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映画『愛しのアイリーン』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

農家のひとり息子である42歳の宍戸岩男は、女性と全く縁のない侘しい人生に終止符を打つため、金を払ってフィリピン人のアイリーンとの国際結婚を斡旋してもらう。しかし、この結婚がとんでもない事態を引き起こす。熱烈なファンを持つ新井英樹の同名コミックを吉田恵輔監督がついに実写化!

映画『愛しのアイリーン』の作品情報

愛しのアイリーン

タイトル
愛しのアイリーン
原題
なし
製作年
2018年
日本公開日
2018年9月14日(金)
上映時間
137分
ジャンル
ヒューマンドラマ
ラブストーリー
監督
吉田恵輔
脚本
吉田恵輔
製作
河村光庸
瀬井哲也
宮崎伸夫
製作総指揮
河村光庸
岡本東郎
キャスト
安田顕
ナッツ・シトイ
河井青葉
福士誠治
品川徹
田中要次
伊勢谷友介
木野花
製作国
日本
配給
スターサンズ

映画『愛しのアイリーン』の作品概要

農村部の少子高齢化や嫁不足に伴って増加している国際結婚など、日本社会が抱える深刻な問題を鋭い視点で描き出した新井英樹の同名人気コミックを、『麦子さんと』(13)や『ヒメアノ〜ル』(16)の吉田恵輔監督が実写映画化した。主人公の宍戸岩男を演じるのは、テレビや映画に引っ張りだこの安田顕。ヒロインのアイリーン役には、初の海外作品出演となるフィリピン人女優のナッツ・シトイがキャスティングされている。

映画『愛しのアイリーン』の予告動画

映画『愛しのアイリーン』の登場人物(キャスト)

宍戸岩男(安田顕)
寒村の農家のひとり息子。女性に縁がなく、42歳まで独身だったが、国際結婚斡旋会社の紹介で、フィリピン人のアイリーンと結婚する。
アイリーン・ゴンザレス(ナッツ・シトイ)
フィリピンの家族を助けるため、岩男と結婚する。
宍戸ツル(木野花)
岩男の母親。岩男を溺愛しており、アイリーンのことを毛嫌いする。

映画『愛しのアイリーン』のあらすじ(ネタバレなし)

少子高齢化の進む日本の寒村。この村の農家のひとり息子として生まれた宍戸岩男は、42歳になるまで女性と付き合ったことがなく、侘しい日々を送っていた。このままではいけないと考えた岩男は、国際結婚斡旋会社に金を払い、若いフィリピン人女性のアイリーンを紹介してもらう。岩男は両親の許可も得ず、アイリーンとの国際結婚を決めてしまう。

アイリーンを連れて村に帰ると、留守のうちに父親が死んでおり、実家は葬式の真っ最中だった。岩男の母親のツルは、フィリピン人のアイリーンを見て激怒し、彼女に猟銃を向ける。閉鎖的な農村で生きてきたツルにとって、外国人女性との国際結婚など、考えられないことだった。2人の国際結婚は前途多難だったが、岩男は明るくて天真爛漫なアイリーンを本気で好きになり、彼女とバージン・ロードを歩く決意を固める。しかし、その道のりはあまりに険しく、岩男は地獄のような苦しみを味わうことになる。

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映画『愛しのアイリーン』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『愛しのアイリーン』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『愛しのアイリーン』の感想・評価

新井英樹作品、初の映画化

文具会社のサラリーマンだった新井英樹は、漫画家になるため会社を退職し、1989年に『8月の光』で念願の漫画家デビューを果たす。1990年から『モーニング』で連載が開始された『宮本から君へ』では、暑苦しいほどがむしゃらに生きる文具メーカー営業マンの宮本の生き様を描き、多くの読者の支持を得た。その後も、時代の流れや読者のニーズに迎合することなく、挑戦的で濃厚な内容の作品を次々と発表し、コアなファンを獲得する。

