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映画『ケス』あらすじとネタバレ感想

映画『ケス』の概要:イギリスの名匠ケン・ローチの初期作品の傑作。イギリスの片田舎ヨークシャーの炭鉱町を舞台に、孤独な少年が鷹(ケストレル)の雛と出会ったことから起こる人間の少年と野生の鳥との友情を瑞々しく描いた佳作。ケン・ローチ初期の代表作には他に『リフ・ラフ』『レイニング・ストーン』『大地と自由』などがある。

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映画『ケス』 作品情報

ケス

  • 製作年:1969年
  • 上映時間:112分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
  • 監督:ケネス・ローチ
  • キャスト:デヴィッド・ブラッドレイ、リン・ペリー、コリン・ウェランド、フレディ・フレッチャー etc

映画『ケス』 評価

  • 点数:75点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★☆☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

映画『ケス』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『ケス』のあらすじを紹介します。

60年代後半のイギリス。ここは廃れた炭鉱町。ヨークシャー地方の中でも田舎だろう。ここに暮らすビリー(デヴィッド・ブラッドレイ)は10代の少年。彼は、母(リン・ベリー)と年の離れた兄ジャド(フレディ・フレッチャー)と3人で暮らしている。その兄とはいつもケンカばかりしている。学校でもあまりパッとせず、どことなく孤独な少年だ。彼の家庭は、お世辞にも裕福な家庭ではない。ビリーは毎朝、生活費を稼ぐため、新聞配達の仕事をしている。この時代、10代前半で仕事をする子どもは、大勢いた。家庭環境のせいか、彼は正直、素性が悪い。同業種の牛乳配達員のミルクをこっそり盗み、飲むような少し悪い少年でもある。それでも家庭を助け、学校に行く彼は、どこか大人びて見える。彼の唯一の楽しみは、仕事中に新聞に掲載されている4コマ漫画を読むことだ。この足で彼は、学校に向かう。学校でのビリーは、勉強が苦手な落ちこぼれ。教師にもバカにされ、クラスメートにも笑われているような浮いた少年だ。

そんなある日、朝早く町中をフラフラ1人寂しく過ごすビリーの目の前に、廃墟となった教会が現れた。大空には、大きな鷹の姿。彼はその鷹を目で追うと、教会の一部に巣を作っていることが判明した。その鷹に興味を持ったビリーは、その教会に近づこうとすると、ここは私有地だと、中年男性に注意される。ビリーは食い下がり気味に、初めて見た鷹を間近で見たいと主張する。彼はここで、中年男性とある会話を交わす。教会が取り壊される前に鷹の雛を保護し、自分の手で雛を育てたいと、ビリーは語った。だが男性は、鷹を育てるのは容易ではないと、彼に言い聞かせる。だが彼は鷹を育てたい一心で、男性から聞いて市内にある図書館に赴くのだった。鷹を訓練させる本を手に入れるために。
図書館に赴いた彼だったが、図書カードも身分証もなく、親の承諾もないと、本を貸すことが出来ないと、司書に断られてしまう。それでも諦め切れないビリーは、図書館の近くにある古本屋に足を運ぶのだった。そこには目当ての鷹を訓練する本が置いてあり、彼は人目を避けて、その本を盗むのだった。家に帰ると、年の離れた兄ジャドがビリーをからかい、苦労して手に入れた大切な本を奪ってしまう。ビリーにとっては、とても大切な本。兄のジャドにとっては、下らない本だった。ビリーはこの本を読んで、鷹を飼育したいと話すが、ジャドは彼をバカにするばかり。翌朝ビリーは、陽がまだ上ってない早い時間に起床し、家族にも秘密に、あの廃墟の教会に向かうのだった。目的はもちろん、鷹の雛を保護するためである。教会の外壁をよじ登るビリー。地上何メートルという高さを登るビリーの姿は、とても勇敢だ。やっと巣がある高さまで辿り着くと、そこには一匹の雛鳥が。彼はその雛を持ち帰り、大きな鳥篭で飼い始めることに。読み書きの苦手なビリーは、その難しい本を片手に訓練の方法、呼び方、餌付け、接し方など、今まで知らなかったことを、必死に頭に詰め込んでゆく。徐々に、訓練の成果が出始めていた。

