映画『ジョジョ・ラビット』の概要:10歳の少年ジョジョは根っからのナチス信仰者。周りから弱虫と罵られても、彼には空想上の友人アドルフ(・ヒトラー)がいる。そんなある日、ジョジョは屋根裏部屋でユダヤの女の子を見つけてしまい大パニック。第44回トロント国際映画祭、最高賞「観客賞」に輝いた奇想天外戦争ムービー。
映画『ジョジョ・ラビット』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:コメディ、戦争
監督:タイカ・ワイティティ
キャスト:ローマン・グリフィン・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、タイカ・ワイティティ、レベル・ウィルソン etc
映画『ジョジョ・ラビット』の登場人物(キャスト)
- ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)
- 10歳のドイツ人少年。弱虫だがナチスへの忠誠心はピカイチ。何か考え事をする時は必ず空想上の友人アドルフに相談する。
- アドルフ(タイカ・ワィティティ)
- ジョジョの空想上の親友であり、よって他の人からは気付かれない存在。すぐに弱音を吐くジョジョに対していつもナチス流の演説で鼓舞する。
- ロージー(スカーレット・ヨハンソン)
- ジョジョの優しい母親。ナチスを支持する息子に対して「この世で愛が最強」だと優しく諭している。父親が戦地に赴いているため、家の中で一家の大黒柱的存在。
- クレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)
- 青少年集団ヒトラーユーゲントを育てる合宿の総責任者。先の戦争で片目を負傷し、戦力外通告を受け、格下の仕事を任されている。最期までジョジョを守り抜く。
- エルサ(トーマシン・マッケンジー)
- ユダヤ人少女で17歳。ジョジョの姉インゲの友人だった。ナチスが権力を振るうようになってからは家々を転々とし、ジョジョの母であるロージーのところに匿ってもらえるようになった。
映画『ジョジョ・ラビット』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ジョジョ・ラビット』のあらすじ【起】
ジョジョ・ラビットは鏡の前で「ハイル・ヒトラー」の敬礼の練習を何度もしていた。今日から心身を鍛える青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するためである。緊張しながら何度も練習していると、ジョジョの空想上の友人、アドルフ(ヒトラー)が現れる。ジョジョはアドルフに「僕には無理かも」とつい弱音を吐いてしまう。するとアドルフは「確かにひ弱で人気者ではないが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励ます。友人の励ましを受けてジョジョは家を走って飛び出す。
合宿が行われる原っぱでは、先の戦争で片目を失ったキャプテン・クレンツェンド(通称キャプテン・K)、部下のフィンケルと教官ミス・ラームが大勢のドイツ人少年少女を待っていた。ジョジョや太っちょ眼鏡の友人ヨーキーは、期待を胸にこれから行われる合宿の説明を聞いていた。
しかし、実際の戦闘訓練は厳しくハードなものだった。訓練開始2日目、事件が怒る。ジョジョ達は森の中にいた。年若い教官がウサギの首をへし折る挑戦者にジョジョを指名したのだ。ジョジョはその瞬間パニックになり、とっさにウサギを逃がそうとする。すると、教官や仲間達がジョジョを「父親と同じ臆病者のジョジョ・ラビットだ」と大笑いする。
ジョジョは彼らから逃げて森奥で1人泣いていた。するとそこへ、アドルフがやってくる。アドフルは、ウサギは勇敢でずる賢く強い、ウサギのようになれ、と言う。アドフルの叱咤激励を受け、ジョジョはアドフルと共にアドレナリン全開で再び訓練に向かう。しかし勢い余って説明途中だったキャプテン・Kから手榴弾を奪って走り抜けた結果、手元で大爆発を起こしてしまう。
映画『ジョジョ・ラビット』のあらすじ【承】
