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映画『風が吹くまま』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『風が吹くまま』の概要:「珍しい儀式」が行われるという小さな村に取材目的で出向いたテレビクルー。しかし予想していた通りにはいかず、必然的にできた村人と交流する時間を紡いでいく一作。アッバス・キアロスタミ監督作。

映画『風が吹くまま』の作品情報

風が吹くまま

製作年:1999年
上映時間:118分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:アッバス・キアロスタミ
キャスト:ベーザード・ドーラニー、ファルザド・ソラビ、バフマン・ゴバディ etc

映画『風が吹くまま』の登場人物(キャスト)

ベーザード(ベーザード・ドーラニー)
クルド人村・シアダレでのみ行われる葬儀の取材のため村を訪れたテレビクルーの代表。村人たちの日常を覗きながら実りある取材を進行しようとするが、村の不便さも相まって思い通りにいかず奮闘する。
ファザード(ファザード・ソラビ)
叔父が町へ行ってしまったため、代理でベーザードたちの案内役を請け負った少年。ベーザードたちが村を訪れた本当の理由を唯一明かされている存在。

映画『風が吹くまま』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『風が吹くまま』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『風が吹くまま』のあらすじ【起】

舞台はイラン北部の田舎町。山肌を曲がりくねった道を走り抜ける1台の車。人気のない道のりだが、「ある1本の大きな木」を目指す車内では道を尋ねる人を探している。乗車しているのはテレビクルーの男性たちである。

道案内役の少年・ファザードをようやく見つけたテレビクルーたち。ファザードが暮らすクルド人村・シアダレまではまだ道のりが続くという。ファザードを乗せた車では「我々の目的は村人に内緒だ」と約束が交わされていた。

ファザードの母親はテレビクルーたちの目的は「宝探し」だと聞かされていた。数人の男が2泊することを聞きつけ、寝泊まり用に2部屋用意していた。

テレビクルーたちの本当の目的は「独特の葬儀の取材」である。死に直面しているファザードの祖母の様子をチェックする。暇を持て余しているベーザードは、ファザードの登校についていくことにした。

ファザードから村の様子を聞き出したベーザード。車に戻り村の様子を撮影しようとするが、車内に置いていたはずのビデオカメラが無くなっている。仕方なく、カメラを手に写真を残すことにした。

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映画『風が吹くまま』のあらすじ【承】

仕事の電話を受けようにも、電話回線が通っていないこの村は電波が悪い。車を走らせて高台に出たところでようやく通話が可能になる環境であった。

村人たちの何気ない会話を聞き続けたベーザード。村には老人と子供ばかりが溢れている。学校帰りのファザードと鉢合わせたベーザードは、おばあちゃんの病状を伺い「魔法のスープが飲めなかった」という話を聞きつけ死期が近いと勘繰るのだった。

村の若者たちは収穫時期のため、皆畑に出ているとファザードの母親は話す。スタッフの朝食用に牛乳を欲しがったベーザードだが、村には牛も羊もおらず牛乳を飲む習慣はないと一蹴されてしまう。

電話が鳴るたびに車を走らせて高台に向かうベーザード。出会う村人と何気ない会話を交わしていく。松葉つえをついた青年を見かけ、ベーザードは声をかける。その青年はファザードの担任で、ベーザードたちの本当の目的を知っていた。青年は村社会故の因習について語る。村独自の葬式は「貧しさ」が起因するとベーザードに説いたのだった。

映画『風が吹くまま』のあらすじ【転】

ベーザードはファザードからやかんを借りて、カルクマンドという女性の自宅へ牛乳を分けてもらいに出向いた。

停電してしまっている牛舎で働くカルクマンドの娘。娘はある詩人について語りだすベーザードの話に耳を傾けながら搾乳を始める。ベーザードから料金を受けとった母親を叱り、無料で牛乳を手渡すのだった。

見通しも立たない中で漫然と「その時」を待ち続ける呑気なベーザードの姿に、同行したスタッフたちはしびれをきらし始めている。はぐらかすベーザードだが、頼りにしていたファザードの叔父が村を離れてしまっていた誤算を悟られたくなかったのだ。

スタッフたちとひと悶着つけたベーザードは、また車で高台を目指しボスからの電話を受ける。ボスからも取材の打ち切りを告げられ、怒りを抑えきれないベーザード。足元に居た亀に八つ当たりをした。

高台からの帰り道、ベーザードの車は羊の大群と鉢合わせる。シープドックに煽られ懸命に走る羊たちを横目に、悶々としたままのベーザードは車を走らせる。

映画『風が吹くまま』の結末・ラスト(ネタバレ)

ベーザードたちとの約束を破ってしまったファザードは正直に申し出た。反省の色を見せるファザードに対して、ベーザードは「人は働きすぎるとオーバーヒートするんだ」と村を離れた叔父さんをかばうように話を聞かせた。

再び高台で電話をしていたベーザードは墓地の近くで作業をしていた男が生き埋めになった瞬間を見てしまった。必死になり助けを呼び集めるベーザード。男は無事に救い上げられ、町の病院へと運ばれる。ベーザードは付き添いの村人たちに車を貸し出した。

村の医師のバイクに乗せてもらい宿泊先へ戻ったベーザード。スタッフたちはベーザードを置いて村を離れていた。一人でも取材を続けるつもりのベーザードは、カメラを片手に車を走らせる。

村の女性たちの写真を撮ったり、話をして過ごしたベーザード。時間を惜しみながら働く村人たちに「暇は人をダメにする」と語る。

2週間ほど村に滞在したベーザードは、高台で村人にもらった動物の骨を小川に放流し、大きな収穫は得られなかったものの、満足感に満たされながら村を離れるのだった。

映画『風が吹くまま』の感想・評価・レビュー

田舎町での伝統の儀式をエンターテインメントのひとつとして消化しようとしていたテレビクルーたち。しかし表情を見ることができるのはベーザードただ一人である。不便にも思える電波環境や食料調達方法。村人からすれば当たり前となっていることだが、外から来たテレビクルーたちからすれば不便でしかない。それでも郷に入っては郷に従えと言わんばかりに慣れていくベーザードの様子が滑稽である。「死を待つ」時間ながら、言葉のユニークさや反復の滑稽さを嗜める一作であった。(MIHOシネマ編集部)

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