ビリーはある日学校の授業で自分の話をするように指導される。何を話していいか分からない彼は、何も話そうとしなった。業を煮やした教師は、クラスメートに彼が何をしているのか、話させた。ある生徒が、ビリーは鷹の調教に夢中になっていて、誰とも遊ばない変人だと、皆の前で報告した。そのことを聞いた教師は、ビリーに鷹の飼育について話すように促した。教師は、ビリーが話しやすいように最初は些細な質問から始めた。どこで飼っているのか、餌は何を与えているのか、ビリーは鷹を毎日小屋から外に連れ出し、訓練していることを教師とクラスメートに話し始めた。途中教師でさえも聞きなれない言葉を、黒板に書いて、その言葉の意味を伝えるビリー。今まで勉強もろくに出来なかった彼が、教室の一番前で鷹の訓練の方法を報告して行きます。そその話に真剣に耳を傾ける教師と彼の友人たち。鷹を育てるという特異な世界に、周りも興味津々。友人の質問も、スラスラと答えるビリー。今までパッとしなかったビリーが、一番輝いて見える瞬間だった。その日の休憩時間、年上の生徒から母親のことを罵られたビリー。瞬く間に、彼らはケンカに発展してしまう。石炭の上で暴れまわるから、彼は真っ黒に。気が付けば、ケンカの周りには、ケンカを助長するように人だかりが。その光景を見た先の授業の教師が、走って止めに入る。教師はビリーの肩を持ち、上級生を叱りつける。ただビリー自身にも問題があるのではないかと、諭すのであった。そこで今まで溜め込んでいた鬱憤を、ビリーが吐き出すのだった。親のこと、教師のこと、大人のこと。皆、子供や生徒に無関心すぎると。そんな事だから、子供も無関心になってしまうと。ビリーは、些細な事で説教をする教師や校長の在り方に疑問を抱いていた。理由も聞かずに、すぐ手を出すのは、大人が子供に無関心すぎるからだと。この会話の流れで、ビリーはその教師ファーシング先生(コリン・ウェランド)に鷹の調教を見せることを約束した。その放課後、教師に調教する姿を披露するビリー。ビリーが初めて他人から認められ、注目された瞬間だった。教師と別れた後、ビリーは書置きのメモで兄から頼まれていた馬券を買いに来た。馬券場で初老男性から買う馬券は当たらないと諭され、ビリーは馬券を買うことをあっさり辞めてしまい、その代わりに手渡されていたお金で“フィッシュ&チップス”を購入した。余ったお金で、鷹の餌も購入した。その行動が、悲劇を生むことに。

その翌日、登校していたビリーの前に兄のジャドが現れた。昨日、馬券を買わなかったこと、そして負けると言われた馬券が、勝ち馬券だったこと。ビリーは兄から逃げるように校舎内を必死に逃げ隠れた。そんな些細な行動が、後にすべてを失うことに繋がってしまう。就職を斡旋する面接でも、彼はソワソワしていた。兄に殺されるんじゃないかと。面接官に叱られても、彼は上の空だった。面接中に部屋を飛び出した彼は、その足でケスを飼っている場所でケスを呼ぶも反応がない。小屋に足を運ぶといるはずの鷹のケスがいない。馬券場で昨日の買い損ねた勝ち馬券は10ポンドも勝っていたことに、驚愕するビリー。ケスを大声で必死に呼び続けるビリー。どこにもケスの姿が見当たらない。泣きながら家に帰ると、家には母親と兄の姿が。ビリーは確信を持っていた。兄のジャドがケスをどこかにやってしまったと。言い寄ると、兄はケスを殺し、ゴミ箱に捨てたと。それを聞いてショックで泣き叫ぶビリー。母親も兄の行動に激怒する。

