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映画『ポップ・アイ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ポップ・アイ』の概要:一世を風靡した建築家だが、時代の変化と共に居場所を失っていった中年男性。幼い頃に飼っていた象と再会し、故郷へ返すために果てしない旅を始めることにする。サンダンス映画祭など、各所で話題を集めたロードムービー。

映画『ポップ・アイ』の作品情報

ポップ・アイ

製作年:2017年
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:カーステン・タン
キャスト:タネート・ワラークンヌクロ、ペンパック・シリクン、チャイワット・カムディ、ユコントーン・スックキッジャー etc

映画『ポップ・アイ』の登場人物(キャスト)

タナー(タネート・ワラークンヌクロ)
一世を風靡した一流の建築家。しかし時代の流れに逆らうように世間からも家族間でも孤立してしまう。偶然見かけた象を、幼い頃に飼っていた象だと思い込み旅を決心する。
ボー(ペンパック・シリクン)
タナーの妻。威厳のあった頃のタナーは自慢の夫だったが、年々気持ちが離れ始めている。タナー以外の男性との関係もあり、隠そうとしていたがタナーに気付かれてしまう。
ディー(チャイワット・カムディ)
タナーが旅の途中で出会ったホームレスの男性。占いで生計を立てていたが、廃墟と化したガソリンスタンドに身を寄せている。兄を追って命を絶とうとしていたところでタナーに救われる。

映画『ポップ・アイ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ポップ・アイ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ポップ・アイ』のあらすじ【起】

車が行き交う道路の端に佇む、一人の男・タナーと一匹の象。男と象はゆっくりと歩き始める。大きなトラックが来るのに気付いたタナーは運転手に交渉を始める。

目的地の故郷・ルーイは程遠いが、見事に交渉に成功したタナーは荷台に像を乗せて目的地まで送り届けてもらうことになった。詳しい事情を聞こうとはしない運転手。「こっちのほうが近道だ」とタナーの見知らぬ道を走り続けた。

いつの間にか寝入ってしまったタナー。目を覚ますと運転手は怪しい内容の電話をしている。そして目的地とは全く違う方向に進んでいることに気付き、タナーはトイレに行きたいと申し出た。

ひとまずトラックから降りたかったタナーだが、運転手は使用済みの容器を手渡す。タナーはびっくりして思わず容器に入った運転手の小便を助手席にこぼしてしまった。運転手は激怒し、タナーを力ずくで車から降ろすのだった。

タナーは一流建築家として一時代を築いた。バンコクの有名なビルはタナーが携わったものばかりである。しかし、時代の流れには逆らえず侘しい思いをする日々が続いていた。

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映画『ポップ・アイ』のあらすじ【承】

タナーは妻・ボーの浮気にも勘づいていた。しかし、誤魔化そうとするボーに悶々とした感情を募らせている。ある日タナーは幼い頃に飼っていた象のポパイを見かける。「チャーン・ビール」と名付けられたポパイは象使いに鞭を打たれながらショーに出ていたのだ。

衝動的にポパイを買い取ったタナー。自宅へ連れ帰るもボーは戸惑い、家を出ていってしまった。唯一の生きがいを失ったタナーは、ポパイと一緒に故郷を目指すことにする。

寂びれたガソリンスタンドに立ち寄ったタナー達。ここでホームレスのディーと出会う。「まもなく兄を追って天国に行く」と話すディーに対して、タナーは「食べることも話すこともできるなら大丈夫」と励ましスーパーへ食事の買い出しに連れ出すのだった。

ポパイを駐車場につなぎディーと食事をとるタナー。ディーには心に決めた女性が居ると知り、タナーは携帯電話と少しのお金を渡すのだった。

外が騒がしいことに気付いたタナー。ポパイが逃げ出してしまっていた。ディーに別れを告げ、タナーはポパイを探しに向かう。

二人の警官がポパイに銃を向けているところに鉢合わせタナー。慌てて事情を説明し、許可証も差し出すが本物とは信じてもらえなかった。タナーとポパイはパトカーに見張られながら、離れた場所にある動物保護センターに向かうことになる。

