この記事では、映画『風の名はアムネジア』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『風の名はアムネジア』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『風の名はアムネジア』の作品情報
上映時間:80分
ジャンル:SF、ファンタジー、アニメ
監督:やまざきかずお
キャスト:矢尾一樹、戸田恵子、阪脩、日高のり子 etc
映画『風の名はアムネジア』の登場人物(キャスト)
- ワタル(矢尾一樹)
- 心優しい青年。恐らくは16歳。ジョニーに拾われ、生き延びる知識を与えられる。亡きジョニーのために世界中を旅している。
- ソフィア(戸田恵子)
- 不思議な力を使う知的な女性。実は地球外生命体で、地球の進化をずっと見守ってきた。
- ジョニー(山口勝平)
- ワタルに言葉や生きる術を教えた少年。13歳で亡くなる。生体研究所にて脳の手術を受け、歩けなくなる代わりに知識を蓄える。そのため、アムネジアの脅威から逃れる。
映画『風の名はアムネジア』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『風の名はアムネジア』のあらすじ【起】
1990年代のある日、突如として一陣の風が吹いた。その風は人々から全てを忘却させてしまう。言葉も何もかも、人であることすら忘れた世界は、やがて荒廃していく。その風は、原因不明の記憶喪失症「アムネジア」と呼ばれた。
ロッキー山脈の麓で生まれ育ったワタルも、アムネジア被害者の1人だった。食べ物を奪い合い、獣のように争い合う世界。ワタルは自分の所業に恐れを成し逃亡の末、とある施設で不思議な少年と出会う。車いすの彼はジョニーという名前だった。
軍の生体研究所で育ったジョニーは脳の改造をされており、アムネジアの脅威から逃れていたらしい。彼はまず、ワタルに5歳幼児並みの知能を与えた。そうして、彼に様々なことを教えていく。ワタルという名前もジョニーがつけてくれたものだった。
ジョニーの年齢は13歳だったが、年齢よりもより多くの知識を要している。食事の時以外のほとんどを勉強に費やした2人。ジョニーはワタルに、1人でも生きていける全ての知識を与える。しかし、秋の終わり頃から体調を崩したジョニーは、起き上がることもできなくなり、冬が始まる頃に息を引き取った。
ワタルはその後、ジョニーの言葉に従って旅に出る。そうして199X年、サンフランシスコ。
彼はソフィアという言葉を話す女性と出会う。彼女はアムネジアについて、何かを知っている様子だった。
1990年代初頭。治安維持のため、政府がガーディアンというマシンを製造。元は人が乗って操縦するものだったが、アムネジアによってガーディアンから降りられない人間が乗車したまま死亡。ガーディアンは操縦士がいなくても、命令遂行をひたすら続けていた。
映画『風の名はアムネジア』のあらすじ【承】
ニューヨークへ向かうと言うソフィアと、旅をすることにしたワタル。
ロサンゼルスにて追われている少女と、彼女を助けて怪我をした男性と知り合う。言葉は通じないが、どういう原理かソフィアが事情を聞いてくれる。彼女には不思議な力があるようだ。
少女は「砕き飲み干す者」の花嫁になる予定だったが、逃亡して来たらしい。砕き飲み干す者とは、この土地で信仰されている神様らしい。
助けてくれた男性にすっかり懐いてしまった少女。翌日は海へ行って楽しむも、夕方になって少女と男性は、ワタル達から離れて勝手に旅立ってしまう。
ワタルとソフィアは2人を追った。その先で砕き飲み干す者が何であるかを知る。それは、都市開発用土木ユニットマシン。小さな町だと30分でならしてしまう大型マシンだった。
少女は花嫁として生贄になる様子。マシンを囲み儀式を行う人々から少女を助けようとするワタル。しかし突如、マシンが起動を始め、逃げ惑う人々の殺戮を開始。どうやら、祭司が操縦しているようだった。
ソフィアはただ、高台からその様子を眺めている。ワタルは少女の手を取り逃げようとするも、彼女は手を離し自らマシンへと向かって行く。少女は無残にもマシンのビームに撃ち抜かれ、命を落とした。
