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映画『海峡(1982)』あらすじとネタバレ感想

映画『海峡(1982)』の概要:「海峡」は、1982年の日本映画。監督は「日本沈没」、「八甲田山」の森谷司郎(もりたに しろう)。撮影は数々の名作でカメラを取った木村大作。主演は高倉健。共演は森繁久彌、吉永小百合、大谷直子、大滝秀治、笠智衆、三浦友和など日本映画を代表する豪華キャストが名を連ねている。1982年の文部省特選映画。

映画『海峡』 作品情報

海峡

  • 製作年:1982年
  • 上映時間:95分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
  • 監督:森谷司郎
  • キャスト:高倉健、吉永小百合、三浦友和、大谷直子 etc

映画『海峡』 評価

  • 点数:60点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

[miho21]

映画『海峡』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『海峡(1982)』のあらすじを紹介します。

1954年(昭和29年)の9月26日、台風接近に拘わらず誤った気象判断での出航により、函館の海で遭難した洞爺丸他4隻の遭難(洞爺丸事故)など、航路の安全を改めて認識せざるを得ない事故が相次いで発生し、青函トンネルの必要性が叫ばれていた。
地質学の専門家である当時の国鉄職員、阿久津剛(高倉健)は、青函トンネルを実現するための地質調査で青森県の竜飛岬へ訪れた。 彼はそんな中、強風が吹き荒れる岸壁から身を投げようとしている女、牧村多恵(吉永小百合)を引き留め、思い留まらせて連れ帰り、知り合いの居酒屋へ世話をする。そして居酒屋の女房が出産するのを機に再び生きる気持ちになった多恵は、単身赴任で訪れていた阿久津の身の回りの世話を始めるようになった。

やがて一年半が過ぎ、国鉄の人事で阿久津が本四連絡橋工事への着手のため四国へと転勤になり、当時の国鉄総裁の方針などで、青函トンネルは計画の進まない時期を迎える。阿久津はその間に父の才次(笠智衆)の進めもあり、岡山で佳代子(大谷直子)と結婚し一児を授かるも、その知らせを受けた多恵は悲しみに暮れる。

4年が経ち、国鉄総裁の交代により計画も再び進み始め、阿久津も竜飛岬に戻った。そしてトンネルのスペシャリストたちが、日本中から大挙して青森に集まってきた。老齢のトンネル師・源助(森繁久彌)も、10万年前マンモスが歩いて渡った道をもう一度作る、と阿久津から説得され参加を決意する。

やがて綿密な計画の下、工事が開始される運びとなった。工事の開始早々、寒風吹きすさぶ足場の悪い現場で職人の死亡事故が起こり、本工事が始まってからの度重なる出水や落盤事故で作業は困難を極めて行く。2か月で5メートルしか進まない状況の中、源助との間にも軋轢が生じ、一時は青森に来ておりながら、岡山へ帰った妻子の近況報告も併せ、阿久津は思い悩む。それでも揺るがない阿久津の信念に源助も心を動かされ、作業員達は一丸となって津軽海峡の海底へと挑んでゆく。いつしか調査線の底1,315メートルに到達し、トンネル計画も国から正式に認可され、本線の工事にも多くの民間企業が参加して工事は進み始める。

ねぶた祭で青森が賑わう中、阿久津に父の危篤の知らせが届く。そして帰郷の準備をしていた阿久津は、かつて無い大量の出水事故の報告を受ける。事故現場はポンプの能力限度を超え、坑内は海水で埋め尽くされて行く。そしてすぐさま届いた父の訃報。そこから阿久津は大一番の危機回避策を決行する。

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映画『海峡』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『海峡(1982)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

青函トンネル工事で起こった様々な人間ドラマ

日本という国は狭いようで広いのだとつくづく感じる作品である。北海道のように寒い国から、沖縄のような常夏に近い環境まで、島ばかりで構成された国土である。しかも地震多発地帯で行き来する手段も近年になってようやく整備されてきた。関門トンネルと青函トンネルは日本を縦に繋ぐ重要な工事であったが、青函トンネルは、全長は53.9kmという現在で世界最長の海底トンネルであり、その中でも地形や海流などの複雑な環境に阻まれながら、四半世紀も続く難工事の中、殉職者は34名にも及んだ。国を挙げての壮大なプロジェクトを描いた主人公として、高倉健以外の適役はいなかっただろう。サポートする大滝秀治や笠智衆の円熟味は言うに及ばず、小林稔侍や阿藤海といった、今ではベテラン俳優もまだ若く演技も新鮮である。そして何よりドラマに華を添えた、吉永小百合と森繁久彌の演技が何とも言えず美しく際立っている。ラストシーン前での一幕。全ての工事を終え、居酒屋で無言の杯を酌み交わす、健さんと吉永小百合のツーショットは涙無くして観られない。

健さんには雪国が似合う

1976年に東映を独立以来、日本映画の大作に輝かしい名演技を残してきた健さんだが、「八甲田山」、「幸福の黄色いハンカチ」、 「冬の華」、 「駅 STATION」と雪国を舞台にした作品が多く観られるようになってきた。どういった理由があるのかは知る由もないが、それ以降の映画でも、雪の降るシーンでの高倉健は、一枚の絵画作品のような姿で目に焼き付いているのだ。本作でも青森県の極寒風景の中、物言わぬ健さんの立ち姿が随所で木村大作のカメラワークによって描かれている。物語の中で無言の名シーンを演出する希有な存在であり、これほど雪の似合う俳優はいないであろう。


高倉健と言うと、無骨で寡黙な男というイメージがありますがどの作品を見てもそのイメージが崩れることはありません。口よりも行動で示す、俺の背中を見ろ、ついてこいと言わんばかりの男らしさは今作でも健在でした。
高倉健の演技には独特な雰囲気がありますが、どんな作品でも違和感が無いのでそれこそが彼の魅力なのでしょう。
吉永小百合と酒を酌み交わす居酒屋でのシーンは男と女の切なさと哀愁を感じられ、胸にグッときました。(女性 30代)

映画『海峡』 まとめ

物語の内容はどうあれ、健さんの演技には理解出来ないような存在感が充満している。工事現場で亡くなった職人の墓前で森繁久彌とのやりとりの中、そらを見上げる後ろ姿だけで悲しみを瞬時に表現してしまう。その後ろ姿がセリフなど必要ない圧倒的なリアル感で迫ってくるのだ。森繁久彌と吉永小百合という日本映画を代表する二人の俳優を相手にしても、全くその個性が色褪せることはなく、二人のオーラをも飲み込んでしまわんばかりの無言劇で存在感を見せつける。本作の健さんは以外と饒舌な役回りだが、そういった無言の演技を観て感動するシーンも含まれており、物語の壮大さに併せ役者の個性も堪能できる物語になっている。

みんなの感想・レビュー

  1. 島崎浩一 より:

    何十年ぶりかで海峡を観た。青函トンネルという大難関工事の壮大なサクセスストーリーであると同時に、配役の全員がそれぞれの内面を見事に描いた作品である。黒部の太陽ほど派手さは無いが、ドキュメンタリー、フィクション、ノンフィクションの枠組みを超え観る者を深い海の底に引きずり込むが暗くはならない。
    やはり健さんは八甲田山、黄色いハンカチ、任侠何をやっても同じキャラなのに、それぞれの役を完璧に演じきっている。脇役陣の豪華さもあるが健さん最高。