炎天下で歩き続けたタナーは倒れ込んでしまう。ポパイが水を吹きかけ、タナーは意識を取り戻すが警官の配慮でその日は近くのバーで休むことになる。

映画『ポップ・アイ』のあらすじ【転】

バーには乱れた装いのジェニーもいた。トランスジェンダーであるジェニーは肩身の狭い思いばかりしていて、その日もお客に付き明けされ一人で飲み明かしていたのだ。俯いたジェニーの姿に共感したタナーは心を通わせることとなる。

ジェニーの協力もあり、警官の目を盗み逃げ出したタナーとポパイ。道中、血を流し倒れ込んでいるディーを見つける。

出会ったときと見違えるような、綺麗な装いのディーはバイクで事故を起こし、命を落とした。 偶然ディーのポケットから着信音が鳴り響く。代わりに電話に出たタナーは、ディーが話していた女性・ジャーと話をする。

タナーは携帯電話を取り戻し、ディーの遺体を火葬してもらうことにした。遺骨はジャーに託すことに決める。

すでに結婚し、子供も授かっていたジャーだが、ディーの遺骨を受け取った。タナーを連れ納骨をするのだった。

ジャーと別れる時、ポパイの足に大きな怪我があることに気付く。大量の出血をした状態で歩かせるわけにもいかず、ジャーの父親が貸してくれたトラックの荷台にポパイを乗せ走り出すのだった。

映画『ポップ・アイ』の結末・ラスト(ネタバレ)

どこか緊張した面持ちのタナーは、ついに故郷・ルーイに到着した。しかし、タナーが知っている村はもうそこにはなく、大きく変わってしまっていた。

タナーが幼い頃、バラック小屋にはたくさんの子供が集まっていた。子供たちの面倒を見るのはピアック叔父さんである。

タナーも他の子供たちも、テレビで流れるアメリカのアニメ『ポパイ』に夢中だった。タナーはアニメの影響を受け、飼っていた象にポパイと名付けたのである。

幼い頃に遊んだバラック小屋は高級マンションへと形を変えていた。ピアック叔父さんも家族と一緒にこのマンションに身を寄せている。

「どうして土地を売ったのか」と尋ねたタナーに、ピアック叔父さんは「都会に身を売り、ポパイを売ったのはお前だ」と厳しい言葉を返す。この環境ではポパイは暮らせないと悟ったタナーは象の保護地区にポパイを託すことに決める。

叔父さんの家を後にしたタナーだが、トラックがパンクしてしまう。タイヤ交換を手伝ってくれた叔父さんは、不意に「あれはポパイではない」と明かす。実は数年前、ポパイを買い取った象使いからポパイが亡くなった知らせを受けていたのである。

目標を失ったタナーだが、見知らぬ象を保護地区まで送り届けることにする。しかし、象は翌朝姿を消してしまった。

タナーはバンコクへ戻り、ボーとの生活に再起をかける。タナーが建設に関わった新しい高層ビルの落成式に出向くことになった日、タナーとボーは思い出のあるビルに立ち寄る。廃墟と化したビルだが、タナーが建てたビルの最上階から新しいビル群を見下ろし二人は物思いにふけるのだった。

映画『ポップ・アイ』の感想・評価・レビュー

穏やかなだけのロードムービーではない。人間の哀愁がこれでもかと滲み出ている物語である。その相方が象だというから、何も話すことはない寡黙な姿勢と素朴な眼差しが侘しさを倍増させるのである。かつて象と一緒に農場で育ったという設定ができる環境は限られている。溢れた自然も贅沢に使った演出も光る一作。ショートフィルムが得意だった女性監督とのことだが、今後も長編作に期待していきたい。(MIHOシネマ編集部)

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