憤怒したワタルが銃で祭司を撃ち抜き、マシンが倒壊する。
映画『風の名はアムネジア』のあらすじ【転】
ソフィアはワタルに賭けを持ち掛けた。この旅が終わるまでに、1人でも自分達の仲間として加わるかどうかを。ソフィアは加わらない方に賭け、ワタルは加わる方に賭けた。賭けの褒美は世界の未来である記憶だった。
ソフィアとワタルは旅を再開。ワタルは人間というものが、どういうものかを知るために旅をしている。車を走らせているとガーディアンの襲撃に遭う。ワタルとソフィアはマシンに反撃するも、車ごと崖へと落下。ソフィアが不思議な力で彼を助けた。
目を覚ましたワタルは、清潔なベッドにて清潔な衣服を着ており、更に話せる医師を見て驚愕する。
ソフィアの話によるとここは、合衆国政府が2010年の未来学博覧会に備えて建設したモデル都市で、エターナルタウンという場所らしい。農場もあり食料の自給も可能。制御はすべてビッグコンピューターが行っている。故に、ガーディアンはここへは入れない。ワタルにはまだ聞きたいことがあったが、ソフィアの不思議な力によって眠らされてしまう。
エターナルタウンにいる人は記憶を失っていない。夕方に目覚めたワタルは、病院を抜け出した。だが、そこで婦長と医師だった男性が、別人のように恋をし合っている。どうやらここには、人間が2人しかいないようだ。市長に呼ばれて食事へ向かったワタルとソフィア。エターナルタウンに居住するよう誘われるが、ソフィアがコンピューター制御のマシンを破壊して交渉。
映画『風の名はアムネジア』の結末・ラスト(ネタバレ)
ワタルは本当の2人と話がしたいと言った。コンピューター制御から抜け出た2人と会話したワタル。彼は一緒に旅に出ようと誘うも、男性は行かないと言い、女性だけが行くことになった。しかし、女性は男性との生活を忘れることができずに戻ってしまう。
ワタルは諦めてソフィアと旅を続けた。
ラスベガスに到着した折、ソフィアから真実を聞いたワタル。彼女達は地球に原始的生命が産まれてから40億年もの間、進化を見守ってきたのだと言う。アムネジアの風を吹かせたのは彼女達だった。忘却した後、そこから抜け出た者を仲間にしようと考えていたようだが、答えは出なかったらしい。ソフィアのような存在は他にもいるようだが、彼女は今後の人間の行く末を見守るのが役目らしい。
ここで別れるかと言われたワタルだったが、結局はソフィアと旅を続けることにした。
幾つもの町を巡り、旅を続けて来た2人だったが、ある日の夕方、とうとうガーディアンに見つかってしまう。再び襲撃に遭うも、命からがら逃げ延びる。奴はサンフランシスコから延々とワタルを追いかけて来たのだ。
ニューヨークへ入り、どうにかガーディアンを撒いた。ソフィアを車から降ろし、別れを告げるワタル。彼はこれからガーディアンと対決すると言う。
ワタルは追撃から逃げ回り降車してビルへ。爆撃により多少負傷するも、上手く逃亡して罠を仕掛ける。ガーディアンは罠にかかって破壊され、地に墜ちた。それを見届けたワタルも気を失って落下。
しかし、ソフィアによって助けられる。賭けに負けてしまったワタルは、地球の未来である記憶は戻せなかったが、彼女から勇敢だったと祝福を受け身体を捧げられる。
ソフィアは地球外生命体であり、これから地球を去るらしい。そうして、ワタルとソフィアは別れた。その後もワタルはたった1人、地球上での旅を続けるのだった。
映画『風の名はアムネジア』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
菊池秀行による同名SF小説を劇場アニメ化した作品。他にラジオドラマ化もされている。一陣の風により人類の文明と知識の全てが忘却され、荒廃してしまった地球を舞台に恩師となる亡き少年の願いを叶えるべく、1人の少年が世界の旅をするという内容。
人であることすら忘れるということは、もうすでに獣と同じで物語の冒頭部分でも、主人公が獣のように餌の取り合いをするシーンがある。作中では様々な場所や人々、彼らの生活を目にするが、地ならしをする土木作業マシンを神と崇めたり、過去の文明に固執するあまり、同じ日を繰り返している町など多種多様。物語を見る限り、主人公のような者はほとんどおらず、人間に進化が起きているとは思えない。いつかは人間の無限の可能性というものが発現すればいいと思うが、それには永い時が必要なのではないかと思った。(女性 40代)