同業者やアーティストにも新井英樹ファンは多く、彼の作品の映画化を熱望する声は根強くあったが、どうしてもそれが実現しなかった。その理由は、新井の漫画があまりに刺激的すぎたからに他ならない。そんな新井作品が、今回、ついに実写映画化がされた。『愛しのアイリーン』の連載が開始されたのは1995年なので、実写映画化までには23年の月日を要したことになる。しかし、本作で描かれている問題に時代遅れの感はない。日本の少子高齢化はどんどん加速しているし、過疎地での嫁不足問題は現在でも深刻だ。つまり、時代がようやく天才・新井英樹に追いつき、必然的に映画化が実現したと考えるのが自然なのかもしれない。

攻める吉田恵輔監督

そんな新井英樹の熱烈なファンであり、新井作品の中でも最もクセが強いと言われている『愛しのアイリーン』の実写映画化を熱望したのが、優れた人物描写で知られる吉田恵輔監督。吉田監督は、『さんかく』(10)、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(13)、『麦子さんと』(13)など、どこにでもいそうな人間を主人公にしたオリジナル脚本で、誰もが親しみやすいヒューマンドラマを作ってきた。吉田監督は人間の愚かさや不器用さをコミカルに描く名手であり、その視点には常に人間に対する深い愛情が感じられる。

その吉田監督が、漫画家・古谷実の問題作『ヒメアノ〜ル』を実写映画化した時は、正直言って驚いた。原作となった古谷の漫画は、あまりに残酷な描写が多いため、“映像化は不可能”と言われていた。しかし、吉田監督はその常識を覆し、実写映画化を実現させる。それまでの吉田恵輔監督作品のファンだった人たちは、作風の変化に驚きつつも、吉田監督の実力を再認識したことだろう。そして、今回も吉田監督は“映像化は厳しい”と言われてきた『愛しのアイリーン』の実写映画化に挑戦した。この攻めの姿勢が、吉田監督のさらなる飛躍に繋がることは間違いない。

安田顕の代表作になり得るか?

“ヤスケン”の愛称で親しまれている安田顕は、大泉洋や戸次重幸らと同じ劇団ユニット「TEAM NACS」に所属する北海道出身の俳優。TEAM NACSの地名度が上がり、安田顕の名前も全国的に知られるようになり、今では多忙な売れっ子俳優で通っている。

安田顕は、どんな役でも柔軟に対応できるため、実力が必要な脇役での起用が多い。しかし、近年になって、じわじわと主演作品が増えている。2016年には『俳優 亀岡拓次』で主人公の亀岡拓次を演じているし、2018年6月に公開された『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』では、榮倉奈々とのW主演を務めた。そして、今回の『愛しのアイリーン』では、主人公の宍戸岩男役で単独主演を果たす。安田顕は、並々ならぬ情熱でこの役に挑み、すごい演技をしているという噂だ。映画の雰囲気や宍戸岩男のキャラクターは、間違いなく安田顕にハマる。さらに、安田顕自身が今までのキャリアの集大成となるような魂の演技を見せているとなると、期待は高まる。果たして、『愛しのアイリーン』は、安田顕の代表作になり得るだろうか?いや、なっていて欲しい。

映画『愛しのアイリーン』の公開前に見ておきたい映画

映画『愛しのアイリーン』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『愛しのアイリーン』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

ヒメアノ〜ル

ビル清掃会社でパートタイマーをしている岡田(濱田岳)は、同僚の安藤(ムロツヨシ)にせがまれて、カフェで働くユカ(佐津川愛美)とのキューピット役を務めることに。そこで高校時代の同級生の森田(森田剛)と再会する。高校時代の森田は、壮絶ないじめに遭っており、岡田は森田に対して後ろめたさを感じていた。そして、森田の方は、その過去が原因で残忍なサイコキラーになっていた…。

