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映画『火宅の人』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『火宅の人』の概要:壇一雄の自伝的小説を映画化した作品。「蒲田行進曲」や「仁義なき戦い」で知られる深作欣二が監督を務めた。女優と同棲したり、女性と放浪の旅をしたりと、妻子を顧みず思うままに生きる作家を描いている。

映画『火宅の人』の作品情報

火宅の人

製作年:1986年
上映時間:132分
ジャンル:ラブストーリー
監督:深作欣二
キャスト:緒形拳、いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子 etc

映画『火宅の人』の登場人物(キャスト)

桂一雄(緒形拳)
作家。妻子がいながら女優の恵子との同棲生活を始めたり、当てのない旅に出たりと奔放な生活を送っている。恵子に別れを告げられ、家に戻ることになる。
桂ヨリ子(いしだあゆみ)
一雄の妻。一雄が考えていることや、隠れて行っていることをすべて見抜いている。一雄の浮気が原因で一度家を出るが、子供たちの世話をするために帰ってきた。
矢島恵子(原田美枝子)
新劇女優で、一雄の不倫相手。率直で気が強い。一雄との結婚を望んでいたが、最後には別れる。
葉子(松坂慶子)
スナックで働く女性。怪我をしている一雄を助けた。その後再会し、一雄の当て所ない旅に加わる。華僑との結婚のため、シンガポールへと旅立った。

映画『火宅の人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『火宅の人』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『火宅の人』のあらすじ【起】

作家の桂一雄は、後妻のヨリ子と5人の子供たちと共に暮らしている。長男の一郎は前妻との子だが、ヨリ子は分け隔てなく育ててくれていた。一雄は、10年ほど前に知り合った矢島恵子という女性に好意を抱いていた。一雄と同じ九州出身で駆け出しの新劇女優である恵子は、紹介状を持って一雄の元を訪れた。恵子の率直さに一雄はすぐに惹かれていき、原稿の清書なども手伝わせるようになる。恵子に想いを伝えることはせず、一雄は家族との生活を続けていた。

しかし、息子の次郎が日本脳炎に罹ったことをきっかけに、事態は変わり始める。次郎は一命を取り留めたものの、言語障害と手足の麻痺が残った。怪しげな宗教に縋るようになったヨリ子は、毎晩眠る次郎の隣で祈祷を行っている。一雄は今の生活に限界を感じ始めていた。

そんな折、太宰治の文学碑の除幕式が青森で行われることになり、一雄は恵子を連れて行くことにする。一雄が幼い頃、母親が大学生と恋に落ち、神経衰弱の父親と妹たちを置いて去っていった。そんな母親を恨んでいたはずだが、一雄自身も妻子を顧みず別の女性と旅に出るのだった。除幕式では一雄が太宰を偲んで書いた詩を恵子が朗読し、一雄は太宰と過ごした日々に思いを馳せた。その晩、恵子も一雄を慕っていたことがわかり、2人は想いを伝え合った。

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映画『火宅の人』のあらすじ【承】

自宅に戻った一雄は、恵子とのことをヨリ子に報告した。ヨリ子は驚きもせず、知っていたと言った。そして翌朝、ヨリ子は荷物をまとめて家を出て行った。使用人と看護婦に子供たちを任せ、一雄はその日からホテルに籠もった。部屋に恵子が訪れている間だけは現実から逃れることができた。その頃、一雄は恵子との不倫を題材にした小説を連載していた。一週間が過ぎても、ヨリ子からの連絡はなかった。

一雄が子供たちと共に家へ戻ったある嵐の晩、突然ヨリ子が帰ってきた。子供たちの世話をしながら生きていく覚悟を決めたのだと言う。ヨリ子が帰ってきたのを良いことに、一雄はまたすぐに家を出ていった。そして、浅草のアパートで恵子との暮らしを始めた。

ある日、一雄と恵子が帰宅すると部屋の前に人だかりができていた。留守の間に泥棒が入ったのだ。犯人は一郎で、すでに自首をしていた。警察署では、父親への甘えと浮気相手への嫌がらせが主な動機だろうと説明される。一雄は一郎を連れて食事をした後、再び浅草のアパートへ帰った。

