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映画『一命』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『一命』の概要:1962年の仲代達矢主演映画『切腹』を三池崇史監督がリメイク。太平の世、武士たちにも格差社会が生まれていた。そんな中、貧しい侍が、愛する家族との些細な幸せのために、武家社会の面目に歯向かう姿を、ドラマティックに描き出す。

映画『一命』の作品情報

一命

製作年:2011年
上映時間:126分
ジャンル:ヒューマンドラマ、時代劇
監督:三池崇史
キャスト:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、竹中直人 etc

映画『一命』の登場人物(キャスト)

津雲半四郎(市川海老蔵)
千々岩求女の義父。貧しさゆえに狂言切腹に及んだ求女の無念を晴らすべく、井伊家に乗り込み、求女同様に切腹のため玄関先を貸して欲しいと申し出る。そして井伊家の面々に、真実を語る。
千々岩求女(瑛太)
育ての親である半四郎の娘、美穂と結婚をし、子を授かる。しかし、その子が病に臥せってしまい、医者に診せるために三両が必要となり、井伊家で狂言切腹に及ぶ。
美穂(満島ひかり)
半四郎の娘。金持ちの商人からの結婚の誘いを断り続け、求女と結婚する。幼い頃からの病が極貧のため悪化し、喀血をしてしまう。息子を授かるが、その子も病で失ってしまう。
斎藤勧解由(役所広司)
井伊家家老。武士の面目を重んじる人物。戦で負傷したのか足を引きずりながら歩いている。狂言切腹に及んだ求女に、武士に二言があってはならないと切腹を言いつける。

映画『一命』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『一命』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『一命』のあらすじ【起】

津雲半四郎は、名門井伊家を訪ね、玄関先を切腹の場として借り受けたいと申し出る。それを聞いた家老の斎藤勧解由は、半四郎を座敷に招き入れ、数ヶ月前にも千々岩求女という男が、同じように切腹を申し出たと話し始めるのだった。

数ヶ月前、千々岩求女も井伊家で切腹を申し出ていた。井伊家の家臣、沢潟彦九郎、松崎隼人正、川辺右馬助の三人はどう対処すべきか話し合っていた。沢潟は家老斎藤勧解由に、最近流行りの「狂言切腹」だと報告をする。「狂言切腹」とは、生活に困った浪人たちが裕福な大名屋敷に押し掛け、玄関先などで切腹させてほしいと願い出て、面倒を避けたい屋敷の人間から金銭などを受け取る、ゆすりのような行為だった。沢潟は二度とこのような者が井伊家を訪れないように厳重な処置をするように斎藤に進言する。

求女は部屋に招かれ、家臣から君主へのお目通りのため着替えをして欲しいと湯殿に案内される。求女が湯を浴びている間、川辺は求女の刀を調べ、沢潟に報告するのだった。湯から上がった求女に着替えが用意されている。しかし、それは切腹のための死装束だった。慌てる求女に、切腹を強要する沢潟たち。そして求女は、庭で多くの井伊家家臣、そして斎藤が見る中、切腹をしなければならなくなるのだった。

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映画『一命』のあらすじ【承】

求女は、一日だけ猶予を賜りたいと申し出るが、沢潟は求女に当家で狂言切腹は通用しないと言い放つ。さらに斎藤は、武士に二言があってはならないと言うのだった。求女の前に、彼が携えていた刀が置かれる。求女はその刀を抜くが、それは竹光であった。求女は竹光を持ったまま斎藤に近寄り、三両を無心する。そんな求女を沢潟は、情けない奴と言い捨てるのだった。

諦めた求女は竹光で切腹をしようとする。しかし、竹光では腹は切れず苦しむ。介錯の沢潟は刀を構えたまま、その姿を見ているだけだった。折れた竹光を腹に押し込み沢潟に介錯を求める求女。しかし、まだまだという沢潟。たまらず斎藤が庭に降り、求女を斬るのだった。

その話をした斎藤は、半四郎にどうするかを問う。半四郎は、武士に二言はないと言い、求女と同じように庭に案内される。半四郎は、介錯を沢潟彦九郎に頼みたいと言う。しかし沢潟は、出仕していなかった。半四郎は沢潟がいないのなら、松崎隼人正か川辺右馬助に介錯を頼みたいと言う。しかし沢潟、松崎、川辺の3人は昨夜から居場所が解らないのだった。斎藤は不審に思い、半四郎に真意を問う。

映画『一命』のあらすじ【転】

半四郎は語り出す。半四郎は千々岩求女を知っているのだった。半四郎は求女の父、千々岩甚内と同じ藩に仕える武士だった。お互い早くに妻を亡くし、男手一つで子どもを育てていた。災害による城の復旧工事が武家諸法度に抵触してしまい、藩はお咎めを受ける。そのことで甚内は心労がたたり、倒れてしまう。そして、息子の求女のことを半四郎に託すのだった。