古谷実の同名コミックを、吉田恵輔監督が実写映画化した作品。前半部分は、それまでの吉田恵輔監督作品を彷彿とさせるコミカルな雰囲気なのだが、物語の中盤でタイトルが出て、そこからの後半部分は空気が一変する。サイコキラーの森田が、残酷な手口で次々と人を殺していくシーンが続き、観客は恐怖のどん底へ突き落とされる。吉田監督がリアルさにこだわったと言うだけあって、その暴力描写は凄惨を極める。あえて物語の中盤でタイトルを出し、前半と後半で別の作品のような演出をするという思い切った構成で、吉田監督は本作に潜む恐怖を最大限に引き出している。特に、森田剛の鬼気迫る演技は見もので、サイコキラー・森田の狂気と悲哀を見事に表現している。残酷な描写には賛否両論あるだろうが、原作にはないラストシーンには、吉田監督らしい人間愛を感じることができる。

詳細 ヒメアノ〜ル

ばしゃ馬さんとビッグマウス

長年、プロのシナリオライターを目指してシナリオを書き続けてきた34歳の馬渕みち代(麻生久美子)は、とあるシナリオスクールで、やけに自信家でビッグマウスの天童義美(安田章大)と出会う。シナリオコンクールで何度も落選を経験してきたみち代は、作品を書いたこともないのに口だけは一人前の天童に苛立つが、なぜか天童に好かれてしまい、不本意ながらも交流を深めていく。

吉田恵輔監督の鋭い観察眼が光るコミカルな1作で、第23回日本映画批評家大賞の監督賞(吉田恵輔)と主演女優賞(麻生久美子)を受賞した。安田章大もイタいキャラだがなぜか憎めない天童を好演しており、岡田義徳、山田真歩、清水優といった脇役陣の自然な演技もいい。1度抱いてしまった夢の諦め方がわからず、迷走を続けるみち代の姿は、痛々しくもあり、愛しくもある。「頑張れば夢は叶う!諦めるな!」と暑苦しい説教をされるより、本作のように「夢は叶えるのも諦めるのも大変だよね」とサラッと言ってくれる方が、救われる人は多いのではないだろうか。

詳細 ばしゃ馬さんとビッグマウス

小川町セレナーデ

オカマのショーパブで裏方仕事をしていた真奈美(須藤理彩)は、酔った勢いでオカマのエンジェル(安田顕)と一夜限りの関係を持ち、小夜子(藤本泉)を出産する。真奈美はシングルマザーとなり、東京近郊の小川町で「スナック小夜子」を開店し、女手ひとつで小夜子を育て上げる。しかし、お人好しの真奈美は借金を背負い、店を手放さざるを得なくなる。小夜子はこのピンチを救うため、母の友人だと思っているエンジェルに助けを求め、「スナック小夜子」をオカマバーとして再生させようとするのだが…。

須藤理彩主演のハートフルなヒューマンドラマで、この作品で映画監督デビューを果たした原桂之助が新藤兼人賞・銀賞を受賞した。「スナック小夜子」を舞台にした人間ドラマも面白いのだが、この作品で注目を集めたのが、オカマのエンジェルを演じた安田顕の存在。エンジェルは、美意識の高いクールなオカマで、オネエというよりはマダムキャラ。安田顕は、想像以上に妖艶な姿で、年増のオカマのプライドと人間臭さを表現している。できればもう1本、オカマ役の安田顕を見てみたいと思ってしまうほど、この役は見事にハマっていた。

詳細 小川町セレナーデ

映画『愛しのアイリーン』の評判・口コミ・レビュー

映画『愛しのアイリーン』のまとめ

万人に愛されるポップなラブストーリーや感動のヒューマンドラマもいいが、たまには毒気を含んだ刺激が欲しくなるのが人間だ。本作に登場するのは、猛毒級の強烈なキャラクターばかりで、免疫のない人はぐったりしてしまうかもしれない。しかし、それは気持ち悪くなるということではなくて、気絶しそうなほど“効く”という意味だ。むき出しの人間を見るのはとても疲れる。それでも、そこを直視しないと見えないものがあり、絶対に味わえない感情がある。実写版『愛しのアイリーン』の持つむき出しのパワーは、心の奥底に隠れている感情をブンブン揺さぶってくるはずだ。

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