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映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』の概要:1956年、まだベルリンの壁が建てられる前の東ベルリンを舞台に、ある高校生たちが行った2分間の黙祷が大問題に発展していく。社会主義国家の中で揺れ動く大人たち、そして子供たちの葛藤と決断を描く。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』の作品情報

僕たちは希望という名の列車に乗った

製作年:2018年
上映時間:111分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、歴史
監督:ラース・クラウメ
キャスト:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラー、ロナルト・ツェアフェルト etc

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』の登場人物(キャスト)

テオ・レムケ(レオナルド・シャイヒャー)
東ベルリンの進学校に所属する高校生。クラスのリーダー的存在で、幼い弟たちを可愛がっている。クルトの親友であり、レナの恋人。
クルト・ヴェヒター(トム・グラメンツ)
テオの親友でありクラスメイト。市会議員である厳しい父と従順な母を持ち、エリートの御曹司と見られている。正義感が強い。
レナ(レナ・クレンク)
テオの恋人でありクラスメイト。行動力があり、間違っていることには従わない強さを持つ。密かにクルトに惹かれている。
エリック・バビンスキー(ヨナス・ダスラー)
テオのクラスメイト。父を亡くしており継父と母と暮らすが、共産主義者だった亡き父を尊敬している。
パウル(イザイア・ミカルスキ)
テオのクラスメイト。大叔父が郊外で暮らしており、西ベルリンのラジオを聴くために友人たちと共に頻繁に大叔父を訪ねる。
ヘルマン・レムケ(ロナルト・ツェアフェルト)
テオの父。製鉄所で働く肉体労働者。頼り甲斐のある父で、一家を支えている。
ハンス・ヴェヒター(マックス・ホップ)
クルトの父。市会議員であり、寡黙だが家族に対して威圧的な態度をとる。クルトと距離がある。
ランゲ国民教育大臣(ブルクハルト・クラウスナー)
テオ達の一連の行動を問題視し、原因の調査に乗り出す。かつてナチスから拷問を受けた過去を持ち、ナチスを非常に憎んでいる。
ケスラー(ヨーディス・トリーベル)
郡学務局から、テオ達の問題解決のため派遣されてきた女性調査官。体制に従い、国に背く行為を許さない強い態度をとる。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のあらすじ【起】

1956年の東ベルリン。第二次世界大戦は過去の話だが、人々の生活の中に未だに暗い影を落としていた時代で、ある進学校に所属する高校生たちがいた。彼らは優秀な学生の集まるクラスに所属しており、順調にいけば将来エリートコースへ進むことが約束された子供たちだった。その中のテオとクルトは親友であり、ある日西ベルリンの映画館へ出かける。当時まだ東西ベルリンの行き来は行われており、列車内での検札をクリアすれば両地域を横断することは可能だったのだ。彼らはクルトの亡き祖父の墓参りを口実に検札を乗り切るのだった。

テオとクルトはどうにか入り込んだ映画館で、本編よりもその前のニュース映像に目を奪われる。それは当時政府からの弾圧に苦しんでいたハンガリーの民衆が、解放を求めて蜂起したというニュースだった。民衆の中には若者も多く、テオたちはその姿に興奮を抑えられなかった。地元へ戻り、仲間たちのいる喫茶店でそのことを熱く語るテオだったが、店内に我が物顔で居座っているソ連の兵士たちに反感を覚え、いたずらを仕掛ける。追いかけてきた兵士たちに捕まるテオとクルトだったが、「好きでここに来ているわけではない」という言葉を残して兵士たちはその場を去るのだった。

翌日、テオとクルトはクラスメイトを誘い、パウルの大叔父の家に出かけた。そこには西ベルリンからの放送を聴くことができるラジオがあり、よく集まっていたのだった。そして、その日のニュースでは例のハンガリー民衆蜂起の話題が伝えられていた。彼らを驚かせたのは、何百万という市民が暴動により命を落とし、その中には有名なサッカー選手であるプスカシュも含まれているというニュースだった。憤るテオたちは、翌日の学校でもクラスメイトたちとその話題で盛り上がる。そして、クルトの発案により亡くなったハンガリー市民やプスカシュ選手の行動を称えるために2分間の黙祷をしよう、と決める。エリックはその行動に反対の立場をとるが、クラスメイト全員での多数決により黙祷を実行することになったのだ。

1時間目の授業のため入ってきた教師は、何を質問しても答えない生徒たちに驚き、教師への反抗だと受け止め教室を出て行く。彼は校長へ状況を報告し、改善を訴える。すると校長は、クラスのリーダー的存在と見られるテオを呼び出し事情を聞き出す。社会主義国家である東ベルリンにおいて、生徒が政治的な主張をするということは許されない行動なのだ。彼の将来を左右するような脅しの言葉を持ち出す校長だったが、しかし、テオは「亡くなったプスカシュ選手への追悼のためです」と答え、政治的な意図はないと説明する。