武家諸法度の件で藩は財政が悪化し、浪人となった半四郎は、娘の美穂と求女を連れて江戸に出る。しかし、生活は困窮していた。数年がたち、美穂も求女も成長していた。半四郎は、美穂を嫁にもらってくれと求女に頭を下げる。そして、二人は夫婦となり、子どもも生まれる。半四郎たちは、貧しいながら幸せな生活を送っていた。

美穂が体調を崩し、喀血をしてしまう。日に日に弱っていく美穂のため、本を売り、薬や卵を買う求女。半四郎も娘のために金を工面するのだった。しかし、子どもが熱を出してしまう。医者に見せるが三両が必要と言われる。そして、その三両のため求女は、狂言切腹に及んだのだった。

帰ってこない求女を待ち続ける美穂と半四郎。そんな中、子どもが息をひきとってしまう。そこへ井伊家の使いのものが、求女の遺体を運んでくるのだった。井伊家の使いは、家老からという三両を置いて帰る。半四郎は使いのものを追いかけ、求女の最後の様子を聞き出す。しかしその間に美穂は、求女の竹光で自害するのだった。

映画『一命』の結末・ラスト(ネタバレ)

話し終えた半四郎は、斎藤に求女を哀れと思わなかったのかと問う。しかし、斎藤は武士には二言はなく、面目というものがあると答える。半四郎はさらに問う、ここにいる人たちは面目のためには死を恐れないのだな?と。

半四郎は、懐から三両を取り出し、返すと言い、更に沢潟、松崎、川辺の髷を庭に投げ捨てるのだった。前日、半四郎は三人を襲い、髷を切り落としたのだった。三人は恥じて、それで姿を隠している。半四郎は、武士の面目とは何かと斎藤に問う。そして、面目など下らんと言い放つのだった。

斎藤は、半四郎を切り捨てろと家臣に命じる。半四郎は、刀を抜く。それは求女と同じく竹光だった。その竹光を構える半四郎。家臣たちは、竹光の半四郎に次々と斬りかかるが、誰も半四郎を倒すことができない。しかし、半四郎の竹光が半分に折れてしまう。斎藤は、半四郎に乱心者と叫ぶ。半四郎は、乱心などしていない、生きてただ春を待っていただけだと答える。そして両手をあげ、斬られるままとなり絶命する。半四郎の脳裏に最後によぎったのは、美穂と求女の子、孫が生まれた時の喜びだった。

屋敷に戻ってきた沢潟、松崎、川辺の三人は、切腹をし自害する。しかし井伊家は、何事もなかったかのように君主を迎え、武士の面目を重んじるのだった。

映画『一命』の感想・評価・レビュー

この元ネタとなった『切腹』は私的には日本史上で最も優れた映画のトップ10には入る映画なので、幾分このリメイクには懐疑的であったしできれば元ネタを観てほしい。のだが、なかなか悪くなくて驚いた。もちろん役者の質的に現代の役者では表現しきれない部分はあるのだろうが、それでも瑛太と海老蔵には拍手を送りたい、時代にしいたげられた者が一命を賭して一矢報いるお話は気持ちがいいものだ。この作品を見てできれば元ネタを観てほしい。(男性 30代)


演出上グロテスクな部分も多くあるので、苦手な人はあまり観ない方がいいなと思ったが、時代劇というと観るのを構えてしまいがちになるが、この作品は展開が分かりやすかったので普段時代劇を観ない層の人にもおすすめできそうな作品になっている。

瑛太の迫真の演技がとても光っていて、切腹するシーンはこちらも本当に痛い思いをしているような気分になった。
このシーンは少し長すぎる気もしたが、千々岩求女の切ない存在を表すには必要な時間だったのかもしれない。(女性 20代)


三池崇史監督作品でありながらも、いつもの「三池ワールド」とはひと味違う、ものすごく洗練された、緊張感のある世界観に圧倒されました。市川海老蔵のセリフの一つ一つに魂が込められているような感じがして、心の底から発せられているような言葉に胸が熱くなりました。
「武士」の世界を描いた作品で、とてもスピード感がありますが、あの時代劇映画の「独特の間」は一切なく、とにかく爽快感が強かったです。難しい言い回しなどはありますが、とても楽しめました。もう一度見たくなる作品です。(女性 30代)


市川海老蔵の演じた半四郎は、紛うことなくあっぱれでした。低い声がよく通り、存在感も圧倒的で歌舞伎役者の実力が滲み出ています。登場人物全員が気の毒で、誰も浮かばれませんから覚悟して見ることをおすすめします。序盤の切腹シーンは恐ろしすぎて、しんどさを感じました。しかし、食事のシーンでは家族愛や生きることへの希望を感じられて救いがありました。和菓子や魚料理、ご飯、味噌汁など当時の食生活を忠実に再現しているようで面白かったです。(女性 30代)

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