驚くべきはこのSFアニメの設定だろう。「アムネジア」という風が吹き、人類が記憶を失ってしまうという、とんでもない発想に脱帽である。
言葉も忘れてしまった主人公のワタルが旅をしながら、人間を取り戻していくストーリーなのだが、機械に洗脳された人間などが登場し、「人間とは何か?」「命とは何か?」を問われているように思える。
全知全能かのような存在・ソフィアも登場し、悲しい気持ちにさせられる場面も多いが、自分なりの答えを見つけ出さねばと考えてしまう。(男性 40代)
生きる意味や「人間」とは何なのかを考えさせられる不思議な作品でした。風が吹き、記憶を無くす人間たち。全ての人間が記憶を無くしてしまったため、自分が何者なのか、何をしているのか分からなくなり「獣」のようになってしまう姿は目を覆いたくなるようなシーンでした。
知識や記憶が無くなるという事はこんなにも切なく悲しいことなのだと感じると同時に、知識を与えられたことに「責任」を持ち、人類を救おうとするワタルはとてもかっこよかったです。(女性 30代)
記憶を失った世界という突飛な設定なのに、物語はどこかリアルで、観ていて不気味なほど静かに心に入り込んできました。主人公ワタルが記憶を取り戻すことより、「人間とは何か」を探して旅する姿が哲学的で、深く考えさせられます。特に、ラストでジョニーの正体が明かされる展開は衝撃的でした。アニメでここまで人間存在を描けることに感動しました。(20代 男性)
文明が崩壊した世界で、言葉も文化も失った人々の姿が描かれていて、まるでディストピア小説のような重厚さがありました。ワタルとジョニーの関係が鍵を握っており、彼らの会話には哲学的な深みが感じられました。記憶喪失というテーマを、個人ではなく“人類全体”に広げた点が斬新で見応えあり。決して派手ではないけれど、心に残る作品でした。(30代 女性)
記憶を失った世界をさまよう旅路が、観る者に“人間らしさとは何か”を問いかけてきます。ジョニーがワタルを導きながらも、彼自身も人間ではなかったという事実に、思わず鳥肌が立ちました。淡々としたストーリーの中に、文明批判や存在論的なテーマが込められていて、深く味わいたくなる映画です。原作も読みたくなりました。(40代 男性)
派手なバトルや映像美ではなく、静かに人間の本質を問う物語。ワタルが出会う人々とのエピソードの一つひとつが短編のようで、それぞれに異なる価値観が描かれていたのが印象的です。特に、記憶を失ったことで原始的な本能だけが残る人々の姿は衝撃的でした。最終的にワタルが記憶を捨てて歩き続けるラストに、希望と哀しみを感じました。(50代 女性)
アニメ映画でここまで抽象的で哲学的な作品に出会うとは思いませんでした。文明が崩壊し、言葉を忘れた世界。その中でワタルとジョニーの対話が、まるで観る側との対話にもなっているようでした。ラスト、ジョニーが自らの役目を終えるシーンは静かで美しく、心が締めつけられるようでした。80年代の作品とは思えない深さでした。(30代 男性)
この映画を観ると、自分が「人間である」ことがどういう意味なのかを問われているような気持ちになります。記憶や言語、知識がすべて失われた世界において、それでも人間性を取り戻そうとするワタルの旅は、とても尊くて力強かった。アニメだけど大人向けの作品。観る人によって、感じることが大きく変わる映画だと思います。(20代 女性)
言葉を失った人々が動物のように行動する世界。それはとても静かで、でも恐ろしくもある風景でした。そんな中でワタルが持つ“記憶”がどれほど大きな意味を持っていたかが、後半に進むほどに明らかになります。ジョニーの存在が象徴的で、AIと人間の境界についても考えさせられました。アニメ好きだけでなく、思想に興味がある人にも勧めたい作品です。(40代 女性)
映画『風の名はアムネジア』を見た人におすすめの映画5選
人間失格 太宰治と3人の女たち(2019)
この映画を一言で表すと?