意識が朦朧とする中でジョジョは病院へ向かう。ジョジョは片足と顔の半分に大怪我を負ってしまい、合宿訓練にも参加できなくなってしまう。ジョジョの母親であるロージーはキャプテン・Kのところに抗議に赴き、ジョジョは新たにビラ配りなどの事務職に回されることになった。帰り道、ロージーとジョジョが街を歩いていると、絞首刑に処された人たちがぶら下がっているのを目撃する。何をしたのかと問うジョジョに、ロージーは「できることをやったのだ」と返答する。
ロージーが家に帰ってくるのを1人待っていると、2階の、他界した姉のインゲの部屋から物音がする。恐る恐る確認しようとすると、そこにはユダヤ人エルサが匿われていた。ジョジョは驚き、すぐにゲシュタボに通報しようとする。しかし、エルサから通報した時点でジョジョもロージーも死刑になると逆に脅されてしまう。この由々しき問題に親友アドフルは、エルサに親切にするように見せかけて出し抜けとアドバイスする。ちょうど、キャプテン・kが「ユダヤ人は外見ではアーリア人と似ていて判断しにくい」と漏らしていたことを思い出したジョジョは、その日からエルサにユダヤ人の特徴を聞き出そうと奮闘する。その日の夜遅くにロージーが帰宅する。ジョジョは、ロージーがナチスへの忠誠心がないこと、父親が2年間も戦地へ駆り出されていて悲しいことなどをまくし立てる。それに対してロージーは、抑圧から逃れる1番の方法は楽観的でいること、と優しく諭すのであった。
映画『ジョジョ・ラビット』のあらすじ【転】
ジョジョはエルサに質問を投げかけながら自作の「ユダヤ人に関するレポート」に取り組む毎日を送っていた。その中で、エルサは姉インゲの友人であったこと、戦争が終わったら恋人のネイサンとパリで暮らすこと、などを聞き、ジョジョとエルサの間には不思議な交流関係が築かれて行く。
ある日、不要になった鉄の廃品回収のために家々を回っていると、ロージーが辺りを伺いながら玄関前に紙切れを置いているのを見かけてしまう。それには「ドイツに解放を」の印字がされていた。そして、ジョジョの家に突然ゲシュタポのディアッツ大尉が訪れる。最近ユダヤ人による無断侵入が挙げられており、1軒1軒を回っていたのだった。エルサを匿っているジョジョが緊張していると、そこへ突然キャプテン・Kがやってくる。一行が2階へ上がるとそこには、インゲの姿をしたエルサが待っていた。キャプテン・Kに念のため生年月日を聞かれたエルサは緊張した声で答える。抜き打ちテストは無事に終了しゲシュタポは満足そうに帰って行く。そして、キャプテン・Kはジョジョに「家族を守れ」と意味深な言葉を残して部屋を出て行く。実は、エルサの答えた生年月日は間違っていたのだった。
映画『ジョジョ・ラビット』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジョジョが街を歩いていると、足元に青い蝶がひらひら飛んでくる。不思議に思いその後を追いかけると、絞首刑にされた人物の中に母ロージーの姿があるのを確認する。悲しみとショックで家路に就いたジョジョは咄嗟にエルサの肩を持っていた短剣で刺してしまう。しかし、エルサはジョジョを抱き寄せ慰めるのだった。
ドイツは敗戦の一途を辿っており、ジョジョは一端のドイツ軍兵士となったヨーキーと出会う。そして、ヨーキーからヒトラーは既に死んでおり、アメリカなどの連合国が街に迫っているというニュースを聞かされる。その瞬間爆撃音がし、ジョジョ達は頭を押さえる。ミス・ラームからドイツ兵士のジャケットを着せられたジョジョは辺りを見回す。そこにはかつてのヒトラーユーゲントの仲間達が手榴弾を手に敵に飛び出して行く姿、一般市民が兵士に紛れて闘う姿があった。しかし連合国に敵うはずもなく、ジョジョはキャプテン・Kと共に連合国軍に連行されてしまう。キャプテン・Kはジョジョに、家に帰ってお姉さんを守れと言い、突然ジョジョからドイツ兵ジャケットを剥ぎ取ると、「ユダヤ人め」と唾を吐き捨てる。ジョジョをユダヤ人と勘違いした連合国軍はジョジョを解放する。その瞬間ジョジョの背中で銃撃音が鳴り響く。
家に走って戻ったジョジョはもう誰も失いたくない、という思いからエルサをこのまま屋根裏部屋に閉じ込めておこうかと考える。ドイツが勝ったと嘘をつくもエルサの落胆ぶりに罪悪感で一杯になったジョジョは、ネイサンのフリをして「パリで会おう」と手紙を書き、エルサを慰めようとする。しかし、ネイサンは既にチフスで他界していた。ジョジョはエルサと共に玄関の外へ出る。ジョジョにはもうアドフルの存在は必要しなくなっていた。2人は解放を祝して一緒にダンスを踊るのであった。
