日本が世界に誇る名監督となった是枝裕和の待望の新作が誕生。安藤サクラや永山瑛太、田中裕子といった実力派が集結、是枝作品を見事に彩った。坂本龍一が手がけた楽曲にも注目。
映画『怪物』の作品情報
- タイトル
- 怪物
- 原題
- なし
- 製作年
- 2023年
- 日本公開日
- 2023年6月2日(金)
- 上映時間
- 125分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
サスペンス - 監督
- 是枝裕和
- 脚本
- 坂元裕二
- 製作
- 市川南
依田巽
大多亮
潮田一
是枝裕和 - 製作総指揮
- 臼井央
- キャスト
- 安藤サクラ
永山瑛太
黒川想矢
柊木陽太
高畑充希
角田晃広
中村獅童
田中裕子 - 製作国
- 日本
- 配給
- 東宝、ギャガ
映画『怪物』の作品概要
『そして父になる』『万引き家族』『ベイビーブローカー』など、重厚なヒューマンドラマで次々と大ヒットを生み出してきた是枝裕和監督。常に日本の映画シーンを牽引してきた、現在並ぶ者はいないほどの存在となった名監督である。近年彼は活動の場を海外に移しており、実は彼が邦画を手がけるのは、あの『万引き家族』以来となる。元来、繊細な精神描写と深い人間模様を得意としていた是枝監督。数々の海外フィルムメーカーとのタッグを経て、その経験がどのように活かされているのだろうか。脚本を務めるのは坂元裕二。『カルテット』、『大豆田とわ子と三人の元夫』、『Mother』など、彼がこれまでに手がけてきた作品のラインアップを見れば、彼がいかに実力のある脚本家であるかが分かるだろう。最強のタッグ、ここに誕生。
映画『怪物』の予告動画
映画『怪物』の登場人物(キャスト)
- 早織(安藤サクラ)
- 子供を大切に想うシングルマザー。
- 保利(永山瑛太)
- 湊や依里らの担任。子供を大切に想う心優しい教師。
- 湊(黒川想矢)
- 早織の息子。
- 依里(柊陽太)
- 湊の同級生。
映画『怪物』のあらすじ(ネタバレなし)
舞台は、湖の近くにひっそりと存在する郊外の町。そんな街では穏やかな時間が流れており、人々は静かな暮らしを満喫していた。しかし、ある時学校で喧嘩が勃発してしまう。子供達同士の喧嘩というありきたりな出来事ということもあり、当初大人達はそれほど事態を深刻に考えていなかった。しかし、話を聞けば聞くほど、事件に矛盾が生じてくる。そして、不可解な事件はどんどん大事になっていき、何とマスメディアを巻き込んだ大ニュースとして報じられてしまったのだ。さらには、町の子供達が忽然と姿を消してしまう。一体子供たちはどこに消えたのか、そして、この小さな町に何が起こっているのか。この町には『怪物』が潜んでいる。
映画『怪物』の感想・評価
坂本龍一の遺作
『教授』という相性で親しまれた音楽家、坂本龍一。そんな教授の訃報が、2023年3月世界中を駆け巡った。晩年まで精力的に活動を続けていた坂本龍一であったが、惜しくも、本作が坂本龍一の遺作となったのだ。彼が手がけるポップでありながらも、クラシックが根底にあるためかどこか神秘的な唯一無二の楽曲達。そんな美しい旋律が、最新作の持つ不思議な魅力をより際立たせる。坂本龍一の手がけた音楽の盛り上がりに合わせて「怪物だーれだ」という子供の声で終わる映画のプロモーションビデオには、多くの視聴者が心臓を鷲掴みにされた気持ちになったのではないだろうか。映画館の魅力である最高級の音響設備で、最後の坂本龍一ワールドを堪能したい。
女優、安藤サクラ
近年、安藤サクラに大きな注目が集まっている。NHKテレビ小説のヒロインや、映画『ある男』での主演、テレビドラマシリーズでの主演など、彼女を見ないクールはないと言ってよいほど。中でも、『ある男』では日本アカデミー賞主演女優賞を受賞するなど非常に高い評価を得た。また、その際に行った仕事とプライベートの両立に関するスピーチが多くの者の心をうったことも記憶に新しい。仕事だけではなく、私生活では俳優柄本佑と結ばれ、2人の間には女の子が誕生するなど順風満帆。そんな彼女が挑む是枝裕和作品。国内では確かな実力、人気、知名度を誇る安藤サクラが、もしかすると本作をキッカケに海外へと羽ばたいていくといったこともあるかもしれない。
オーディションを勝ち抜いた子供達
本作は子供のいじめがテーマということもあり、出演する子役の演技が作品の出来を大きく左右する。そんな大きなプレッシャーの中選ばれた2人の子役達。彼らは2人とも厳しいオーディションを勝ち抜きこの役を手に入れた実力派。意外にも、そのうちの1人である柊木陽太はなんと本作が映画初出演となる。映画初出演で是枝裕和の重要キャラクターを演じるという、まさにシンデレラボーイとも呼ぶべき存在なのだ。柳楽優弥や安達祐実、芦田愛菜など、天才子役として注目を集め、今も尚数々のヒット作に出演し続ける俳優は多い。本作への出演を決めた子役達も、彼らのように今後日本を背負って立つ役者となっていくのかもしれない。その始まりとなる一歩を是非チェックしておこう。
映画『怪物』の公開前に見ておきたい映画
万引き家族