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映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のあらすじ【承】

生徒たちの行動を怪しんだ校長は、学務局による調査を希望し、ケスラーという女性調査官が派遣されてくる。同じ頃、テオたちは再びパウルの大叔父の家を訪ねる。そこで判明したのは、プスカシュ選手は死んでいなかったということだった。西ベルリン側の誤情報だったのだ。生徒たちの結束にもばらつきが見られるようになり、テオは「とにかくスポーツ選手の死を悼んだものだった」と嘘をつき通そう、と提案する。彼らの当初の目的だった「ハンガリー市民のための黙祷」という前提が揺らぎ、クルトとレナは反対するが、クラスメイトの多くは学校側の対応に怯え、テオに従う。その後、お互いに密かな想いを抱いていたクルトとレナが抱き合う場面をパウルが目撃してしまう。以降、パウルとクルトとの間にはぎくしゃくした空気が漂う。

調査の日、ケスラーは生徒たち一人一人を呼び出し、黙祷の理由を聞き出そうとする。口裏を合わせ「プスカシュ選手のための黙祷です」と答える生徒たちだったが、テオはエリックの対応を訝しんでいた。エリックはもともと黙祷に反対していたので、本当のことを告げてしまうのではと恐れていたのだ。さらに、ケスラーはテオに対し「エリックはあなたの発案だと言った」と嘘の情報を流す。実際はエリックは告げ口をしていなかったが、彼らを揺さぶるための策略だった。その策略通りテオはエリックを責め、エリックは否定しながらも反発する。生徒たちにますます動揺が走ってしまう。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』のあらすじ【転】

追求はなかなか終わらず、ついに国民教育大臣であるランゲが乗り出してくる。彼は生徒たちに対し、「一週間以内に首謀者を教えなければ、全員卒業試験を受けることはできないようにする」と告げる。進学校に通う彼らにとって、卒業試験を受けて合格し、エリートコースを歩むことは重要な至上命題だった。そして、ランゲはエリックに一人残るように命じる。「お前が首謀者だと聞いている」と言われ、慌てたエリックは「僕ではない!父が偉大な社会主義者だった僕が、この国の体制に背くはずがない」と言い募る。しかし、ランゲは追求の手を止めず、ついにエリックは「パウルの大叔父の家で西ベルリンのドイツを聞いていた生徒たちがいる」と告白してしまう。

すぐに政府がパウルの大叔父の家に出向き、彼は逮捕されてしまう。そのことを知ったパウルは怒りに燃え、クルトやテオは焦りを覚える。クルトは「自分が首謀者だと言う」とテオに話すが、テオは「そんなことをしても問題はそれで収まらない」と止める。家に帰ったテオは、事情を知った父から誰が言い出した黙祷だったのかを問い詰められる。いつもは大らかで優しい父親だったが、この時ばかりは怒りを爆発させ息子から真実を聞き出そうとしていた。ついにテオは根負けし、クルトが言い出したことだと告白する。それを聞いた父は、それならクルトが責任を負うべきだ、生徒の誰も本当のことを言わないならお前が言え、とテオに命じた。

同じ頃、ケスラーは全ての生徒の経歴や家族について調べ上げていた。彼女はまずエリックに狙いを定め、彼を呼び出す。そして、「あなたのお父さんは社会主義者じゃない。ナチスに寝返って社会主義を捨て、それが元の同輩に発覚して処刑された人だ」と告げる。さらにその証拠となる処刑写真を見せたのだ。父は社会主義者として国に貢献したと信じ続け、尊敬してきたエリックにとって、それはあまりにも衝撃的な事実だった。ケスラーは、本当のことを言わないならこの事実を新聞にばらすと脅す。父の恥をさらすわけにはいかず、エリックはクルトが首謀者だと白状してしまう。そして、彼は写真を持って飛び出していった。射撃の授業中に遅刻して現れたエリックは、以前から高圧的で生徒たちを抑え込んでいた教師の罵声を聞き、持っていた銃の引き金を教師に向けて引いたのだった。

驚いたクルトたちクラスメイトは、走り去るエリックの後を追う。彼は教会にいる母親と義理の父の元に飛び込み、必死に「真実を話してくれ」と迫る。その勢いに押され、母はケスラーの話したことを事実だと認めた。追いついたクルトたちに押さえ込まれながら、エリックは苦しそうに涙を流した。誰も裏切りたくなかった、本当はクルトやテオのことを裏切りたくなかったんだと話すエリックは、あの写真を持っていた。それを見たクルトは顔色を変える。処刑されたエリックの父親の後ろに、自分の父親が写っていたのだ。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』の結末・ラスト(ネタバレ)