映画『ジョジョ・ラビット』の感想・評価・レビュー
全ての登場人物が愛おしく思える戦争映画というのは実に珍しいと思う。ヒトラーでさえもワィティティ監督にかかればくすっと笑えてしまう。エンディングで主人公のジョジョはアドルフを蹴り飛ばし、自立への道を進むようにみえる。しかし一歩外から見れば、母親は処刑され父親の安否も未だわからない。間違いなく戦争孤児となる運命が待っている。それでも私達視聴者が希望を胸に抱くことができるのは、ロージーを通してワイティティ監督が「愛は最強」というメッセージを散りばめているからだろう。この映画こそ、語り継ぐことに意味がある作品である。(MIHOシネマ編集部)
ジョジョの不思議な妄想癖からこのお話は始まる。彼の友達は妄想の中のアドルフ・ヒトラーである。彼にとってナチスの兵士になることが、完全なる善であり、それ以外は悪であったが、彼のある意味類いまれなるどんくささによって、完全なる善からは遠ざかっていく。そんな彼が、ユダヤの少女との出会い、母親の死から、妄想の友達とも決別するまでの成長を描いている。描き方はとてもコミカルで、ブラックユーモアを備えたキャラの濃すぎる大人たちによって、本来暗くなるようなお話をある意味明るくしてくれていました。(女性 30代)
戦争とナチスを題材にしているのに、笑いと感動があったことが何よりも驚きだった。絞首刑に処された人がいたり、銃撃戦があったりと悲しい部分もあったのだが、悩みながらも懸命に日常を生きるジョジョの姿に引き込まれた。
ユーモアなシーンがたくさんあったのに、ラストでジョジョとエルサがダンスを踊るシーンは何だか胸がいっぱいになって涙が零れた。そんなに期待していなかったのに、想像以上に素晴らしくて心に深く残る作品となった。(女性 30代)
カラフルで可愛らしい絵本のような世界観はとても一般的な戦争映画のイメージとは結びつかない。心の中のヒトラーとおしゃべりする少年や、家の中に突如現れた少女との甘酸っぱいやりとりは、もはやメルヘンと言ってもいい。
だが、この映画には間違いなく戦争が描かれている。可愛らしさでごまかすことも、豊かな色彩で濁すこともなく。その上で、それに負けない愛だったり、想いだったりが痛烈に描かれているのだ。
色んな意味で自分の中の戦争映画の概念が覆された作品。
物語、キャラクター、世界観、どれをとっても素晴らしい。
主人公の胸の中で蝶が飛び回るシーンの鮮やかさが忘れられない。(女性 30代)
ヒトラーを崇拝する男の子ジョジョの強くて優しくて悲しい物語。10歳の少年がナチスに忠誠を誓うという世界自体が歪んでいると感じてしまいましたが、一つ一つの描写がコミカルで可愛らしくて明るい作りになっているので、戦争に対する悲壮感はあまり感じることはありませんでした。それはジョジョの妄想も影響しているでしょう。妄想の友人であるアルドルフは弱虫なジョジョの強くなりたいという願望から生まれたのだと思います。そのアルドルフと決別し、自分の力で生きていこうとするラストはなんだか切なくて胸がキュッとなりました。(女性 30代)
第二次世界大戦下の市民たちの様子を少しコミカルに演出した戦争映画。それでも痛々しく伝えてくる戦争の現状からは目を背けたくなる。市民とかあんな小さい子も戦わないといけなかったのか?と自分の勉強不足を実感している。
ブラックジョークも交えてコメディっぽい要素も描かれていたけど、母の命がけの反戦活動とかジョジョの成長、全てが心打たれた。サム・ロックウェル演じる大尉のセクシャリティーもさりげなく描写しているとこもこの作品の見所。(女性 20代)
監督のタイカ・ワイティティと言えば自分の中では『マイティ・ソー バトルロイヤル(邦題)』でメガホンをとり、ソーシリーズを一気に盛り上げた人というイメージだった。今作はコメディチックに始まるのはソーと似てはいるが、物語が佳境になりシリアスになると涙腺を刺激して止まらなくなる。
「これ、絶対最後悲惨なことになるじゃん」と予想していたが、意外とさわやかな結末で良かったと胸をなでおろす。演技面では、スカーレット・ヨハンソンの強い母親の演技が素晴らしかった。(男性 30代)
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