是枝裕和監督という名前で思わず本作を思い浮かべてしまうことは仕方がないことだろう。勿論、その他にも彼が残した名作は数多くあるのだが、本作が成し遂げた功績はあまりにも大きい。あのカンヌ国際映画祭の最高賞である、パルム・ドール賞を獲得したのだ。日本人監督作品が本賞を受賞するのは21年ぶりの快挙であり、国内だけでなく海外においても本作は非常に高い評価を受けた。主人公となるのはとある家族。しかし、彼らは普通の家族とはかけ離れていた。5人家族である彼らの資本金は、祖母の年金とそれぞれが万引きして賄っていた。さらには、祖母を独居老人ということにしていたため、残りの家族は地下で周囲に見つからないように息を潜めて生きていたのだ。それでも尚、彼らは幸せだった。しかし、そんな幸せは1人の少女を保護したことで少しずつ崩れていく。
詳細 万引き家族
告白(2010)
子供達によるいじめ問題。非常に心苦しいことではあるが、全国的に多発していることもまた事実である。最新作も本作も、子供達のいじめ問題がキッカケとなり更なる壮大な事件に発展していってしまう。港かなえによる大人気小説を原作とし、松たか子の熱演が非常に高く評価された。その結果、その年の日本アカデミー賞では最優秀作品賞を始めとし、あらゆる賞を総なめ。テーマがいじめということもあり、心が痛むシーンはあるものの、息をつく間もない展開の連続に思わず見入ってしまう。森口悠子は、とある中学校の担任教師。ホームルームの時間、自分の娘がこのクラスの生徒に殺害されたことを独白し、全てが動きだす。
詳細 告白(2010)
戦場のメリークリスマス
前述したように坂本龍一は日本人ならば誰でも知っている、また、世界のアーティストからもリスペクトされていた偉大な音楽家。実は彼は、役者としても活動していた時期がある。その代表作こそが本作であろう。後に何作かの映像作品に出演することになる坂本だが、本作が俳優としてのデビュー作。勿論、坂本は役者としてだけではなく音楽家としても本作品に携わっている。手がけた主題歌は作品を見事に彩っただけでなく、その圧倒的な完成度から英国アカデミー賞作曲賞も受賞。坂本龍一だけでなく、ビートたけしなどユニークなキャスティングを行い大成功を収めた意欲作。坂本龍一の逝去にあたり、リバイバル上映も行われる予定のため是非チェックしたいところ。
詳細 戦場のメリークリスマス
映画『怪物』の評判・口コミ・レビュー
「怪物」(2023年)
是枝監督と世界のサカモト2人がタッグを組んだカンヌ脚本賞受賞作。誰もが心に抱える《怪物》をテーマに、是枝裕和の盤石の演出、坂元裕二の計算された3部構成、坂本龍一の切な過ぎる音楽が融合した傑作。特に柊木陽太は鳥肌が立つほど魅力的。私はスクリーンに釘付けになった pic.twitter.com/YFiLUVjtJP— 宮岡太郎@映画レビュー (@kyofu_movie) June 4, 2023
映画「怪物」
知らないうちに加害者となってしまう恐ろしさ。私達が怪物だったのではないだろうか?
誰しもが知った気で、穿った見方ができず、自身の価値観だけの偏見で憶測していく。
三者三様で見方が異なる世界観と、情感に寄り添った音楽、心情を映す風景、さまざまが見事です!
余韻が…#怪物 pic.twitter.com/5W3EYmKa5M— 映画のある人生が必要なんです (@sutatyan) June 5, 2023
#怪物 開始早々、「ボクにはブタの脳みそが入っている」と奇妙な会話、学校では教員たちの不可解な行動と不信感や憤りからぐっと物語にひき込まれる。
靴の謎、体罰の真実、飛び降りの動機など視点が変わり明らかになる展開に集中の意図が常に切れない、本当に秀逸な映画だった。 pic.twitter.com/61V0kQ3Mnk— Kenya (@kny2367) June 5, 2023
映画「怪物」久しぶりに邦画にガツンとやられました…前半はずっと苦しくて、途中で少し穏やかになり、エンドロールで訳もなく涙が溢れた。私たちが見ている世界や情報は、いつだって本当に小さな断片に過ぎない。無意識の加害で誰もが誰かの怪物になり得るということ。 pic.twitter.com/WAg3RdSGLh
— sena (@_musena) June 3, 2023
『怪物』坂元裕二脚本/是枝裕和監督でカンヌの脚本賞を受賞した話題作。私も途中までは、幾つかの違和感こそ覚えたものの緻密な話術にグイグイ引き込まれ、これは是枝映画の最高傑作になるかもしれないと思った。ところが後半で失速して退屈な話の畳み方になり、釈然しない思いが残った。 #怪物 pic.twitter.com/CvQE8QTtIJ
— ぼのぼの (@masato009) June 3, 2023
映画『怪物』のまとめ
是枝裕和監督の名を一躍有名にしたのが、カンヌ国際映画祭でのパルム・ドール賞受賞。21年ぶりの快挙に日本中が沸いたことは記憶に新しい。本作も、2023年カンヌ国際映画祭への出品が決定済み。当然、これまでに2度パルム・ドールを受賞した日本監督は存在しない。それだけ、受賞することが非常に困難な賞なのだ。最高のキャスト、最高のシナリオ、最高の音楽で挑む本作。そんな唯一無二の作品で、再びパルム・ドール賞を手にし、新たな歴史に名を刻むことができるか。国内外問わず注目が集まる一本。
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