泣きながら家を飛び出したビリーは、ケスと初めて会ったあの教会の木陰にケスの亡骸を埋めるのだった。

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映画『ケス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ケス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

名匠ケン・ローチについて

イギリス映画もまた、歴史は古く。1920年ごろから制作が始まったと言われているが、やはりハリウッドの黄金期の多量生産に追いついて行けず、図らずとも1930年以降には、イギリス映画の制作に陰りが見え始めた。だがこの時期にデビューし始めた『血を吸うカメラ』や『カンタベリー物語』『黒水仙』などマイケル・パウエル監督や今やサスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックらは、この時期に映像制作の技術を磨いた。周知の通り、サイレント期には喜劇王と今でも語り継がれているチャールズ・チャップリンもいる。1900年初期から、イギリスはトップレベルの映像制作の技術者が数多くいた。

第2次世界大戦では、その時代の弾圧から当初は低水準の作品ばかりが目立っていたが、この戦争を逆手に取り、イギリス映画界は新しいエネルギーを吹き込むことに成功している。その中でも最も顕著なのが、やはり『逢びき』『大いなる遺産』『オリヴァ・ツイスト』『旅情』『アラビアのロレンス』など、生涯に12本の映像作品を世に送り出したデヴィッド・リーンや俳優では『ヘンリィ5世』や『ハムレット』を生み出したローレンス・オリビエが有名だろう。

1960年代にはイギリス・ニュー・ウェーブという動きが活発となった。この時期にデビューした中心人物トニー・リチャードソン、カレル・ライス、リンゼイ・アンダーソンの主要3人が先導したとも言われるイギリス・ニュー・ウェーブ。怒れる若者や第2次世界大戦後の人々の日常、労働階級の人々などの生き様を描く作品が多く。社会派の流れを汲んだ作品も多く制作された。このような時代の中で、1967年『夜空に星があるように』でデビューを飾ったのが本作の監督でもあるケン・ローチだ。

本作『ケス』は彼の2作目としてイギリスで公開。日本では『少年と鷹』と言う題でたった一度だけ放映されたことがある。また1969年の英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされ、若き才能にも注目が集まった。だが、時代は社会派と言う暗い作品に対する関心が低く、また政治的な検閲が入り、思うような映像制作が出来なかった。彼にとって、まさに不遇の時代と言えるだろう。1969年制作の『ケス』以降、立て続けに制作されてきたが、どの作品も日本で公開されることはなかった。71年の『Family Life』73年の『A Misfortune(テレビ映画)』79年の『Black Jack』80年の『The Gamekeeper』81年の『Looks And Smile』いずれも日本公開はおろか、入手困難な作品だ。デビューの67年から実に10年以上。90年に制作された『リフ・ラフ』でやっと、彼の作品が初めて日本で劇場公開された。その時の公開記念として本作も『ケス』に改名されて初めて劇場公開された。その後のケン・ローチの活躍は、飛ぶ鳥の落とす勢いがあった。2006年アイルランド内戦を描いた戦争ドラマ『麦の穂を揺らす風』が、13回目の出品でやっとカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したのは、記憶に新しい。

彼の作品の特徴は、一貫して労働者階級に焦点を当てた作品が多く、先に述べたイギリス・ニュー・ウェーブの流れを汲んだ作品がある。また、作品のスタイルとしては、役者の自然な演技を引き出すため、リアルな状況を作り出すことを重視している。撮影方法は、そのリアリティを生み出すために、順撮り※1と呼ばれる撮影法をどの作品でも使用し、時には即興演出を行い、役者の本来持っている演技力を引き出したり、脚本制作時には結末を意図的に執筆しないことも有名だ。また有名俳優を起用するより、若手、舞台役者、無名役者を起用することを好む。このキャスティングにより、よりリアリティさを生み出すことに成功していると、言ってもいいでしょう。

