に巻き込まれ友人を亡くす。以来、写真を撮ることができなくなる。光が自殺しようとする現場に居合わせ、彼女を止めようと奮闘する。実は三井とも知り合い。

映画『光と血』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『光と血』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『光と血』のあらすじ【起】

学校でいじめにあっているクラスメイト・三井あかりに人知れず声をかけ、友人となった女子高生の前田光。恋人にやっとプロポーズし、婚約した金井陽。高校の教師をしながら絵画を描き続ける男。
彼らはそれぞれに平穏な生活を送っていた。ところが、ある日を境にこれまでの生活が一変する。

嬉しくもない誕生日を祝ってもらった高校教師は、友人の三井浩二が運転する車で帰路に就いた。ところが、運転手の三井に縋りついたために、彼が若い男を車で轢いてしまう。
光は放課後に友人と別れた後、見知らぬ男から茂みへと引っ張り込まれレイプされた。
そして、陽は婚約者とのデートの帰り、通り魔によって恋人が背後から刺される。

光は事件当日、帰宅後に浴室で手首を切って自殺を図った。母親に発見されたことで命は助かったものの、彼女はまるで抜け殻のようになってしまい、あかりが見舞いに来ても以前のように笑うことができなくなる。精神的苦痛は彼女を生々しくも苛んでいた。

結局、病院へ搬送したものの恋人は戻らなかった。陽は深い悲しみから夜の町を放浪し、チンピラに絡んでは殴られる。
光は苦痛に耐えられず橋から投身自殺を図ろうとしたが、通行人に目撃され実行することができなかった。

通り魔は依然として逮捕されず、幼馴染の勧めでピアカウンセリングへ参加した陽だったが、誰かの話を聞いていることができない。恋人を思い出してしまうからだ。思わず部屋から飛び出してしまった陽は、自分と同じように話を聞いていることができず部屋の外で涙する染谷マナと出会うのだった。

心の傷を癒すことも自殺することもできない光は、夜の町を徘徊し橋で出会った通行人と再会する。彼の案内で憩いの場のような場所へ連れて行かれたが、そこでレイプ犯に似た男を見つけてしまう。光は殺してやりたい衝動に駆られたが、その場から逃げるように去るのだった。

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映画『光と血』のあらすじ【承】

通り魔事件の折、偶然居合わせて陽と恋人を助けてくれた男性が、小さいながらも町工場を営んでいると言うので、その伝手で陽も男性の会社へと入社。新たな生活を送ることにした。
だが、恋人を失ったことで心を病み、常日頃から精神薬を服用している。

光は通行人、古賀壮亮と知り合ったことで、自らの容貌を変えまるで男のような恰好をするようになり、夜な夜な街頭に立っている。彼女は犯人に強い恨みを抱え、復讐を誓っていた。そんな彼女のために古賀は、光が友人と別れた場所にある監視カメラ映像を入手してくれる。

若い男を轢いてしまった三井が釈放され、彼の娘と迎えに行った高校教師。彼は光が通学していた高校に勤めている。だが、三井の娘あかりがいじめられているのを目撃しても、教師としての責任を果たすことができなかった。
三井は、釈放後も罪の呵責に苛まれている。彼はその足でカメラマンをしている友人の元を訪れた。友人とは古賀のことであった。

陽は仕事に就いて以来、幼馴染からの連絡を無視するようになっていた。彼は陽のことをとても心配しているが、それすらも煩わしいと感じている。なぜ自分だけがという感情から卑屈になっていた。
そんな時、ピアカウンセリングにて染谷と会った陽。彼女は弟を事故で亡くした経緯を持つ。染谷は三井が轢き殺してしまった青年の姉だった。
弟の誕生日だからと染谷と飲んだ陽だったが、酒に酔ってしまう。染谷が自宅まで送ってくれ、年末を共に過ごす約束をした。

映画『光と血』のあらすじ【転】

三井はアマチュアのミュージシャンだった。彼はかつてのファンと再会し、またライブをやって欲しいと乞われる。釈放されて以来、一度もギターには触っていなかったが、久しぶりに触れてみた。
そうして、年末をそれぞれに過ごし、年が明ける。

仕事始め、陽は職場へと元気に出勤。その夜は新年会があった。社長から二次会に誘われ居酒屋へ入った陽は、自分が抱える心の傷を吐露。
同じ頃、高校教師と久し振りに飲んだ三井は、娘が学校でいじめられていると友人から聞かされ愕然とする。