その夜、クルトの家にケスラーが訪ねてくる。エリックに撃たれた教師は命を取り留めたが、エリックは傷害罪で逮捕されたと告げる。クルトが首謀者だとわかっているケスラーは、今回の傷害事件を利用することを提案する。どちらにしてもエリックは10年は出てこられないのだから、黙祷の件も彼のせいにしましょうと話すケスラー。クルトの父であるハンスは市会議員であり、その立場にケスラーが忖度を図ったのだ。明日の朝、生徒たち全員の前で「エリックが首謀者である」と言いなさいと話して去るケスラー。父はクルトに、その通りにしろと命じる。クルトは反発し、エリックの父を殺したのは父さんなのか、と問い質す。狼狽しながらも自分の非を認めない父に対し、クルトは失望を隠せない。

父が自室へ去った後、母はクルトを抱き締めた。そして、「逃げなさい。そして二度と戻ってこないで」と涙を流しながら告げた。その気持ちを悟り、泣くクルトに「一生、毎日思っているから」と言葉をかける母だった。深夜、クルトの部屋で窓が音を立てていることに気づき様子を見に来た父は、息子の姿がないことに驚く。「クルトがいなくなった!」と叫ぶ夫に対して、日頃は抑圧され従順な姿勢しか見せなかった妻は、「知っているわ」と静かに告げた。

クルトは自転車で家を抜け出し、テオの家に向かった。窓からテオを呼び出し、西ベルリンに向かうと告げたクルト。できればお前も一緒に行かないか、と誘う友人に対し、テオは「家族を捨てられない」と断るのだった。クルトはそれを聞き、一人で逃げることを決める。ただ、自分がいなくなった後にクラスメイトたちが無事に卒業試験を受けられるようにしてくれ、とテオに頼む。最後に抱擁を交わし、別れる二人だった。

クルトは列車に乗り込み、検札を受けていた。いつもは「祖父の墓参りです」と答えれば無事通っていたのだが、この時に限って怪しまれ、駅員室に連れて行かれてしまう。そこに父が現れ、絶望の表情を隠せないクルトだったが、父は「息子は墓参りに行くだけです」と駅員に告げたのだ。驚くクルトに、「夕飯までには帰れよ」と声をかけて出ていく父。クルトは無事、再び列車に乗ることができた。

翌朝、学校ではケスラーが生徒たちにクルトの逃走を告げていた。事態が変わったことで、エリックに黙祷の首謀者という罪を着せるのはやめ、クルトは自らの首謀者としての責任を感じて逃げたのだと話すケスラー。そして、テオを指名し「首謀者はクルトだと言いなさい」と命令する。しかし、しばらく悩んだ末、テオは「みんなで決めたことです」ときっぱり答えたのだった。憤慨し、テオに退学を命じるケスラーだったが、ずっと俯いていたクラスメイトたちが次々と立ち上がる。皆「自分が言い出したのだ」と答え、テオとクルトを庇ったのだ。ケスラーは彼らに「全員退学です、卒業試験も受けさせません」と言い渡した。

学校を出、集まるテオと生徒たち。これからどうする、と聞く友人に対し、テオは「年末には皆西ベルリンの親戚の家に行くだろう、賛同する奴はその時に西へ逃げよう。向こうで卒業試験を受けよう」と提案した。生徒たちそれぞれが悩む表情を見せる中、「一人一人考えよう」とテオが告げて解散するのだった。年末休暇に入る日、パウルはテオの所に迎えに来る。その時テオは、両親と弟たちと一緒にいた。帰省しようと準備をする家族を見つめ、テオは別れを決意する。「後で行くよ」、と告げてパウルの元へ走っていくテオ、そして彼の決意を悟った両親は涙を抑えられない。

西ベルリン行きの列車へ乗り込んだテオは、そこにクラスメイトたちの姿を見つける。ほぼ全員が西行きを決め、それぞれが行動を起こしていた。席に着いたテオは、静かな笑みを浮かべる。

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』の感想・評価・レビュー

この映画を観て、自分が歴史の思い違いをしていたことに気づいた。ベルリンの壁は第二次世界大戦の後すぐに築かれたものではなく、1961年にできたものだった。そしてこの映画は1956年が舞台だ。若干18歳で家族と別れる決断をした彼らは、その5年後にできたベルリンの壁により、その時の行動がほぼ永遠の別れに繋がったと知っただろう。行き来も容易ではなくなった中、後悔した者はいたのだろうか?エンドロールで「彼らは西ベルリンで卒業試験を受けることができた」と流れていたが、重大な決断をした彼らが西側で幸せな生活を送ったことを祈った。(MIHOシネマ編集部)

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