今回の記事は、ケン・ローチに焦点を当てているため、残念ながらよい深く、より詳しくイギリス映画を紹介できないが、現在のイギリス映画もまた、質の高い良質な作品が、世に送られているのは事実である。

※1順撮りとは、映画やテレビドラマなどの撮影で、シナリオの冒頭から順を追って撮影を進める方法。普通は、経費節約や出演者のスケジュールなどから、同じロケでの撮影をまとめて敢行することが多いが、役者が役作りをするのに有効だとして、この手法で撮影する監督も多い。特に有名なのがスティーブン・スピルバーグの初期作品『E.T.』が有名だろう。


とにかくビリーが可哀想で見ているのが辛かったです。確かにビリーの素行には難があるかもしれません。しかし、それはビリーの本心ではなく誰かに見てほしいから、認めてもらいたいからという子供なら誰しもが感じる欲求から来ているものだと言うのは容易に分かります。
それを見ようとしない家族、聞こうとしない教師、知ろうとしない同級生など狭いコミュニティの中にいるからこそ、ひしひしと感じられるストレスがとにかく苦しかったです。
心の支えとも言えるケスを殺した兄。彼も欲求を満たされないフラストレーションからそんな行動に出たのかなと思うと、責めるにも責められず、なんとも言えない気持ちになりました。(女性 30代)

映画『ケス』 まとめ

本作『ケス』では炭鉱町と言う閉塞的なコミュニティで暮らす人々に焦点が当てられている。貧困、片親、血縁関係のない兄弟など、主人公の生活環境はあまりいいものではない。そんな生活の中で、彼は心の救いとでも言えるような存在に出会うことが出来る。それが、鷹の雛(ケス)との出会いだろう。今までのビリー少年は、何の目的もなく、ダラダラ過ごしていた日々の生活が繰り返される連続で、鷹を訓練したいと言う一つの目標が、彼の疲労した心に光を照らし、何もなかった日々の営みの中で輝きを放つ唯一無二の存在。人間同士ではなく、人間と動物の、少年と鷹の目には見えない友情が優しく、時には厳しいタッチで描かれている。

映画そのもの言及すれば、少々荒さがあったり、編集段階でも説明力の乏しさが垣間見えるのは、やはり監督自身がこの当時はまだまだ若かったから、メジャー級の作品と言うよりもテレビ映画と言う認識でいてもいいかもしれない。でも、そこには今のケン・ローチ節とでも言えるテーマ性、演出法など、現在に基づく礎がこの作品から窺えることが出来る。特に、ヨークシャー地方を舞台にしているだけあって、ヨークシャー訛の英語を映画の一部に反映させている。この当時公開された際、英国でそのシーンは字幕が付けられ、米国では吹き替えされたと言う逸話が残っているほど、彼の演出は拘り抜いたものなのである。奇しくも、日本では2015年に公開された『ジミー、野を駆ける伝説』は彼の引退作となってしまったのは残念だが、彼が今まで見つめて来た労働者階級や弱者の視点で描かれる作品性は、脈々と次の世代に受け継がれている。

近年、2世監督が活躍の場を広げている。ソフィア・コッポラ(フランシス・フォード)、アリソン・イーストウッド(クリント)、ブランドン・クローネンバーグ(デヴィッド)、サム・レヴィンソン(バリー)など名立たる監督たちの息子、娘が映画界で活躍している。ケン・ローチの息子ジム・ローチもまた2010年に『オレンジと太陽』で監督デビュー。父親が今まで描いてきた弱者の苦悩を、本作でも描かれているのはまさに世代交代を担った記念碑的作品だろう。ケン・ローチが引退しても尚、彼のメッセージは確実に次に世代に受け継がれていると、私は思います。

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