あかりは光に拒絶されて以来、ネット世界へと没入していた。彼女はネット上でできた友人と夜な夜な会話を続けている。
三井にあかりのいじめを告白した翌日、高校教師は朝礼時に自分の罪を生徒たちに告白した。そして、あかりをいじめる生徒を指差し、彼女らの所業を見て見ぬ振りをする最低な男だと泣きながら白状するのだった。

弟を轢き殺した犯人が弟の墓参りに来ていたのを目撃してしまった染谷。彼女は恨みを募らせ犯人がまるで悪人のように言い放つ。加害者と被害者の間にはどうにもできない溝があるのだった。

帰宅した三井は、その日も明るい様子のあかりに心から謝罪した。自分ばかりが辛い思いをしていると思っていたが、娘もまた辛い目に遭っていたのだ。父子は揃って夕食を摂るために外へ出たが、なぜかそこに染谷が立っている。彼女は恨み辛みを吐き続けた。三井はひたすらに頭を下げ続けていたが、絶対に一生許さないと怒鳴る彼女へ、あかりも辛かったのだと言い募った。

映画『光と血』の結末・ラスト(ネタバレ)

不慮の事故で弟を失くした染谷も、誤って轢き殺してしまった三井も、いじめられているあかりも誰もが不幸だ。それでも生きていれば、幸せだと思える日がくる。そう思わないと生きていけないのではないか。あかりは泣きながらも切々と語るのであった。

通り魔殺人事件から2年。ようやく犯人が逮捕された。自宅にてそのニュースを見ていた陽は、テレビ画面にくぎ付けとなった。
その頃、古賀の元を訪れていた光は、ようやく見つけたレイプ犯の調査結果を得る。調書を受け取った彼女は漫然としながらも夜の町を歩き続ける。陽もまた光と同じように夜の町をさ迷い歩いていた。

眠れないまま夜を明かした陽は、その足で出社。そこへ、ナイフを手にした光が現れる。なんと、彼女を凌辱した犯人は陽が務める会社の社長だったのだ。当時、彼は社長に就任したばかりで、通りかかった光に落としたハンカチを届け執拗に話しかけた。そうして、自分がバカにされたと思い、彼女を懲らしめるつもりで凌辱したのである。その日の夜、彼は自分が仕出かした罪で茫然自失となっていた。そんな時、あの通り魔殺人事件が発生したのである。

社長は光にひたすら謝った。だがその時、光を追って現れた古賀が社長を刺してしまう。古賀はまだ若い光の代わりにわざと罪を被ったのだ。社長は今更になって平謝りし、自らナイフを手に取り自殺しようとする。しかし、彼は罪を犯しながらも陽を助けている。自殺行為は陽が止めた。助けてくれた事実は変わらないからだ。

あかりとネットを通じて会話をしていた相手は、陽の幼馴染。彼は陽が立ち直る手助けをしたいと思っていたが、いつも空振りで落ち込んでいた。あかりと会話をすることで、互いに救いとなっていたのだ。あかりは彼と会話しながら、反対側の歩道を歩く光を発見。彼女へと声をかけた。何があっても友達なのだから、いつでも話して欲しいと。すると、光はそこで初めて涙を流すのだった。

一連の出来事があってから、陽はようやく亡くなった恋人の墓を訪れる。何だかようやく前向きになれたような気がした。染谷とも笑って別れる。互いに傷を舐め合う関係ではあったが、それでも辛い時は救いになった。

そうして、春が訪れる。社長であった男は自ら出頭し、罪を告白して刑務所へと入った。古賀は明るい日差しの中、笑顔で歩道を行く人々を目にし、再びカメラを手に取る意欲が湧いてくるのだった。

映画『光と血』の感想・評価・レビュー

監督、藤井直人が原点に立ち返り制作した作品。当初は『無辜の血』というタイトルだったらしい。無辜とは罪のない人という意味だそうだ。第18回ハンブルク日本映画祭オープニング作品。

何でもない日常から、人生が一変する。そんな様子を繊細に描いており、それぞれの境遇や懊悩、喪失に憤り、恨みと苦しみを赤裸々に映し出している。非常に重く辛い時間を、有無を言わせずに共有させられる。被害者、加害者、遺族。どの人にも共感を得るし、その苦しみは本当に味わった人にしか分からないだろう。当事者はもちろんのこと、カメラは周囲の人々にも向けられ辛い気持ちを共に過ごしているのだと分かる。映画だからではなく、自分の人生にもあるかもしれない可能性を描いた凄まじい作品。(MIHOシネマ編集部)

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