1960年代にブラジルで活躍した、8人の伝説のドラァグ・クイーンの姿を追ったドキュメンタリー作品。彼女達は男として生まれた自分を受け入れ、舞台上で光輝いていた。そうなるまでに、彼女達は様々な困難を乗り越えていた。
映画『ディヴァイン・ディーバ』の作品情報
- タイトル
- ディヴァイン・ディーバ
- 原題
- Divinas Divas
- 製作年
- 2016年
- 日本公開日
- 2018年9月1日(土)
- 上映時間
- 110分
- ジャンル
- ドキュメンタリー
- 監督
- レアンドラ・レアル
- 脚本
- キャロル・ベンジャミン
レアンドラ・レアル
ルーカス・パライソ
ナタラ・ネイ - 製作
- キャロル・ベンジャミン
レアンドラ・レアル
ナタラ・ネイ
リタ・トレド - 製作総指揮
- キャロル・ベンジャミン
- キャスト
- ブリジッチ・ディ・ブジオ
マルケザ
ジャネ・ディ・カストロ
カミレK
フジカ・ディ・ハリデイ
ホジェリア
ディビーナ・バレリア
エロイナ・ドス・レオパルド - 製作国
- ブラジル
- 配給
- ミモザフィルムズ
映画『ディヴァイン・ディーバ』の作品概要
『ディヴァイン・ディーバ』は、ブラジルで女優として活躍しているレアンドラ・レアルが初めて監督を務めた作品である。作品に出演しているのは、1960年代にブラジルで活躍した8人の伝説のドラァグ・クイーンである。その頃のブラジルは軍事独裁政権下にあり、検閲や報道に制限が掛けられていた。彼女達は困難に見舞われ辛い思いをすることもあったが、舞台に立ち続けた。現在では同性婚が認められ、愛する人と結ばれることもできるようになった。そんな彼女達の波乱万丈な生き様が収録されている。
映画『ディヴァイン・ディーバ』の予告動画
映画『ディヴァイン・ディーバ』の登場人物(キャスト)
- ブリジッチ・ディ・ブジオ
- 可愛い見た目だったため、女優のブリジット・バルドから文字って名付けられた。1964年にレ・ガールズという有名な異性装ショーグループで、女装家としてキャスティングされた。
- ジャネ・ディ・カストロ
- 1980年にブラジルを離れてからは、海外で舞台に立ち続けた。ショーの客として来たオタヴィオと恋に落ち、46年パートナー関係を続けている。LGBTの活動にも熱心。
映画『ディヴァイン・ディーバ』のあらすじ(ネタバレなし)
1960年代にブラジルで活躍した、8人の伝説のドラァグ・クイーンの姿を追った。彼女達の存在自体が芸術作品であり、人々の心を掴む鍵だった。彼女達は男として生まれた自分を受け入れ、舞台上で光輝いていた。しかし、彼女達の歩む道は決して楽なものではなかった。彼女達の前に様々な困難立ちはだかり、多くの問題が起こった。
1960年代は軍事独裁政権下にあり、ドラァグ・クイーン達は自由と権利を求めていた。彼女達はその頃を振り返り、最低の政策の時代だったと苦渋の表情を見せた。劇場も検閲が必要で、舞台に立つのも容易ではなかった。それでも、彼女達は自分が選んだ生き方を投げ出そうとはしなかった。
彼女達が70歳になったのを記念して、ショーが開かれることになった。ある者はようやく愛する人と結婚できると涙ぐみ、恋人の名を舞台の上から呼んだ。観客達はそんな2人の姿を温かく見守った。
映画『ディヴァイン・ディーバ』の感想・評価
ドラァグ・クイーン
ドラァグ・クイーンとは男性が女性の衣装を身に纏い、化粧をしてパフォーマンスを行うことである。男性の同性愛者が性的指向の違いを超えるための手段として用いたのが起源ではないかと言われている。トランスジェンダーのように「女性になる」ことを求めている訳ではなく、「女性の性を遊ぶ」(女性の性を過剰に演出する)ことに重きを置いているのが特徴である。
日本でもドラァグ・クイーンの方は活躍している。ミス・グロリアスは90年代初頭に活躍しており、日本にドラァグ・クイーンを広めた第一人者とも言える人である。そして、クラブが世間に広まったことと合わせて、ドラァグ・クイーンの人口も徐々に増えていった。現在芸能界で活躍しているマツコ・デラックスやミッツ・マングローブも、ドラァグ・クイーンとして活躍していた。
ブラジル
ブラジルの1964年から1985年は、軍事独裁政権時代と言われている。カステロ・ブランコ将軍がクーデターを起こし実権を握った。インフレ抑制のための政策を行い、福祉予算の減少や公務員の縮小などを行った。そのせいで企業の倒産が相次いで起こり、国民がさらに困窮する事態になる。工業化政策の推進で高度経済成長を実現させるが、1973年に起こったオイルショックのせいで所得格差が拡大してしまう。
ブラジルでは州によって同性婚ができるかどうかバラバラに決められていた。しかし、2013年にどの州でも同性婚ができるよう統一された。軍事政権下では検閲の他に、報道の自由にも制限が掛けられていた。現在では民政化され、完全な自由報道が行われるようになった。
レアンドラ・レアル
監督のレアンドラ・レアルは、13歳の頃からブラジルで女優として活躍している人物。「グラマド映画祭・主演女優賞」や「ブラジルアカデミー賞」など数々の賞を受賞したことがあり、女優としては素晴らしい経歴の持ち主である。レアンドラは本作品で監督デビューを果たした。そして、監督としてだけではなく、脚本家や制作者としても作品に携わっている。
