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映画『麦子さんと』あらすじとネタバレ感想

映画『麦子さんと』の概要:「さんかく」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」などで高い評価を得る吉田恵輔監督作品。監督自身が亡くした母を弔うつもりで撮ったと語る、ヒューマンドラマである。

映画『麦子さんと』 作品情報

  • 製作年:2013年
  • 上映時間:95分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:吉田恵輔
  • キャスト:堀北真希、松田龍平、麻生祐未、ガダルカナル・タカ etc

映画『麦子さんと』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

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映画『麦子さんと』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『麦子さんと』のあらすじを紹介します。

フリーターの小岩麦子(堀北真希)は兄の憲男(松田龍平)と二人で暮らしていた。憲男はパチンコ店で、麦子はアニメショップで店員としてそれぞれ働いていたのだが、ある日、実の母である彩子(余貴美子)が二人の暮らすマンションを突然訪れ、三人で一緒に暮らすことを提案する。一度は自分たちを捨てた母が今更になって自分たちを訪ねてきたということに対して、訝しく思う麦子であったが、それに反して兄は同居することを決めてしまう。実は兄は母から常に仕送りをもらっていて借りがあったため、断るわけにもいかなかったのだ。それを知らなかった麦子は兄に怒りをぶつけるものの、しぶしぶ三人での生活を受け入れる。

母と生活を始めた麦子であったが、母への不信感は払拭されることがないまま日々が過ぎていった。そんなある日、母は突然亡くなってしまう。実は母は末期のがんで、最後に家族で一緒に過ごすことを望んでいたのだ。

勝手に訪ねてきては突然なくなった母に対する不信感を抱いたまま、麦子は遺骨の納骨のために母の故郷を訪問する。しかし、そこで麦子はかつての母がその町でアイドル的な人気を誇っていたことや、自分の知らない母の姿を知ることとなる。

こうして、母との思い出や愛情を取り戻す麦子の旅が始まっていく。

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映画『麦子さんと』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『麦子さんと』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

カタルシスの牽引

本作では母と麦子が邂逅してからしばらく、共同生活が描かれる。そこでは、麦子が少しずつ心を母に対して開いていく様子が描かれている。しかし、その少し開いた心を閉ざしてしまうような演出が次々に挿入されていくため、結局麦子は母に心を開かないまま母を亡くしてしまう。それと同時に、観客側にもある効果がもたらされる。それはカタルシスの牽引である。ヒューマンドラマ的な泣きのポイントをあえて共同生活のシーンでは描かず、意図的にむしろ壊していくことで、観客はラストへの期待をふくらませるのだ。

愛情とは血なのか時間なのか

自分を捨てた母、そしてその母が突然自分たちに会いに来る。そんな状況を想像してみてほしい。そのときに自分の心のなかに浮かぶ感情はどのようなものだろう。怒りだろうか、それとも喜びだろうか。いずれにせよ、100%の感情ではないのではないだろうか。しかし、本作ではそのバランスが絶妙なのだ。母にすぐに心を開くようではご都合主義すぎるし、心を開かないままでは映画にならない。そんなアンビバレントな人間の感情を的確に切り取っているのが本作である。

人間の「感情」を描く名手

吉田恵輔監督は人間の感情のゆらめきを描く手腕が高く評価されている監督である。これまでに描いてきた作品すべてに共通するテーマとして、なにかの間で揺れ動く人間が他者とのかかわり合いの中で自分の素直な感情を見つめなおしていくというものが挙げられる。それは時として恋愛であったり、何か夢を追いかけることであったり、青春の悩みであったりさまざまだ。しかし、同時にすべての作品に込められているメッセージは温かいものでもある。鋭い切り口で描く人生賛歌とでも言うべきだろうか。

映画『麦子さんと』 まとめ

本作クランクアップの直前に監督は実の母親を亡くしている。本作で描かれる麦子の中に監督は自分の一部を投影するとともに、丁寧な手法で一般化された本作はすべての人間に思い当たるフシがあるような同化力の強い作品であるとも言える。

映画的な演出についても巧みであるといえる。本作では、あるものの描写を巡って、麦子のこころの変化を描いている。これはいくら登場人物がセリフで説明しても観客を感動させるに至ることはないということを監督自身が最大限に理解しているということでもある。すなわち、本作は映画的なカタルシスにも満ち溢れているのだ。自分の中にある素直な自分を見つめるのは気恥ずかしい気もするが、それだけのエネルギーを備えた作品なのだ。

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