記憶や感情の奥底に潜む「人間らしさ」を描いた耽美な文芸ドラマ。
どんな話?
太宰治の破滅的な人生を、彼を愛した3人の女性たちの視点から描いた作品。文豪としての才能と、人間としての弱さを内包する太宰が、自身の矛盾と向き合う姿が美しくも切なく描かれます。
ここがおすすめ!
『風の名はアムネジア』と同じく、人間の「本質」や「記憶の喪失と再生」に迫るテーマが魅力。映像美も見事で、現実と幻想の間を漂うような構成が独特の余韻を生み出します。人間の業に触れたい方におすすめです。
イノセンス(2004)
この映画を一言で表すと?
哲学とサイバーパンクが融合した、圧倒的映像体験のSFアニメーション。
どんな話?
義体(サイボーグ)化が進んだ未来、人間とAIの境界が曖昧になった世界で、主人公・バトーが少女型ロボットの暴走事件を追う。物語を通して「魂とは何か」「記憶とは何か」が問われる知的SFです。
ここがおすすめ!
『風の名はアムネジア』と同様、人間の存在意義や意識の本質に迫る問いが作品全体に漂います。攻殻機動隊の世界観を引き継ぎながら、より静謐で哲学的な余韻を残す傑作。映像と音楽の美しさも圧巻です。
AKIRA(1988)
この映画を一言で表すと?
荒廃と再生の狭間で揺れる、アニメ史に残る衝撃的な近未来黙示録。
どんな話?
第三次世界大戦後の“ネオ東京”を舞台に、超能力を持った少年たちが国家の陰謀と自身の力に翻弄される物語。人間の進化と崩壊、そして再生を壮大なスケールで描いています。
ここがおすすめ!
『風の名はアムネジア』同様、文明崩壊後の世界を通して「人間とは何か」を描いており、破壊的な美学と内面的葛藤の融合が見事。音楽、作画、ストーリーテリングすべてが伝説的レベルのアニメ映画です。
サイコパス(TVシリーズおよび劇場版)
この映画を一言で表すと?
管理された“正義”の世界で、人間の自由と魂を問うハードSF警察ドラマ。
どんな話?
「犯罪係数」によって人間の精神状態が可視化される近未来社会で、監視と管理に支配された世界の矛盾と人間性を描く。若き監視官・朱と元執行官・狡噛の対立と絆も見どころ。
ここがおすすめ!
『風の名はアムネジア』に共通する「人間性の喪失と再構築」をテーマにしつつ、現代社会への風刺も色濃い作品。哲学的なセリフと人間の尊厳に迫る展開は、深く考えたい人にぴったりの一作です。
マイノリティ・リポート(2002)
この映画を一言で表すと?
“未来の罪”に抗う男の姿が描く、人間の意志と選択の意味。
どんな話?
近未来のアメリカでは、犯罪を予知するシステムによって事件が未然に防がれていた。しかし、主人公自身が殺人を犯すと予知されたことで、彼は自らの無実を証明するため逃亡しながら真相を追うことに。
ここがおすすめ!
『風の名はアムネジア』のように、人間の「自由意志」や「記憶」の操作といった深いテーマが内在しており、娯楽性と哲学性を両立させたハリウッドSFの傑作です。テンポよく、それでいて考察しがいのある作品です。
みんなの感想・レビュー
何を伝えたいのか?何を言いたかったのかよく分からない映画。だが不思議と心に残る。
少なくとも良作。個人的な疑問は作中きっての敵、ガーディアンは何故ワタルに執着し、その名を知っているのか?ワタルの名は文明崩壊後にジョニーによって命名されている。
ガーディアンは高度なAIだが、データベースにアクセスしてもかつて市民だったワタルの過去が解るだけ。ワタルの名はわからない筈。ガーディアンはデータベースに残されたジョニーの記憶の残滓なのか?人を構成する物は記憶だけでは無い。記憶というデータのみになったジョニーの残滓は生前と変わらずワタルに執着するが、その親愛表現方法はワタルを殺そうとするという過激な物。そんな考察が出来る、謎が残り、作中で全てを説明しない。視聴者の想像に任せるという演出が、私は好きだ。