本作品はドラァグ・クイーンの第一世代と呼ばれる人々を追ったドキュメンタリー作品で、道徳観念的に不自由だった時代に生きた彼女達の思いや生き様が収録されている。彼女達が拠点として活動していた「ヒバル・シアター」は、レアンドラの祖父が設立した劇場である。そのため、レアンドラが並々ならぬ情熱を思って撮影に挑んでいるのが、画面を通して伝わってくる。
映画『ディヴァイン・ディーバ』の公開前に見ておきたい映画
プリシラ
3人のドラァグ・クイーンが、愛を求めて旅をする物語。登場人物達は奇抜で異彩を放つ衣装を身に着けており、「アカデミー衣裳デザイン賞」・「英国アカデミー賞・衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアー賞」を受賞している。2006年には日本でミュージカルが公開されており、ミュージカル界のプリンスである山崎育三郎が主演のミッチ役を務めている。
ミッチはオーストラリアのシドニーに暮らし、ドラァグ・クイーンとして働いていた。ある日、元妻から連絡をもらい、ホテルでショーをやって欲しいと頼まれる。ミッチの脳裏には、妻と別れてから一度も会ったことがない息子の姿があった。ミッチは仕事を引き受けることを決め、購入した中古バスに乗って仲間と共にホテルがある街に向かった。
詳細 プリシラ
3人のエンジェル
『プリシラ』(1994)のヒットを受けてアメリカで制作された作品。『プリシラ』と同じように、3人のドラァグ・クイーンの姿を描いたロードムービーとなっている。主演のヴィーダを演じたのは、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)で主役を演じて一躍有名になったパトリック・スウェイジである。
ニューヨークに暮らすヴィーダとノグジーマは「ドラァグクイーン・オブ・ザ・イヤーコンテスト」で優勝し、ハリウッドで開催されるコンテストへの出場権を手にすることになった。しかし、親友のチチが落選してしまう。ヴィータ達はチチのことを放っておくことができず、ハリウッドへの航空券を売って中古の車を購入し、3人でハリウッドまで旅に出ることにした。
詳細 3人のエンジェル
スーパーサイズ・ミー
ドキュメンタリー作品。モーガン・スパーロック監督が自らマクドナルドで購入した食事を食べ、その結果どうなるのか実験した映像が収録されている。1日3回・30日間マクドナルドの食事で、運動も一切止めてしまっている。身体的な記録だけではなく精神に及ぼす影響についても記録されており、社会的にも大きな注目を集める作品となった。
ケンタッキーフライドチキンにピザハット、そしてマクドナルド。子供達はファーストフード店の食事が大好きだった。アメリカはなんでも巨大にできていた。巨大な車に巨大な家、巨大な食べ物。ついに人まで巨大になった。今、アメリカは世界一の肥満体国になっており、社会問題になっていた。昔は母親がキッチンに立って食事を作ってくれるのが当たり前だったが、今は家族で外食するのが当たり前になっていた。
詳細 スーパーサイズ・ミー
映画『ディヴァイン・ディーバ』の評判・口コミ・レビュー
『ディヴァイン・ディーバ』
リオデジャネイロのレビュー劇場、ヒバル劇場で60年代に人気を誇った異性装パフォーマー8人が語る人生観やステージ愛とライブ映。
差別や困難を乗り越えてのステージ芸術家としての自負、私の思い通りに生きてきたという言葉の説得力。力強くて美しかった。— mai (@chim09lives) 2018年9月1日
男性でも女性でもない、私は私でしかない。だから自分の人生と向き合わないといけない、そう思った。ディーヴァ達は、性別を超えて自分自身が何者であるかを問い続けてきたひと達で、何かあると仕方がないと割り切ってしまう自分を蹴り飛ばしたくなった。あと皆んな綺麗。#ディヴァイン・ディーバ
— 土に還りたい族 (@PtJLdLdTGQ8NRlZ) 2018年9月1日
誰にも迷惑をかけたくないと、ひっそりと自分らしさを貫いた素敵な人たち。そして、その芸術を守りぬき、彼らを守った劇場のオーナー三代にわたる物語でもある。#ディヴァイン・ディーバ
— pensamiento salvaje (@yasei_shikou) 2018年9月2日
映画『ディヴァイン・ディーバ』のまとめ
1960年代のブラジルでは、ドラァグ・クイーンに対して今以上に世間の目が冷たく、また検閲などによる国からの圧力まであった。8人の伝説のドラァグ・クイーン達はそんな時代でも沈むことなく、舞台に立って輝き続けた。レアンドラ・レアル監督はそんな彼女達にスポットを当て、どんな困難な道を歩んできたのか、またどんな思いを抱いてきたのか、生き様や思いを収録している。またそれだけではなく、彼女達が舞台に立って歌う場面も収録されているため、そこにも注目しながら見て欲しい。
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