映画『火宅の人』のあらすじ【転】

恵子の妊娠が発覚した。産みたいという気持ちがありながらも、女優としての正念場を迎えていた恵子は中絶することを決意する。一雄に手術への立会いを求めたが、締め切りに追われている一雄は断った。憤慨した恵子は当分帰らないと言って出て行ってしまった。

その直後、一雄は島村という曰く付きの人物が恵子を溺愛しているという噂を編集者から聞く。
一雄は嫉妬に駆られ、締め切りが迫っているにも関わらず編集者を飲みに連れ出した。泥酔した一雄は島村の元へ行くと言って店を飛び出し、道中で通行人に喧嘩を売り殴り合いになる。目覚めると、怪我をした一雄を介抱してくれた葉子という女性の部屋にいた。

右手を負傷した一雄はヨリ子に原稿を口述筆記させ、締め切りまでに仕上げた。ヨリ子は子供たちの世話で疲労困憊していた。その様子を見て、一雄は次郎を施設に預けることを決める。次郎を送り届けた一雄とヨリ子が施設から去るとき、次郎は涙を流しながら2人を見つめていた。

浅草のアパートに戻ると、恵子が手術を終えて戻ってきていた。ヨリ子に原稿を手伝ってもらったことを話すと、恵子は不機嫌になった。その態度に苛立った一雄が島村のことを問い質し、取っ組み合いの大喧嘩が始まる。泣いている恵子を置いて、一雄は部屋を出て行った。

一雄は東京を離れ、連載小説だけは書き続けながら九州各地をさまよった。そして、五島列島行きの連絡船で葉子と再会した。故郷へ帰るところだと言う葉子に、一雄も同行させてもらうことになる。葉子には、義父に妊娠させられたという過去があった。一雄が出発する日、見送りに来ていた葉子も船に飛び乗り、それから2人は当て所もなく旅を続けた。クリスマスの日、葉子は華僑から結婚を申し込まれていることを一雄に告げる。これまで先延ばしにしていたが、旅をしているうちに踏ん切りがついたのだと言う。次の日の朝、一雄は葉子と別れた。

映画『火宅の人』の結末・ラスト(ネタバレ)

大晦日、一雄は自宅へと戻り、家族や友人たちと正月を祝った。途中で抜け出して恵子の元へ行くと、新しい恋人と思しき男性が来ているところだった。男性はすぐに帰り2人きりになったが、ヨリ子から電話が掛かってくる。次郎が死亡したとの報せだった。

葬儀を終え家に帰ると、恵子から一雄の所持品が送り返されてきていた。一雄はアパートの部屋を訪ねた。恵子が部屋の片付けをしていて、ほとんどのものがすでに運び出されていた。恵子は2人で撮った写真を一雄に渡し、別れを告げる。酒を酌み交わし、一雄はアパートを後にした。

帰り道、もらった写真を破いて川に捨てた。そこへヨリ子と子供たちがやってくる。ヨリ子は買い物に行くところで、子供たちはその見送りに来ていた。一雄は、当分家にいることにするとヨリ子に伝える。振り返って微笑んだヨリ子には、一雄がそう言い出すこともすべてわかっていた。子供たちと戯れながら、一雄は家への道を歩き出した。

映画『火宅の人』の感想・評価・レビュー

一雄があまりにも身勝手で、共感するのは難しかった。子供たちは幼いながらも父親の浮気を理解し嫌がっているので、かわいそうだった。きっとまた女性と出て行くのだろうが、最終的にはヨリ子の元へ戻ってくるのだと思う。ヨリ子役のいしだあゆみの存在感は圧倒的だった。一雄を見るときの、すべてを見透かしているような表情が特に印象に残っている。原田美枝子や松坂慶子は最近のドラマなどでよく見かけていたので、若い頃の姿に少し驚いたが、とても美しかった。(MIHOシネマ編集部)


クズ夫とそんな夫の行動を全て見抜いているできた妻の長い長い「愛」の物語でした。緒形拳演じる一雄は妻子を持ちながら浮気をし、女と旅に出てしまう自由気ままな男。どう考えても「クズ」なのに、彼の行動を全てお見通しの妻ヨリ子は彼を責めたり、咎めることをしませんでした。
最終的には家族の元に帰ってくる一雄でしたが、ヨリ子はそれをも分かっていたような顔。誰にも共感できる部分が無いので感情移入は出来ませんでしたが、変わった「愛」の形もあるのだなと感じました。(女性 30代)

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